サイレント退職、なぜ起こる?仕組みと予防策を解説|Smart相談室 伊禮 武彦 |HR NOTE

サイレント退職、なぜ起こる?仕組みと予防策を解説|Smart相談室 伊禮 武彦 |HR NOTE

サイレント退職、なぜ起こる?仕組みと予防策を解説|Smart相談室 伊禮 武彦

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※本記事は、株式会社Smart相談室の伊禮 武彦さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

こんにちは。株式会社Smart相談室の伊禮武彦と申します。法人向けオンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」の運営、ビジネス部門の統括責任者を担当しています。

今回はクライアント様よりよくご相談を頂くサイレント退職について、起きてしまう仕組みから改善方法についてご紹介いたします。

執筆者伊禮 武彦株式会社Smart相談室 ビジネス統括責任者

愛知の製造メーカーに従事した後、愛知のスタートアップ株式会社N2iへ入社。採用管理ツール事業の立ち上げ/東京支社の立ち上げを担当した後、2019年株式会社ROXXへ入社。リファレンスチェックツールback checkの立ち上げを担当した後、インサイドセールス責任者として導入社数の底上げを担う。 中小企業、ベンチャー共に変わらず存在する離職の課題に対し「相談できる環境を増やし健やかな状態を保ち続ける」Smart相談室のプロダクトに共感し、2021年10月参画。
▶Smart相談室:https://smart-sou.co.jp/
▶伊禮X:https://twitter.com/heartatk1228

サイレント退職とは

優秀な方が突然辞めてしまうことをびっくり退職と言われるようになって久しいですが、一見元気な様子の従業員が急にメンタル不調で休職したり、退職することにもなにか名称が無いかと考えておりました。

事前に相談が無く、話が入ったタイミングではすでに退職を決定していたり、休職せざるをえない状況になっていることが多いことから、ここではサイレント退職という名称をつけさせていただきます。

皆様も経験があるのではないでしょうか?私自身過去管理職という立場で部下のマネジメントを担当している中で、このようなケースにいくつも立ち会いました。

サイレント退職が起こる仕組み・なぜ気づけないのか

ではサイレント退職はなぜ起きてしまうのでしょうか?

休職からの退職パターンと、休職せずにそのまま転職するパターンに分けて考えてみましょう。

休職からの退職の場合

労働政策研究・研修機構の調査によると「休職者がいる企業の割合は52%、休職後の復職率は51%」というデータが出ています。

日本企業の2社に1社は休職者がおり、休職者の2名に1名は復職できずに退職されています。復職率を考えると休職させない仕組みづくりの重要性が分かりますね。

休職にも私傷病休職、私傷病以外の休職と2種類ありますがここでは私傷病休職、また、近年増加傾向にあるメンタルヘルスが要因での休職について考えていきましょう。

私傷病休職
・プライベートの登山中に重傷を負い、長期間の入院が必要となったため休職する場合
・業務や通勤とは関係がない車の運転中に、交通事故に遭って重傷を負い、長期間の入院が必要となったため休職する場合
・家族や友人との関係が原因でうつ病を患い、長期間の療養が必要となったため休職する場合 など
私傷病以外の休職
① 自己都合休職
② 事故欠勤による休職
③ 留学による休職
④ 公職就任による休職
⑤ 起訴による休職
⑥ 組合専従による休職
⑦ 出向による休職

厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」によると仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、令和2(2020)年は54.2%であり過去の推移を見ても例年50%以上の方がストレスを感じているということが分かります。

「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる」とした方のうち、その内容をみると、「仕事の量・質」(56.7%)が最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」(35.0%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」(27.0%)となっています。

私はSmart相談室という従業員支援サービスを運営していることからさまざまな企業の管理部門の方とお話をするのですが、統計にもある通り、上記の内容はよくご相談頂く悩みです。

伺った話から状況を具体化すると、下記のような例が挙げられます。

a.) 仕事の質/量
20代後半の方、新人研修が終わり立派な戦力として期待されている状況、一方で業務整理のスキルが身についていなく、他の同期に比べて残業が多くなってしまっていたり、タスク過多によりミスが発生、上司からお叱りを受けることもしばしばあり、メンタルに負荷がかかっている。他の同期ができていることから自分が悪いと思い込み、弱音や不満を吐き出す事ができずにいる。そのような中でストレスが溜まり切った結果出勤することが辛くなり休職する事になった。その後復職できず退職。

b.) 仕事の失敗、責任の発生等
30代前半、新任管理職になり、任されるプロジェクトが大きくなる。かつ部下のマネジメントを担当する事になり、プロジェクトを完遂させることと、部下の育成との両軸をバランス取って進める必要があり、メンタルに負荷がかかっている。一方で「できない」「やり方がわからない」「辛い」などの感情を吐露してしまうと、社内での評価がマイナスになってしまう恐れから誰にも相談できないでいた。そのような中で部下に任せきるとプロジェクトが完遂できないリスクが出てきたことから、部下の分まで自分が作業をするようになる。結果的にプロジェクトは完遂できたが、その後部下の生産性が下がるようになってしまった。部下の仕事を奪ってしまったという自責の念と、一方でどうすればよかったのかと自問自答を繰り返す内に体調不良になり、その後休職することになった。その後復職できず退職。

c.) 対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)
20代前半、上司から仕事を教わっている最中だが、指導の際の口調が強く、メンタルに負荷がかかっている。一方で他の上司に相談しようにも「最近の若いものは」で片付けられる気がしている為、相談せず我慢している。同期も同じような状況の中、問題無く従事していることもあり自分も元気なふりをしていたが、そのような中でストレスが溜まり、出勤することが辛くなり休職する事になった。その後復職できず退職。

皆様の職場でも同様の状況は発生しているのでは無いでしょうか?

