近年、働き方改革の影響もあり、正確な勤怠管理が求められています。従来のタイムカードでの管理では、正確な残業時間の把握が難しいため、改めて管理方法を考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そもそも、「なぜ勤怠管理をするのか」「勤怠管理を怠った場合のデメリットは何か」といった基礎的な内容を中心に、担当者が具体的に何を管理しなければならないのかご紹介いたします。
勤怠管理を企業がおこなう意味や目的、勤怠管理が必要な理由、そして最新ツールを活用した実際の事例を通して、勤怠管理とは何か具体的なイメージを付ける際の参考にしていただければ幸いです。
働き方改革が始まり、法改正によって労働時間の客観的な管理や年次有給休暇の管理など、勤怠管理により正確さが求められることとなりました。
しかし、働き方改革とひとことで言っても「何から進めていけばいいのかわからない…」「そもそも、法改正にきちんと対応できているか心配…」とお悩みの人事担当者様も多いのではないでしょうか。
そのような方に向け、働き方改革の内容とその対応方法をまとめた資料を無料で配布しておりますので、法律にあった勤怠管理ができているか確認したい方は、以下のボタンから「中小企業必見!働き方改革に対応した勤怠管理対策」のダウンロードページをご覧ください。
1. 勤怠管理とは

勤怠管理(読み方:キンタイカンリ)とは、従業員の出退勤、休暇、欠勤などの状況を企業が把握し、適切な勤務時間を守れているかどうかを管理することを言います。
そもそも勤怠は「仕事に励むことと怠けること。また、出勤と欠勤。勤惰(読み方:キンダ)。」(weblio辞書より引用)と定義されていますが、従業員が働きすぎで健康状態が悪くならないようにすることを目的に、企業として従業員の労働時間と労働時間外を把握する必要がある、つまり「勤怠を管理する必要がある」と法律で定まっています。
しかし、企業によって勤怠の管理ルールや管理方法は異なり、自己申告制で勤怠管理をおこなっている企業や、タイムカードを用いて勤務時間を記録している企業、エクセルで管理をしている企業など、さまざまです。
また、近年では勤怠管理システムを導入している企業も増えており、モバイルデバイス、ICカード、指紋認証、静脈認証、GPSなどを利用して、簡単にかつ正確なリアルタイムでの勤怠管理ができるようになっています。
企業における経営資源として「ヒト・モノ・カネ・情報」がありますが、その中でも企業にとって一番大事な資源である「ヒト」は、同時に多大な費用もかかる固定費となります。
そのような中で、従業員の勤怠を把握することは、従業員の就業状況から適切な給与を社員に支払うために必要なものという意味も持ち、また、企業のコンプライアンスの観点から従業員の労働時間の確認をするためにも対応が不可欠なものとなっています。
業界・業態、従業員形態によっても勤怠管理における悩みは異なる部分が大きいので、自社の課題を適切に把握して、対処していきましょう。
※参考:勤怠管理でお悩みの方へ|業界別の勤怠の悩みとオススメのサービス
2. 勤怠を管理する具体的な方法

