従業員が遅刻や早退、欠勤などによって働けないことで発生する「勤怠控除」。
「勤務形態などによって計算方法が変わる」「手当によっては控除しないものもある」など、実際の計算方法は複雑です。
今回は、勤怠控除が発生するシーンや計算方法に関してご紹介します。
関連記事:勤怠とは?勤怠管理の目的や具体的な方法、注意点について解説
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1.勤怠控除とは
勤怠控除とは、遅刻や早退、欠勤をした際に、労働がなかった時間分の賃金を給与から差し引くことを指し、 1ヶ月に定められた勤務時間を満たさなかった場合は、月給制であっても給与が差し引かれる仕組みになります。
労働者の勤務体系や、勤怠控除の用途次第で、給与の金額が変わることが多くあるため、人事担当者としては注意が必要です。
勤怠控除には、大きく分けて「法定控除」「協定控除」の2種類が存在しますので、それぞれについてご紹介します。
1-1. 法定控除とは
法廷控除とは、社員の賃金から会社が法律上当然に控除できる控除項目を表しています。
以下に、法定控除に該当する6項目を表でまとめました。
法定控除項目 |
控除額の計算方法 (本人負担分) |
健康保険料 |
標準報酬月額×保険料率(都道府県ごとに決められた率で、約5%) |
介護保険料 |
標準報酬月額×保険料率(全国一律 1.58%)(40歳以上のみ) |
厚生年金保険料 |
標準報酬月額×保険料率(全国一律 8.914%) |
雇用保険料 |
額面×0.5% (建設業などは別料率) |
所得税 |
「月額表」「日額表」という国税庁が出している表に当てはめる |
住民税 |
市区町村から通知された額(前年の所得による) |
健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの社会保険料と、法律で給与から控除(天引き)することが定められている所得税や住民税といった税金が該当しています。
1-2. 協定控除とは
協定控除は、上記の法定控除以外の控除額を定めています。
企業ごとに異なる額や計算方法で設定されており、たとえば、社宅の使用料、財形貯蓄、生命保険料、従業員旅行の積立など、が該当します。
企業と従業員の間で労使協定によって取り決めることになるため、人事担当者としては該当する項目を事前に決めておく必要があります。
2. 勤怠控除に関する計算方法
それでは、ここから勤怠控除に関する具体的な計算方法について解説していきます。
2-1. 欠勤控除を正しく計算する方法とは
従業員の欠勤控除を正しく給与に反映するためには、まず1日あたりの賃金(日給)を算出する必要があります。
この日給について2通りの計算方法があるため、具体的にどのように計算すべきかご紹介します。
①日給を「年平均の月所定労働日数」から算出する
1つ目の方法は、年平均の所定労働日数から日給を計算し、欠勤控除額を出す方法です。具体的な計算式は、以下の通りとされています。
月給与額 ÷ 月平均の月所定労働日数 × 欠勤日数 = 欠勤控除額
この計算方法は、1年を通して欠勤控除の金額が同じになるため、欠勤日数をかけ合わせることで算出される値です。
たとえば、年平均の所定労働日数が20日で、欠勤した月の所定労働日数が21日であった場合、20日間欠勤すると、1日労働しているにもかかわらず、給与が0円になってしまいます。
ただし、年間を通してみると、欠勤日数に対する控除額の総額に過不足が無く、違法とはなりません。
この計算方法の場合、欠勤1日あたりの控除額は年間を通じて一定で、月による変動がありませんので、計算をおこなう際には注意しましょう。
①日給を「該当月の所定労働日数」から算出する
2つ目は、欠勤をした月の所定労働日数を使って日給を算出し、欠勤控除額を求める方法です。具体的な算出方法は以下の通りです。
欠勤した月ごとの所定労働日数を利用して日給を算出すると、月によって所定労働日数が異なるため、1日あたりの欠勤控除金額も月によって変動します。
計算をおこなう際には、欠勤した日数を踏まえた上で、労働時間を正確に算出するように心がけましょう。
2-2. 遅刻・早退控除の場合
月給制において、残業無し、定時に退社する働き方を例として紹介します。計算式は以下の通りです。
月給与額 ÷ 月の平均所定労働時間 × 遅刻や早退の時間 = 「遅刻・早退控除額」
たとえば、月給30万円で、月の平均所定労働時間が160時間の従業員が、1月で合計4時間の遅刻・早退を行った場合、遅刻早退控除額は、30万円÷160時間×4時間=7,500円となります。
ただし、計算式が自社の就業規則と異なる場合には、自社の就業規則を優先しましょう。
また、本章で解説した控除の計算方法を間違えてしまうと、正しい所得額を算出できなくなってしまい、所得税や保険料の計算にミスが出てしまうリスクがあるので注意が必要です。
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3. 勤怠控除に関する注意すべきポイント
最後に、勤怠控除に関して注意すべきポイントを3つご紹介します。
3-1. 勤怠控除に関する内容は全て就業規則に明記する
自己都合・会社都合の場合でどう変わるか、欠勤や遅刻・早退によって控除される適応要件、勤怠控除の計算式など、勤怠控除に関する内容は就業規則に詳細に記すことが重要です。
会社都合の場合は欠勤控除を満額支給しなければならないかと思いますが、会社によっては、社員が子供の行事に出席するなど自己都合の休暇を認めて、欠勤控除の対象にしているケースも見受けられます。
欠勤控除や年次有給休暇として扱うか否かは、会社側の判断にゆだねられているのです。
また、定年退職する従業員を再雇用しない場合、60歳に到達日を退職日として設定できるため、それ以降に働くことがあれば、賃金を1日ごとに満額支給する必要があります。
3-2. 手当が控除されるパターンもある
勤怠控除は、雇用形態や給与形態次第で、控除される額が変わる傾向があります。
たとえば、勤怠控除の適用から除外されるのが有給休暇を取得することです。有給休暇を使って通常の出勤日に休んだ場合は、欠勤控除の対象になりません。就業規則などに基づいた形で、所定の金額を賃金として支払う必要があります。
また、会社都合により、もともと出勤日だった日を休業として扱う場合も多くありますが、この場合は会社側が平均賃金の60%以上の金額を「休業手当」として支払う必要があります。
創立記念日などで休業になった場合は手当が控除されるため、事前に確認しておきましょう。
3-3. 休職中や退職後の控除はできない
従業員の休職中は、厚生年金や健康保険等の社会保険料の負担額は本人負担、会社負担ともに変更はありません。これは、休職に関する定めが法的なものではなく、あくまで各会社の就業規則による形になっているためです。
通常、給与から社会保険料が天引きとなるケースが多いですが、無給の場合においては、従業員が社会保険料を支払い続けるのは難しいかもしれません。
このような場合に備えて、会社側は休職期間中の社会保険料の支払いについても、就業規則等に事前に明記しておきましょう。
4.まとめ
勤怠控除の内容は会社ごとに決めることができます。勤怠控除は義務化されていないため、すべての企業で必ずしもおこなわれているとは限りません。
しかし、適用範囲などを曖昧にしておくと、会社とのトラブルに発展する可能性があります。
従業員からの信頼を得るためにも、自社において勤怠控除をおこなっているか否か、雇用形態に合わせて設定された計算方法など、事前に就業規則に明記しておきましょう。