有給休暇の買取は違法?退職者の対応や計算方法、デメリットを解説! |HR NOTE

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有給休暇の買取は違法?退職者の対応や計算方法、デメリットを解説!

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現在、日本では働き方改革の一環として、年5日の有給取得義務が設けられています。しかし、有給取得率は思うように上がっておらず、「有給休暇の買取」という選択肢が取られることもあります。

本記事では、有給休暇の買取に関する規則や賃金計算、よくある疑問などについて解説します。

関連記事:有給休暇の基本的なところや発生要件・計算方法を解説

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1. 有給休暇の買取とは?

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有給休暇の買取とは、企業が雇用する従業員のが保有する有給休暇を買い取ることです。ここでは、「そもそも有給休暇とは、どのような制度なのか」に触れながら、有給休暇の買取について解説します。

1-1. 有給休暇は「休息を取るための制度」

厚生労働省は、一定年数勤続した従業員に対して有給休暇を付与する理由として「心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するため」と提示しています。

「有給休暇の取得」は労働基準法に明記されている従業員の権利であるため、従業員から取得を申請された際、企業が緊急時を除いて却下することはできません。

ただ、有給取得は従業員の権利であるとはいえ、完全に消化することはなかなか難しいです。そのような場合に、従業員から「有給休暇を買い取ってほしい」という要望をもらうことが考えられます。

関連記事:労働基準法で定められている有給休暇|法律の内容、注意点を詳しく解説

1-2. 有給休暇の買取は原則違法!

有給休暇の買取は、原則違法とされています。有給休暇の取得は「従業員の権利」であるため、有給休暇の買取は「従業員に休息を与える機会・権利を奪う」ことになります。

そのため、従業員から「有給休暇を買い取って欲しい」と言われた場合においても、企業はこれに応じることは原則違法となります。

2. 有給休暇の買取が求められている背景

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前項で有給休暇は「従業員に休息を与えるための制度」であり、有給休暇の買取は原則違法であると解説しました。では、なぜ有給休暇の買取は求められているのでしょうか。

ここでは、日本の有給取得率の現状や法改正について触れつつ、有給休暇の買取が求められている背景について解説します。

2-1. 日本は有給休暇取得率はたったの60%!

2021年におこなわれた世界主要各国を対象にした調査によると、日本の有給休暇取得率は60%であると報告されています。日本においては、この「60%」は過去11年において最高の有給休暇取得率となっています。

しかし、日本以外の先進国に目を向けてみると、有給取得率は軒並み80%を超えており、「日本では有給休暇が取得しづらい」という現状がうかがえます。

2-2. 2019年から年5日の有給休暇取得が義務化

「他の先進国に比べ、日本の有給取得率が低い」という課題を是正するため、2019年から年5日の有給休暇の取得が義務化されました。また、この有給休暇の取得義務に違反した場合、企業に従業員一人あたり30万円以下の罰金が課されます。

このように有給休暇の取得義務が課されたことで、日本国内で「有給休暇取得への意識」が高まっています。また、それに伴って「有給休暇の買取」を求める声も高まっています。

関連記事:年5日の年次有給休暇を正しく取得させるための注意点・ポイントをおさらい

3. 有給休暇の買取が認められる3パターン

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有給休暇の買取は原則違法であると上述しましたが、実は買取が認められる場合が3つあります。ここでは、有給休暇の買取が認められる3つのパターンについて解説します。

3-1. 退職者の有給休暇が残っている場合

有給休暇を買い取るパターンとして最も多いのは「退職者の有給休暇が残っている場合」です。

退職する従業員に有給休暇が残っていた場合、企業と従業員で話し合い、双方の同意を得ることができれば、有給休暇の買取をおこなうことができます。ただ、有給休暇の取得は労働者の権利であり、基本的には企業は有給休暇の取得を拒否できないので注意しましょう。

また、退職理由が自己都合の場合でも有給休暇の買取は認めなくてはなりません。

関連記事:有給休暇の消化とは?有給休暇の取得義務化や転職・退職した際の有休消化について解説

3-2. 有給休暇の有効期限が切れた場合

2つ目は「有給休暇の有効期限が切れた場合」です。

有給休暇には2年間の有効期限が設けられています。そのため、従業員が付与された有給休暇を1年目に使用しなかったとしても、翌年に繰り越すことができます。ただし、有効期限は2年間であるため、2年目以降は繰り越すことができません。

本来は有効期限が過ぎて消滅してしまう有給休暇に対して買取をおこなうことは、従業員に対して有利に働きます。そのため、この場合の有給休暇の買取は認められています。

3-3. 付与された有給休暇が法定基準よりも多い場合

3つ目は「付与された有給休暇が法定基準よりも多い場合」です。

労働基準法により、有給休暇は一定の条件を満たした従業員の勤続年数に応じて、10日、11日、12日というように毎年付与されます。しかし、これはあくまで最低基準であるため、企業によっては20日の有給休暇を付与しても違法ではありません。