それでは、ここから勤怠を管理する具体的な方法について
- 誰が勤怠を管理する対象となるか
- 企業として何を管理しなければならないのか
- 管理を怠るとどのようなリスクがあるのか
についてご紹介します。
2-1. 勤怠管理の対象者は「雇用契約を結んでいる従業員すべて」
勤怠は、正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・アルバイト・パートスタッフなど、その企業で雇用契約を結んでいる従業員全員が対象になります。
管理方法のベースとなるのは、まずは国によって定められた労働基準法の内容です。これに、さらに企業ごとの就業規則が加わります。
職種により雇用契約の内容が異なる場合は、その勤務日数・出勤・退勤時間などそれぞれの内容に合わせた管理が求められます。
職務怠慢に値する従業員の存在は、勤務している他の従業員にも悪影響を及ぼしかねないため、厳格に対処することが必要です。
※参考:労働基準法をもっと詳しく!勤怠管理に関する法的ポイントを解説
2-2. 勤怠管理において把握しなければいけない6項目
一般的に勤怠管理において把握しなければいけない項目は、以下の6つになります。
- 出勤・退勤時間
- 勤務時間
- 欠勤
- 残業時間
- 有給休暇
- 振休、代休
これらの管理を正しくおこなっていない会社は、従業員の労働時間を正確に把握することができず、いつ休暇を取っているのか、残業はどのくらいおこなっているのかなど、正確な情報を知ることができません。
2-3. 正しく勤怠管理がおこなわれていないと生じる3つのリスク
上記の6つの項目についての管理を怠ると、その結果として、次の3つのリスクを生むことにつながってしまう可能性がありますので、注意するようにしましょう。
2-3-1. 残業代などによるトラブルが発生する可能性
正確な残業時間の管理ができないため、残業代の未払いが起こり、後々未払い残業代を求めたトラブルが発生する可能性があります。
事例として、退職後に過去2年間に遡っての残業代を請求されるケースが実際にありました。
正しく勤務時間を把握できていなかったために、従業員の言い分を否定できる証拠が無く、結果、遅延利息を含めた2年分の残業代を請求されてしまうということにつながってしまったのです。
このような状況に陥らないようにするためには、勤務時間を適切に管理し、かつデータとして保存しておくことが必要となります。
『残業管理』をもっと詳しく! ▶【2021年法改正】残業管理の法律と効率的な管理方法徹底解説ガイド
2-3-2. 過重労働状態に陥っている従業員に気付くことができない
勤怠管理の甘さは、従業員の働きすぎによる、過労死やうつ病といった取り返しのつかない事態を招いてしまうことにつながります。
労働契約法には「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」という、安全配慮義務と呼ばれる義務があります。
違反した場合には、多額の賠償請求が課されてしまう可能性があると同時に、万が一大きなニュースになった場合、企業イメージの失墜は免れることができないでしょう。
2-3-3. 法律による罰則を受ける可能性がある
2019年4月、労働基準法の改正により年5日の有給休暇の取得が義務化され、これを怠った場合は、違反者一人に対して30万円の罰金うぃ科せられる場合があります。
対象は、有給休暇が10日以上付与される労働者で、正社員だけではなくアルバイトやパートも含まれます。
そのため、企業として従業員の年次有給休暇管理表を作成し、しっかりと管理することも必です。
このように、勤怠管理を正しくおこなうことでリスクを回避し、社員の就業状況や勤務態度を把握することによって、その後の給与の支払いから従業員の適切な労働環境の確保まで考えることは、企業評価にまで影響する重要な項目の1つです。
最近では企業法令(コンプライアンス)の関連からも企業における正確な勤怠管理の重要性について話されるケースも多くなっています。
このように、年々勤怠管理の重要性が高まってきており、勤怠管理の担当者は正しい知識を持って適切な対応を取ることが求められています。
当サイトでは、本章でも触れた働き方改革などの法改正によって、どのような勤怠管理が必要になったかをまとめた資料を無料で配布しております。
法改正の内容や勤怠管理の方法で不安な点があるご担当者様は、こちらから「働き方改革に対応した勤怠管理対策BOOK」をダウンロードしてご確認ください。
『労働時間上限と罰則』をもっと詳しく! ▶労働時間の上限総まとめBOOK|労働時間の定義から違反した場合の罰則まで解説!
3. 勤怠管理にシステムを導入するメリット

