なぜ労働時間は1分単位で計算するのか?違法になる根拠や対策方法を解説! |HR NOTE

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なぜ労働時間は1分単位で計算するのか?違法になる根拠や対策方法を解説!

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労働基準法に基づき労働時間は1分単位で計算しなければなりません。労働時間を15分・30分単位に区切ったうえで、切り上げ・切り捨てて賃金計算をするのは違法であり、罰則を受ける可能性があります。本記事では、労働時間を1分単位で計算する理由・根拠について解説します。また、例外的に認められる端数処理や残業代の計算方法も紹介します。

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【資料にまとめられている質問】

・労働時間と勤務時間の違いは?
・年間の労働時間の計算方法は?
・労働時間に休憩時間は含むのか、含まないのか?
・労働時間を守らなかったら、どのような罰則があるのか?

労働時間に関する疑問を解消するため、ぜひ「【一問一答】労働時間でよくある質問を徹底解説」をご参考にください。

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1. なぜ労働時間は1分単位で計算するのか?

労働時間を1分単位で計算する理由については、賃金計算と深い関係があります。ここでは、労働時間の定義を紹介したうえで、なぜ労働時間は1分単位で計算するのか、その根拠について詳しく紹介します。

1-1. 労働時間とは?

労働時間とは、従業員が雇用主の指揮命令下に置かれている時間を指します。そのため、業務に必要な着替えや、強制参加の研修・セミナーなどの時間も労働時間に含まれます。労働基準法第32条により、労働時間は1日8時間、週40時間を超えてはならないとされています。この時間のことを「法定労働時間」といいます。また、労働時間は休憩時間を除いて計算することも押さえておきましょう。

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

引用:労働基準法第32条|e-Gov

関連記事:労働時間とは?労働基準法が定める上限や休憩時間、計算方法を解説!

1-2. 労働時間を1分単位で計算する根拠

法律の条文内に「労働時間は1分単位で計算されなければならない」と明確には記載されていません。しかし、労働基準法第24条の「賃金全額支払いの原則」により、労働の対価としての賃金は、全額労働者に支払わなければなりません。

たとえば、18時42分に仕事が終わった従業員の終業時間を18時30分に切り捨てして計算すると、労働の対価としての賃金が全額支払われないことになります。そのため、切り捨て・切り上げなどをせず、1分単位で労働時間を計算し、給与計算をおこなう必要があります。

(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(省略)

引用:労働基準法第24条一部抜粋|e-Gov

関連記事:賃金支払いの5原則とは?違反したときの罰則や例外を詳しく紹介

1-3. 早退や遅刻も1分単位で計算が必要

従業員の都合による早退や遅刻があったからといって、始業時刻や終業時刻を丸めて処理するのも違法です。たとえば、15時48分に早退した場合に、15時30分として労働時間を計算すると、全額払いの原則に違反することになります。このように、早退や遅刻があった場合も、労働時間を1分単位で計算しなければなりません。あまりにも早退・遅刻が多く、会社の規律が乱れる場合は、就業規則に明示したうえで、違法にならない範囲で減給や降格などの処分を検討しましょう。

1-4. 1カ月単位に30分で区切る場合は例外として認められる

例外として、労働時間を1分単位で計算しなくてもよいケースがあります。時間外労働、休日労働、深夜労働の割増労働があった場合で、その月の合計を算出した結果、1時間未満の端数が生じた際に限り、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げすることが認めれています。

たとえば、1カ月の残業時間の合計が20時間25分であった場合、30分未満の端数である25分は切り捨てして、20時間として賃金計算することができます。ただし、切り捨てだけをおこなうのは原則認められていないため、仮に1カ月の残業時間の合計が20時間31分であった場合は、30分以上を切り上げて21時間としなければなりません。

