労働時間の適切な計算方法について|残業代計算についても詳しく解説!

従業員の労働時間を適切に把握することは、従業員の給与を誤差なく支払うためにも、自社の労働環境を把握する上でも非常に大切です。労働時間を適切に把握するためには、正しい労働時間の計算方法について理解する必要があります。

本記事では、労働時間の定義や正しい計算方法、さまざまな勤務形態における残業代計算に至るまで、わかりやすく解説します。

1. そもそも労働時間とは?

青色 時計 人間3人

従業員の給与を正しく支払うためには、労働時間を適切に計算、把握する事が必要不可欠です。ただし、労働時間の計算を正しく行うためには、労働時間に関する定義や労働時間に関するルールを理解しておく必要があります。

ここでは、労働時間の定義や労働時間算出について気を付けるべきことを解説します。

1-1. 労働時間と勤務時間の違い

「労働時間」と「勤務時間」は同じ意味を持つ言葉であると考えている人は多いです。しかし、両者には明確な違いがあります。

「勤務時間」とは従業員の始業時間~終業時間までを指し、「労働時間」とは勤務時間から休憩時間を引いた時間のことを指します。
そのため、始業が10時、終業が18時で間に1時間の休憩がある企業の場合
勤務時間は10時~18時の8時間となりますが、
労働時間は勤務時間(8時間)から休憩時間(1時間)を引くため、7時間となります。

1-2. 労働時間は原則1分単位で計算する

労働時間は原則、1分単位で算出することが求められます。
実際に、労働基準法第24条の「賃金全額払いの原則」で1分ごとの給与支払いが義務付けられており、15分ごとや30分ごとの労働時間算出はこの原則に違反しています。

労働基準法24条に違反した場合は30万以下の罰金という刑事罰が設けられているため、
労働時間の計算には注意が必要です。

ただし、全ての労働時間を1分ごとに算出するとなると、人事担当者に多大な負担がかかることから時間外労働・休日労働・深夜労働の時間に関しては、簡易的な処理が認められています。具体的には、「1か月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げても良い」と定められています。

そのため、1か月の時間外労働が8時間20分だった場合は、20分を切り捨て8時間で割増賃金の計算が行われ、1か月の時間外労働が8時間50分だった場合は、50分を切り上げて9時間として割増賃金の計算が行われます。

1-3. 労働時間に応じて休憩時間を与える必要がある

労働時間の計算には休憩時間に関する理解も不可欠です。労働時間と同様に休憩時間にも規則が設けられています。労働基準法第34条で、労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない、と定められています。

また、始業前や終業後に休憩時間を与えることは認められていません。休憩時間は労働時間の途中で与えなければならないと定められています。

2. 労働時間の上限とは?

時計の針を引っ張る男

労働時間、残業時間の上限は労働基準法や36協定によって明確に定められています。労働時間の上限について理解することは正しく労働時間計算を行う上で非常に大切です。

ここでは、労働基準法や36協定によって定められた労働時間の上限について解説します。

2-1. 労働時間の上限を超える場合、36協定の締結が必要

そもそも、労働時間とは「所定労働時間」と「法定労働時間」に分けられます。所定労働時間とは各企業の就業規則により定められた労働時間のことをいいます。一方で、法定労働時間とは労働基準法によって定められた労働時間の上限のことです。

労働基準法により、法定労働時間は「1日8時間、週に40時間まで」と定められています。
各企業はこの法定労働時間以上に従業員に労働させる場合は、36協定を締結する必要があります。36協定を締結すると、法定労働時間を超えた労働、すなわち時間外労働が可能となります。ただし、36協定を結んだとしても時間外労働は「月45時間、年360時間まで」と定められています。

また、法定労働時間以降の労働は「時間外労働」とみなされ、割増賃金が発生するため注意が必要です。

2-2. 労働時間の上限を超えた場合、割増賃金の支払いが必要

上記で述べた通り、法定労働時間を超過した場合、割増賃金が発生します。割増賃金には時間外労働・深夜労働・休日労働の3種類があります。ここではそれぞれの種類や割増率について解説します。