このように企業が法定基準以上に有給休暇を付与している場合、その超過分については買取が認められています。

ここまで、有給休暇の買取が認められる3パターンについて解説しました。ただ、原則として、有給休暇の買取は認められていないので注意しましょう。

4. 有給休暇の買取金額の相場と計算方法

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ここでは、有給休暇の買取金額の相場に触れつつ、買取金額の計算方法について解説します。

4-1. 有給休暇の買取金額の相場

有給休暇の買取金額は、従業員の賃金に応じて変動するため、明確な相場金額はありません。ただ、「その従業員の月の賃金÷労働日」で算出された金額を支払うのが一般的です。

また、企業によっては「正社員は5000円、契約社員は3000円」など買取金額を就業規則に明記している場合もあります。そのため、従業員の買取金額を計算する際は注意しましょう。

ここからは、有給休暇の買取金額の計算方法について具体的に解説します。

4-2. 【買取金額の計算方法①】通常の賃金

1つ目は「通常の賃金を支払う」です。この計算方法は、上記でも紹介した最も一般的な方法で、計算例は下記の通りになります。

例)月給30万円、労働日が20日の従業員の場合

30万円(月給)÷20日(労働日)=15,000円

となり、15,000円が有給休暇買取金額の1日あたりの賃金となります。

通常の賃金を支払うことで、特別な賃金計算が発生しないというメリットがあります。

4-3.【買取金額の計算法②】標準報酬月額の日割り額

2つ目は「標準報酬月額の日割り額を支払う」です。

この計算方法は、健康保険料を求める際に必要な標準報酬月額を30で割り、標準報酬月額の日割り額を算出し、その日割り額を有給休暇1日ごとに支払うという方法です。

ただ、標準報酬月額には上限があるので、有給休暇の賃金が少なくなってしまう恐れもあります。そのため、この計算方法を用いるためには労使協定を締結するなど、従業員側と企業側の両者の理解が必要になります。

4-4. 【買取金額の計算方法③】平均賃金

3つ目は「該当従業員の平均賃金を支払う」です。

平均賃金は下記の計算式で求めることができます。

直近3か月に支払った賃金の総額÷その期間の総日数(休日含む)

例)2022年4月~6月までの賃金総額が80万円、総日数が91日の場合

80万円(直近3か月に支払った賃金の総額)÷91日(その期間の総日数)=8,791円

上記の計算結果の通り、8,791円が有給休暇の買取賃金として従業員に支給されます。

ここまで、有給休暇の買取時の賃金計算方法について解説しました。有給休暇の買取は、複雑な計算方法もあるため注意が必要です。

4-5. 有給買取と有給消化はどっちがお得?

有給買取と有給消化、従業員にとってどちらがお得かを一概に言うことはできません。なぜなら、有給買取と有給消化の金額の算出方法は企業によって異なるからです。企業の中には、就業規則に基づき、有給消化より有給買取の金額を安く設定しているケースもあります。

ただ、税金という点だけで考えれば有給買取のほうがお得です。有給消化をした際の賃金は「給与所得」として支払います。給与所得には所得税・住民税・社会保険料などの税金がかかり、それらを差し引いた分が従業員の手取りとなります。

一方、有給を買い取った場合の賃金は「退職所得」として支払います。退職所得には退職所得控除があるため税金が低く、場合によっては税金が一切かかりません。また、社会保険料もかからないので差し引かれる税金が少なくなり、結果として従業員にとっては有給買取の方がお得です。

従業員にとって有給買取と有給消化のどちらがお得かを決める大きなポイントは税金です。従業員の給与を管理する担当者は、有給休暇にかかる税金や自社の有給休暇金額の算出方法などについてきちんと確認しておきましょう。

なお、企業にとっては有給買取のほうがお得です。有給買取も有給消化も従業員に支払う賃金額は変わりません。しかし、退職に伴う有給買取の場合は従業員が退職しているため、社会保険料を負担する必要がありません。有給休暇の残日数によっては約2か月分の社会保険料の負担を回避できるケースもあります。

4-6. 有給休暇を買い取った場合に給与明細は必要?

結論、従業員の有給休暇を買い取った場合に給与明細は必要ありません。その代わりに「賞与明細」を発行します。有給買取は給料ではなく賞与として扱うためです。

そのため、賞与を支払った場合と同様の事務処理を行います。社会保険料・雇用保険料などの計算は不要ですが、管轄の年金事務所に支払い後5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出しなければなりません。

5.有給休暇の買取はデメリットよりメリットのほうが大きい?