1か月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること

引用:昭和63年3月14日付通達 基発第150号

1-5. 従業員が有利になるような切り捨て・切り上げは可能

労働時間を1分単位で計算するのが難しいケースもあるかもしれません。そのような場合、従業員に有利となる条件であれば、切り捨てや切り上げは認められます。たとえば、出勤時間を切り捨てたり、退勤時間を切り上げたりすることは従業員にとって有利となるため、問題ありません。一方、出勤時間を切り上げたり、退勤時間を切り捨てたりすることは、支払われる給与が実労働時間分よりも少なくなってしまうので、違法になる可能性が高いです。

関連記事:打刻まるめとは?違法にならないルールの設定方法を解説

2. 労働時間を1分単位で計算する際の注意点

ここでは、労働時間を1分単位で計算する場合の注意点について詳しく紹介します。

2-1. 労働基準法は就業規則よりも優先して適用される

労働基準法第13条により、就業規則など企業の定めた労働条件が、労働基準法の基準に満たない場合、その労働条件は無効になり、労働基準法の基準が適用されることになります。たとえば、15分単位・30分単位で打刻まるめをすると就業規則で定めていても、その規定は無効になり、労働基準法に則り労働時間は1分単位で計算されなければなりません。ただし、労働基準法よりも、就業規則のほうが従業員にとって有利になるような規定であれば、就業規則が優先して適用されるケースもあります。

(この法律違反の契約)
第十三条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

引用:労働基準法第13条|e-Gov

2-2. 15分単位や30分単位で計算すると罰則が課せられる

労働時間は1分単位で計算されなければなりません。15分単位や30分単位で計算している場合、「賃金全額払いの原則」に違反することになり、労働基準法第120条によって30万円以下の罰金の罰則が課せられる恐れがあります。罰金額は1人あたりで計算するため、仮に100人の労働時間を不当に丸めていた場合、3,000万円の罰金が課せられる可能性もあります。このような罰則を受けないためにも、労働時間を1分単位で適切に管理するようにしましょう。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

一 (省略)第二十三条から第二十七条まで(省略)

引用:労働基準法第120条一部抜粋|e-Gov

関連記事:タイムカードの30分単位での記載は違法!正しい記載方法について解説

2-3. 休憩時間の付与義務を確認する

労働時間を1分単位で計算した結果、労働時間が6時間を超える場合、休憩時間の付与義務が生じます。労働時間が6時間超え8時間以下の場合、45分以上の休憩を与える必要があります。また、労働時間が8時間を超える場合、1時間以上の休憩を付与しなければなりません。

なお、労働時間が6時間ちょうどの場合、休憩時間の付与は不要です。ただし、6時間1分になった時点で休憩時間の付与義務が生じます。休憩時間を正しく付与しなければ労働基準法違反になるので、あらかじめ休憩のルールを細かく設定しておくことが大切です。

(休憩)
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。(省略)
引用:労働基準法第34条一部抜粋|e-Gov

関連記事:労働時間内の休憩に関する注意点|休憩時間に関するQ&A付き

2-4. 法定労働時間を1分でも超えたら36協定の締結が必要

法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働は、原則として認められません。ただし、36協定を締結し、届出をすれば、「月45時間・年360時間以内」の範囲で時間外労働が可能になります。また、特別条項付き36協定を締結することで、その上限を延長させることもできます。なお、法定休日(週1日または4週4日)に労働が発生する場合も、36協定の締結が必要になるので注意しましょう。

関連記事:36協定とは何かわかりやすく解説!特別条項や新様式の届出記入方法も紹介!

2-5. 管理監督者には労働時間の規定が適用されない

労働基準法第41条により、管理監督者には労働時間や休憩、休日の規定が適用されません。そのため、36協定の締結などが不要で、残業や休日出勤が可能になります。ただし、労働時間を管理しなくてもよいわけではありません。管理監督者に対しても労働時間の把握義務があります。また、深夜労働に対しては割増賃金を支払わなければなりません。そのため、管理監督者に対しても1分単位で勤怠管理をおこなうようにしましょう。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
(省略)
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者(省略)
(省略)

引用:労働基準法第41条一部抜粋|e-Gov

3. 残業時間も1分単位で計算が必要

残業時間を15分や30分単位で区切って、賃金計算している会社もあるかもしれません。例外を除いて、残業時間も1分単位で計算しなければなりません。ここでは、残業時間の計算方法やその注意点について詳しく紹介します。