ここまで、勤怠を管理する上での方法についてご紹介してきました。
以上のことからもわかるように、従業員の勤怠を正確に管理するためには、勤怠管理システムの導入を検討することが最も簡単です。
ただし、従業員数が少ない、費用を掛けることができない、といった企業ごとの状況もあるかと思います。これらも考慮した上で、各企業ごとに最適な管理方法を模索する必要があるでしょう。
ここでは、勤怠管理システムを導入するメリットについてご紹介します。
【勤怠管理システムのメリット】
- 従業員の勤務形態に合わせて最適な打刻方法を選択でき、また打刻漏れや不正打刻の防止にもつながる。
- 勤怠データの集計作業が大幅に削減できる
- 人件費をリアルタイムで把握でき、残業時間や休日出勤の割増手当などの給与計算も効率化できる
- クラウド型の場合は、勤怠管理システムが労働法改正に合わせてアップデートされるため、法改正への対応が容易にできる
- アラート機能により、従業員の勤務超過や打刻忘れなどを未然に防ぐことができる
- 従業員のデータを活用した人事戦略や人事施策を打つことができる
- バックオフィス業務の効率化、ペーパーレス化などによるコストの削減が見込める
メリット01|多様な打刻方法
従業員のさまざまな働き方に合わせられるように、勤怠管理には多様な打刻方法があります。
【多様な打刻方法】
パソコン:出退勤時に自身のパソコンで打刻することができます。従来のタイムカード打刻のように、タイムカード機の前に並ばずに、打刻をおこなうことができます。
タブレット:グループで1台のタブレット端末にて打刻することができます。タイムカード機のように、置く場所が縛られないので、建設現場などにも設置することができます。
スマホ:手持ちのスマホから打刻することができます。直行直帰が多い営業の方は、直帰申請を出さずにすむので、工数削減にもつながります。
ICカード:勤怠管理でもっとも普及しているICカードでの打刻です。タイムカード機と違い、かざすだけでいいので、並ぶ必要がありません。
チャットアプリ:勤怠管理システムの中には、チャットワークやSlackなどのチャットアプリと連携しているものもあります。
GPS:事前に登録している範囲内でしか打刻することができないように設定することができます。GPS打刻により、不正打刻を防ぐことができます。
顔認証:端末のカメラで顔を認証することで打刻することができます。顔のデータを溜めて、モチベーションを管理することもできます。
メリット02|勤怠データを集計が大幅に削減できる
勤怠データを集計するには、まず勤怠データを各事業所から集めて、その勤怠データを集計する必要があります。
複数の事業所があると、月末に各事業所から勤怠データを集めなければならず、その作業だけで、一日はかかります。
また、勤怠データを集め終わると、集めたデータをエクセルに入力する必要があります。そのため、勤怠データを集めて、集計が完了するまでに1週間かかる人事担当者も少なくありません。
勤怠管理システムを導入すると、これらの作業がすべて自動で行われるようになるため、大幅な工数削減になります。
メリット03|リアルタイムの勤怠データを把握することができる
先ほどお伝えした通り、従業員の勤怠データは自動で集計されます。そのため、従業員の勤怠情報をリアルタイムでの管理が可能です。
リアルタイムで勤怠データを確認できるので、従業員の残業時間の上限に近づけば、過度な負荷をかけないために、残業時間を調整することができます。過度な負担をかけないことは、生産性の向上と離職防止につながります。
また、各従業員に残っている有給休暇の日数もすぐにわかります。
メリット04|労働法改正にも対応できる
法改正が実施されると、企業の労働条件を変更しなければいけません。そして、その労働条件に合わせて勤怠の管理も変更しなければいけません。
勤怠管理システムであれば、設定から条件を変更するだけで対応することが可能です。また、その法改正に合わせたシステム変更のサポートもおこなってくれるため、法改正に対応できず、罰則の対象になるということもありません。
『労働基準法改正』についてもっと詳しく
▶︎労働基準法総まとめBOOK|法改正から基本的な内容まで分かりやすく解説!
メリット05|アラート機能によって、従業員の打刻忘れなどの未然防止
勤怠管理システムには、アラート機能が実装されています。従業員が打刻をおこなうのを忘れていると、従業員にアラートの通知が届きます。これにより、管理者は月末の確認作業が減り、工数が削減されます。
また、申請書を承認してもらうときに、承認者が承認を忘れていると、アラートの通知が届きます。これにより、承認までの時間が短くなり、スムーズに作業をおこなうことができます。
メリット06|人事戦略への勤怠データの活用
集めた勤怠データは人事戦略にも活用できます。たとえば、従業員の平均残業時間や有給休暇消化率は採用活動に活用できます。
平均残業時間や有給休暇率を正確に把握していると、求職者からの質問にいつでも答えられますし、求職者に従業員を大切に思っている企業だいう印象を与えることができるでしょう。
メリット07|業務効率化やペーパレスによるコスト削減
型勤怠管理システムを導入すると、従来の勤怠管理業務を効率化することができます。管理者だけではなく、申請書の承認者や従業員の工数削減にもなります。
また、今まで必要だった残業申請書などの申請もネット上でおこなうことができます。今まではプリントアウトして、それに記入してと紙を使っていましたが、ペーパーレスで申請書を管理することができます。
※参考:クラウド型勤怠管理システムとは?導入メリット・選定のポイント
メリット08|外国人労働者の勤怠管理も英語でできる
昨今では、外国人労働者を多く雇い入れる企業も増えてきました。
ここで、最初の壁になるのはやはり「言語の壁」です。
日常会話は不自由なくできたとしても、用語が文字で並んだときに外国人労働者の方に混乱を生じてしまうことは起こり得ます。
しかし、勤怠管理システムの多くは言語設定ができるため、英語しか話せない従業員がいたとしても円滑に勤怠管理をおこなうことができます。
中には在留資格・期限のアラート機能がある勤怠システムも存在しますので、自社の従業員形態に合わせたシステム導入をしっかり検討しましょう。
4. 実際の企業課題を勤怠管理システムの活用で解決した事例

