労働者の心身の健康を守るため、労働基準法ではさまざまなルールが設けられています。
企業が労働者と契約を結ぶ際は、労働基準法に則った雇用契約をおこなわなければなりません。
雇用契約に違反した場合はどんな罰則を受けるのか、そして実際に雇用契約違反となる例を紹介します。
起業したばかりなどの場合であっても雇用契約についてはきちんと確認し、違法行為をおこなわないよう注意してください。
雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。
当サイトでは、「自社の対応が適切か確認したい」という人事担当者様に向け、雇用契約の方法から、雇用契約についてよくある質問までをまとめた資料「雇用契約手続きマニュアル」を無料で配布しております。
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目次
1. 雇用契約が労働基準法に違反している場合の罰則
企業が提示する雇用契約の内容が労働基準法に違反していた場合、そして雇用契約に反する業務をさせた場合の罰則について解説します。
1-1. 労働基準法に違反した際の罰則
企業が労働者に提示する雇用契約が労働基準法に反している場合、労働基準法違反扱いになります。
労働基準監督署から指導があり、無視したり悪質だと判断されたりした場合、以下のような罰則が科せられるため、注意しましょう。
第117条:1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金
第118条:1年以下の懲役、または50万円以下の罰金
第119条:6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金
第120条:30万円以下の罰金
1-2. 労働者側から即時雇用契約を解除できる
提示した雇用契約の内容に反する業務を労働者に与えた場合、労働者には即時に雇用契約を解除する権利が発生します。新しい業務が発生する場合や人事異動などが発生する際には労働者と契約した労働条件に注意してください。
雇用形態別の労働条件などを改めてよく確認する必要があります。
1-3. 両罰規定の対象になる
雇用契約を結んだ労働者が労働基準法に反する行為をおこなった場合、その労働者だけでなく雇用契約を結んだ企業も罰則を受けます。これを両罰規定といいます。
企業は雇用契約を結んだ労働者を指示、管理できるものと考えられ、社員の行動を制限したり社員の行動に責任を持ったりすることも義務の一つです。
そのため、雇用契約を結んだ労働者が労働基準法違反に値する行動をした際はその責任を企業も取らなければなりません。
1-4. 助成金を受けられなくなる
厚生労働省には企業をサポートするためのさまざまな助成金制度があります。この助成金を受給できるのは労働基準法などの法律を正しく守っている企業のみです。
労働基準法などの法律に違反している企業は助成金を受けられなくなり、経営に支障が出る可能性もあります。
また、違法行為をおこなった場合、厚生労働省から企業名が発表されることもあります。社会的信用を落とすことにもつながります。
このように、雇用契約に関する法律を違反した場合の代償は大きいため、あらかじめ法律をよく理解して適切な雇用契約の手続きをすることが重要です。当サイトでは、雇用契約に関する適切な手続き方法や違法な手続きをまとめた資料を無料でお配りしています。自社の雇用契約に問題がないか確認したい方はこちらからダウンロードしてご活用ください。
2. 雇用契約を締結する際の義務
企業が労働者と雇用契約を締結する際の義務について解説します。
2-1. 労働者に労働条件を明示する
企業は労働者に対して労働条件を明示しなければなりません。違反した場合は30万円以下の罰金が発生します。
労働条件の明示は労働条件通知書でおこなわれますが、この書類には必ず記載しなければならない絶対的明示事項も多いです。
2-2. 労働条件通知書、就業規則を作成する
労働条件通知書と就業規則の作成が義務付けられています。
一方で、雇用契約を結ぶ際によく利用される雇用契約書には作成義務がありません。しかし、労働者がいつでも労働条件を確認できるようにし、トラブルを未然に防ぐためにも、雇用契約書も同時に作成した方が安心です。
関連記事:雇用契約書が持つ法的効力とは?労働条件通知書との違いを詳しく
関連記事:労働条件通知書とは?雇用契約書との違いやそれぞれの役目と必要な理由を解説
2-3. 労働者の義務も確認する
企業側だけでなく労働者にも発生する義務を確認してください。秘密保持義務や信用保持義務、兼業禁止義務などがあります。
企業によって労働者に発生する義務は変わります。業務内容からどんな義務を守ってもらう必要があるのかを考えておきましょう。
3. 雇用契約違反となる具体例を解説
実際に雇用契約違反となる具体例を解説します。
3-1. 国籍や性別などで労働者を差別する
外国人だから、女性だからなどの理由で労働条件を他の労働者と変えたり、立場が弱い労働者に対して厳しい労働条件を押し付けることは禁止されています。
違反した場合には6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰が科せられます。
3-2. 労働時間が法定労働時間を超過している
労働基準法では週に40時間、1日に8時間という法定労働時間の上限があります。
労働者と36協定を結ばずにこれ以上の時間労働させた場合は罰則の対象です。
6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が発生します。
3-3. 時間外労働に対する割増賃金を支払っていない
36協定を結んだ場合は規定の範囲内で時間外労働をさせられます。
ですがその際には時間外労働、深夜労働、休日労働に対してそれぞれ割増賃金を支払う義務が発生します。
割増賃金を支払わなかった場合は6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰が科せられます。
3-4. 産前・産後の労働者に休暇を与えない
妊娠中、出産後の労働者に対して休暇を与えない、残業を強要することは禁止されています。
これに反した場合は6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰が科せられます。
他にも、満1歳未満の子どもを持つ労働者は1日2回、30分間育児のための時間を請求する権利もあります。
3-5. 違約金や賠償金の支払いを求める
企業が従業員に対して違約金や賠償金の支払いを求めることは禁止されいます。
雇用契約に反する行動を労働者が取った場合に違約金、賠償金を請求したり、賃金から差し引くことも禁止です。
違反した場合は6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰が科せられます。
3-6. 予告なしの解雇
労働基準法では、企業が労働者を解雇する場合は1ヶ月前までには解雇予告をしなければならないという決まりがあります。
理由があって1ヶ月前に告知できなかった場合は解雇の日までの不足している日数分の賃金を支払わなければなりません。違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
4. 雇用契約の違反に関するトラブルを回避するために
雇用契約の違反に関するトラブルを回避するためにできることを解説します。
関連記事:雇用契約をトラブルなく結ぶ方法は?違法にならないための対応をわかりやすく解説
4-1. 雇用契約書を作成する
雇用契約書の作成は義務ではなく、労働条件通知書と就業規則を作成していれば、法律的に罰せられることはありません。
雇用契約書は労働者が企業の提示する労働条件に同意するために利用されることが多く、企業側と労働者が一部ずつ保管しておくケースが大半です。
労働者がいつでも労働条件を確認できるので、万が一労働条件に反する業務を与えられた場合にもすぐ問題点を確認できます。
4-2. 専門家に労働条件を確認してもらう
起業したばかりで労働条件について、雇用契約についての知識がない場合、労働者に対して法律違反の雇用条件を押しつけてしまう可能性もあります。
不安な場合は専門家に労働条件を確認してもらいましょう。この場合の専門家とは弁護士、社労士が一般的です。
5. トラブルを未然に防ぐため、雇用契約を違反しないように注意
労働者との雇用契約に違反した場合の罰則や具体例について紹介しました。
労働基準法を正しく理解し、適切な労働条件を提示しなければなりません。
また、契約後に契約違反となる業務を与えないように注意してください。
労働条件や雇用契約について不明な点がある場合はそのままにせず、弁護士など専門家に相談することが大切です。
雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。
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