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有給休暇の買取にデメリットはほとんどありません。有給の買取は有給消化と違い、従業員との雇用関係が解消されているため、トラブルが起こりにくいためです。

そのため、有給休暇の買取はメリットのほうが大きいと言えます。ここでは、買取の

メリットを解説します。

5-1. 退職する従業員とのトラブルを避けられる

有給休暇の買取をおこなう1つ目のメリットは「退職する従業員とのトラブルを避けられる」という点です。従業員は退職する際、「有給休暇を全て消化してから退職する」または「有給休暇を買い取る」のいずれかの選択をすることになります。

その際、「有給休暇をすべて消化してから退職すること」を選んだ場合でも、有給休暇を取得している限り、会社に在籍している状態となります。そのため、その期間に従業員が何か問題を起こしてしまった場合、企業は対処せざるを得なくなります。

しかし、退職する従業員の有給休暇を買い取った場合、その時点で「従業員」ではなくなります。したがって、「従業員が問題を起こしてしまい、対処せざるを得ない」という状況を避けることができます。

5-2.従業員の社会保険料を早期に削減できる

有給休暇の買取をおこなう2つ目のメリットは「従業員の社会保険料を早期に削減できる」という点です。従業員が有給休暇を全て消化してから退職する場合、有給休暇を消化している最中であっても企業はその従業員の社会保険料を支払わなければなりません。

しかし、退職する従業員の有給休暇を買い取り、早期に退職してもらうことで、企業はその有給休暇消化中の社会保険料を支払う必要がなくなります。

6. 有給休暇の買取に関する「よくある疑問」

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ここでは有給休暇に関する「よくある疑問」について一つずつ解説します。

6-1. 有給休暇の買取について要望があった際に、応じないと違法?

1つ目の疑問は「従業員から有給休暇の買取について要望があった際に、応じないと違法?」です。

有給休暇の買取は従業員から求められたとしても、原則違法なので、応じる必要はありません。有給休暇の買取が認められるのは以下の3つの場合のみであるため、注意が必要です。

【有給休暇の買取が認められる3パターン】

・退職者の有給休暇が残っている場合

・有給休暇の有効期限が切れた場合
・付与された有給休暇の日数が法定基準よりも多い場合

6-2. 企業側が従業員に有給休暇の買取を求めることは違法?

2つ目の疑問は「企業側が従業員に有給休暇の買取を求めることは違法?」です。

結論、違法となります。有給休暇制度は「従業員が休息を取るための制度」なので、従業員に休みを与えずに代わりに賃金を支払うという行為は、有給休暇の目的に合致しないので違法となります。

6-3. 有給休暇の買取ではどのようなトラブルが起こりやすい?

有給休暇の買取で起こりやすいトラブルを紹介します。

買取可否についてのトラブル

そもそも有給休暇の買取が可能かどうかを知らない従業員も少なくありません。有給休暇の買取制度があると思い有給消化をしないようにしていたのに、買い取ってもらえず有給休暇が消滅してしまったとなれば従業員の不満につながります。

このような事態にならないためには、有給買取の可否について就業規則にきちんと記載しておくことが大切です。トラブルを防ぐために、以下の項目を含めましょう。

  • 買取の対象となる有給休暇
  • 買取金額の算出方法や具体的な金額
  • 支払日
  • 支払の方法

買取金額についてのトラブル

有給休暇の買取金額は企業に一任されています。法律による制限がないため、有給消化よりも金額を低く設定することも可能です。

ただし、有給消化と有給買取の金額に差があると従業員の理解を得ることは難しいかもしれません。トラブルを回避するためには就業規則への記載はもちろん、従業員への定期的な周知徹底も心がけましょう。

税金についてのトラブル

先述の通り、有給買取は退職所得扱いになります。誤って給与所得扱いにすると税金が多く差し引かれ、従業員に支払われる金額が少なくなってしまうので注意が必要です。

賃金支払いのミスは従業員からの信頼を損ねるだけでなく、再計算などの手間もかかります。従業員の給与を管理する担当者は税法を理解し、正しく計算する必要があります。

7. 有給休暇の買取について理解を深め、従業員が健康的に働ける職場づくりを!

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本記事では、「有給休暇の買取が認められる場合」や「買取時の賃金計算の方法」など、有給休暇の買取に関するあらゆる内容について解説しました。

有給休暇は本来、従業員の休息のための制度であるため、買取をおこなう際でも労使間で納得したうえで、おこなうようにしましょう。

今回解説した内容を踏まえ、従業員が健康的に働ける職場づくりを目指しましょう。

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