2019年4月から労働基準法の改正により、年10日間以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、年5日の有給休暇を取得させることが義務付けられました。
そのため、正社員だけではなく、パートやアルバイトの従業員に対しても、有給休暇の付与日数や取得日数を計算する必要が出てきています。
今回は、有給休暇の付与日数の計算方法や付与に関するルールについて、図を用いてわかりやすく解説します。
「自社の年次有給休暇の付与や管理は正しく行われているのか確認したい」という方に向け、当サイトでは有給休暇の付与のタイミングから義務化、基準日の変更や効率的な管理方法まで年次有給休暇の法律について包括的にまとめた資料を無料で配布しております。
「自社の有休管理が法律的に問題ないか確認したい」「有給管理をもっと楽にしたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
【社労士監修】HR関連法改正トレンドBOOK 2024年版
2023年は一部企業を対象に人的資本開示が義務化されたほか、HR関連での法改正に動きが見られました。
2024年では新たな制度の適用や既存のルールの変更・拡大がおこなわれます。
人事担当者として知っておきたいHR関連の法改正に関する情報ですが、その範囲は幅広く、忙しい業務の中でなかなか網羅的に把握することは難しいのではないでしょうか。
- 忙しい中でも要点をまとめて情報収集をしたい
- 社労士が監修した正確な情報を知りたい
- HR関連の法改正を把握しておきたい
という方はぜひご確認ください!
1. 有給休暇の付与日数の基本
有給休暇は雇用形態に関係なく、要件を満たすすべての従業員に付与しなくてはなりません。そのためには、有給休暇の付与日数について正しく理解しておく必要があります。
ここでは、付与日数や付与日など、有給休暇の基本を解説します。
1-1. 有給休暇の付与日数は?
まずは、正社員の場合とパート・アルバイトの場合の有給休暇付与日数の違いを【図解】で確認しましょう。
1-1-1. 正社員の場合
正社員の年次有給休暇日数は、上図の通りです。
繰り返しになりますが、6か月以上継続勤務し、全労働日の8割以上の出勤がある方に付与されます。
1-1-2. パート・アルバイトの場合
パート・アルバイトの場合は、週所定労働日数や週所定労働時間によって年次有給休暇の付与日数が細かく分かれるので、注意が必要です。
<1>週所定労働日数が5日の場合
週所定労働日数が5日以上、週所定労働時間が30時間以上、年間217日以上のいずれかに該当して出勤しているパート、アルバイトには、正社員と同様の年次有給休暇日数を付与する必要があります。
週の所定労働時間が30時間未満であっても、週所定労働日数が5日の場合は、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で通常の労働者と同じ年次有給休暇が付与されるということです。
<2>週所定労働日数が4日の場合
週所定労働日数が4日で、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合は、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で7日間の有給休暇が付与されます。
それ以降は1年経過するごとに、8日・9日・10日・12日・13日、6年6カ月経過すると、15日間付与されます。
<3>週所定労働日数が3日の場合
週所定労働日数が3日で、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合は、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で5日間の有給休暇が付与されます。
それ以降は1年経過するごとに、6日・6日・8日・9日・10日、6年と6ヶ月経過すると、11日間付与されます。
<4>週所定労働日数が2日の場合
週所定労働日数が2日で、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合は、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で3日間の有給休暇が付与されます。
それ以降は1年経過するごとに、4日・4日・5日・6日・6日が毎年付与され、6年と6ヶ月経過すると、7日間付与されます。
<5>週所定労働日数が1日の場合
週所定労働日数が1日で、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合は、継続勤務年数が6ヶ月になった時点で1日の有給休暇が付与されます。
それ以降は1年経過するごとに、2日・2日・2日・3日・3日、6年と6ヶ月経過すると、3日間付与されます。
1-2. 有給休暇付与の2つの要件とは
年次有給休暇は労働者に認められた権利であり、企業側は労働者に年次有給休暇を付与しなければなりません。
年次有給休暇が付与される要件は、以下の2つです。
- 6カ月以上継続して働いている
- 全労働日の8割以上で出勤している
有期雇用労働者(アルバイト、パート、派遣社員など)のような短期間の雇用契約を結んでいる方の場合でも、契約更新を繰り返して6カ月以上働いている方であれば、上記の条件を満たす可能性があります。
この2つの条件を満たし、所定の労働時間が週30時間以上または所定労働日数が週5日のフルタイム契約の場合であれば、正社員と同様の10日分の有給休暇が付与されます。
1-3. 有給休暇の最初の付与日は半年後
上図の通り、有給休暇の最初の付与日は入社して半年後です。有給休暇の権利が発生した日を「基準日」と呼びます。
その後は、1年ごとの基準日に有給休暇が発生します。入社日が4月1日の従業員の場合、最初に有給休暇が付与されるのは10月1日で、その後は毎年10月1日に付与される仕組みです。
