休みと出勤日を交換する形で取得する「振替休日」ですが、原則として、半日単位では取得できないことが多くなっています。
今回は、振替休日を半日単位で取得できない理由のほか、労働基準法上で定める週休について、また、振替休日と代休の違いについて解説していきます。
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤させた際の対応を知りたい」「代休・振休の付与ルールを確認したい」という人事担当者の方は「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をぜひご一読ください。
1. 振替休日は半日単位で取得できるか
振替休日は半日単位など、分割して取得することが可能なのでしょうか。原則として、振替休日は、分割しての取得は不可となっています。
これは、振替休日が、出勤日と休日を入れ替えることで取得できる休日であることに関係しています。
基本的に、振替休日は、出勤日と休日を交換しただけという考え方に基づいており、休日の割増賃金の対象にはならず、通常の勤務と同等の扱いです。
1-1. 振替休日が半日単位で取得できない理由
振替休日が半日単位で取得できない理由には、次の3つが挙げられます。
①法定休日が暦日単位で付与するものであるため
前提として、休日が法定休日に当たる場合、休日は暦日単位(労働基準法における午前0時から24時までにあたる24時間)で付与するものであるとされています。
暦日を基本として考える場合、法で定められた法定休日を振り替えて振替休日を取得する場合には、原則半日単位では与えられないということになります。
②休日は午前0時~午後0時までで付与する必要があるため
休日を付与する際、休日そのものについては、午前0時~午後0時までの時間帯で与える必要があります。
これは、労働基準法上で、休日とは午前0時~午後0時までの時間帯に勤務をしないこととされており、半日単位での振替休日が認められないということとも関係しています。
③半日は勤務したものとみなされるため
半日単位で休日を取得するということは、当たり前のことながら、残りの半日は出勤し、労働するということになります。
半日の休日は、結果として時間を短縮して勤務したものとみなされるため、休みという扱いにはならないのです。
1-2. 例外で振替休日が半日単位で取得できるとき
振替休日が半日では取得できない理由について説明してきましたが、例外として半日単位での取得が可能な場合もあります。
そのパターンとして、法定外休日に出勤をした場合が挙げられます。法定外休日の出勤については、問題なく振替休日の半日単位での取得が可能です。
なお、代休を取得するときには、法定外休日・法定休日を問わず、半日単位で休日取得が可能です。
関連記事:振替休日と代休の違いとは?計算方法の違いや注意点を解説
2. 労基法の求める週休の特定
労働基準法では、35条1項にて、週休について、「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。」と規定しています。
あくまでも、週に1度の休日を与えるということについて述べているだけであり、休日の特定についてまでは言及されていません。
しかし、行政指導上は特定の指導がなされており、現に大半の企業では就業規則で休日を特定しているというのが現状です。
3. 休日の振替と代休
使用者が従業員に対し、さまざまな事情からあらかじめ休日と定められた日を出勤日とする場合、どのような形で休日を取得させるのかについては、労働基準法上で扱いが異なります。
出勤日の事前に休日を振り替る「振替休日」と、出勤日の事後に休みを振り替える「代休」について、それぞれの違いを確認しておきましょう。
3-1. 振替休日とは
振替休日とは、もともと休日とされていた日を労働日とし、その代わりに他の日を休日とするものを指します。
原則として、振替休日の場合では、「休日と労働日を交換する」という意味合いをもっており、労働をした日に対して必ず休みを設けなければならないというルールになっています。
関連記事:振替休日の基本的な部分を休日の定義や条件とあわせて詳しく紹介
3-2. 代休とは
代休の場合には、休日に労働をしたあと、その代わりとして、出勤日以降に休みを設けて取得することを指します。
代休の場合には、あくまでも休日出勤をした代償に休みを取るという前提になるため、休みの取得が義務付けられていません。
関連記事:代休の定義とは?振休・有給の違いなど基本的なところを詳しく解説
4. 事前の振替と振替休日
事前の振替にあたる振替休日を従業員に取得させる場合には、どのような点を意識し、注意しながら運用していく必要があるのでしょうか。
以下、これらについて確認をしていきましょう。
4-1. 振替休日を取得させる際に意識しておきたい点
振替休日を取得させる際に意識しておきたい点には、次の2点が挙げられます。
① 振替休日を決める際のタイミング
振替休日を取得する際には、まず交換を考えている勤務日をあらかじめ決めておく必要があります。
この決定は、勤務する日の前日までに行っておく必要があります。振替休日と勤務日の交換決定が勤務日までになされていない場合には、休日を取得した場合でも、振替休日とはみなされません。
②振替休日取得の際の給与計算方法
振替休日を取得した場合の賃金については、あくまでも出勤日と休日を交換しただけという扱いになるため、割増賃金支払いの対象にはなりません。
通常の勤務時間と同額の賃金を支払う形となります。
そのため、使用者側からみると、振替休日はコスト面において大きなメリットがあるといえます。
4-2. 振替休日を取得させる際の注意点
従業員に振替休日を取得させる場合には、以下3つの点に注意が必要です。
①振替休日に関する事項を就業規則に定めなければならない
振替休日を企業内で導入する場合には、就業規則への規定が前提となります。
規定をされていないまま、振替休日のルールを運用すると、割増賃金の請求など、のちのトラブルにつながることが予想されます。
② 振替休日の取得期限を設ける
振替休日は事前に労働日と休日を入れ替えるものなので、取得期限は法律などで特に定められていません。ただし、労働日と休日の間が空くと、手続き上複雑になる場合があるので、振替休日を設定できる日に期限を設けて、できるだけ同一賃金の支払期間内(給料の締め日前)に取得させるようにするようにしましょう。
会社で振替休日の取得期限を定めた場合には、就業規則などに記載をして周知しておきましょう。
③週を越える振替は割増賃金の可能性に注意する
週を越える振替を行った場合、時間外の割増賃金が発生する可能性があります。
労働基準法では、1日8時間・週40時間以上の労働に対し、25%以上の割増賃金を支払う義務があるとされています。すでに週40時間以上の労働をしたあと、振替により労働時間が増えるような形となると、上述の割増賃金を支払う必要が出てきます。
代休の付与の場合、勤務日の労働に対して、必ず休日労働の割増賃金の支払いが発生しますが、振替休日の付与の場合には休日労働の割増賃金の支払いは発生しません。
このことで、「振替休日を付与すれば割増賃金の支払いが不要」と誤認してしまう場合があります。
しかし、上記のように、法定労働時間を超過した労働になっていた場合には、時間外労働の割増賃金の支払いが必要です。当サイトではこのような振替休日の注意点や要件をわかりやすく解説した「休日・休暇ルールBOOK|割増賃金の計算など休日労働への対応も解説!」という無料のガイドブックをお配りしています。代休との比較もおこなっているため、適切に振替休日を運用したい方はこちらから「休日・休暇ルールBOOK」をダウンロードして、ご確認ください。
5. 振替休日では原則半日単位での取得はできない
事前の振替にあたり振替休日では、原則として、半日単位での取得はできません。その理由として、法定休日が暦日単位で付与するものと考えられている点や、労働基準法上休日が午前0時~午後0時までで付与するものであると考えられている点、半日出勤・半日休日は勤務時間の短縮とみなされる点が挙げられます。
ただし、これらは法定休日に対する話であって、法定外休日については、半日単位の振替も可能です。
なお、振替休日を社内で導入する場合には、就業規則への規定や運用ルールの周知を意識しましょう。ルールを徹底しないまま運用を行うと、賃金支払いの際にトラブルとなる可能性もありますので、注意が必要です。