企業は、有給休暇を取得しやすい環境整備のための取り組みを行う必要がありますが、そのひとつに時間単位の有給休暇が挙げられます。時間単位の有給休暇を導入することで、従業員の取得率向上が期待できるでしょう。
この記事では、時間単位の有給休暇について、導入方法や注意点もあわせて解説しています。メリットやデメリットも理解して、適切に活用しましょう。
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目次
1. 時間単位の有給休暇とは
時間単位の有給休暇とは、通常1日や半日単位で取得する有給を、時間単位で取得できる制度のことです。「時間単位の年次有給休暇」なので、「時間単位年休」と呼ばれることもあります。
日本の有給取得率の低さは問題となっているため、働き方改革の推進によってさまざまな対策が行われてきましたが、時間単位の有給休暇制度の導入はそのうちのひとつです。
1時間や2時間など、半日に満たない細かい時間で有給を消化できるため、ささいな用事にも使用でき、従来よりも有給が取りやすくなることが見込めます。
企業が制度を導入するためには、就業規則に規定し、労使協定を結ばなければなりません。
1-1. 時間の数え方について
時間単位年休では、何時間が1日分にあてはまるのか定めておく必要があります。なぜなら、時間単位で取得する時の1日の労働時間の基準は、所定労働時間で決まるからです。
所定労働時間が8時間であればシンプルに「8時間の取得が1日分に相当」とできますが、所定労働時間が7時間30分や7時間45分のときは考え方が異なります。
1時間に達しない端数がある場合、時間単位年休制度では切り上げることがルールです。そのため、7時間30分など端数が出る場合は、8時間が有給休暇1日分にあたります。
反対に所定労働時間が8時間であるにもかかわらず、運用する際は7時間として扱うなど、実際の所定労働時間を下回ることはできません。
また、所定労働時間が日によって異なる場合は、1年間の平均所定労働時間から算出します。
1-2. 時間単位年休の賃金
賃金は、通常の有給休暇における1日当たりの賃金を所定労働時間で割って計算します。以下を例として考えてみましょう。
- 所定労働時間:8時間
- 1日あたりの通常賃金:12,000円
- 有給休暇の賃金:通常の賃金をもとに算出
上記の場合、「12,000(1日あたりの賃金) ÷ 8(所定労働時間)」という計算式になるため、1時間あたりの賃金は1,500円です。
例えば、ある日の勤務で5時間労働し、残りの3時間は有給を使った場合、以下のように考えます。
- 5 × 1,500 = 7,500円(5時間労働分)
- 3 × 1,500 = 4,500円(時間単位年休の3時間分)
有給休暇の賃金算出方法は法律で定める方法がいくつかあるため、自社に合った方法を就業規則で定めておく必要があるでしょう。
賃金算出方法を含めた企業の有給休暇に関するルールは、法律に則っている必要があります。法違反をしていた場合、罰則を科される可能性もあるため、法律に則った有給休暇のルールを正確に把握しておくことが大切です。当サイトでは、有給休暇の基本ルールを1冊で理解できる資料を無料でお配りしています。自社の有給休暇に関するルールが適切か確認したい方は、こちらからダウンロードしてご活用ください。
2. 時間単位の有給休暇のメリット・デメリット
時間単位年休にはさまざまなメリットとデメリットが存在します。導入を考えるのであれば、それぞれについて理解しておきましょう。
2-1. 時間単位年休のメリット
メリットとしてまず挙げられることは、有給休暇の取得率が上がることです。時間単位での取得であれば、業務への影響も最小限に抑えられるため、休みづらかった人も取得しやすくなります。
例えば「数時間だけ病院に行くために抜けられたら」と思っている人にとっては、とても便利な制度なのではないでしょうか。
企業にとっても有給が消化しやすく働きやすい職場としてアピールできるメリットがあります。
2-2. 時間単位年休のデメリット
制度を導入することで、休暇管理が複雑になります。これまでは日数のみの管理だったところに、時間の管理も加わるため、会社側の負担は増えるでしょう。
また、制度の導入によって1日単位での有給休暇が取りづらくなってしまう可能性もあります。まとまった休暇を取得して休養してもらうという有給休暇本来の目的から反れてしまうことがないよう、注意しなければなりません。
他にも、時間単位であることから事業への影響が少ないことが考えられるため、時季変更権を行使しづらくなることは企業にとってのデメリットです。
3. 時間単位の有給休暇を導入する方法
時間単位年休制度の導入は任意なので、取り入れなくても違法ではありません。しかし、導入するのであれば、ルールをしっかりと定める必要があります。
まず、するべきことは就業規則を変更することです。法律では時間単位年休に関する規定はありませんが、以下の内容を記載しておくと良いでしょう。
- 時間単位年休付与の対象者
- 時間単位年休の利用可能日数
- 所定労働時間の扱い
- 時間単位年休を付与する単位
- 賃金に関する内容
導入のためには、労使協定も締結しなければなりません。締結の際も就業規則と同じように、対象者や取得可能日数などを書面で定めましょう。
変更した就業規則は労働基準監督署へ届け出る必要があります。労使協定の届出は必要ありません。また、就業規則の変更が完了したら、従業員に周知することを忘れないようにしましょう。
4. 時間単位で有給休暇を取得する際の注意点
時間単位年休を運用する上での注意点を確認しましょう。導入したことでトラブルが起きることがないよう、事前に理解しておくことが大切です。
4-1. 時間単位での取得は年5日まで
時間単位年休の上限は、年間で5日までと定められています。5日以上の設定はできませんが、企業によって「3日まで」「4日まで」と少なく定めることは可能です。
所定労働時間が8時間の場合は「8時間 × 5日」になるので、年間40時間まで時間単位年休が取得できます。
4-2. 分単位での取得はできない
1時間や2時間で時間単位の有給休暇を取得することは可能ですが、15分や30分など分単位での取得はできません。
「時間単位」という制度の通り、1時間に達しない時間は法的に認められていないので、たとえ就業規則などで定めたとしても不可能です。
なお、1日に取得できる回数に決まりはなく、午前に1時間、午後に1時間、合計で2時間分の有給取得などは時間単位であるため、問題ありません。
4-3. 年5日の取得義務からは除外される
2019年からは、年5日以上の有給取得が義務付けられていますが、時間単位年休での取得は義務化のカウントからは除外されます。
社内においては時間単位年休も使った分だけカウントされていきますが、法律が定める「少なくとも年に5日の取得」の日数には含まれません。
取得義務は、心身を休めるための休暇を増やすことが目的とされているため、時間単位で細切れに取得した有給休暇は認めないと判断されるのです。
5. 有給休暇を時間単位で取得して生産性を向上させよう
今回は、時間単位の有給休暇における基本的なことについて解説しました。時間単位年休は、1時間など細かい時間で有給が取得できるものなので、短時間での用事や中抜けしたいときに利用できる便利な制度です。
しかし、有給休暇の管理が複雑になったり、1日単位での有給休暇が取得しづらくなったりする可能性があることは、デメリットとして把握しておきましょう。
また、時間単位年休の上限は年5日までであることや、有給休暇の取得義務の日数には含まれない点に注意する必要があります。
時間単位年休制度は、就業規則で定めて労使協定を締結すれば導入可能なので、ライフワークバランスの実現のためにも検討してみてください。
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