給与から引かれる保険料にはさまざまな種類があり、雇用保険料もそのうちの1つです。しかし、賞与からも雇用保険料を引くべきかわからないという方も多いのではないでしょうか。会社に入ったばかりだと、賞与から控除すべき社会保険料や税金の種類がはっきりとわからない人も少なくないでしょう。
本記事では、賞与からも雇用保険料を引くべきなのか、詳しく解説します。また、その理由や計算方法、賞与から引かれる他の保険料・税金についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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1. 賞与からも雇用保険料は引かれる?
毎月の給与から天引きしているため、賞与には雇用保険料がかからないと考える人も少なくありません。ここでは、賞与と雇用保険料の関係について解説します。
1-1. 賞与とは?
賞与は「ボーナス」とも呼ばれ、毎月の給与とは別に支給される賃金のことです。支給金額や支給のタイミングなどは、基本的に会社側が自由に決めることができ、金額は固定ではありません。
また、法律上は賞与を支払う義務はないのですが、就業規則や労働契約のなかで賞与について明記している場合は、支払う必要があります。
1-2. 賞与から雇用保険料が引かれるのはなぜ?
結論、賞与から雇用保険料は引かれます。雇用保険料は、「労働の対価として支払われた賃金」に対して発生します。賞与は毎月の賃金をベースに算出されるので、労働した結果支払われた賃金となり、雇用保険料が引かれる仕組みです。
1-3. 賞与に雇用保険料がかからないケース
賞与に雇用保険料がかからないケースを紹介します。
1-3-1. 任意的で恩恵的な賞与の場合
賞与のなかでも、雇用保険料が引かれないものもあります。それは金一封や大入袋などの「任意的で恩恵的な賞与」です。雇用保険料が引かれるのは、一般的に「ボーナス」と呼ばれる年に2回ほど支給されるもので、このボーナスは労働の対価として支払われています。
しかし、金一封は労働の対価として支払われているわけではありません。子どもが生まれたり結婚したりした際の金一封は労働の対価として支払ったものではなく、出産や結婚などに対しての祝い金として支払ったものになります。そのため、雇用保険の対象にはなりません。
1-3-2. 産休・育休中で賞与が発生しなかった場合
産休・育休中に賞与が支払われるかどうかは、企業によって対応が異なります。もし、賞与を支給しない場合は、当然ですが雇用保険料も発生しません。
一方、産休・育休中に賞与を支給する場合は、雇用保険料を天引きします。産休・育休中は、被保険者本人と事業主の社会保険料が免除されますが、適用されるのは健康保険と厚生年金保険のみです。雇用保険には保険料の免除制度がないので、産休・育休中の従業員に賞与を支給する場合は忘れずに雇用保険料を控除しましょう。
1-3-3. 退職金にはかからないが、退職後の賞与には雇用保険料がかかる
退職後に支払われた賞与に対しても雇用保険料の控除は適用されます。雇用保険は、対象期間中に労働していれば控除の対象となります。退職後に雇用保険に加入していなかったとしても、雇用保険加入期間中に労働した結果として賞与を受け取っているため、雇用保険を徴収しなくてはいけません。
なお、退職の際に部署などから金一封が贈られるケースもあると思いますが、それらについては雇用保険の対象とはなりません。また、退職金には雇用保険がかからないので、混同しないように注意してください。
1-4. 死亡退職した場合の賞与にも雇用保険料がかかる
もし従業員が就業期間に死亡してしまったとしても、労働基準法では一般的な退職と同じ扱いになります。そのため、死亡日が退職日となり、死亡日までの業務によって発生する賃金は雇用保険の対象です。賞与も業務によって発生する賃金に該当するため、対象となります。
ただ、死亡した場合、これまで給与振り込みに使っていた従業員の口座が凍結されるため、賞与を含めた賃金は相続人の口座に振り込まなければなりません。そのため、一般的な保険料の計算とは保険料・税金計算が変わってきます。
死亡後に支給される賃金は、相続人が財産として受け取ることになるため、所得税は計上されません。死亡日が退職日になるため、勤務していた最終月までで年末調整をおこなうことになりますが、死亡後に支給される賃金は所得税に計上されないため、年末調整の計算は死亡日前に支給された賃金で計算をおこない、源泉徴収票を発行することになります。
1-5. 賞与に雇用保険料がかかる・かからないの判断基準とは?
会社から支給する賃金には、さまざまな種類があります。賞与以外の各種手当なども雇用保険料の控除対象となるので注意してください。雇用保険料の控除対象かどうか迷った際は、それが「労働の対価として支払われているかどうか」で判断しましょう。また、「定期的に支払われるもの」も雇用保険料の控除対象となることがほとんどです。
たとえば、通勤手当は通勤をするたびに定期的に支払われるため、雇用保険料の控除対象となります。しかし、先ほど紹介した出産や結婚の際の一時金は、定期的に支払うものではないため控除対象外となります。
以下に、雇用保険料の対象となる賃金とそうでない賃金の一部を紹介するので参考にしてください。
雇用保険料の対象となる賃金 |
雇用保険料の対象にならない賃金 |
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|
関連記事:雇用保険とは?加入条件や手続き方法・注意点をわかりやすく解説!
