退職月の社会保険料の徴収方法とは?賞与から控除する場合や2カ月分を支払う場合も解説 |HR NOTE

退職月の社会保険料の徴収方法とは?賞与から控除する場合や2カ月分を支払う場合も解説 |HR NOTE

退職月の社会保険料の徴収方法とは?賞与から控除する場合や2カ月分を支払う場合も解説

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退職月の社会保険料はどう計算する?会社員は、原則として社会保険に加入しなければならず、毎月の給与から社会保険料が天引きされます。ただし、退職月の社会保険料の取り扱いは、退職日によって大きく異なるため注意が必要です。

本記事では、月の途中と月末で退職した場合の社会保険料を解説します。また、賞与を受け取ってから退職するケースや、2カ月分の社会保険料を負担しなければならないケースについても紹介します。

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1. 社会保険料の取り扱い

ここでは、退職月の社会保険料について理解しやすくするため、社会保険料の定義をわかりやすく紹介します。

1-1. 社会保険とは?

社会保険とは、病気や怪我などのリスクに備えるために加入する公的保険制度のことです。社会保険は「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の5種類があります。

なお、健康保険、介護保険、厚生年金保険は「狭義としての社会保険」雇用保険と労災保険は「労働保険とも呼ばれるため覚えておきましょう。この記事では、狭義としての社会保険を「社会保険」と定義して、退職月の社会保険料について解説していきます。

関連記事:社会保険とは?代表的な4つの保険と今さら聞けない基礎知識

1-2. 社会保険の資格喪失日は退職日の翌日

社会保険の資格喪失日とは、その被保険者でなくなる日を指します。次の表の通り、資格喪失日は「資格喪失の原因」によって異なります。

喪失の原因 喪失年月日
退職等による資格喪失 退職日の翌日、転勤の当日、雇用契約変更の当日
死亡による資格喪失 死亡日の翌日
75歳到達による健康保険の資格喪失 誕生日の当日
障害認定による健康保険の資格喪失 認定日の当日
社会保障協定による健康保険の資格喪失 社会保障協定発効の当日、相手国法令の適用となった日の翌日

引用:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構

従業員が退職する場合、「退職日の翌日」が資格喪失日になります。たとえば、1月30日に退職した場合は「1月31日」、1月31日に退職した場合は「2月1日」が資格喪失日に該当します。

1-3. 社会保険料は日割りでなく月割りで計算される

社会保険料は、入社したその月から発生します。また、社会保険料は日割りでなく、月割りで計算しなければなりません。そのため、6月1日に入社した場合でも、6月20日に入社した場合でも、金額は変わらず、6月分の社会保険料が発生することになります。なお、雇用保険については、日割りが適用されるので注意が必要です。

関連記事:社会保険料の入社月の取り扱い方とは?控除のタイミングや注意点を徹底解説

1-4. 社会保険料は労使折半で負担する

社会保険料は、労働者と使用者の双方で負担します。負担割合は同じです。月々の社会保険料は、標準報酬月額に対象の保険料率を掛けて計算されます。算出された金額を2で割ることで、従業員と企業がそれぞれ負担すべき社会保険料を計算することが可能です。

関連記事:社会保険料とは?|計算方法や注意点、法改正の内容などを徹底解説

2. 退職月のタイミングで社会保険料は変化する

退職月の社会保険料は、退職日によって発生するかどうかが決まります。ここでは、退職月の社会保険料の取り扱いについて詳しく紹介します。社会保険料を正しく算出できるよう、理解を深めておきましょう。

2-1. 月の途中で退職する場合

社会保険は「資格喪失日が属する月の前月まで」が被保険者期間となるので、資格喪失日が属する月の前月まで社会保険料が発生します。

保険料は、資格喪失日が属する月の前月分まで納める必要があります

引用:月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。|日本年金機構

月の途中で退職した場合、退職月が資格喪失日が属する月となり、その前月分まで社会保険料が発生します。そのため、退職月の社会保険料は納める必要がありません。

たとえば、月の途中である8月20日に退職した場合、資格喪失日は「8月21日」になります。資格喪失日が属する月は「8月」であり、その前月である「7月分」まで社会保険料を負担しなければなりません。