ここでは、勤怠管理システムの活用例として、勤怠管理システムの簡単な利用イメージを『ジンジャー勤怠』を用いてご紹介させていただきます。
CASE1.正確な勤怠管理ができなかったが、システム導入により一元管理が可能に|有名スタートアップIT企業
課題
会社が立ち上がって間もないタイミングだったため、勤怠管理の制度もあいまいになっていました。従業員は労働時間を固定で計算するみなし労働時間制を採用、アルバイトはExcelで自己申告するというスタイルをとっていたため、正確な勤怠管理ができていませんでした。
勤怠管理システムで解決できること
まず、勤怠管理で必須なのは、従業員の出退勤の打刻です。勤怠管理システムを導入することにより、PC、ICカードを使用するスタンダードな打刻はもちろんのこと、タブレット・スマホを利用した打刻、GPS、Bluetooth、チャットアプリでの打刻など、就業環境に合わせて簡単に打刻することができます。

さらに打刻した勤怠データは一覧画面で確認することができ、誰がいつ出勤・退勤したのか、出勤人数、残業時間、勤怠時間までもがリアルタイムで管理することができます。それにより、正確な勤怠管理が可能になるだけでなく、さまざまな雇用形態も一元で管理することができます。

CASE2.Excelでおこなっていた勤怠管理の工数が大幅削減!|大手飲食店
課題
もともと勤怠管理をExcelでおこなっていましたが、店舗数が増えるに伴い勤怠データの集計にかかる工数も比例して増加してしまうというジレンマを抱えていました。特に店舗間移動があるスタッフの勤務時間を集計するために各店舗への確認を取る作業が大変で、毎月勤怠を確定させるまでに大変な工数がかかっていました。
勤怠管理システムで解決できること
どこの所属のどの従業員が、どのくらい出勤して、どのくらいの勤務時間働いているかが、予実とともに一元で管理することが可能です。さらに有給の残日数や、振替日数、代休日数の把握も簡単におこなうことができます。
また、シフトを作成に関しても、操作のしやすさを重視した管理画面で誰でも簡単におこなえます。従業員からの希望シフトも1クリックで集められ、効率的なシフト作成が可能です。

さらに、従業員個別の詳細のデータを確認することもでき、日ごとの勤務状況の把握も容易におこなうことができます。CSVにして出力することもできるため、紙ベースでの連携も可能です。

『勤怠管理システムでシフト管理』をもっと詳しく! ▶はじめての勤怠管理★ジンジャー勤怠 機能紹介シリーズ<シフト管理機能>
CASE3.離職しそうな従業員を事前に把握できるようになり、離職率低下につながった|広告代理店
課題
退職者の割合をいかに減らしていくかが、会社の課題としてあり、そのためのリテンション施策を考えていましたが、退職リスクのある従業員をどう割り出せばいいのか、大きな悩みとなっていました。
勤怠管理システムで解決できること
従業員の勤怠管理データから個別の傾向値を導き出し、エンゲージメントをAIが分析します。モチベーションが下降傾向にある従業員をいち早く察知、人事担当者へアラートを出すことができます。これにより、退職などを未然に防ぐリテンション対策を効果的に実施できるようになり、離職率の低下へとつなげ、人事戦略・組織力強化を実現することができます。

5. まとめ
いかがでしたでしょうか。
勤怠管理をしっかりとおこなうことは、自社の従業員や自社そのものを守ることにつながります。そして確実にかつ従業員、管理者双方にとって効率的に勤怠管理をおこないたいと考えている人事の方も少なくないのではないでしょうか。
勤怠管理システムを導入・活用することで、勤怠情報がリアルタイムで一元管理でき、残業状況や人件費の算出が容易にできます。また給与システムとの連携も可能で、「月末・月初に勤怠データを集計して給与計算をおこなうことに手間がかかる」といった悩みも解消されます。
現在、国内でも勤怠管理システムは数えきれないほど存在します。
中には、無料で始められるものや機能別で業界に特化したものなど、さまざまな勤怠管理システムが登場してきました。
勤怠管理にお悩みの人事担当者の方は、以下の記事なども参考にしながら導入をご検討されてみてはいかがでしょうか。
※参考:国内ほぼ全ての勤怠管理システムを網羅!料金・機能・メリット徹底比較|2022年最新版