固定残業代(みなし残業代)は、通常の残業時間と計算方法が異なります。固定残業代制には、手当型と組込型の2種類の計算の仕方があります。また、超過分や欠勤控除、端数処理など、固定残業代の計算には注意点も多くあります。今回は、固定残業代の具体的な計算方法をわかりやすく解説します。違法とならないために活用できるツールも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
1. 固定残業代(みなし残業代)の2種類の計算方法
固定残業代制は、みなし残業代制ともよばれ、実際の残業時間にかかわらず、一定の残業代を支給する制度のことです。あらかじめ決められた残業時間の範囲内なら、常に一定の手当が支給されるので、残業代計算の手間を省くことができます。その代わり、固定残業代は前もって計算し、固定の手当として支給するか、あるいは基本給に組み込んでおかなければなりません。ここからは、固定残業代の計算方法の種類について詳しく紹介します。
1-1. 手当型の固定残業代とは?
手当型の固定残業代(みなし残業代)とは、基本給と別で支給される固定残業代のことです。この場合、「役職手当」「営業手当」といった名称で固定残業代を支給している企業もあります。
月給:300,000円
・基本給:221,000円
・固定残業代:79,000円(月45時間分)
※月45時間を超える時間外労働は追加で支給
1-2. 組込型の固定残業代とは?
組込型の固定残業代(みなし残業代)とは、基本給に組み込まれている固定残業代のことです。組込型の固定残業代を採用する場合、通常の労働時間に対する賃金と、割増賃金をきちんと判別することができるようにしなければなりません。
月給:300,000円(月45時間分の固定残業代79,000円を含む。)
※月45時間を超える時間外労働は追加で支給
関連記事:固定残業代とは?手当型と組込型の違いや就業規則・労働条件通知書への記載についてわかりやすく解説
2. 手当型の固定残業代の計算方法
固定残業代を基本給に加算する形で支給する「手当型」の計算方法は次の通りです。
※月平均所定労働時間 = ( 1年の日数 – 年間休日 ) × 1日の所定労働時間 ÷ 12
たとえば、年間休日が125日、1日の所定労働時間が8時間の会社なら、月平均所定労働時は160時間となります。月給30万円、月平均所定労働時間が160時間だった場合、1,875円が1時間あたりの基礎賃金になります。
固定残業時間とは、基本給に加算される時間外労働手当分の残業時間のことです。労働基準法第32条の法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働をさせる場合、時間外労働に該当し、割増賃金の支払いが必要になります。時間外労働の割増率は、次の表の通りです。
割増項目 |
割増率 |
時間外労働(月60時間以内) |
25%以上 |
時間外労働(月60時間超え) |
50%以上 |
実際に、月給30万円、固定残業時間45時間、割増率25%の場合の固定残業代は、次のように計算することができます。
この場合、端数処理が生じているので、厚生労働省の公表している端数処理ルールに従い、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げ「10万5,469円」が固定残業代となります。なお、計算の便宜を考慮して固定残業代を微調整することも可能です。上記の例なら、5,469円を切り上げて、10万6,000円を固定残業代としても良いでしょう。
(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
労働基準法上認められている端数処理方法は次のとおりです。
(1)割増賃金の計算
A.1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる。B.1か月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、Aと同様に処理する。
(2)平均賃金の計算
C.賃金の総額を総暦日数で除した金額の銭未満の端数を切り捨てる。なお、平均賃金を基にして休業手当等を計算する場合は、特約がなければ円未満の端数処理はAと同じ。(3)1か月の賃金計算
D.1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合は50円未満の端数を切り捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払うことが出来る。E.1か月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことが出来る。
なお、E・Dの取り扱いをする場合は、その旨就業規則に定めることが必要です。
関連記事:割増賃金とは?計算方法や残業60時間超の割増率をわかりやすく解説
3. 組込型の固定残業代の計算方法
組込型の固定残業代の計算方法においても、1時間あたりの基礎賃金と固定残業時間、割増率から固定残業代を計算するところまでは、手当型の固定残業代の計算方法と同様です。しかし、組込型の場合、基本給に固定残業代を含めて一体型にして算出しなければならないので、給与総額から固定残業代を差し引いた、基本給を就業規則などに明示しておく必要があります。たとえば、給与総額25万円、月平均所定労働時間160時間、固定残業時間45時間の場合、固定残業代は、次のように計算されます。
固定残業代 = 1,156.07円 × 45時間 × 1.25 = 65,029円(1円未満切り上げ)
基本給 = 25万円 – 65,029円 =184,971円
このように、基本給がいくらになるのかもきちんと明記しなければならないので注意が必要です。
4. 手当型と組込型、どちらを選べばいい?
