休日勤務を命じた際に、代わりに取得させる休日として「代休」があります。他にも「振休(振替休日)」や「有給(有給休暇)」といった休日があります。しかし、代休と振休、有給には大きな違いがあります。
適切に労務管理や賃金計算をするうえで、それぞれの違いをきちんと理解しておくことが大切です。この記事では、代休の定義や代休と振休・有給の違いをわかりやすく解説します。
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤させた際の対応を知りたい」「代休・振休の付与ルールを確認したい」という人事担当者の方は「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をぜひご一読ください。
目次
1. 代休の定義とは?
代休とは、休日出勤をした際に代わりの休日を、他の勤務日に取得することです。休日出勤の事後に休みを振り替えるため、休日出勤日に対して所定の割増賃金を支払う必要があります。
代休の取得は、労働基準法で義務付けられていないので、法定休日(週1日もしくは4週に4日の労働基準法で定められた休日)が確保されていれば、取得させなくても法律に反することはありません。また、36協定を締結し、あらかじめ休日労働があることを労使間で合意している場合、休日労働をさせても代休を与える義務はありません。
しかし、代休を与える法的な義務はないものの、休日出勤は従業員にとって負担が大きいため、十分な休息を与えるため代休を適切に付与することが大切です。
「代休」とは、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものであって、前もって休日を振り替えたことにはなりません。従って、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。
ここでは、代休の定義を正しく理解するため、代休と振休(振替休日)の違い 、代休と有給(有給休暇)の違いについて詳しく紹介します。
2-1. 代休と振休(振替休日)の違い
振休(振替休日)とは、休日出勤するにあたって、あらかじめ休日を別の勤務日と入れ替えておくことです。たとえば、日曜日(法定休日)に出勤を命じる場合、事前に月曜日(労働日)を法定休日として、休日と労働日を入れ替えることが振休の扱いとなります。
「休日の振り替え」とは、予め休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすることを言います。これにより、予め休日と定められた日が「労働日」となり、そのかわりとして振り替えられた日が「休日」となります。従って、もともとの休日に労働させた日については「休日労働」とはならず、休日労働に対する割増賃金の支払義務も発生しません。
代休と振休は「休日を変更する」という共通点があります。しかし、休日の処理方法について大きな違いがあります。
代休の場合、事後に代わりの休日を決定しますが、法定休日の要件を満たしていれば、休日を取得させなくても問題ありません。ただし、代休の場合は事後に休日を変更するため、法定休日の労働については休日労働に該当し、35%以上の割増率を適用した割増賃金を支払わなければなりません。
一方、振休は、事前に代わりの休日を定めておかなければならず、振り替えた休日は従業員に必ず取得させる必要があります。振休の場合、事前に休日を入れ替えているので、休日労働に対する割増賃金は不要です。
このように、代休と振替休日は異なる制度なので、正しく勤怠管理や給与計算をおこなうためにも、理解を深めておくことが大切です。
関連記事:振替休日と代休の違いとは?計算方法の違いや注意点を解説
2-2. 代休と有給(有給休暇)の違い
有給(有給休暇)とは、労働基準法第39条で定められた賃金が支払われる休暇のことです。企業は6カ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上勤務した労働者に対して、有給を付与しなければなりません。また、労働者が有給の取得を希望した場合、原則として企業は拒否することができません。なお、有給の付与日数は、下記のように法律で定められています。
代休と有休は「休み」という共通点があります。しかし、有給は法律で定められているのに対し、代休は法律で定められていません。年10日以上の有給が付与されている従業員には、年5日以上の有給を取得しなければならない義務があります。
また、有給は希望すればいつでも取得することができます。一方、代休は休日出勤後でなければ取得することができません。さらに、有給を利用する場合は賃金が発生しますが、代休を利用する場合は賃金が生じません。
このように、代休と有休には大きな違いがあります。有給の定義は労働基準法で細かく定められているので、法律に則り、適切に運用することが大切です。
(年次有給休暇)
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない
