本人の同意を得ずにその人のセクシャリティを公にすることを、「アウティング」と言います。
個人の人権意識の高まりに伴い、このような行為は国内外で問題視されており、日本でも、損害賠償が求められた事例があります。
LGBT(セクシャルマイノリティー)の権利における意識は大きく変わってきており、企業もLGBTが働きやすい職場づくりへの対応が求められています。その中で、人事担当者は何をすべきでしょうか?
本記事では、企業のLGBT対応について解説します。
LGBTとは
そもそもLGBTとは何か、ということを確認しておきましょう。
LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーのアルファベット頭文字をとった略称で、セクシャルマイノリティーの総称を指します。
日本労働組合総連合会は、日本におけるLGBTの当事者は約8%であるという調査結果を公表しています。従業員が100人のうち8人がLGBTであっても、何ら不思議ではないということになります。
それほど、LGBTは身近な存在だと言えるでしょう。
非当事者への対応
LGBTの社員が働きやすい環境をつくるには、LGBT当事者でない社員によるハラスメントを防ぐ必要があります。
社内規定の整備
職場でLGBTが問題になるケースとして、当事者への差別や偏見に起因するハラスメント(いじめ・嫌がらせなど)が考えられます。
セクハラやパワハラと同様、LGBTに対するハラスメントも禁止する旨や、行為があった場合は厳重に処分する旨を、社内規程に明記する必要があります。
ハラスメント対策の一環とした啓蒙活動
とはいえ、社内にLGBTがいることが前提とした特別な対策を講じることは、かえってLGBTを特別視するような結果につながりかねません。
LGBTを含む、どのような従業員に対してもいじめや嫌がらせなどが存在しない組織づくりを目指すのが望ましいと言えます。
性別や社内での身分、身体的特徴などを理由としたハラスメントは等しく許されないことを啓蒙する研修などを実施するとよいでしょう。
当事者への対応|カミングアウトは求めない
何か対策をしよう、という視点に立ってしまうと、自社にLGBTが何名いるのか把握する必要性を感じてしまうかもしれません。
しかし、本人が望まない形で第三者にセクシャリティーが知られてしまうことは、冒頭で述べたアウティングの問題にもつながりかねません。そのため、カミングアウトを求めてはなりません。
人事は、「誰がLGBTなのかは把握していないが、誰がそうであっても問題ない前提で仕組み作り・風土作りをおこなっている」というスタンスを取るとよいでしょう。
まとめ
社員がLGBTだからといって、過剰な特別扱いをする必要はないと筆者は考えます。
ただし、LGBTに限らず女性や高齢者、障害者、外国人など多様なバックグラウンドを持つ人材が当たり前に働けるような仕組みを作ることは、どんな企業でもおこなうべきですし、おこなう必要があるでしょう。
それができない企業、LGBTに限って言えば人口の8%を占める層を人材として活用できない企業は、就業人口が減少していく日本においては採用難に陥り、存続していくことが難しくなっていくかもしれません。