3-1. 残業時間の切り捨ては違法になる

残業時間を15分単位、30分単位などで切り捨てるのは、「賃金全額払いの原則」に反することになり違法となります。ただし、残業時間を1分単位で計算すると、従業員の負担が大きくなったり、管理が煩雑になったりするケースもあります。事務負担を削減するため、従業員が有利になるよう、残業時間を切り上げて計算するのは違法になりません。ただし、従業員とのトラブルを防ぐため、きちんと計算方法を就業規則に記載して、事前に周知しておくようにしましょう。

3-2. 法定外残業には割増賃金の支給も必要

残業には2種類があり、「法定外残業」と「法定内残業」があります。法定外残業とは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて残業した時間のことです。一方、法定内残業とは、法定労働時間を超えない範囲の残業を指します。

法定内残業の場合、残業時間分の基礎賃金を支払えば問題ありません。しかし、法定外残業が発生した場合、割増率25%以上を適用して、残業代を計算する必要があります。このように、残業時間に対しては割増賃金の支払いが必要になるケースがあることを押さえておきましょう。

3-3. 月60時間超えの法定外残業が発生すると割増率の変更が必要

労働基準法の法改正により、月60時間超えの法定外残業に対しては、割増率50%以上を適用して残業代を計算する必要があります。残業が発生した場合、法定内残業代、法定外残業代(月60時間以内)、法定外残業代(月60時間超え)に区切って残業代を計算しなければならないので注意が必要です。

3-4. 深夜労働や休日労働にも気を付ける

時間外労働だけでなく、深夜労働(22時から5時まで)や休日労働(法定休日の労働)についても、割増賃金が発生します。深夜労働と休日労働の割増率は、次の通りです。

  • 深夜労働:25%以上
  • 休日労働:35%以上
  • 時間外労働と深夜労働:50%以上(月60時間超え時間外労働の場合は75%以上)
  • 休日労働と深夜労働:60%以上

このように、深夜労働は時間外労働や休日労働と重複するケースもあります。そのような場合、割増率を合算して、割増賃金を計算する必要があります。深夜労働や休日労働の時間についても、通常の労働時間と同様で1分単位で計算されなければなりません。15分・30分単位などで丸めて、割増賃金を不当に減らすのは違法になるので気を付けましょう。

関連記事:休日出勤の定義とは?支給すべき割増賃金の計算方法や注意点を解説

4. 残業代の計算方法とその注意点

残業代を計算する際は、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、残業代の計算方法とその注意点について詳しく紹介します。

4-1. 50銭未満と以上の処理

1時間あたりの割増賃金を計算した際に端数が生じてしまった場合は、次のように処理することが認められています。

  • 50銭以上1円未満は1円に切り上げ
  • 50銭未満は切り捨て

たとえば、1時間あたりの割増賃金が1,100.4円の場合は、50銭未満の0.4円を切り捨てし1,100円とすることができます。逆に、1時間あたりの割増賃金が1,100.8円の場合は、50銭以上の0.8円を切り上げて1,101円とすることが可能です。

割増賃金計算の端数処理に当たって次の方法は、常に労働者の不利となるものでなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、労働基準法第24条および同法第37条違反としては取り扱わないとされています。 具体的には、次のとおりです。

  1. 1か月における時間外労働、休日労働および深夜業のおのおのの時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
  2. 1時間当たりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
  3. 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業のおのおのの割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、2.と同様に処理すること。

引用:Q10 残業手当の端数処理は、どのようにしたらよいですか。|厚生労働省

4-2. 1カ月での賃金支払額は100円単位で四捨五入できる

もし1カ月の賃金の合計額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満は切り捨て、50円以上100円未満は切り上げする処理が認められています。ただし、本処理をおこなうには、就業規則にあらかじめ明記しておく必要があります。就業規則に記載がない場合、この処理は認められないので気を付けましょう。

