休日には法定休日と法定外休日があり、休日出勤がどちらに該当するかで賃金計算が変わってきます。
正しく計算する上でも、休日出勤の定義を把握する必要があるでしょう。
今回は、休日出勤させた場合に支給すべき割増賃金の計算方法や休日出勤の基礎的なルールについて詳しく紹介します。
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤させた際の対応を知りたい」「代休・振休の付与ルールを確認したい」という人事担当者の方は「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をぜひご一読ください。
目次
1. 休日出勤の定義
休日出勤とは、会社が休みと定めた日に従業員を労働に従事させることを言います。
休日には、法律によって定められた「法定休日」と、会社が独自で定めている「法定外休日」の2種類があります。
その中で、法定休日に出勤させること単体を指す場合は「休日労働」と表します。
法定休日と法定外休日については、後述で詳しく解説します。
1-1. 休日出勤をさせることができる時間や回数
休日出勤は、36協定を締結・届出することで可能になりますが、休日出勤の回数や時間そのものの制限は法律で特に定められていません。ただし、制限なく従業員へ休日出勤を命じていいものではなく、休日出勤をさせる場合は、36協定の上限の範囲内でおこなう必要があります。
時間外労働や休日労働をさせる際に必須となる36協定には、時間外労働の上限と休日労働の回数の上限を定めておく必要があります。その規定をもとに、休日出勤の時間や休日労働の回数には制限があります。
労働基準法によって36協定の締結・届出によって可能になる時間外労働の上限は月45時間、年360時間と定められています。[注1]
所定休日に出勤する休日出勤の残業と合わせて、この上限の範囲内におさまるようにしなくてはいけません。
例えば、8時間勤務の休日出勤の場合は、他に時間外労働が発生しなかった場合、月に命ずることができるのは5回が限度です。
6回になると、48時間となり上限を超えてしまいます。
休日出勤以外に残業もさせている場合は、さらに、月に命ずることのできる休日勤務の回数は限られてきます。
ただし、特別条項付き36協定を締結・届出する場合はこの限りではありません。
また、法定休日に労働させる休日労働の上限回数は、36協定において定めている日数が上限となります。
上限を超えて休日勤務を命じた場合は、労働基準法の違反となり罰則が科せられますので注意しましょう。
関連記事:法定休日出勤の回数について主なルールや注意点を解説
2. 休日出勤の休日にはそれぞれ種類がある
会社が定められる休日には「法定休日」「法定外休日」「振替休日」「代休」の4種類があります。
それぞれの違いや特徴を押さえておくことは、賃金計算や労務管理をする上で必要です。
次に、それぞれの休日について詳しく解説します。
2-1. 法定休日に労働させた場合
法定休日とは、労働基準法で定められた休日のことです。
労働基準法では、週に1回以上または4週に4回以上の休日を与えることを義務付けています。[注2]
原則、法定休日に労働者を働かせてはいけませんが、事前に36協定を締結し所轄労働基準監督署長へ事前に届け出をすることで、休日労働を命ずることができます。
この際は、就業規則に休日労働に関する規定を設けておく必要もあります。
法定休日の曜日が就業規則に定められていない場合は、暦週(日~土)の一番最後の日つまり、土曜日が法定休日となります。
また、法定休日に休日勤務させた場合は、35%以上の割増賃金を支払わなくてはいけません。[注3]
関連記事:法定休日をサクッと理解|法定外休日との違いや振替休日・代休との関係について解説
2-2. 法定外休日に労働させた場合
法定外休日は、前述で解説した法定休日以外の休日のことを指します。
会社が独自で設定している「所定休日」が該当します。