有給休暇の付与日数は雇用形態や出勤率によって変わりますが、付与日はすべての従業員に共通するルールです。そのため、従業員に不利益にならなければ、企業の判断で基準日を統一することも可能です。
具体例を2つ紹介します。
- 前倒しで付与する
- 全従業員の基準日を統一する
通常なら入社半年後に付与される有給を、入社日に前倒しで付与したり、全従業員の2回目以降の付与日を4月1日に統一したりしても法律的に問題ありません。
企業の都合で付与日をある程度統一すると事務処理の軽減につながります。ただし、企業独自のルールを設ける場合は、就業規則に明記する必要があるので注意が必要です。
ここまで、有給休暇の付与日数・要件・付与日について解説いたしましたが、企業により有給休暇付与のルールが異なることも多く、本当に正しく付与できているのか不安に思われる方もいらっしゃると思います。
当サイトでは、法律に則った有給休暇付与について解説した資料を無料で配布しています。勤続日数と所定労働日数に応じた有給付与日数をすぐに確認できるだけでなく、管理方法やよくある疑問にもお答えしておりますので、自社の有給付与ルールにおいて法律的に問題があるかどうか気になる方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
関連記事:アルバイト・パートにも必要な有給休暇|日数・賃金の計算方法
1-4. 有給休暇の付与日数は法律で定められている
繰り返しになりますが、企業は従業員に対し、有給休暇を付与する義務を負います。このことは法律で定められています。
業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法第39条)。
引用元:リーフレットシリーズ労基法39条 |
有給休暇について定める法律は労働基準法第39条です。第1項から第10項までに付与日数や要件などについて規定しています。
また、半日単位・時間単位での付与のように、企業が決定権を持つ特殊なケースについての対応方法なども記載されています。従業員の有給休暇を管理する担当者は、労働基準法第39条について理解しておく必要があるでしょう。
<労働基準法第39条> https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049#212 |
関連記事:有給休暇の基本的なところや発生要件・計算方法を解説
1-5. 有給休暇の平均取得率は約58%
有給休暇を付与するにあたり、取得率が気になるという声も少なくありません。
厚生労働省によると、令和3年の調査では有給休暇取得率は58.3%で、昭和59年の調査以降過去最高という結果になっています。なお、従業員1人にあたりの平均付与日数は17.6日、このうち従業員が取得した有給休暇の日数は10.3日です。
参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」 |
この結果を見て、どのように感じるかは自社の取得率によって変わってくるでしょう。平均取得率が高いと感じる場合は、自社の有給休暇取得率が低い可能性があります。また、低いと感じる場合でも、より取得率を高める体制づくりが必要なケースもあるでしょう。
平均取得率はあくまでも参考であり、企業には、全従業員が希望通りに有給休暇を取得できる体制づくりが求められています。
2. 有給休暇付与日数の正しい計算方法
先述の通り、有給休暇付与には2つの要件があります。そのうちの1つが「全労働日における出勤率が8割以上」です。
ここでは、出勤率の計算方法や注意点を解説します。
2-1. 有給休暇付与日数に必要な「出勤率」の計算式
出勤率の計算式は以下の通りです。
出勤日÷全労働日×100(%) |
出勤日とは、従業員が出勤した日のことです。一方、全労働日とは、従業員に労働義務を課している日です。
ただ、事務処理をするにあたっては、有給休暇の付与条件を満たしているかを判断する「8割の出勤日数」を求めたほうが簡単です。この計算式は以下の通りです。
全労働日×80(%) |
有給休暇の付与条件を満たす出勤日数を求めるためには、まず、全労働日を調べます。算定期間内に年間休日が何日あったかを確認しましょう。
例えば、算定期間が2023年4月1日から2024年3月31日の1年間で年間休日が120日の場合、365日から120日を差し引いた245日が全労働日になります。
この場合、有給休暇の付与条件を満たす「8割の出勤日数」は、245日に8割を乗じた日数です。つまり、196日以上出勤した従業員は有給休暇の付与対象になります。
2-2. 出勤率を計算する際の注意点
出勤率を計算する際は、計算に必要な数値を正確に把握する必要があります。
全労働日と出勤率は先述の通りです。その他にも、注意する点があるので確認してみてください。
全労働日と出勤日から除外する日 |
|
全労働日と出勤日に含める日 (実際に就労しない場合でも含める) |
|
労使間で取り扱いを決定する日 (就業規則への記載は必須) |
|
なお、出勤率に実働時間は関係ありません。遅刻・早退をしても出勤日としてカウントされます。
各従業員の出勤日数は出勤率に影響するので、正しい日数を確認してから計算することが大切です。
関連記事:有給休暇の付与日数の計算方法とは?付与条件や計算例、注意点についても紹介!
3. 有給休暇の付与日数を計算・管理する際のポイント
有給休暇の付与日数を計算・管理する上で覚えておきたいポイントを解説します。
3-1. 有給休暇を付与する際のポイント
有給休暇を付与する際のポイントは2つあります。
3-1-1. 有給休暇は繰り越し可能
有給休暇は、翌年までなら繰り越し可能です。初めての有給休暇付与で10日間の有給休暇が付与された場合、翌年の基準日までに1日も使っていなくても、翌年に残った10日間を使うことができます。
つまり、有給休暇の有効期限は2年間で、付与後2年以内であれば取得可能ということになります。
3-1-2. 有給休暇の付与日数は最大40日?