関連記事:【図解】有給休暇の付与日数がひと目でわかる!付与要件や最大日数の求め方
2. 代休の取得期限
代休は法律で定められていないので、明確な取得期限はありません。しかし、労働基準法第115条により「その他請求権に関する時効」が2年と定められているため、代休の取得期限も2年と考えられます。
ただし、代休は必ずしも取得させる必要はないため、時効をむかえたとしても問題ありません。ただし、代休制度を設けるのであれば、就業規則にきちんと明記しておくことが大切です。また、代休の本来の目的は「休日出勤の負担を軽減すること」です。そのため、休日出勤の日からできるだけ近い日程で代休を取得させるようにしましょう。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
関連記事:代休に取得期限はある?消滅時の対応や管理のポイントを解説
3. 代休を取得する場合の賃金支払いのポイント
代休を取得する場合、賃金支払いに関して注意点があります。ここでは、代休を取得する場合の賃金支払いのポイントについて詳しく紹介します。
3-1. 代休を与えたとしても割増賃金の支払いは必要
代休の場合、振替休日のように、あらかじめ休日を定めていないので、休日出勤の割増賃金を必ず支払わなくてはいけません。その後、代休を取得した場合は、勤務免除日として通常の賃金を控除します。
なお、休日出勤には「法定休日」と「所定休日(法定外休日)」の2種類があります。法定休日は法律で定められた休日であるのに対し、所定休日は法律で定めらておらず会社が独自で定める休日のことです。
法定休日に出勤してから代休を取得した場合、休日労働の割増率35%以上を適用して、割増賃金を支払う必要があります。一方、所定休日に出勤してから代休を取得した場合、割増賃金が発生しないこともあります。ただし、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させた場合は、時間外労働の割増率25%以上(月60時間を超える場合は50%以上)の割増賃金を支給しなければなりません。
このように、振休と違い、代休を与えているからといって休日労働の割増賃金の支給を免れることはできません。賃金計算の際は十分に注意しましょう。
関連記事:休日出勤は割増賃金になる?ケース別にそれぞれ詳しく紹介
3-2. 代休で休日出勤における全ての賃金の相殺はできない
代休を取得することで、休日出勤におけるすべての賃金を相殺することはできません。法定休日の出勤の場合、休日労働の割増賃金が発生します。また、所定休日の出勤の場合、法定労働時間を超えると、時間外労働の割増賃金が生じます。ただし、所定休日の出勤で残業をおこなわなかった場合、代休を取得することで、賃金の相殺ができる可能性もあります。
このように、代休を取得したとしても、休日出勤の割増賃金分の相殺はできません。振替休日であれば、法定休日を通常の労働日と入れ替えられるので、残業をしなければ割増賃金が発生せず、賃金の相殺が可能です。
代休と振替休日はどちらも休日に労働が発生する際の制度ですが、振替休日は休日と勤務日を事前に入れ替える制度、代休は休日出勤後に代わりとして別日を休日にする制度であり、賃金の支払いや付与のルールは大きく異なります。
それぞれの違いをきちんと把握し、適切に管理したいという方に向けて、当サイトでは、「休日・休暇ルールBOOK|割増賃金の計算など休日労働への対応も解説!」という無料のガイドブックをご用意しました。休日出勤の際の休日の運用を丁寧に解説していますので、こちらから「休日・休暇ルールBOOK」をダウンロ―ドして、ご確認ください。
3-3. 月またぎで代休を取得する場合
休日出勤後に代休を取得する場合、休日出勤の日と代休の取得日が月をまたぐケースがあります。月またぎで代休を取得する場合、賃金計算を次の通りおこなう必要があります。
- 休日出勤が発生した月に割増賃金も含めて賃金を支給する
- 代休を取得した月の賃金から代休の日の基本賃金分を控除する
代休を取得した翌月以降に、休日出勤の分の賃金を支払うのは違法となるため注意が必要です。
関連記事:月またぎの振替休日を処理する手順と注意点を徹底解説
4. 代休の付与や取得における注意点
代休の付与・取得には注意点も多くあります。ここでは、代休の付与や取得に関する注意点について詳しく紹介します。
4-1. 代休を与えなくても休日労働をさせるには36協定が必要
代休は法律によって定められた制度でないため、代休を与えなくても違法とされることはありません。しかし、代休を与えなくても時間外労働をさせたり、法定休日に労働させたりするには、36協定の締結が必要です。また、36協定を結ぶだけでなく、正しく届け出をおこなう必要もあります。
これらの手続きを踏まずに時間外労働や休日労働をさせた場合、労働基準法違反となり罰則を受ける恐れがあります。また、36協定を締結しても、時間外労働や休日労働には上限があるので注意が必要です。
関連記事:36協定とは何かわかりやすく解説!特別条項や新様式の届出記入方法も紹介!