▼時間外労働 
 時間外労働とは法定労働時間を超えた労働のことを指します。
 割増率は25%です。

▼深夜労働 
 午後10時から午前5時までの間の労働のことを指します。 
 割増率は25%です。

▼休日労働 
 法定休日における労働のことを指します。 
 割増率は35%です。

※休日には所定休日と法定休日があり、「法定休日」とは法律で付与が義務付けられた休日のことで、「所定休日」とは企業が独自で労働者に与える休日を指します。

2-3. 月平均労働時間の計算方法

上記で解説した割増賃金の計算は以下の計算式で行います。

1時間あたりの賃金×割増率×割増賃金の対象時間数

この式に登場する1時間あたりの賃金は『月給÷月平均所定労働時間』で算出します。

月平均所定労働時間とは、その名の通り、1か月あたりの平均所定労働時間のことです。
月平均所定労働時間を算出する理由としては、月によって営業日数は異なり、単月で計算してしまうと、毎月1時間あたりの賃金が変動してしまうことになります。こういった事態を防ぐために月平均所定労働時間を算出する必要があります。
月平均所定労働時間の算出方法は以下の通りです。

月平均所定労働時間=(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12か月

例えば、年間休日が125日、一日の所定労働時間が8時間の従業員の場合、下記の計算ができます。

月平均所定労働時間=(365日-125日)×8時間÷12か月=160時間

従業員の月給が20万円だとすると、
20万円(月給)÷160(月平均所定労働時間)=1,250円
となり、その従業員の1時間当たりの基礎賃金は1,250円であることが分かります。

このように、残業を含む労働時間の計算を従業員の人数分、正しくおこなわなければなりません。残業代を計算をするにあたって、法定内残業と法定外残業の違いや計算方法を正しく理解しておく必要があります。当サイトでは、残業の定義や詳しい残業代の計算方法についてわかりやすく解説した資料を無料配布しております。残業の定義を正しく理解したい方は、こちらでダウンロードしてお役立てください。

3. さまざまな勤務形態における労働時間の計算方法

ピンク色 電卓 メモ

ここでは、フレックスタイム制や変形労働時間制、みなし労働制といった勤務形態の場合の労働時間計算について解説します。

3-1. フレックスタイム制の労働時間計算

フレックスタイム制においては、始業と終業の時間を自由に決められるという特徴上、『1日8時間、週40時間』という通常の法定労働時間が適用されません。
その代わりに、『清算期間の暦日数÷7日×40時間』で算出された時間を法定労働時間として設定しています。

例えば、清算期間が1か月(31日)の場合、法定労働時間は下記の通り算出されます。

31日(清算期間1か月の歴日数)÷7日×40時間(1週間の法定労働時間)=177.1時間

フレックスタイム制を利用する従業員はこの法定労働時間のなかで、始業時刻と終業時刻を自由に決めることができます。この法定労働時間を超えた場合は割増賃金が発生し、下回った場合は不足時間分が給与から控除されます(不足時間は翌月へ繰り越すことも可能)。
そのため、法定労働時間が177.1時間、実労働時間が180時間、2.9時間が残業時間として計算します。この場合、1時間当たりの賃金が1,800円でかつ、その2.9時間が時間外労働だった場合、

1,800円(1時間あたりの賃金)×2.9時間(時間外労働分)=5,220円(残業代)

となり、この従業員の残業代は5,220円と算出されます。

3-2. 変形労働時間制の労働時間計算

変形労働時間制とは、時期ごとの業務量の違いに合わせて柔軟に労働時間を調整できる制度のことです。そのため、閑散期と繁忙期がはっきりと分かれている企業にとっては、総労働時間が短縮され、業務が偏ることで長時間発生する残業を削減・抑制することができます。変形労働時間制においては1日ごとに法定労働時間を決めるのではなく、1日の所定労働時間を自由に設定することができます。その代わり、週や月、年ごとに労働時間を設定します。変形労働時間制に関しては、所定労働時間が8時間未満なのか、8時間以上なのかで残業代計算が変わってきます。