固定残業代の計算方法には「手当型」と「組込型」の2種類があります。固定残業代の計算方法自体に大きな違いはありません。また、どちらを選ぶかは、企業の任意で選択することができます。
ただし、組込型の場合、給与明細には「基本給」としか記載されないため、固定残業代がいくら組み込まれているのかわかりにくいのが欠点です。また、組込型の計算方法では、給与総額から固定残業代を差し引いて基本給を計算するので、これまで基本給に残業手当を上乗せして支給する方法を採用していた場合、従業員の基本給が減ってしまうことになります。
このような場合、基本給について定めた就業規則に変更を加える必要があります。しかし、労働契約法第9条により、基本給の減少は労働者の不利益に該当するので、固定残業代を組込型で計算する場合、従業員の合意を得なければなりません。従業員との無用なトラブルを避けたいのであれば、組込型よりも基本給に上乗せする手当型を採用したほうがよいかもしれません。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
関連記事:雇用契約は途中で変更可能?拒否された場合や覚書のルールについても解説
5. 固定残業代の超過分の計算方法
固定残業代制度を導入する場合、就業規則や労働条件通知書・雇用契約書には、あらかじめ固定残業時間を明記しておく必要があります。たとえば、固定残業時間を20時間とした場合、20時間までの時間外労働賃金は、基本給に上乗せしている、あるいは組み込んでいる固定残業代でカバーすることが可能です。
しかし、20時間を超えて残業した場合は、従来通り、残業時間に応じた時間外労働の割増賃金を支払わなければなりません。超過分の残業代は、次の計算式で計算することができます。
時間外労働の割増率は、月60時間以内の場合「25%以上」、月60時間を超える場合「50%以上」になります。固定残業代制だからと勤怠管理をおこなっていないと、労働基準法で定められた残業の上限規則を超過し、罰則を受ける可能性もあるため、適切に労働時間を管理しましょう。
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6. 固定残業代が違法となるケースとは?
固定残業代制は規定さえ守っていれば、法律上全く問題がない給与制度です。ただし、固定残業代制には注意しなければならないポイントも多くあります。ここでは、固定残業代(みなし残業代)が違法となるケースについて詳しく紹介します。
6-1. 固定残業代と基本給の内訳が明示されていない場合
手当型の固定残業代制の場合、固定残業代がいくらなのかが明白です。一方、組込型の固定残業代制の場合、基本給に固定残業代が含まれているため、みなし残業代がいくらなのか一目見ただけではわからないケースもあります。そのため、基本給と固定残業時間に対する残業代の内訳を明白にして、あらかじめ従業員に周知しなければなりません。
労働基準法第15条により、企業は労働契約時に労働条件を従業員に明示する義務があります。固定残業時間に対する残業代がいくらなのかわからない場合、労働基準法第15条に違反することになり、罰則を受ける恐れがあります。この場合、労働者は労働契約を直ちに解除することが可能です。このような事態が生じないよう、基本給と固定残業代の内訳を明確にして労働者に周知することが大切です。
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
関連記事:労働条件の明示義務とは?2024年4月からの明示事項の法改正についても解説!
