企業には勤怠管理を行う義務があり、詳しいルールは法律によって定められています。
労働者と企業を守るために勤怠ルールを知って、管理ができる仕組みを作ることが大切です。管理方法は様々ですが自社の状況に合わせてた方法を知れるように、紹介していますので参考にしてください。
関連記事:勤怠とは?勤怠管理の目的や具体的な方法、注意点について解説
働き方改革が始まり、法改正によって労働時間の客観的な管理や年次有給休暇の管理など、勤怠管理により正確さが求められることとなりました。
しかし、働き方改革とひとことで言っても「何から進めていけばいいのかわからない…」「そもそも、法改正にきちんと対応できているか心配…」とお悩みの人事担当者様も多いのではないでしょうか。
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目次
1. 企業には勤怠管理の義務がある
企業には従業員の勤怠を管理する義務があると労働基準法で定められています。
まず最初に勤怠管理をする際に知っておくべき用語を紹介します。ルールを知って管理するには正しい意味を理解する必要がありますので参考にしてください。
1-1. 出勤退勤と出社退社の違い
出勤退勤は実際に業務を開始、終了すること、出社退社は労働者が会社へ着く、帰ることを指します。打刻をするタイミングは出勤と退勤を行う時です。常識的なことではありますが、この認識を従業員と統一しておかないと正しい勤怠管理ができなくなります。
1-2. 所定労働時間
所定労働時間は始業時刻から終業時刻までの時間から、休憩時間を差し引いた労働時間を指します。また、所定労働時間は後ほど紹介する、法定労働時間を超えることは原則できません。法定時間を超えて労働を行う場合は残業代を支払う義務があり、前もって36協定を結ぶ必要があります。
1-3. 勤怠管理の目的
勤怠管理の目的は過剰労働の早期発見や防止、従業員の健康維持、適正な賃金の支払いの3点です。近年労働状況の悪化でメンタルヘルスの不調や過労死、賃金未払いトラブルなどが多く発生しています。そのようなトラブルを回避して、従業員と企業を守る為にも勤怠管理をきっちりと行うことが重要です。
勤怠管理で把握しておくべき情報は出勤と欠勤の状況、休暇取得状況、労働時間の管理です。それらを企業と従業員双方が把握し、取り扱いについて理解しておける仕組みを作っておきましょう。
1-4. 勤怠管理が必要な事業場
勤怠管理は労働基準法のうち労働時間に関する規定が適用されている事業場全てが対象になります。一部農業や林業など天候や自然状況によって仕事が左右されるものを除いて、ほぼ全ての事業場が対象です。また50人以上の従業員を雇っている場合は産業医を選任する必要があるので注意しましょう。
1-5. 勤怠管理が必要な労働者
賃金を支払う全ての従業員に対して勤怠管理が必要です。先ほど紹介した過剰労働の防止や心身の健康維持も全ての従業員が対象で、管理監督者や役員なども含まれています。労働者の勤怠管理は管理者の義務になりますので、きちんと勤怠管理を行いましょう。
労働基準法では41条に定められる人が対象となり、みなし労働時間制が適用されている労働者も含めて対象となります。2019年に改正された労働安全衛生法で「事業者は、労働者の労働時間状況を把握しなければならない」という条文が追加されたので、労働者全員の労働時間の把握が義務です。
2. 勤怠管理の法律上のルール
勤怠管理を行う上で必ず知っておく必要のあるルールについて解説します。労働基準法に則った勤怠管理を行う為に覚えておく必要がありますので参考にしてください。
2-1. 労働時間について
