給与計算では端数が生じることがあります。
端数の処理の方法には切り捨て、切り上げがありますが、給与計算の場合どちらにすべきなのかについて解説します。
給与計算の端数の処理については法律で明確なルールがありますので、独断で処理しないように注意してください。
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「給与計算で小数点以下の端数が出たら、どうすればいい?」
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1. 端数処理で気を付けるべきこと
給与計算で端数が発生したときに気を付けるべき点を解説します。
労働基準法では、この給与の端数について明確なルールがあり、すべての企業はこのルールを守らなければなりません。
万が一、違法行為をおこなった場合は訴訟問題に発展することもあります。
また従業員側に「企業が定めたルールだから」と容認させることもできません。
1-1. 給与の切り捨てはできない
労働基準法では、時給の端数の切り捨ては認められていません。
賃金は通貨で直接全額を支払うことが労働基準法で明確に定められています。
そのため、勝手な判断で賃金を切り捨てて計算するのは違法行為です。
1-2. 時給は1分単位で計算する
アルバイトなど時給で給与を計算する際や、時間外労働の割増賃金を計算する際などは、1分単位で計算しなければなりません。
労働時間を切り捨てて計算することは違法行為とみなされます。
たとえば51分の時間外労働が発生した場合、50分で切り捨てて計算するのはNGです。
労働基準法では、切り捨てとは反対に切り上げについては問題ないとされています。
そのため、51分の時間外労働を切り上げて60分の時間外労働分の割増賃金を支払うことは問題ありません。
企業が負担する人件費は割増になってしまいますが、切り上げて計算することで給与の端数が生じにくくなる、経理担当の負担が軽減されるというメリットがあります。
関連記事:給与計算の初心者が押さえておきたい準備や正しい手順
2. 端数処理のやり方とタイミング
給与計算ではさまざまなシーンで端数が発生します。
割増賃金の端数処理、1カ月の賃金の端数処理、さらに労働時間の端数処理のそれぞれの方法を確認しましょう。
2-1. 割増賃金の端数処理のやり方
給与計算の中でもとくに端数が発生しやすいのが割増賃金の計算時です。
時間外労働や休日労働、深夜労働を従業員にさせた場合には一定の率の割増賃金を支払うことが義務付けられています。
この割増賃金は1時間あたりの賃金に割増率をかけた金額で計算します。
時給は基本的に1分単位で計算しなければなりませんが、割増賃金の計算の場合は1時間の賃金や割増賃金に1円未満の端数が生じた場合、さらに1カ月の割増賃金の合計に1円未満の端数が生じた場合は例外です。
これらのケースの場合、50銭未満は切り捨てることが可能です。
50銭以上は切り上げなければならないので注意しましょう。
2-2. 1カ月の賃金の端数処理のやり方
1カ月の賃金の合計に端数が生じた場合はどの部分を端数と扱うかによって処理方法が違います。
まず、100円未満の端数は50円未満を切り捨て、50円以上を切り上げるという処理ができます。
また、1,000円未満の端数はこの端数を翌月の賃金に繰り越すことが可能です。
これらは法律で認められているものの勝手におこなうと従業員との間でトラブルに発展する可能性があります。
上記のような処理をする場合は、従業員にきちんと説明し、就業規則にもその旨を明記しておく必要があることも忘れないようにしてください。
2-3. 労働時間の端数処理のやり方
時間外労働、深夜労働、休日労働などの割増賃金の計算をするときに労働時間で端数が生じた場合の考え方を解説します。
一日単位であれば1分単位で計算しなければなりませんが、1カ月の合計の労働時間で端数が発生する場合は30未満なら切り捨て、30分以上なら切り上げで計算できます。
たとえば、一日の労働時間を1分単位で合計した上で、1カ月の時間外労働の労働時間の合計が29分の場合は切り捨てが可能です。
同じ切り捨てであっても、一日の時間外労働の労働時間を切り捨てて考えることはできないので注意してください。
このように給与計算の端数処理はシーンによって使い分けが存在します。適切な端数処理ができるように、それぞれの方法をしっかりと把握しておきましょう。当サイトでは、給与計算の正しい端数処理が場合ごとにわかる資料を無料でお配りしています。適切な給与計算をおこないたい方は、こちらからダウンロードして、給与計算にお役立てください。
3. 賃金の端数処理の注意点
賃金の端数処理をする際の注意点について解説します。
遅刻や早退についての考え方、割増賃金に対する考え方、企業でルールを定めるときの考え方などを確認しておきましょう。
3-1. 労働していない時間の端数処理の注意点
遅刻や早退などで本来労働している時間に労働をしていなかった場合はその時間分の賃金を支払う義務はありません。
民法でも、労働者は労働をした後にしかその報酬を請求できないという決まりがあります。[注1]
労働をしていない時間の賃金を従業員が請求することはできません。
一方で、1分遅刻しただけで1時間分の賃金をカットする、10分単位で計算するため10分間の賃金をカットするなど、実際には労働していた時間の分まで賃金をカットすることは違法行為です。
時間の端数の考え方と同じく、遅刻や早退についても1分単位で処理する必要があります。
労働していない時間の賃金支払いが必要ないケースは遅刻や早退の他、産前産後休暇、育児休暇、介護休暇、不可抗力による休業などが対象です。
反対に企業都合の休業や自宅待機の場合や有給休暇には賃金を支払わなければならないので注意してください。
[注1]民法|e-Gov法令検索
3-2. 割増賃金の端数処理の注意点
割増賃金について、1カ月の労働時間は30分単位で切り捨て、切り上げが可能であることを説明しました。
割増賃金の計算をおこなう際は、その従業員の1時間あたりの賃金を算出する必要があります。
この1時間あたりの賃金に端数が生じた場合、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げで計算することが可能です。
1カ月の割増賃金の合計で端数が発生する際にも50銭未満の切り捨て、50銭以上の切り上げができます。
3-3. 企業で独自ルールを作る際の注意点
給与計算の端数処理については、法律で定められたルールを遵守していればそれ以外の部分は企業が独自に判断して構いません。
切り捨て、切り上げの処理には明確なルールがありますが、すべての端数を切り上げて計算することについては何の問題もありません。
また、場合によっては説明したように30分単位での労働時間の切り捨ても可能です。
遅刻などに対してペナルティとして減給をおこなっている企業もあります。
このように企業が独自のルールを設定することは、法律の範囲内であれば問題ありません。
ですが、従業員との間で意見や考え方の食い違いが起きないように充分配慮する必要があります。
給与計算の端数についてやペナルティなどについてはきちんと就業規則に明記し、従業員がいつでも確認できるようにしてください。
その時々や従業員によって対応が違うと大きな問題に発展することもあるので注意しましょう。
4. 賃金計算の端数処理の方法を確認しよう
賃金計算における端数の扱い方について解説しました。
従業員に支払う賃金の計算で端数が発生したとき、原則として端数を切り捨てることは違法行為です。
労働時間などで端数切り捨てをおこなっていると、従業員との間でトラブルになる可能性があるため、注意しましょう。
割増賃金の計算や遅刻した時間の減給の計算など、給与計算ではさまざまな点に注意する必要があります。
ミスなく適切な賃金を従業員に支払うためにも、今一度端数についての考え方を確認しましょう。
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