前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない

引用:健康保険法第156条一部抜粋|e-Gov

2-2. 月末に退職する場合

月末に退職する場合、資格喪失日は退職月の翌日であるため、退職月の社会保険料は発生することになります。

たとえば、月末である8月31日に退職した場合、資格喪失日は「9月1日」になります。資格喪失日が属する月は「9月」であり、その前月である「8月分」まで社会保険料を負担しなければなりません。そのため、退職月である8月分も社会保険料の負担が発生します。

このように、月の途中で退職するか、月末で退職するかで、社会保険料の負担が変わるので、社会保険の仕組みを正しく理解しておくことが大切です。

関連記事:退職日によって社会保険料は異なる?正しい求め方を解説

2-3. 月末の前日に退職する場合

月末の前日に退職する場合、社会保険料の扱いは月の途中で退職する場合と同様です。たとえば、6月29日(月末の前日)に退職するケースを考えてみましょう。

このケースでは、6月30日が資格喪失日となります。つまり、前月である5月分の社会保険料は発生しますが、6月分は発生しません。

2-4. 休日に退職する場合

退職日が休日か平日かによって、社会保険料の扱いが変わることはありません。たとえば、退職日が休日だったからといって、社会保険の資格喪失日が1日ずれることなどはないのです。

ただし、退職日が休日となる場合、健康保険証の回収について注意しなければなりません。事前に回収しておく、後日郵送してもらうなど、適切な対応をしましょう。

3. 退職月の社会保険料に関する注意点

退職月の社会保険料には、例外も数多くあるので注意が必要です。ここでは、退職月の社会保険料に関する注意点について詳しく紹介します。

3-1. 2カ月分の社会保険料の徴収が必要になるケースもある

給与の締め日や支払日の関係で、2カ月分の社会保険料の徴収が必要になるケースもあります。原則として、給与から控除できる社会保険料は、前月分の社会保険料です。

たとえば、月末締め・翌月20日払いの会社に継続して勤めており、月末である7月31日に退職した場合を考えてみましょう。月末退職の場合、退職月(7月)も社会保険料が発生します。

7月分(7月20日支払い)の給与からは、6月分の社会保険料が徴収されます。しかし、この場合、8月分の給与は支払われないので、7月分の社会保険料を控除することができません。そのため、7月分の給与から6月分と7月分の2カ月分の社会保険料を徴収することになります。

このように、従業員が退職する場合、2カ月分の社会保険料を徴収しなければならないケースもあることを押さえておきましょう。

(保険料の源泉控除)
第百六十七条 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる

引用:健康保険法第167条一部抜粋|e-Gov

3-2. 賞与を受け取った後に退職した場合の取り扱い

賞与に対しても社会保険料はかかります。賞与を受け取った後に退職する場合も、資格喪失日を基準に考えます。賞与を受け取った月の途中で退職する場合、その月の社会保険料は発生しないため、賞与に対する社会保険料の支払いは不要です。

一方、月末に退職する場合、その月の社会保険料も生じるので、賞与の社会保険料の負担が必要になります。

賞与の社会保険料は、標準賞与額に保険料率を掛けて計算します。また、賞与支払届を賞与支払日から5日以内に日本年金機構へ提出しなければならないので注意が必要です。

関連記事:社会保険料をボーナスから控除するのはなぜ?計算例や育休・産休中の対処法

3-3. 入社月と退職月が重なる場合の取り扱い

入社月と退職月が重なる場合、「同月得喪」に該当し、月の途中に退職してもその月の社会保険料を負担しなければなりません。たとえば、4月1日に社会保険の資格を取得し、4月15日に退職する場合、入社月と退職月が重複するので、月の途中退職になりますが、退職月の社会保険料を負担する必要があります。

ただし、同月得喪に該当する月に厚生年金保険(国民年金)の資格を取得した場合、厚生年金保険料の負担は不要となります。年金事務所より、還付手続きの通知が届くので、適切に対応しましょう。なお、健康保険については、このような措置はないため注意が必要です。

3-4. 退職後は資格喪失手続きが必要

従業員の退職後は、社会保険の資格喪失手続きが必要になります。企業は、退職した日の翌日(資格喪失日)から5日以内に、「被保険者資格喪失届」を日本年金機構に提出しなければなりません。

なお、健康保険証などの添付書類が必要になることもあります。退職後は、従業員から健康保険証を返却してもらいましょう。

関連記事:社会保険の資格喪失届とは?書き方や注意点を詳しく解説

4. 社会保険料の負担を減らすなら月末退職がよい?