労働時間は1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させないことが原則です。[注1]
その時間を超える場合は残業代が発生します。また、6時間を超える労働時間には45分以上、8時間を超える労働時間に対しては1時間以上の休憩が必要です。少なくとも週に1回の休み、4週間を通じて4日以上の休日を与える必要があります。
36協定と呼ばれる「時間外労働協定」を締結することで時間外と休日労働について定め、時間外労働に対する賃金を払うことで、時間外労働が必要な場合に労働者に働いてもらうことが可能になります。
関連記事:勤怠管理をする上での休憩時間の決まりとは?トラブル例や注意点を解説
2-2. 労働時間の把握方法について
働き方改革関連法で労働時間の把握方法について「客観的な記録による把握」が条件とされています。具体的には後ほど詳しく解説しますが、タイムカードや勤怠システムの活用などが客観的に記録できる方法です。どのように勤怠状況を管理するかは事業者に委任されていますが、管理できる仕組みを作ることが義務付けられています。
2-3. 年間休日総数について
労働基準法では年間休日数の下限が105日とされています。[注2]また、この日数を下回っている場合でも労働基準法を違反しているとは限りませんが、労働基準法第35条にある週に1回、4週間に4回以上の休日は必ず必要です。
年間休日の120日と言われており、その日数は完全週休2日、祝日と年末が休みの場合に等しい休日数となります。休日数は業種によって様々ですが労働時間と休日を把握しておきましょう。
2-4.年次有給休暇の取得義務について
2019年4月に発足された働き方改革法案に伴い、年5日の年次休暇を取得させる義務があるとされました。対象となる労働者は10日以上の有給休暇が付与された者となっており、正社員だけではなくパートやアルバイトも対象です。
有給休暇は出勤率や勤続年数によって違いがあるので、有給休暇についても把握しておきましょう。この法案に違反した場合は、違反者1人に対して最大30万円の罰金が課せられます。
2-5. 残業が60時間以上になった場合の賃金について
残業が60時間を超えた場合の賃金は、50%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。[注3]また、割増賃金を25%にして、有給の代替え休暇を与えることも可能です。この法案は中小企業については2023年3月まで猶予期間が設けられています。
残御璽間は45時間を超えると過労死の可能性が高まるとされているので、60時間の残業は労働者にとって負担となり事業者にとってもリスクです。残業の平均は25時間程度とされているので、残業時間が多くならないように業務と勤怠の管理を行いましょう。
関連記事:勤怠計算を正しくする方法は?15分単位の計算の違法性も解説
3. 勤怠ルールに違反するとどうなるのか?
勤怠ルールに違反した場合、労働関連法に則った罰則があります。具体的にどのような罰則があるのかを解説しますので参考にしてください。
3-1. 監督署の是正勧告や指導
まず最初に労働基準法に違反している疑いがある場合、労働基準監査官による調査が始まります。実際に事業場に臨検し、必要書類を集めて事業者と労働者からの聞き取り調査をするのが監査官の役割です。その中で労働基準法違反が見つかった場合、いきなり刑事罰が罰せられるのではなくほとんどの場合は是正勧告が行われます。
是正勧告を受けて改善すれば問題ありませんが、改善が見られない場合逮捕や起訴などの刑事手続に移行します。是正勧告の段階では法的拘束はありませんので、会社の評判に直接影響はほとんどありません。
3-2. 実刑の場合は?