6-2. 超過分の残業代を支払っていない場合
固定残業代はあくまで残業時間を計算の便宜上みなし時間で設定して残業代を支払う制度です。当初みなした想定時間よりも多く残業があった場合は、従業員に追加で残業代を支払わなければいけません。
労働基準法第115条により、未払い賃金は、給料日から5年間(当分の間は3年間)さかのぼって請求することができます。仮に従業員から未払い残業代の請求を受けた場合、未払賃金額が会社の経営に影響を及ぼす金額にのぼる恐れもあります。そのため、超過分の残業代もきちんと計算して支払うようにしましょう。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
賃金請求権の消滅時効期間の延長(労基法115条)
賃金請求権の消滅時効期間を5年(旧法では2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年とされています。
関連記事:労働基準法による賃金の定義や支払い方法をわかりやすく解説
6-3. 基準時間に満たないため固定残業代を減額している場合
従業員の残業時間がみなし時間に及ばなかったからといって、固定残業代を減額することはできません。また、「一定時間以上残業をしなかった場合には固定残業代を支給しない」といったルールを設けることも違法です。固定残業代制の目的とルールを正しく理解して運用するようにしましょう。
関連記事:固定残業代を設ける2つのメリットと押さえておきたいデメリット
6-4. 残業の上限時間を超過して固定残業時間を設定している場合
36協定の特別条項を締結している場合でも、残業の上限時間は年720時間です。また、特別条項の締結時でも、月45時間を超えて残業をさせることができるのは年6回までであるため、仮に月50時間の固定残業代を設定し、年間7回50時間の残業が発生してしまうと労働基準法に違反してしまいます。
固定残業時間を月50時間に設定しても、実労働時間が残業の上限時間を超過しなければ違法にはなりませんが、固定残業代を45時間超に設定していると、社外から「ブラック企業」というイメ―ジを持たれたり、それゆえに優秀な人材の獲得が難しくなったりするリスクがあります。固定残業の上限は45時間以内に設定しておくようにしましょう。
関連記事:固定残業代45時間はやばい?リスクや注意点を理解しよう
6-5. 最低賃金を下回る固定残業代が設定されている
固定残業代が最低賃金を下回っている場合は違法になります。固定残業代を設定する場合、最低賃金を下回っていないかチェックすることが大切です。最低賃金は地域によって異なり、随時見直しがおこなわれるので、最新の情報をきちんとキャッチアップするようにしましょう。
(最低賃金の効力)
第四条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
関連記事:労働基準法における最低賃金とは?基準や罰則を徹底解説
7. 固定残業代を導入する場合の注意点
ここでは、固定残業代(みなし残業代)を導入する場合の注意点について詳しく紹介します。
7-1. 固定残業とみなし残業には違いがある
固定残業とみなし残業は同じ意味合いでよく用いられます。しかし、みなし残業には「みなし残業代制」と「みなし労働時間制」の2種類の意味があります。固定残業は「みなし残業代制」のみなし残業と同じ意味を持ちます。固定残業と「みなし労働時間制」のみなし残業は異なる意味を持つので注意が必要です。
関連記事:みなし残業と固定残業の間違いやすいポイントを徹底解説
7-2. 固定残業代制を導入する場合は36協定の締結が必要
固定残業代制の導入自体は36協定を締結していなくても可能です。しかし、法定労働時間を超えて労働させた場合は違法になります。そのため、固定残業代制を導入する場合、原則として36協定の締結が必要です。36協定を締結したとしても時間外労働の上限は月45時間・年360時間までと定められています。特別条項付きの36協定を結べば、下記を満たす範囲で時間外労働を延長させることが可能です。
- 時間外労働 :年720時間以内
- 時間外労働+休日労働 :月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内
- 月45時間超の時間外労働の回数:年6回以内
このように、36協定を締結したとしても、いくらでも残業をさせよいわけではないので注意が必要です。
関連記事:36協定とは何かわかりやすく解説!特別条項や新様式の届出記入方法も紹介!
7-3. 固定残業代制のルールを就業規則に明示する
固定残業代制を導入する場合、就業規則にルールを明記する必要があります。なお、労働基準法第89条により、常時労働者数が10人以上の企業は、賃金の内容を含めて就業規則を作成し、届け出る義務があります。就業規則を変更した場合も同様です。なお、従業員が不利益を被る就業規則の変更は、原則として認められていないため注意が必要です。
労働基準法には就業規則の周知義務も定められているので、就業規則を変更したら従業員に正しい方法で周知するようにしましょう。新しく労働者を雇う場合は、労働条件通知書や雇用契約書に固定残業代制のルールを記載して、実際に雇用し始める前に明示して合意を得ることが大切です。
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(省略)
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(省略)
7-4. 深夜労働や休日労働にも割増賃金が必要