全てがそうと言い切ることはできないのですが、上記のような例は

  • 自身を肯定してくれる方がいなかった
  • 相談できる環境がなかった
  • 相談環境はあったが利用していなかった

事から、気づかない内に休職に至った要因の一つとして挙げられると思います。

退職の場合

では、退職の場合はどうでしょうか?

「転職理由ランキングTOP10(パーソルキャリア株式会社)」によると、転職理由の1位は「給与が低い・昇給が見込めない」となっており、また人間関係に関する理由が前回から順位を上げ、トップ10にランクインしているとデータが出ています。

このような転職理由のアンケートは皆様もよく調べているのではないでしょうか?例年理由の順位変動はあれど、理由自体が大きく変わることはここ数年無いように思います。

また、転職理由をセグメントすると大きく3つの分類に分かれると思います。

  1. 自身の将来への不安
  2. 企業の制度
  3. 社内の人間関係

上記のセグメンテーションは、私が企業の担当者と話をしていく中で得られた示唆より区分したものであり、退職までの流れを整理すると下記のような流れでサイレント退職が発生しているということをよく伺います。

例)
3. 社内での人間関係や成績が悪化し(仕事の失敗、責任の発生等、対人関係(セクハラ・パワハラを含む))
2. 精神的な負担がたまっていき(仕事の質/量) ←一方で社内には相談できていない
1. 急な退職を申し出る ←ここで初めて現場は気づく

細かい状況は違えど上記の流れはメンタル不調による休職の流れと過程は近しいと思っています。 3や2のタイミングで相談したり、気持ちを発散する事で1の結果を少しでも防ぐことはできたのではないでしょうか。

サイレント退職を防ぐ方法

ここまでの内容をNIOSH(National Institute for Occupational Safety and Health / 米国立労働安全衛生研究所)職業性ストレスモデルを元に図解すると下記のようになります。

NIOSH職業性ストレスモデルとは
米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が作成したもので、仕事上の要因(仕事量や質、人間関係、裁量度、温度や騒音等)をうけて急性ストレス反応(心理面、生理面、行動面への変化)がおき、やがてストレスに関連した病気や作業能率低下などの問題が生じる、という一連の流れを示します。その流れに影響を及ぼすものとして、仕事以外の要因や年齢・性別・性格といった個人要因、上司・同僚・家族からの支援などの緩衝要因が挙げられます。

結果的に休職になるか、退職になるかは仕事以外の要因、個人的要因により分岐しますが、緩衝要因として社会的支援(組織、上司、同僚、家族)からの支援が等しく重要です。

職務、年代が同じ2名の方でも、aさんは元気に働き続けている、bさんは元気に働き続けていると思っていたら突然退職した。というような状況はaさんに比べ、「仕事以外の要因、個人的要因、緩衝要因が整っていなかった」という事が考えられます。

緩衝要因としてのケースは下記のような例が挙げられます。

a.) 仕事は辛いけど恋人に愚痴を発散してから気持ちが楽になった。
b.) 上司に思い切って今の本音を打ち明けてみた。親身に相談に乗ってもらって気持ちが楽になった。

このように相談に乗ってもらえたり、愚痴を発散するだけでも気持ちが楽になり、活力になることがあります。考えなければならないのは、上記のような状況を企業が全ての従業員に用意することができるかどうかです。

a.)の状況を実現するにはプライベートに踏み入った話しをする必要がありハラスメントと定義されてるリスクのある行為です。

b.)に関しても実現できると理想なのですが前述した通り自己評価のマイナスになるのではないか?といったように相談者の心理的ハードルが高いことが問題として挙げられます。

そのような中で、新たな緩衝要因として厚生労働省より事業場外資源によるケアを目的とした社外相談窓口を推奨しています。

事業場外資源によるケア
メンタルヘルスケアを行う上で、事業場が抱える問題や求めるサービスに応じて、メンタルヘルスケアに関し専門的な知識を有する各種の事業場外資源を活用することをいいます。労働者が相談内容等を事業場に知られることを望まないような場合にも、事業場外資源を活用することが効果的です。事業場外資源とは事業場外の医療機関や地域保健機関、従業員支援プログラム(EAP)機関などのことを指します。

社外相談窓口は匿名性の高さから利用までの心理的ハードルが低く、なおかつメンタル不調になる前の状態の早期利用が望める施策です。愚痴を発散したり、悩みに応じた相談をする事により自己を肯定してもらい活力を得られます。

ヘルシーに働ける環境づくりのために。従業員がもっと気軽に相談できる環境を整える、株式会社ウェルカムのSmart相談室導入事例。

株式会社ウェルカムは、食のセレクトショップであるDEAN & DELUCA や、インテリア雑貨などを取り扱うGEORGE’Sなど、食とデザインを軸として多数のサービスを展開しています。「日常のハレ」を… 

詳しくはこちら

社外相談窓口を設置しているが利用されていない企業の方は、周知までの動線や、利用できる時間、カウンセラーの種類などが従業員の状況に即していない可能性があります。

この機会に相談したい従業員がいつでも相談できる体制になっているか、見直しをしてはいかがでしょうか?

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