労働基準法に違反した場合の罰則にはいくつかのルールがありますので表にして紹介します。
罰則内容 |
該当の法律 |
1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金 |
強制労働の禁止:労働基準法5条 |
1年以下の懲役、または50万円以下の罰金 |
労働者からの搾取:労働基準法6条 最低年齢未満の児童を労働させる行為:労働基準法第56条1項 坑内労働の禁止・制限違反:労働基準法63条、64条の2 |
6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金 |
解雇禁止中の解雇:労働基準法第19条 女性労働者を男性労働者い比べて賃金面で差別する行為:労働基準法第4条 労働者に違反な時間外労働をさせる行為:労働基準法第32条、第36条第6項 他多数あり |
30万円以下の罰金 |
休業手当の不支給:労働基準法26条 法廷の上限を超えた制裁としての減給:労働基準法第91条 労働者に対して労働条件を明示しない行為:労働基準法第15条第1項 他多数あり |
基本的には上記の4段階に分けられた刑事罰が与えられます。
3-3. 社会的評価の低下も考えられる
近年労働関連法を違反すると、メディアに取り上げられるほど話題性の高いものになります。また、SNSなどの情報拡散も考えられるので、例えば役員や管理者から逮捕者が出た場合、会社の評判が下がる可能性が高いといえます。
新規雇用や業績にも影響が出ることもあるので、勤怠ルールを守れるようにしっかりと管理を行いましょう。わからないことはそのままにせず、厚生労働省の窓口などを活用することがおすすめです。
ここまで解説してきました通り、法律に沿った勤怠管理をするには、出退勤の管理だけでなく、残業時間や有給休暇の基準を満たしているかなど、詳細なルールを守る必要があります。また、働き方改革による法改正への認識があいまいであると、知らず知らずのうちに、罰金の発生や従業員とのトラブルに発展するリスクもあるため、不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当サイトでは、働き方改革に沿った勤怠管理についてわかりやすく解説した資料を無料で配布しております。特に中小企業が抱えがちな問題について、実際の解決事例も交えながら解説しているので、実際の業務のなかで不安になった際に、ご参考にしていただけます。
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4. 勤怠管理を行う4つの方法
勤怠管理を行うための4つの方法を紹介します。それぞれのメリット、デメリットも解説しますので参考にしてください。
4-1. 手書きでの管理
10人に満たないような小規模グループであれば手書きでの管理も可能です。メリットは勤務状況の可視化が容易で勤務状況を把握しやすいこと、導入コストがかからないという点です。
デメリットは集計に時間がかかる、不正が簡単にできてしまうという点です。締日には給与計算の為に労働者の勤怠を集計しますが、全て自分で計算する必要があります。また、手書きである以上記載する時間をずらしてしまえば、不正ができるので労働者が1人でいる時間を作らないなど対策が必要です。
4-2. タイムカードを使用する
タイムレコーダーを使用して出退勤の時刻を記録するタイムカード形式の勤怠管理のメリットは、導入コストが安くて誰でも簡単に利用できるという点です。導入に必要なコストはタイムレコーダーとタイムカードを人数分、ランニングコストも用紙代とインク代と電気代だけなので、小規模な会社であれば問題なく運営できます。
デメリットは3年分のカードは保管が必須なので、保管場所の確保が必要です。また、残業時間や有給日数の管理には適していないので、別の管理方法を併用する必要があります。
4-3. エクセルなどで自己申告での管理
エクセルが使える職場であれば、勤怠管理をエクセルで行うこともできます。メリットは導入コストがかからないこと、給与計算が容易にできるという点です。勤務日数などの状況把握も専用シートを使えば自動計算で、すぐに把握することができます。
デメリットは労働者による入力漏れが発生しやすいという点です。こまめに入力漏れがないか管理者がチェックを行い、勤怠状況を把握する必要があります。
4-4. 勤怠管理システムの活用
インターネットを活用した勤怠システムを利用している企業が多く、その種類は様々です。メリットは勤怠管理の手間を減らし効率化が図れることや集計ミスがないこと、不正な打刻ができないという点です。
デメリットは導入コストがかかる点と労働者に対する使い方のレクチャーが必要という点です。とはいえ残業や有給日数の管理なども一括して行えるので、一度システムを導入すれば勤怠管理の効率化ができる方法です。
5. 勤怠管理を行う際は関連した法律を理解しておくことが大切
勤怠管理には関連法律があり、その内容に則った管理が必要です。労働者の勤怠管理は事業者の義務なので、管理ができる仕組みを作ることが大切です。
勤怠ルールに違反して、改善が見られない場合は刑事罰を受けることもあるので、自社の状況に合わせた管理方法を選びましょう。コストが問題なければ勤怠管理システムを導入することがおすすめです。労働者と企業の双方を守る為にも勤怠ルールをきっちりと守りましょう。
[注1]労働時間・休日|厚生労働省
[注2]労働基準法|e-Gov法令検索
[注3]月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50% 以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません|厚生労働省