固定残業代制を導入することで、労働時間が基準以下であれば、残業代計算の手間がなくなります。しかし、深夜帯(原則22時から5時まで)に労働する場合や、法定休日(週1日または4週4日)に働く場合、深夜労働、休日労働の割増賃金をそれぞれ支払う必要があります。深夜労働と休日労働の割増率は、次の表の通りです。
割増項目 |
割増率 |
深夜労働 |
25%以上 |
休日労働 |
35%以上 |
なお、深夜労働は、時間外労働や休日労働と重なる可能性もあります。たとえば、月40時間の固定残業時間を設定している場合で、超過分5時間が発生し、それが深夜帯の労働だったら、その5時間について50%以上(時間外労働と深夜労働の割増率を合算)の割増率を適用して賃金を支払う必要があります。このように、固定残業代制を導入する場合、後から残業代を支給しなくてすむ可能性もありますが、深夜労働や休日労働はこれまで通り支給しなければならないので注意が必要です。
関連記事:割増賃金とは?計算方法や残業60時間超の割増率をわかりやすく解説
7-5. 固定残業代の欠勤控除の計算には注意が必要
固定残業代制を導入している企業において、従業員が欠勤するケースもあるかもしれません。就業規則の賃金規程に「1カ月の支給総額から、欠勤日数分に対する日割相当額を控除する」のように欠勤控除の定めをしていれば、固定残業代を含めて欠勤控除をおこなうことができます。
たとえば、月平均所定労働日数が20日、固定残業時間が40時間と設定している場合、1日の欠勤があったら、2時間分の固定残業代を控除することになります。しかし、1日欠勤した月に39時間の残業時間があった場合、既に固定残業時間の2時間分を控除しているため、1時間の超過分の残業が発生することになります。一方、固定残業代の欠勤控除の定めを設けていない場合、40時間以内に収まっているので、超過分の残業代は発生しません。
このように、固定残業代の欠勤控除の仕組みは、就業規則に従うことになります。就業規則の定めの仕方によって、控除額や支給する残業代が変わるケースもあるので注意が必要です。
8. 固定残業代の計算に便利なツール
固定残業代制を導入すると、残業代計算の手間を大幅に削減することができます。しかし、従業員別に固定残業代を算出したり、固定残業時間を超過した分の残業代を計算したりと、固定残業代制の運用には一定の工数がかかるのは確かです。ここでは、固定残業代の計算に便利なツールについて詳しく紹介します。
8-1. Web計算ツール
インターネット上には固定残業代を計算できる無料のWeb計算ツールがあります。無料のWeb計算ツールを使用すれば、コストを大きく抑えることができます。また、既存のツールを活用するので、素早く導入することが可能です。
ただし、Web計算ツールの信用性をきちんとチェックしないと、間違った固定残業代が算出されるリスクもあります。また、Web計算ツールには、給与総額や月平均所定労働時間、みなし残業時間などを人の手で入力しなければなりません。そのため、多くの従業員を雇用している企業の場合、入力の手間が大きくかかります。また、人的ミスにより、誤った固定残業代が計算される恐れもあります。従業員数が数人程度の企業で、シンプルな固定残業代制を導入している場合は、無料のWeb計算ツールを使用してみてもよいかもしれません。
8-2. エクセルやスプレッドシート
Excelやスプレッドシートを使用することで、自社のニーズにあった固定残業代計算ツールを作成できる可能性があります。Excelやスプレッドシートは従業員が使い慣れているので、操作しやすいという特徴があります。また、関数やマクロを使用すれば、計算を自動化して、業務を効率化することが可能です。さらに、インターネット上には、固定残業代を計算するためのExcel・スプレッドシートの無料テンプレートがあります。テンプレートを活用して、自社の仕組みに応じてカスタマイズすれば、コストを削減しながらスムーズに固定残業代計算ツールを作成することが可能です。
ただし、Excelやスプレッドシートを用いて固定残業代計算ツールを構築する場合、給与やオフィスツールに関して専門的な知識を持った人材が必要になります。ノウハウなく作成してしまうと、使い物にならない固定残業代計算ツールができてしまう恐れもあります。また、法改正があったら、自社で作り直しが必要になり、新たな工数もかかります。このように、自社の人材のスキルや採用する固定残業代制の仕組みを考慮し、Excelやスプレッドシートを使用して固定残業代計算ツールを作成するか検討してみましょう。
8-3. 勤怠管理システムや給与計算ソフト
従業員規模が大きく、多様な働き方を採用している企業の場合、固定残業代の計算に対応した勤怠管理システムや給与計算ソフトを導入することが推奨されます。あらかじめ固定残業代の計算に対応しているシステムを使用すれば、人的ミスを防止し、効率よく固定残業代を算出することが可能です。
ただし、勤怠管理システムや給与計算ソフトには多くの種類があります。また、コストもかかります。料金や機能、使いやすさ、セキュリティ、サポートなどの観点から複数のツールを比較して、自社のニーズにあったシステムを導入することが大切です。
関連記事:勤怠管理システム53サービス比較!特徴・料金・機能・メリットを紹介
9. 固定残業代(みなし残業代)の計算方法を正しく理解しよう
固定残業代の計算には、基本給と別に手当を支給する方法(手当型)と、基本給にあらかじめ組み込む方法(組込型)の2種類があります。正しい計算方法を理解して、適切にみなし残業代を支給しましょう。なお、固定残業時間を超えて残業した場合は、その時間に応じた残業代を別途支給しなければなりません。固定残業代の計算を効率化するため、勤怠管理システムや給与計算ソフトの導入を検討してみましょう。
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