勤続年数が6.5年以上の正社員の場合、1年間で最大20日の有給休暇が付与されます。有給休暇は繰り越しができるので、翌年に発生した20日と合わせて最大40日付与されることになります。
しかし、有給休暇義務化の施行により、1年間で5日の有給休暇を取得しなくてはいけません。そのため、有給休暇の最大日数は40日ではなく35日となります。
3-2. 有給休暇を管理する際のポイント
有給休暇を管理する際のポイントは4つあります。
3-2-1. 有給休暇の取得が義務化(2019年4月~)
2019年4月、労働基準法の改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対して、年5日の年次有給休暇の確実な取得が使用者(企業側)に義務付けられました。
そのため、労働者の就労条件を確認することを目的に厚生労働省がおこなっている「就労条件総合調査」によると、2019年の法改正により、労働者1人当たりの年次有給休暇取得率の平均は上昇しています。
日本の平均有給取得率を企業規模別でみると、1,000人以上の企業で「63.1%」、30~90人の企業で「51.1%」の取得率で(取得率=取得日数合計÷付与日数×100%)、前年度の平均である「49.4%」と比べて少しずつ改善されている状況です。
しかし、まだ付与された日数の半分程度しか有給休暇を取得できていないという状況は続いているので、企業側としては従業員にただ計算した有給休暇の日数を付与するだけでなく、実際に従業員が取得するところまで考えて適切な周知をおこなわなければなりません。
関連記事:年5日の有給休暇取得が義務に!労働基準法違反にならないために企業がすべき対応方法とは
3-2-2. 労働基準法に違反すると罰則あり(30万円以下の罰金)
有給休暇が付与される従業員がいるのであれば、企業規模に関わらず必ず対応が必要です。
有給休暇を付与していない、また、有給休暇を10日以上付与する従業員に有給休暇を5日以上取得させない、といった労働基準法違反は、罰則(30万円以下の罰金)が科せられます。
罰金は従業員1人当たりのものであるので、年5日の有給休暇を取得しなければならない従業員100人が年5日の有給休暇を取得できなかった場合は、最大で3千万円の罰金になってしまいます。
また、この他にも、有給休暇について就業規則で定めていなかった場合や、社員から請求された時季に有給休暇を与えなかった場合も違法となります。
「上司に申請したけれど休ませてもらえなかった」という状況は違法であり、正当な理由なく与えないという選択肢はありません。
従業員に与えられている有給休暇の中で5日分は、本人の希望を加味したうえで会社側が休む日を指定し、休暇を取らせなければならない(時季指定)があることも覚えておきましょう。(年5日以上の有給休暇を既に取得済みの労働者は、時季指定不要です。)
3-2-3. 有給休暇管理簿の保存義務
年次有給休暇管理簿とは、労働者ごとに付与日(基準日)、付与日数、取得日、時季指定した日などを管理するためのものです。
有給休暇管理簿は、年次有給休暇を与えた期間と期間満了してから3年間の保存が義務付けられています。
保存方法についてデータと紙媒体の指定はありませんが、労働基準監督官の臨検で賃金台帳とともに年次有給休暇管理簿の閲覧と提出が求められた場合は、すみやかに提示しなければなりません。
そのため、データと紙媒体での保存を併用しておくと良いかもしれません。
関連記事:年次有給休暇管理簿には作成・保存義務がある!記載事項や記入例をわかりやすく解説
3-2-4. 有給休暇管理システムの活用
これまでに記載してきた通り、有給休暇はほぼ全ての企業において適切に管理しなくてならないものとなります。
そのため、これらの業務を効率化する有給休暇を管理できるシステムを導入する企業が増えています。
システムでは取得状況や付与日数、繰り越し日数などを一括管理できるだけでなく、法改正があればシステムのバージョンアップされるため、人の手で有給休暇を計算して、Excelや紙などで管理するよりもスムーズな有給休暇管理が可能になります。
も
ちろん、Excelの関数機能を活用するなどで、有給休暇の計算を自動化するような有給休暇取得計画表も作成できますが、法改正などに併せて関数を定期的に組み替えるなどの工数が掛かってしまいます。
働き方改革が進む中で、従業員が増えてきた段階ではシステムを活用を検討することが望ましいでしょう。
4. まとめ
以上のように、有給休暇の付与や取得は義務化されており、その義務を守らなかった場合は罰せられてしまいます。
付与条件は細かく分けられていますが、それらを理解し正しい日数を計算できるようにしましょう。
有給休暇を取得させることで従業員が気持ちよく働ける環境を作ることができれば、企業にとってもメリットがあります。
より従業員が生産性を高く保てるような形を作るために、有給休暇の制度を整えていってください。
「自社の年次有給休暇の付与や管理は正しく行われているのか確認したい」という方に向け、当サイトでは有給休暇の付与のタイミングから義務化、基準日の変更や効率的な管理方法まで年次有給休暇の法律について包括的にまとめた資料を無料で配布しております。
「自社の有休管理が法律的に問題ないか確認したい」「有給管理をもっと楽にしたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
--------------------
▼無料ダウンロードはこちら▼
https://hrnote.jp/document/?did=148030