休日出勤を命じた際に、給与計算で気を付けなければならないのが割増賃金についてです。
労働基準法において、休日出勤など所定の労働を行った場合は、一定の率を乗じた割増賃金の支払いを義務付けており、違反すると罰則の対象となるため注意が必要です。
今回は、休日出勤で割増賃金となるケースとそうでないケースについて、それぞれ詳しく解説します。
従業員に休日労働をさせた場合、割増賃金の計算はどのようにおこなうのか、残業扱いになるのかなど、休日労働に対して発生する割増賃金の計算は大変複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、休日出勤の割増賃金計算について徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤の割増賃金計算が不安」「残業手当になるのか、休日手当になるのか分からない」という人事担当者の方は「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をぜひご一読ください。
1. 休日出勤が割増賃金になるケース
休日出勤させたからといって、必ずしも休日手当の割増賃金支払いが必要だとは限りません。
休日手当の割増賃金支払いが必要となるのは、法定休日に出勤させた場合のみです。
その他の休日については、法定労働時間の上限を超えているか否かなど労働基準法の要件に従ってケースごとに考えていく必要があります。
次に、それぞれの休日に出勤させた場合の割増賃金についてみていきましょう。
1-1. 法定休日出勤の場合
法定休日に出勤をさせた場合、その日の労働時間に対し35%の割増率で賃金計算します。[注1]
なお、法定休日に時間外労働をさせても、時間外労働の割増計算は必要ありませんが、深夜労働に対しては割増賃金が必要となります。
深夜の時間帯(22時~翌朝5時)に労働させた場合、25%の割増率で賃金計算するため、35%の割増率と合算して60%の割増率で計算しなくてはいけません。
たとえば、法定休日に9時~24時(1時間の休憩を含む)まで勤務したとしましょう。
この場合、9時~22時までの休憩を除いた12時間分は35%の割増率で賃金計算をします。
22時~24時までの2時間分は60%の割増率で計算し、それぞれ合算した賃金がこのケースでの休日手当の賃金となります。
1-2. 祝日に出勤した場合
祝日に勤務させたら休日手当が必要だと思われる方は少なくないでしょう。
法律上では1週間の内どこかで必ず1回(もしくは4週に4回)休日を与えれば良いので、祝日を法定休日とするか否かは会社が独自で決めることができます。
祝日を法定休日として就業規則などで定めている場合は、前述でも解説した通り「法定休日出勤の場合」の賃金計算となります。
祝日を法定外休日としている場合は、下記の通りケースごとに適用される割増率が異なります。
- 法定労働時間の上限「1日8時間、週40時間」を超えている場合
超過した時間に対し、時間外労働の割増率25%が適用
- 深夜の時間帯(22時~翌朝5時)に労働させた場合
深夜手当の割増率25%が適用
- 深夜の時間帯で、法定労働時間の上限を超えている場合
時間外労働の割増率25%と深夜手当の割増率25%の合算50%が適用
1-3. 代休をとった場合
代休とは、休日出勤させた後に、休日を別の労働日へ入れ替えることをいいます。
事後に休日の入れ替えを行うため、休日手当を一旦支給しなてくはいけません。
法定休日に出勤させた場合は、35%割増率で一旦賃金計算を行います。
また、深夜時間に勤務させた場合は前述で解説した「法定休日出勤の場合」の通りとなります。
2. 休日出勤が割増賃金にならないケース
休日出勤が、法定外休日や振替休日に該当する場合は、割増賃金の支給は必要ありません。
ただし、深夜残業など別の割増賃金が必要となる場合がありますので、注意が必要です。
次で詳しく解説します。
2-1. 法定外休日出勤の場合
法定外休日は、法定休日以外の休日を指します。
企業が独自で設けているような特別休暇などが該当します。
法定外休日は法律で義務化された休日ではないため、35%割増の休日手当の支給は不要です。
ただし、法定外休日であっても、1日8時間もしくは週40時間の法定労働時間を超えた場合は、時間外労働に対して25%の割増賃金が必要となってきます。
たとえば、1日の所定労働時間が7時間、週休2日制(土曜・日曜)の会社のケースでみてみましょう。
法定外休日である土曜日に7時間の休日出勤をしたとします。
月~金曜までで既に労働時間が35時間となっているため、土曜日に休日勤務させると労働時間が42時間となり、週40時間の労働時間を超過します。
この場合、超過した2時間分に対し、25%の割増賃金で計算しなくてはいけません。
2-2. 振替休日を決めていた場合
振替休日とは、休日を別の労働日へ予め振り替えしておくことを言います。
事前に休日の入れ替えをするため、休日出勤の割増賃金は支給する必要がありません。
ただし、休日の振り替え先の週で、法定労働時間の上限「1日8時間、週40時間」を超えている場合は、超過した時間に対して時間外労働の25%の割増率で賃金計算しなくてはなりません。
法定休日の規定についてもしっかりと確認しておきましょう。代休の場合の割増賃金と振替休日で発生する割増賃金は基準や性質が異なっています。
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2-3. その他、特殊なケース
法定外休日出勤や振替休日以外にも、割増賃金が発生しないケースがいくつかあります。
次に、それぞれのケースについて詳しく紹介します。
①管理職は休日出勤と時間外労働の割増賃金支払い対象外となる
休日出勤や時間外労働の割増賃金は、すべての労働者に対して支払われるものではありません。
労働基準法第41条では、管理職に関しては、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しないと定めています。
つまり、管理職が休日出勤や時間外労働を行っても、割増賃金の対象外になるということにるのです。
しかし、ここで注意したいのが、部長や工場長といった肩書だけで、労働基準法でいう管理職であると判断できないことです。
労働基準法でいう管理職は、職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金などをもって総合的に判断されものとされています。
そのため、社内で管理職としての肩書があっても、労働基準法上の管理職であるとみなされない場合は、休日出勤や時間外労働の割増賃金を支払わなくてはいけません。
②裁量労働制で勤務するケース
裁量労働制とは、実際に働いた時間に関係なく、一定の時間働いたと見なす制度です。
たとえば、みなし時間7時間の裁量労働制の場合、5時間働いた日の翌日に10時間働いても、両日ともに8時間労働したとしてみなされることになります。
裁量労働制を取り入れている会社の場合、前述でも説明の通り、仮に1日10時間働いたとしても、一定の時間以上はみなされないため、時間外労働の割増賃金は適用されません。
しかし、みなし時間を9時間と定めていた場合は、法定労働時間の条件「1日8時間」を超えますので、1時間分に対し25%の割増賃金が必要です。
また、法定休日または法定外休日に休日出勤した場合は、深夜残業した場合についても、割増賃金が必要となりますので注意しましょう。
3. 休日出勤の割増賃金が必要なケースについてしっかり押さえておこう
休日出勤で割増賃金の支給が必要となるケースは、法定休日に勤務させた場合です。
この場合は休日の割増賃金を支給しなくてはいけません。
他の休日でも、法定労働時間の上限を超えている場合は、時間外労働の割増賃金が必要となります。
また、深夜に勤務が及んだ場合は、深夜の割増賃金が別途必要となりますので、合わせて覚えておきましょう。
休日出勤の賃金計算を正しく行うには、割増賃金が必要なケースと不要なケースについてしっかり把握しておくことが大切です。
[注1]厚生労働省|しっかりマスター労働基準法「割増賃金編」