社会保険喪失届は、従業員が社会保険の資格を喪失する事由が発生した際に作成が必要となる書類です。
従業員が退職する際は、社会保険の資格を喪失するため作成しなくてはいけませんが、この他の理由でも作成が必要となってきます。
今回は、社会保険喪失届の作成が必要となる場面や、作成する上での注意点についてまとめています。
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1. 社会保険喪失届とは?
社会保険喪失届とは、従業員が退職や解雇、死亡などの理由によって社会保険(健康保険・厚生年金)の資格を喪失する際に必要となる書類のことを指します。
会社は、決められた期日までに社会保険喪失届を作成して、速やかに社会保険の資格喪失手続きを行わなくてはいけません。
万が一、会社が忘れて社会保険喪失届を提出しなかった場合には、従業員が転職先で社会保険の加入手続きができなかったり、求職中に国民健康保険の加入手続きに遅れが生じるなど、トラブルが生じる可能性があります。
このようなトラブルを回避するためにも、忘れずに社会保険喪失届を作成して提出しましょう。
1-1. 社会保険喪失届はパートやアルバイトでも必要な場合がある
正社員だけに限らず、社会保険の加入条件を満たすパートやアルバイトに対しても提出しなくてはいけませんので注意しましょう。
パートやアルバイトの加入条件は、週の所定労働時間と月の所定労働日数が常勤雇用者の4分の3以上働いている場合が該当します。
この条件に該当しない場合でも一定の条件を満たしている場合は、社会保険に加入さなくてはいけません。
社会保険喪失届の提出漏れを防ぐ上でも、雇用形態に関わらず社会保険加入の有無について必ず確認しましょう。
2. 社会保険喪失届が必要な場面
次に、社会保険喪失届が必要となるケースについてご紹介します。社会保険喪失届の提出期限は、資格喪失日のから5日以内と決めら
れています。資格喪失日はケースによって若干異なりますので、ケース毎に合わせて解説します。
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2-1. 退職した場合
従業員が退職する場合は、社会保険喪失届の提出が必要です。退職理由(会社都合または一身上の都合など)に関係なく、会社が社会保険喪失届を作成して提出する必要があります。このケースの場合、資格喪失日は退職日の翌日となります。
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2-2. 死亡した場合
従業員が死亡した際も、会社が社会保険喪失届を作成し届け出を行わなくてはいけません。このケースの場合も、資格喪失日は従業員が死亡した日の翌日です。
2-3. 雇用契約が変更となった場合
正社員であった従業員が結婚を機にパート社員になるなど、雇用契約が変更となったことで社会保険の資格を喪失する場合も、社会保険喪失届け出が必要です。
雇用契約が変更となった翌日が資格喪失日に当たります。
2-4. 障害認定を受けた場合
65歳以上75歳未満で障害認定を受けた方は、後期高齢者医療を選択することができます。後期高齢者医療を選択する場合は、社会保険喪失届の提出が必要です。
なお、このケースでの資格喪失日は障害認定を受けた当日です。先のケースとは異なりますので注意しましょう。
2-5. 60歳以上で再雇用された場合
60歳以上の従業員を定年後に継続して再雇用する場合、社会保険喪失届が必要です。また、再雇用するにあたって「社会保険取得届」の作成も必要となってきます。資格喪失日は退職日の翌日となりますので、社会保険喪失届と社会保険取得届を作成して、退職日の翌日から5日以内に提出しましょう。
2-6. 社会保険加入の上限年齢に到達した場合
社会保険は、70歳で厚生年金の資格を喪失、75歳で後期高齢者医療に移行のため健康保険の資格を喪失します。
75歳に到達した場合は、資格喪失日は誕生日となりますので、誕生日から5日以内に社会保険喪失届を提出しなくてはいけません。
70歳の場合で引き続き雇用される場合は、社会保険喪失届ではなく「厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」を提出します。
70歳で継続雇用する場合のみ、提出する書類が異なりますので注意しましょう。
3. 社会保険喪失届の添付書類や提出先
社会保険喪失の手続きは、社会保険喪失届の提出の他にも添付が必要な書類があります。ここでは、添付が必要な書類の内容や提出先について解説します。
3-1. 社会保険喪失届の添付書類
社会保険喪失届の添付書類は、会社が加入している健康保険の種類によって変わってきます。また、60歳以上の従業員も添付書類が異なりますので、提出の際は注意しましょう。
【協会けんぽに加入している会社の場合】
年金事務所に提出が必要となる書類は以下の通りです。いずれも原本が必要となりますので、必ず従業員から回収して添付しましょう。
①本人と被扶養者分の 健康保険被保険者証
② 高齢受給者証
③健康保険特定疾病療養受給者証
④健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証
※②~④は交付されている場合のみ必要になります。
従業員が健康保険被保険者証を紛失した場合は、「健康保険被保険者証回収不能届」の作成が別途必要となります。万が一、従業員
から回収ができない場合は、「健康保険被保険者証回収不能届」を作成して忘れずに添付しましょう。
【自社の健康保険組合に加入している会社の場合】
社会保険喪失届の他に、添付する書類はありません。
ただし、自社の健康保険組合に従業員と被扶養者分の健康保険被保険者証の提出が必要となる場合がありますので、事前に確認をしておきましょう。
【60歳以上で退職後1日の間もなく再雇用された場合】
年金事務所に提出する書類は、①と②の両方もしくは③のいずれかになります。
① 就業規則および退職日が分かる退職辞令の写し
②継続した再雇用であることが分かる雇用契約書の写し
③「退職日」および「再雇用された日」に関する事業主の証明書
新たに社会保険の資格を取得することになるため、上述の添付書類の他に「社会保険資格取得届」の提出も必要となりますので、作成漏れのないよう注意しましょう。
3-2. 社会保険喪失届の提出先
社会保険喪失届の提出先は、会社の事業所の所在地を管轄する年金事務所です。
書類の提出方法は、以下の3通りの方法によって提出することができます。
①直接窓口へ持参する方法
②年金事務センター(所轄の年金事務所)へ郵送する方法
③「e-Gov」や「届書作成プログラム」、「電子申請機能がある労務管理ソフト」から電子申請する方法
持参または郵送の場合は、健康保険被保険者証など原本での提出が必要となります。電子申請の場合は、JPEGやPDF形式での画像ファイルで提出することが可能です。
ただし、「退職日」および「再雇用された日」に関する事業主の証明書は、画像ファイルでの提出ができませんので注意しましょう。
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4. 社会保険喪失届の提出期限を守って作成を進めよう
社会保険喪失届は、従業員が退職や死亡、雇用契約の変更などの理由によって社会保険の資格を喪失する際に、必ず作成しなくてはいけません。
提出期限は資格喪失日から5日以内となりますが、年齢などによって資格喪失日が変わることがありますので注意しましょう。
退職した従業員が転職先で新たに社会保険の手続きをする上でも、社会保険喪失の提出は必要となりますので、提出期限を守って作成を進めていきましょう。