社会保険料の負担を減らすのであれば、「月の途中」「月末」のどちらがよいのでしょうか。企業と従業員で退職日によって社会保険料の負担は変わってくるので、正しく理解しておくことが大切です。

ここでは、社会保険料の負担を減らすためのポイントについて詳しく紹介します。

4-1. 企業は月の途中の退職のほうが社会保険料の負担が少ない

従業員が月末退職する場合、企業もその月の社会保険料の負担が発生することになります。そのため、社会保険料の負担だけの観点からいえば、月の途中に退職してもらうほうがコストを削減できるでしょう。

しかし、勤怠管理や給与計算、仕事の引き継ぎなどの業務も発生するので、月末退職を促すケースもあります。このように、総合的に企業と従業員双方の負担を減らせるような退職日を設定することが大切です。

4-2. 従業員は退職後も健康保険と年金保険の加入が必要

月の途中に退職すれば、その月の社会保険料の負担がなくなるので、一見得したようにみえるかもしれません。しかし、従業員は退職後も健康保険や年金保険に加入する必要があります。

退職後の健康保険の選択肢には「健康保険(他社に勤める)」「任意継続健康保険」「国民健康保険」「家族の健康保険」の4つがあります。任意継続健康保険制度を利用すれば、2年間引き続き同じ健康保険に加入することができます。しかし、労使折半ではなくなるので、2倍の健康保険料を支払わなければなりません。

また、退職後の年金保険の選択肢には「厚生年金保険(他社に勤める)」「国民年金保険(第1号被保険者)」「国民年金保険(第3号被保険者)」の3つがあります。厚生年金保険から国民年金保険に切り替えることで、保険料の負担を減らせるかもしれませんが、将来受け取れる年金額が減少します。

関連記事:社会保険における健康保険は国民健康保険と何が違うのか?|切り替え手続きについてもご紹介!

4-3. 社会保険の変更手続きには期限がある

社会保険の変更手続きには、以下のような期限が設定されています。

  • 国民健康保険:資格喪失日から14日以内
  • 任意継続保険:退職日の翌日から20日以内
  • 国民年金保険:資格喪失日から14日以内

上記の手続きは、従業員自身でおこなう必要があります。対応が遅れると遅滞金が発生するケースもあるため、手続きを忘れないよう従業員へ伝えておきましょう。

4-4. 扶養に入る場合は月の途中の退職のほうが負担が少ない

扶養に入るなら、月の途中で退職したほうが負担が少なくなります。扶養に入ったタイミングで、社会保険料を自分で支払う必要がなくなるからです。

扶養に入る場合は、月末ではなく、月の途中で退職することを検討するとよいでしょう。

4-5. 従業員は退職前と退職後の社会保険料の比較が大切

従業員が退職を検討する場合、まずは自分にはどのような保険の選択肢があるのかを正しく理解することが大切です。また、社会保険料の金額だけでなく、保障内容や将来受け取れる年金額なども踏まえて、退職後の社会保険を選択することが重要といえます。

社会保険料の計算方法が把握しきれていない方や、必要な届出の対応がわからない方もいらっしゃるでしょう。そのような方に向け、当サイトでは、社会保険料の概要からす計算方法、必要な届出についてわかりやすく解説した資料を無料配布しています。退職月をはじめとする社会保険料の計算方法に不安のある方は、こちらをダウンロードしてご確認ください。

5. 退職月の社会保険料の取り扱いを正しく理解しよう

注意点をさす指

社会保険料は、退職するタイミングによって「社会保険料の有無」が変わります。

月の途中で退職した場合 退職月の社会保険料は発生しない
月末に退職した場合 退職月の社会保険料は発生する

ただし、入社月と退職月が重なる場合、月の途中退職であったとしても、その月の社会保険料が発生します。このように、社会保険料の仕組みや計算を理解するのは大変であり、ミスが生じる恐れもあります。そのため、労務管理システムを導入して、業務の自動化を検討してみるのもおすすめです。

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