2. 賞与から引かれる雇用保険料の計算方法
ここからは、賞与にかかる雇用保険料の計算方法について解説します。
2-1. 賞与にかかる雇用保険料率【令和6年】
令和6年4月1日から令和7年3月31日までの雇用保険料率は、下表の通りです。一般の事業の場合は、労働者負担率が0.6%、会社負担が0.95%となっています。
農林水産・清酒製造の事業、建設の事業の場合は、それぞれ負担率が変わるので注意してください。
事業主負担 |
労働者負担 |
雇用保険料率 |
|
一般の事業 |
9.5/1,000 |
6/1,000 |
15.5/1,000 |
農林水産・ 清酒製造の事業 |
10.5/1,000 |
7/1,000 |
17.5/1,000 |
建設の事業 |
11.5/1,000 |
7/1,000 |
18.5/1,000 |
参照元:厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について」
2-2. 賞与にかかる雇用保険料の計算方法
賞与から引かれる雇用保険料の計算方法は、以下の通りです。該当する事業の雇用保険料率を求めたら、それと賞与を掛け合わせれば雇用保険料を算出できます。
賞与から引かれる雇用保険料=賞与×雇用保険料率 |
2-3. 賞与にかかる雇用保険料計算のシミュレーション
では、賞与にかかる雇用保険料がいくらなのか、事例をもとにシミュレーションしてみましょう。
(事例)一般の事業に従事するAさんの賞与(50万円)にかかる雇用保険料
事業主負担分 |
500,000円×0.0095=4,750円 |
労働者負担分 |
500,000円×0.006=3,000円 |
雇用保険料 |
500,000円×0.015=7,750円 |
2-4. 賞与にかかる雇用保険料の端数処理
雇用保険料を計算する際に生じる端数は、50銭以下を切り捨て、50銭1厘以上は切り上げて対応しましょう。
この後解説しますが、賞与においては雇用保険料以外にも、社会保険に関する計算業務は複数存在し、計算方法もさまざまです。社会保険料の計算量が多いことから「年間スケジュールが想定できていない」「それぞれの計算方法を正確に把握できていない」などのお悩みを抱える方も多いでしょう。
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3. 賞与から引かれる雇用保険料以外のもの
雇用保険の他にも賞与から引かれる保険料はあります。どのような保険料が賞与から引かれるのかについて確認していきましょう。
関連記事:ボーナスにかかる社会保険料の計算方法とは?計算例や注意点をご紹介
3-1. 健康保険料
まずは健康保険料です。健康保険は、従業員と会社が折半して負担することになっています。保険料は賞与の1000未満の端数を切り捨てて求められる「標準賞与額」に保険料率をかけることで算出できます。
この保険料率についてですが、地域や月収によって大きく異なるので健康保険組合のホームページなどを確認して調べてみてください。
また、健康保険料率の対象となるのは、年度の累計で573万円までと定められています。この金額を超える場合は、573万円が標準賞与額となるので注意してください。また、保険料率は毎年の3月に見直されます。支給するタイミング次第では、間違った保険料率を適用してしまい、計算ミスが起こる可能性もあるので気をつけてください。
3-2. 厚生年金保険料
厚生年金保険料も従業員と会社の両方が負担をします。こちらも標準賞与額に厚生年金保険料率をかけ合わせて求めます。厚生年金保険料については、賞与1回につき月150万円までが対象額の上限となります。これを超えた場合は、150万円が標準賞与額となるので注意してください。
3-3. 介護保険料
介護保険料も従業員と会社が折半して負担をします。そして他の保険料と同じく、標準賞与額に保険料率をかけ合わせて求めます。介護保険料率は市区町村が定めているので、計算をする際は調べるようにしてください。
介護保険は40歳以上の社員のみが対象となります。40歳になった瞬間には保険料の徴収をおこなっておかなければならないため、徴収を始めるタイミングには注意をしてください。
3-4. 労働保険
労働保険は雇用保険と労災保険の総称です。雇用保険については解説しましたが、労災保険についても賞与から引かれることになります。賞与額に労災保険率をかけ合わせて算出するのですが、保険率は業種によって異なり、労災発生率次第でさらに変化します。
そのため、計算をする際には厚生労働省が発表している労災保険率表を確認する必要があるので注意してください。
3-5. 子ども・子育て手当拠出金
子ども・子育て手当拠出金については会社のみが負担します。また、子どもがいなかったとしても全ての従業員に一律で課せられるので注意をしましょう。標準賞与額に拠出率をかけることで求められます。
3-6. 源泉所得税
最後に源泉所得税です。源泉所得税に関しては求め方が少し複雑なのでしっかりと理解してください。まずは前月の給与から社会保険料などを差し引きます。そして「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」というものがあるので、それを確認して、先ほど求めた金額と扶養親族などの数を当てはめます。これで税率を求めることが可能です。
最後に「賞与から社会保険料等を差し引いた金額×税率」で源泉徴収額を求めれば完了となります。他の保険料と比べると少し求めるための手順が煩雑になっているので注意してください。
関連記事:賞与から所得税を計算するには?賞与からの控除額を解説!
4. 賞与からも忘れずに雇用保険料を天引きしよう!
通常、賞与には雇用保険料がかかりますが、かからないケースもあるので注意が必要です。判断に迷う場合は、「労働の対価として支払われているかどうか」「定期的に支払われるものかどうか」を基準に正しく判断しましょう。
また、雇用保険料率は見直しがおこなわれるため、最新の料率に基づいて正しく計算・控除することが大切です。
賞与から控除する社会保険料は雇用保険だけではありません。他にも健康保険などを控除する必要があり、それぞれに計算方法や料率が違うので計算ミスをしてしまう可能性があります。それぞれの保険料を算出するのにはかなりの時間と手間がかかり、人事担当者の負担も大きくなるでしょう。
そこでおすすめなのがシステムの導入です。雇用保険料に限らず、システムではいろんな保険料を自動で計算できます。もちろん、計算ミスが発生する可能性が減り、人事担当者の負担も減らすことができます。
人事担当者の業務が多くなり困っている会社は多いのではないでしょうか。業務量の多さに悩んでいるという方は、ぜひこのようなシステムの導入を検討してみてください。
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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