4-3. 1カ月の賃金支払額に1,000円未満の端数が生じた場合の繰り越し

1カ月の賃金支払いに、1,000円未満の端数が生じた場合、もちろん切り捨ては認められません。ただし、1,000円未満の端数を翌月の賃金支払い時に繰り越すことは可能です。なお、翌々月以降への繰り越しは認められていません。また、このような繰越処理をおこなうためには、就業規則への記載が必要となります。

(3)1か月の賃金計算
D.1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合は50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うことが出来る。

E.1か月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことが出来る。

なお、E・Dの取り扱いをする場合は、その旨就業規則に定めることが必要です。

引用:3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか|厚生労働省

4-4. 【ポイント】ノーワーク・ノーペイの原則とは?

ノーワーク・ノーペイの原則とは、労働者が労働を提供していない場合、使用者は労務を提供されていない部分について、賃金を支払わなくてもよいという原則のことです。つまり、従業員が働いていない時間については、会社は賃金を支払う必要がないということです。ノーワーク・ノーペイの原則については、民法第624条が根拠とされています。次のようなケースがあった場合に、ノーワーク・ノーペイの原則を適用することができます。

  • 遅刻
  • 早退
  • 欠勤
  • 介護休業
  • 産前産後休業
  • 育児休暇・育児休業
  • 自然災害等の不可抗力による休業
  • 公民権行使の期間 など

ノーワーク・ノーペイの原則を適用する場合も、労働時間は1分単位で計算されなければなりません。つまり、早退や遅刻があった場合、1分単位で賃金カットすることができます。15分・30分単位で計算することは認められないので注意しましょう。

(報酬の支払時期)
第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
2 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。

引用:民法第624条|e-Gov

5. 労働時間を1分単位で正確に管理するための対策

通常の労働時間だけでなく、時間外労働や休日労働、深夜労働などの時間数も1分単位で計算しなければならないため、勤怠管理は煩雑になりやすいです。ここでは、労働時間を1分単位で正確に管理するための対策について詳しく紹介します。

5-1. タイムレコーダーはデスク付近に設置する

タイムカードで勤怠管理をしている場合、従業員の打刻時間が実労働時間とズレてしまったり、打刻漏れが頻繁に発生したりすることで、正確な労働時間を把握できないケースもよくあります。このような原因として、打刻機の場所が遠かったり、目につきにくい場所に置かれていたりすることが挙げられます。タイムレコーダーなどの打刻機は、従業員の目につきやすいデスク付近に設置するようにしましょう。

5-2. 就業規則を見直す

労働時間を1分単位で正しく計算するためには、従業員の協力が不可欠です。労働者に打刻や勤怠のルールを遵守してもらうことで、正確な勤怠管理や給与計算を実施することができるようになります。まずは勤怠管理のルールを見直しましょう。また、就業規則にルールを細かく明記し、きちんと周知することで、労働時間の管理の正確性を高めることができます。

5-3. 1分単位で給与の自動計算までできる勤怠管理システムを導入する

タイムカードやExcel・スプレッドシートなどの表計算ソフトを利用した勤怠管理では、どうしても人的ミスが生じ、1分単位で正しく労働時間を管理できない可能性があります。労働時間の管理に悩みを感じているのであれば、勤怠管理システムの導入がおすすめです。

勤怠管理システムであれば、PC・スマホやICカードを用いて、打刻をおこなうことができます。電子データで管理できるため、不正打刻が生じにくく、労働時間を1分単位で正確に管理することが可能です。また、給与計算も自動化できるので、業務の効率化も期待できます。さらに、法改正に自動で対応できるシステムもあるため、事務負担を削減することが可能です。

6. 労働時間は原則1分単位で計算!端数の切り捨てはNGなので要注意

労働基準法に基づき、労働時間は1分単位で管理しなければなりません。ただし、残業時間や割増賃金の計算の場合、例外として30分単位で丸めて計算できるケースもあります。しかし、通常の労働時間を15分単位などで不当に丸めて計算すると、労働基準法違反になり、罰則が課せられる恐れもあります。労働時間を1分単位で正確に管理するためにも、勤怠管理システムの導入を検討しましょう。

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