週休2日制の会社の場合、週2日の休日のうち1日が法定休日、1日が所定休日(法定外休日)となっています。
会社が所定休日を設ける理由には、労働時間の上限が関係しています。
労働基準法では労働時間の上限を「1日8時間、週40時間」までと定めています。
このため、1日の所定労働時間が8時間の会社では、週に5日までしか勤務させられないため、一般的に所定休日を1日設けて週休2日制としています。
なお、週に40時間を超えて所定休日に休日勤務させた場合、超過した時間に対して25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
2-3. 振替休日に労働させた場合
振替休日とは、休日出勤する休日を別の労働日と予め入れ替えることをいいます。
事前に休日を入れ替えておくため、休日出勤した休日は所定労働日としてみなされ、休日労働の手当を支給する必要がありません。
ただし、休日を入れ替えたことで、週の労働時間が40時間を超えた場合や、1日の労働時間が8時間を超えた場合は、超過した時間に対して25%以上の時間外労働の割増賃金を支給しなくてはいけません。
休日に労働が発生しそうな場合には振替休日を取得させることで人件費を抑えることができます。
しかし、振替休日を付与するには付与のタイミング等の要件が存在します。当サイトでお配りしている「休日・休暇ルールBOOK|割増賃金の計算など休日労働への対応も解説!」では、振替休日の付与方法だけでなく、振替休日と混同しやすい代休との違いや、効率良く休日を管理する方法についても解説しています。無料でご覧いただけますので、休日出勤に対する適切な対応を確認したい方は、こちらから「休日・休暇ルールBOOK」をダウンロードしてご確認ください。
2-4. 代休を付与していた日に労働させた場合
代休とは、休日出勤した後に、その代償として休日を付与することです。
振替休日が事前に休日を付与するのに対し、代休は事後に付与するため、代休を取得させたとしても、休日手当の35%(または25%)の割増分は相殺することができず、支給しなくてはいけません。
その後、代休を取得した日には賃金が発生しません。
関連記事:休日出勤した従業員に代休を取得させるには|振替休日との違いについても解説
3. 休日出勤で支給すべき割増賃金
従業員が休日出勤した際は、割増賃金を支給しなくてはいけません。
割増賃金は次の計算式によって算出します。
1時間あたりの基礎賃金額は「月給÷1年間における1ヵ月の平均所定労働時間」にて求めることができます。
また、月平均所定労働時間は「(365日−1年間の休日合計日数)×1日の所定労働時間」で求めることができます。
また、休日出勤が法定休日の場合は割増率35%、法定外休日で週の労働時間が40時間を超えた場合や1日の労働時間が8時間を超えた場合は割増率25%でそれぞれ計算します。
また、法定休日・法定外休日にかかわりなく、労働時間が22時~5時に及んだ場合は、深夜労働として25%の割増賃金が発生します。
例えば、基礎賃金額が21万円、法定休日に8時間勤務した場合で計算してみましょう。平均所定労働時間は140時間とします。
- 1時間あたりの基礎賃金額 210,000÷140=1,500
- 休日手当 1,500×1.35×8=16,200
この場合、休日手当16,200円を支給することになります。
関連記事:休日出勤は割増賃金になる?ケース別にそれぞれ詳しく紹介
3-2. 休日出勤で残業が発生した場合の賃金
休日出勤で残業が発生した場合の賃金は所定休日か法定休日かによって扱いが異なります。
所定休日に残業が発生した場合
所定休日に1日8時間、週40時間を超えて残業が発生した場合は、時間外労働分の割増率25%以上の割増賃金を上乗せして支払う必要があります。また、残業が22時~翌朝5時までの間で発生した場合は、深夜労働の割増率25%以上の割増賃金を支払わなければならず、時間外労働と同時に発生した場合には、割増率を合計した50%以上の割増賃金を支払います。