4-2. 代休を設ける場合は就業規則に記載が必要
代休は法律で定められた制度でないので、設けなくても問題ありません。しかし、代休を制度として設けるのであれば、就業規則に記載が必要です。
労働基準法第89条により、常時従業員数が10人以上の企業は、就業規則を作成して届け出をしなければなりません。また、就業規則には、休日や賃金のルールを記載する必要があります。そのため、代休制度を構築する場合、就業規則への明記が必須です。振替休日についても同様です。
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項(省略)
関連記事:就業規則とは?労働基準法の定義や記載事項・作成時の注意点をわかりやすく解説
4-3. 代休は半日や時間単位での取得も可能
代休は半日や時間単位で取得させることもできます。たとえば、3時間だけ休日出勤した場合、他の労働日の勤務時間を3時間減らして代休とすることが可能です。
ただし、半日や時間単位での代休制度を設ける場合も、就業規則への記載が必要です。また、振替休日の場合、原則として、半日や時間単位での取得はできないので注意が必要です。
5. 代休に関するよくある質問
ここでは、代休に関するよくある質問への回答を紹介します。
5-1. 休日出勤した際に代休なしにするのは違法?
代休は法律で定められた制度でないので、休日出勤をした際に代休をなしにすることは違法でありません。ただし、法定休日を適切に確保できているかに注意する必要があります。代休を付与しないことで、法定休日の条件を満たせなくなると、法律違反となり罰則を受ける恐れがあります。そのため、労働時間や休日の管理は徹底しておこなうことが大切です。
関連記事:休日出勤した従業員に代休を取得させるには|振替休日との違いについても解説
5-2. 代休の買取は可能?
代休の買取とは、休日出勤の賃金を支払ったうえで代休を付与し、その代休が使い切れなかった場合に企業が買い取ることです。代休の付与自体が義務ではないので、代休の買取も違法ではありません。代休の買取をおこなう場合の金額なども自由に決めることができます。ただし、有給の買取は、原則としてできないので注意が必要です。
関連記事:有給休暇の買取は違法?退職時の対処や買取の計算について解説
5-3. 代休と有給はどっちが優先?
代休は賃金支払いの対象とならない休日のため、従業員の中には代休でなく有給を使いたいと考える人もいるかもしれません。この場合、従業員から代休ではなく有給の申請があったら、会社側は従業員の希望通り有給を取得させなければなりません。
5-4. 欠勤を代休扱いとできる?
従業員が何らかの理由で欠勤をした場合、会社が一方的な都合で欠勤を代休扱いとして、代休を消化することはできません。ただし、従業員からの同意が得られれば、欠勤を代休扱いとすることができます。
6. 代休の定義を正しく知って適正に労務管理しよう
代休とは、休日出勤した代わりに別の労働日に休みを与えることです。代休は、振休(振替休日)や有給(有給休暇)と意味が大きく異なるので、適切な勤怠管理や給与計算のためにも正しく定義を理解しておくことが大切です。休日の管理を見直したいと考えている人は、勤怠管理システムの導入を検討しましょう。