  • 所定労働時間が8時間未満の場合、定時を超えて8時間に達するまでの時間は割増賃金は発生しないが、8時間を超えた場合は割増賃金ありの残業時間となります。
  • 所定労働時間が8時間以上の場合、所定労働時間を超えたところから割増賃金ありの残業時間となります。

そのため、仮に所定労働時間を9時間と設定した場合、8時間を超えた1時間は割増賃金が発生せず、9時間を超えた時点から割増賃金が発生します。

上記では、変形労働時間制における1日ごとの残業代の計算方法を解説しました。
下記では、変形労働時間制が適用される期間全体での残業代の計算方法を解説します。

変形労働時間制の法定労働時間は、上記のフレックスタイム制と同様に
『期間の暦日数÷7×40』で算出することが出来ます。ここで算出された法所定労働時間と日ごとで算出した残業時間の両方を実労働時間から差し引いたを超過した場合、その超過した分も、の時間を残業時間代とみなします。

3-3. みなし労働制の場合の労働時間計算

「みなし労働時間」とは、あらかじめ定められた労働時間を労働したとみなす制度のことです。みなし労働制は企画職や営業の外回りなど企業が具体的に従業員の労働時間を把握する事が難しい場合に非常に有効的です。

みなし時間労働制により、1日の労働時間が8時間と定められている場合、実労働時間が6時間であっても10時間であっても、8時間分の賃金が支払われます。みなし労働制において、みなし残業代が設定されている場合、定められた時間を超過した場合は時間外労働として賃金を支払う必要があります。

4. 労働時間の計算を効率化するツール

 

ここまで、労働時間に関する規則や労働時間の計算方法について紹介しました。
その内容を踏まえて、ここでは複雑な労働時間計算を効率化するツールについて解説します。

4-1. エクセル

マイクロソフト社の表計算ツール「Excel」を用いて労働時間管理を行う方法です。
実際に、労働時間計算に特化したテンプレートなども簡単に手に入れることが出来るので、
多くの企業で利用されています。Excelは労働時間計算だけでなく、給与計算にも使用することが出来るので非常に便利です。

ただ、Excelに情報を入力するのは基本的に手作業で入力を行うため、入力ミスなどのリスクもあります。

4-2. WEB上の計算ツール

WEB上で無料で利用できる計算ツールを用いて、労働時間計算を行うという方法です。こちらもExcel同様に労働時間計算だけでなく、給与計算にも使用することが出来ます。また、基本的に無料で利用できるため手軽に労働時間計算を効率化したいときに向いています。

ただ、Excelのように記録を残すという事が出来ないため、労働時間や給与に関する情報を別の媒体に記録する必要があります。また、Excel同様に手作業で入力を行うため、入力ミスが起こるリスクがあります。

4-3. 勤怠管理システム

勤怠管理システムを導入して、労働時間計算を行う方法です。勤怠管理システムは打刻・労働時間計算・記録を連動して行うことが出来るため、手作業による入力ミスの恐れがない事が魅力です。また、スマートフォンやICカードというように、打刻方法が多様なので、リモートワークなどの柔軟な働き方にも対応することが出来ます。

さらに、割増率の変更など法改正があった際に、自動で対応することが出来るため、人事担当者の業務を大幅に減らすことが出来ます。

5. 労働時間の計算方法を正しく把握し、1分単位の労働時間管理を!

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本記事では労働時間の定義や上限、様々な勤務形態における労働時間計算方法について解説しました。労働時間の計算は従業員の給与を正しく支払う上で必要になります。今回、解説した内容を踏まえて、従業員が安心して働ける労働環境づくりを心掛けましょう。

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