所定休日に残業が発生した場合の賃金の考え方は通常の労働日と同じです。所定休日には休日労働の割増賃金は適用されないので、気をつけましょう。
法定休日に残業が発生した場合
法定休日には法定労働時間がないため、時間外労働というものも存在しません。そのため、休日労働が8時間を超過しても残業扱いにはならず、それに対する時間外労働の割増賃金は発生しません。
したがって、労働時間にかかわらず割増率35%以上の割増賃金を支払う必要があります。また、休日労働の残業が深夜に及んだ場合は割増率25%以上の割増賃金をあわせて割増率60%以上の賃金を支払わなければなりません。
ただし、休日出勤の休日が所定休日か法定休日かをしっかりと区別して賃金計算をおこないましょう。
関連記事:休日出勤が残業になる場合とは?計算方法とあわせて解説
4. 休日出勤をさせる際の注意点
ここでは、休日出勤を命ずる際に気を付けておくべき注意点について紹介します。
適切に休日出勤を管理できないと、労働基準法の違反とされ罰則が適用となる可能性があります。
正しく休日出勤させるためにも、しっかりと注意点を押さえておきましょう。
4-1. 祝日が必ずしも法定休日とは限らない
祝日は法定休日だと思われがちですが、実はそうとは限りません。
祝日を法定休日と定めるかどうかは、会社の判断によります。
そもそも法定休日は週1回以上与えれば良く、どの曜日を法定休日にするかは会社が自由に決められます。
祝日を法定休日と定めていない場合は、祝日は所定休日という扱いになり、35%の割増賃金を支払う必要はありません。
ただし、就業規則で祝日を法定休日と定めている場合は、休日出勤扱いになり35%の割増賃金を支払わなくてはいけません。
4-2. 休日労働や時間外労働をさせる場合は事前に36協定の締結・届出が必要
休日労働や時間外労働を命じるには36協定を事前に結び、所轄の労働基準監督署長に届出をする必要があります。
また、就業規則にも規定しておかなくてはなりません。
これらの手続きをせず、従業員に時間外労働や休日労働を命じた場合は、労働基準法違反となりますので注意が必要です。
また、36協定を締結していても、合理性のない休日出勤を命じることは、パワハラにあたることもあるため、注意しましょう。
4-3. 任意ではない研修やイベントは休日出勤になることも
例えば次のような行事が休日に開催され、任意参加の場合は労働時間として扱われることはありません。
- 研修
- 懇親会
- 社内イベント
しかし、これらが強制参加(義務参加)の場合は、休日出勤扱いとなり、休日手当が発生します。また、任意としつつも、欠席することで社内評価や影響したり減給になるような場合は、休日出勤となります。このようなケースで会社が休日手当を支払わなかった場合は、労働基準法の違反となる可能性があるでしょう。
4-4. サービス残業なども休日出勤になる可能性が高い
仕事をする上では、納期が迫っていたり、平日の出勤だけでは業務が終わらないなどの理由から、会社からの明らかな指示はないものの、出勤せざるを得ない状況になることは珍しくありません。
このような、出勤指示が明示されておらず、上司も「見て見ぬふり」といった状態でサービス残業として出勤するような場合、「出勤せざるを得ない事情がある」と証明できるものがあれば、その出勤が休日出勤として扱われる可能性があります。
過去の判例においても、使用者(指揮者)の命令下に置かれている時間は労働時間であると判断されています。
4-5. 仕事の持ち帰りも一部休日出勤となる
会社で仕事をしなくとも、会社が状況を把握しておきながら、自宅にパソコンなどを持ち帰って休日に業務をおこなう場合は休日出勤として扱われます。
なお、この場合は「業務に要した時間」「一般的にはどれほどの時間がかかる業務か」といった証明が必要になります。
仕事の持ち帰りは違法性になる可能性がある上、セキュリティ面や過労のリスクもあるため、事前に社内規定を設けておくべきでしょう。
4-6.休日出勤は代休を付与しないと違法?
