飲食業界やサービス業は、複雑な勤務時間ということもあり、従業員の勤怠管理の把握や、給与計算に多くの手間がかかってしまっているのではないでしょうか。
本記事では「給与計算の知識がないから不安だ」という飲食店の担当者様や、給与計算の時間を短縮したい担当者様に、飲食店にマッチした給与計算の仕方についてご紹介します。
1、飲食店における給与計算の流れ
給与計算の基本的な流れは、飲食店の場合もその他の業種の場合も、それほど違いはありません。まずは、一般的な給与計算の流れを知り、どのように飲食店の特性に応用していくかを知ることがコツといえます。
そもそも給与を計算することとは?
給与計算の方法には、さまざまなルールがあります。ルールは「労働基準法」や「最低賃金法」といった法律で厳格に定められているのです。
給与を支払う相手がアルバイトやパート社員であっても「時給×労働時間」という単純な計算ではすまない場合があります。ルールを守らなければ、当然ペナルティもあります。
近頃の従業員は、インターネット検索などで、給与についての知識が豊富な場合もあり、誤った給与計算をしていると思わぬトラブルで頭を抱えることになるのです。
給与計算の流れ
飲食店の給与計算に入る前に、給与の決定方法や給与計算の仕組みについて説明します。まず、給与計算の本質をつかみましょう。
一般的に正社員の場合は月給制になり、アルバイトやパート社員の場合は時給制になることが多いようです。月給制と時給制で給与計算の仕方が、やや異なります。
月給制の場合(正社員など)
基本手当については、求人関係の情報をインターネット・情報誌・新聞などで調査して相場を確認してください。一般的に毎月の基本手当の額は同じです。
役職手当や家族手当といった、基本手当以外の手当をつけるのかどうかの判断も必要です。手当が多いほど従業員のモチベーションは上りますが、その分人件費が上昇します。
月給制の場合も時給制の場合も、給与計算の仕方は、まず「支給総額」と「控除総額」を計算します。そして、給与計算の最終的なスタイルは、「支給総額-控除総額=手取り額」となるのです。
月給制の場合、支給総額は、一般的に「基本手当+各種手当」の定額です。しかし、割増賃金の規定が適用され残業手当が発生するような場合には、月給制でも月々の支給総額が異なるので注意しなければなりません。
「所得税」「住民税」「厚生年金保険料」「健康保険料」「介護保険料」「雇用保険料」などを合計したものが控除総額になります。控除した「所得税」「住民税」は、税務署・市町村長に。「厚生年金保険料」「健康保険料」「介護保険料」は、年金事務所に。「雇用保険料」は、ハローワークに、それぞれ納付しなければなりません。
ボーナスを支給するかどうかも判断する必要があるでしょう。計算式は基本手当×月分になります。飲食店では1カ月分を夏冬の2回に分けて支給するケースが多いようです。
時給制の場合(アルバイト・パートなど)
時給の決め方も、インターネット・情報誌・新聞などで相場を確認してください。法律で時間単位の最低賃金が定められているので注意が必要です。最低賃金は地域により異なるので、インターネットで確認しておきましょう。
月給制とは異なり、月により労働時間が異なれば、給与の額も異なります。具体的な給与計算の仕方は、「労働時間×時給+各種手当」です。なお、時給制であっても月給制と同じく割増賃金の規定が適用されるため、時間外労働手当・深夜労働手当・休日出勤手当を加算する必要があります。
時給制の場合でも、一定の要件(収入が非課税の額を超えたり、社会保険に加入しなければならなかったりする場合)に該当すれば、「所得税」「住民税」「厚生年金保険料」「健康保険料」「介護保険料」「雇用保険料」の控除が必要なので注意してください。
2、飲食業の給与計算に必要な書類の準備
給与計算をするにあたって必要な情報があります。この書類がないと給与計算ができないという情報の記載された主な書類をご紹介します。
就業規則や給与規定などの定め
毎月の給与計算は、給与についてのルールを定めた就業規則や給与規定などの定めに基づいて計算されなければなりません。就業規則や給与規定とは、法律の範囲内で定めた、それぞれの会社のルールです。
就業規則や賃金規定などの定めがない場合には労働基準法で定めた基準に基づいて計算することになります。
給与マスター台帳
マスター台帳とは、給与計算に必要な「基本手当」「各種手当」「割増賃金の時間単価」「厚生年金保険料」「健康保険料」などの項目を従業員ごとにまとめたものです。
事前にマスター台帳を作成し、給与計算に必要な情報をまとめておくと、その後の給与計算をスムーズにおこなうことができます。
タイムカード
時給制の従業員の場合、タイムカードで管理しているケースが多いので、給与計算期間のタイムカードの労働時間を集計する必要があります。
現在では、タイムカードの代わりにWEB上での打刻や、スマホを使った打刻ができる勤怠管理システムが多くあります。紙媒体のタイムカードを活用するよりも、労働形態にあわせてカスタマイズができて、労働時間の集計が簡単にできる勤怠管理システムの活用が便利かもしれません。
▶タイムカードアプリの勤怠管理システム特徴を徹底比較 | 完全版
給与所得の源泉徴収税額表
所得税を控除するために使用します。その月の支給額から社会保険料を控除した金額から、控除する税額を確認することができる表です。インターネットでダウンロードできます。
健康保険・厚生年金保険の保険料額表
日本年金機構から送付される「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」に記載されている標準報酬の額から「厚生年金保険料」「健康保険料」「介護保険料」の控除額が確認できる表です。インターネットでダウンロードできます。
住民税課税決定通知書
市町村から送付される住民税課税決定通知書に、毎月の給与から控除する税額が記載されています。
3、飲食店で給与計算をする上で気をつけるべきポイント
飲食店の給与計算に役立つ情報を記載します。基本は、給与計算における飲食店ならではの「困った」を解決してくれる対策と考えてください。
飲食業界でありがちな、深夜割増や残業時の時給計算の複雑さ
飲食店では、深夜割増などが増えるのが一般的でしょう。
深夜割増として25パーセント以上割増した給与を支払わなければなりません。法律では、10時から翌朝5時までは、深夜労働手当の対象になります。当然、給与計算も複雑になります。
飲食店は、お客さまに対するサービスがポイントです。営業時間にしても、一般のオフィスの勤務時間のように「9時~17時で」というわけにはいきません。まさに、飲食店ならではの「困った」です。
飲食業界のアルバイトやパート社員の時給計算の複雑さ
アルバイトやパート社員の給与計算が思いのほか複雑になります。なぜなら、アルバイトやパート社員は時給が異なり勤務する時間帯もまちまちだからです。給与計算前の勤怠管理からして複雑です。
しかし、飲食店では、ランチタイムやディナータイムといった限られた時間帯の人手が欲しいので、アルバイトやパート社員が増えるのも仕方ありません。必要とはいえ給与計算的には「困った」ことです。
多店舗で営業している場合の時給計算の複雑さ
飲食店では多店舗で営業している場合が少なくありません。給与期間の締め切りが過ぎれば、各店舗から送られてきた勤怠情報を本部で一気に集計して給与計算する必要があります。
店舗によってはバラバラの時給、バラバラの勤務時間を限られた期間内で集計しなければなりません。
4、飲食店で給与計算を効率的におこなうためのポイント
給与計算を効率的におこなうためのポイントは、給与計算システムを導入することにつきます。飲食店ならではの複雑な給与計算を手計算することは、担当者のストレスを高めることに他なりません。
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飲食に特化した給与計算システムを導入する
給与計算システム導入のコツである、飲食店の「困った」を解消してくれる製品をご紹介します。
HANJO給与

