従業員が退職する際に人事が対応しなければいけない手続が、社会保険の資格喪失届の提出です。
会社の経営者や事業主、人事担当者などは社会保険の資格届の概要や手続きなどを必ず理解しておくことが必要です。本記事では、従業員が離職する際に欠かせない、社会保険の資格喪失届についてご紹介いたします。
関連記事:社会保険喪失届とは?必要な場面や作成上の注意点を紹介
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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目次
1. 社会保険の資格喪失届とは?

社会保険の資格喪失届とは、従業員が解雇、退職、死亡などの理由により「健康保険」及び「厚生年金保険」の資格を喪失するときに、手続が必要になる書類です。
「資格喪失届」と呼ばれることが多いため、正式名称は「被保険者資格喪失届」となっています。
万が一、転職を期に退職をされる従業員の資格喪失届の届け出が遅れてしまうと、転職先での健康保険証の交付が遅れるので、事業主は手続、及び提出を速やかにおこなうようにしなければいけません。
関連記事:社員が退職したときの社会保険手続きについて徹底解説
2. 社会保険の資格喪失届の必要書類と記入方法

従業員が退職する場合、健康保険と厚生年金保険の手続が必要になります。事業主は資格喪失届を日本年金機構および加入している健康保険組合に提出をする必要があります。
また、資格喪失届と同時に健康保険証の提出をおこなわなければいけないので、退職の際に従業員から返却していただくようにしましょう。
資格喪失届の届出用紙は日本年金機構及び健康保険組合のホームページからダウンロードすることができます。記入例も同時に記載されているので、記入方法がわからない担当者は、下記リンクを参考にしながら記入をしてみてはいかがでしょうか。
エクセルやワードを用いてPC上で入力が可能なフォーマットの用紙もありますが、手書きでも記入が可能です。
なお、電子申請もできますので、活用されてみるといいかもしれません。
3. 社会保険の資格喪失届の提出方法
社会保険の資格喪失届を提出するまでの流れをご紹介します。
3-1. 社会保険の資格喪失届の作成
日本年金機構や加入している健康保険組合の資格喪失届の記入書類を準備して、記入を進めていきます。
記入する内容としては、事業所整理番号、被保険者整理番号、氏名、生年月日、種別、基礎年金番号、資格喪失年月日、資格喪失理由、基準報酬額(月額)被保険者証回収区分、扶養の有無そして備考として退職年月日を記入していくことになります。
3-2. 退職者から保険証を提出してもらう
社会保険の資格喪失届を提出する際には、被保険者証(保険証)の添付が必要なので、退職者に被保険者証の提出をしてもらいましょう。
協会けんぽの保険証であれば、その保険証と資格喪失届を事業所の管轄の年金事務所に提出し、健康保険組合に加入している事業所であれば、その保険証を健康保険組合に提出します。
何らかの理由で被保険者証が回収できない場合は「健康被保険者証回収不能・紛失届」を別途作成して、添付することが必要となります。
提出方法としては、各事務所の窓口での提出、電子申請、郵送での提出も可能です。
資格喪失届は、従業員が退職をした翌日から5日以内に、年金事務所および事業所が加入している健康保険組合に提出ををしなければいけません。
資格喪失届は必ず、正副二部作成して提出しましょう。窓口提出の場合は、その場でコピーをして処理をしてくれることもありますが、できるだけ窓口の負担を減らすよう心がけ、二部作成して提出することを心がけるといいでしょう。
また、急ぎの場合は窓口に直接提出することをおすすめします、郵送の場合投函から会社控えの資格喪失届が戻ってくるまで1週間程度かかることがあります。
4. 社会保険の資格喪失届を提出する際に気を付けなければいけないこと
資格喪失届は、基本退職日から5日以内に提出することになっているので、速やかに提出をしましょう。
また、健康保健証は被保険者資格喪失届に添付して提出するのが基本ですが、何らかの事由で、退職者から返却されない場合は、健康保険被保険者証回収不能・滅失届を提出すれば、健康保健証を添付しなくても大丈夫です。
資格を喪失する対象の従業員が、継続して保険の加入を希望されている場合に、健康保険に継続して加入することも可能です。
資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があり、(退職せず、勤務時間・日数の減少により健康保険の資格を喪失した場合も該当します。)資格喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すると、任意継続被保険者資格が取得できますので、被保険者から依頼があった場合は、この届出用紙も作成が必要となります。
また、社会保険の資格喪失届の提出期限を過ぎてしまった場合、特に罰則等はありませんが、労使間トラブルにつながるリスクがあるので、必ず期限を守って提出するようにしましょう。
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5. 社会保険の資格喪失届の提出後にしなければならないこと

社会保険の資格喪失届の控えは、必ず一箇所に保管をするようにしましょう。労働基準監査局などの調査で提出を求められる場合があります。
また、社員名簿や社会保険台帳に退職日と退職事由を明記しておくことをおすすめします。当該従業員が、被保険者番号などを問い合わせてくる場合や、社会保険事務所などから問い合わせがある場合もあるので、簡単に調べられるようにしましょう。
6. 退職後も受けることができる保険給付とは
退職後は被保険者の資格を喪失します。しかし、一定の要件を満たす場合、受けられる保険給付があることをご存知でしょうか。
人事の担当者の方や経営者の方も知っておくことで、退職者が出た際にスムーズに対応ができます。
以下で退職者が受けられる保険給付についてご説明いたします。
6-1. 傷病手当金
傷病手当金とは、私傷病により休業した際、健康保険による条件を満たした場合に支給される制度です。
- 疾病又は負傷のため療養中であること
- 労務に服することができないこと
- 労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過していること(3日続けて休業した場合に第4日目から支給)
- 報酬が受けられないこと(報酬を受けていても傷病手当金の額より少ないときはその差額が支給)
退職後は、被保険者の資格を喪失しますが、次の一定の要件を満たす場合には、退職後も支給開始から1年6か月を限度に支給されます。
- 資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上被保険者であったこと
- 資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていた、又は受けられる状態であること
6-2. 出産手当金
被保険者の資格を喪失する日の前日まで、継続して1年以上被保険者だった場合、資格喪失時に受けていた出産手当金を引き続き受け取ることができます。
出産前後合わせて原則98日間の範囲内で支給を受けることになっていますが、この機関からすでに支給を受けた場合、残りの期間の支給額を受けることができます。
6-3. 出産育児一時金
資格を喪失する日の前日まで、継続して1年以上被保険者であった人が、資格喪失日以降、6か月以内に出産した場合に支給される。(関係条文 健康保険法第106条)
6-4. 埋葬料
被保険者が資格を喪失した後に死亡した場合、埋葬料または埋葬費が支給されます。
- 継続給付を受けている人が死亡したとき
- 継続給付を受けなくなってから3か月以内に死亡したとき
- 被保険者が資格を喪失して3か月以内に死亡したとき
(関係条文 健康保険法第105条)
7. まとめ
いかがでしたでしょうか。 社会保険の資格喪失届は、従業員の退職の際に人事および総務が対応しなければいけない手続の1つです。
従業員が安心して仕事をするうえで社会保険は重要です。従業員が転職をする際などに資格喪失届の手続をスムーズに進めることができないと、対象者の次の職場での社会保険の対応が遅れることもあります。
また、健康保険組合によっては手続方法などが少し異なる場合もありますので、各事業所ごとに加入をしている組合に直接問い合わせるなどして、正しい手続方法を確認したほうがよいでしょう。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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