休日出勤をしたにも関わらず代休が付与されず、結果として月の休みが3日しかなかった場合には違法となります。これは、労働基準法において、以下のいずれかの休日を与えなければならないと定められているためです。
- 毎週1日の休日
- 4週間を通じて4日以上の休日
しかし、上記以上の休日が与えられている場合については、代休がないこと自体が違法になるとは言えません。
5. 休日出勤を強制することは可能?拒否された場合の対応
従業員に休日出勤を強制することは場合によっては可能です。ただし、休日出勤を命じるには以下の条件を満たしている必要があります。
- 就業規則で休日出勤について定めている
- 36協定を締結・届出していて、なおかつ時間外労働と休日労働の上限の範囲内である
- 従業員に休日出勤を拒否する正当な理由がない
基本的には就業規則に定めて、36協定も締結・届出して、時間外労働と休日労働の上限を超えていなければ、企業は休日出勤を従業員に命じることができます。
ただし、休日出勤を拒否する従業員の中には正当な理由があって断らざるをえない人もいます。そのため、従業員が休日出勤を拒否する場合には、まず理由を聞くようにしましょう。
そして、その理由が以下に該当する場合には、他の人で代理を立てるなど、休日出勤をずらすように努めましょう。
- 冠婚葬祭
- 介護・付き添い
- 引っ越し
- (本人の)通院
休日出勤をさせる条件を満たしていても、従業員が拒否する場合には、会社は懲戒処分にするという手段も考えられます。過去には、休日出勤命令を拒否した従業員が就業規則に則って懲戒処分にされるのは可能であると認められた判例もあります。
6. 休日出勤手当が発生しないケース
休日出勤をすれば必ず休日出勤手当が支払われるというわけではなく、休日出勤をしても休日出勤手当が発生しないケースもあります。
以下では、休日出勤手当が発生しないケースについてそれぞれ解説します。
6-1. 休日出勤の振替休日を決めていた場合
休日出勤の振替休日を事前に設定していた場合、法定休日に出勤しても35%の割増賃金は発生しません。
ただし、休日を振り替える場合は、事前に振替日を決めておかなければいけません。振替休日に関して就業規則に明記されていることに加え、振り替え後も法定休日の要件を満たしていることも条件となります。
休日を振り替えたことによって時間外労働が発生した場合、賃金の割増率は25%です。深夜労働の場合も同じです。
6-2. 法定外休日の勤務
法定外休日に勤務した場合、通常の賃金は支給されますが、35%以上の割増賃金は発生しません。
ただし、法定外休日の勤務が週40時間を超えている場合は、その分は時間外労働となり、割増賃金として通常の賃金の25%以上が支払われます。
6-3. 管理監督者に該当する場合
労働基準法において、管理監督者に該当している場合は休日出勤をしても割増賃金は発生しません。
具体的に管理監督者とは、労働条件を決定したり、その他の労務管理をおこなうなど、経営者と一体的な立場にある従業員のことです。管理職が管理監督者というわけではなく、労働基準法上で管理監督者に該当する人のことを指します。
管理監督者にあたるかどうかは、権限や待遇面なども考慮した上で判断されるため、あらかじめ確認をしておくと良いでしょう。
6-4. 休日出勤手当が基本給に含まれている場合
労働雇用契約書の中に休日出勤を想定した割増賃金を含んだ表記があるなど、基本給に休日出勤手当分の賃金が含まれている場合は、休日に出勤したとしても手当は支給されません。
しかし、割増賃金として表記されている金額以上の休日出勤が発生した場合は、例外として想定超過分の休日出勤手当が支給されます。
7. 休日出勤のルールを理解し正しく労務管理しよう
休日出勤は、会社が定めた休日に労働を命ずることです。
休日には法定休日と法定外休日の2種類があり、休日出勤がどちらに該当するかによって、賃金計算など労務管理の仕方が変わってきます。
他にも、休日勤務した日の代わりに休日を別の労働日に入れ替える振替休日や代休があります。
振替休日や代休の違いについても、合わせておさえておきましょう。
従業員の心身の健康を適切に管理する上でも、休日は必要です。
法律上休日を与えなくても問題はないことがありますが、十分な休息を取ることが生産性や仕事に対するモチベーション向上につながることもあるため、適切に休日を与えるようにしましょう。
休日出勤に関するルールを正しく理解し、法律に則った運用を心がけましょう。
[注2]厚生労働省|労働時間・休日
[注3]厚生労働省|しっかりマスター労働基準法「割増賃金編」