HANJO給与の給与計算システムは、飲食店に特化してシステムをカスタマイズしています。割増賃金や残業による時間計算などの計算から開放されます。マイナンバーにも対応し、勤怠管理や時給計算の複雑さを解消してくれるでしょう。
毎月の給与計算は、従業員の勤怠を入力するだけで自動計算されるのです。飲食店の給与計算を効率的に処理してくれる優れものといえます。
Daim(シフト・勤怠・給与)

4Wシフト機能という「誰が」「いつ」「どこで」「何を」するかの予定が組める高機能を持ちます。今までの給与計算システムでは、勤務の開始と終了しか把握できないものが多く、仕事の内容が確認できないものが一般的でした。
しかし、仕事内容などを把握することで、何をするかが明確になり従業員のモチベーションも向上し、シフトに対して適材適所による効率化がはかれます。
MAIDO SYSTEM

多店舗営業をされているチェーン店でも、給与明細が店舗ごとに一括で作成できます。大人数の従業員の給与計算が一括でおこなえるため、担当者の負担軽減につながるのはもちろんのこと、人件費の削減もはかれます。
店舗ごとの損益にも反映するので、それぞれの店舗における人件費や経営状態を確認することもできるのです。
ミスを防ぐためにできること
給与計算をするときに注意しなければならないのは「うっかり」でしょう。これは、手計算・給与計算システム・エクセルフォーマットのいずれの方法を使用するときでも同じです。
担当者にとっては、たくさんの従業員の中のひとつのデータに過ぎなくても、給与を支給される従業員にとっては、1カ月間の労働の証です。
「うっかり」を防ぐためには、担当者が給与の大切さを認識し、見直しによるデータの確認をすることが必要でしょう。
また、担当者がオーバーワークにならないように、経営者が給与計算業務自体の効率化をはかることもポイントになるのではないでしょうか?
5、まとめ
飲食店における給与計算は複雑なため、給与計算の担当者が抱えるストレスは、相当なものでしょう。そこで、給与計算を効率化するために、給与計算システムと給与計算に重要な考え方をお伝えしました。
給与計算システムだけでなく、勤怠管理システムなどで、時給別、時間帯別のシフト作成や、給与計算まで連携できるツールなども増えてきておりますので、営業形態や、企業の形態にマッチングするサービスの利用を考えてみてはいかがでしょうか。