企業が新しく労働者を雇用する際は労働条件を明示した上で雇用契約を結びます。しかし、事業の内容が変わった、事業が拡大した、または縮小した、時代の流れに合わせる必要があるといった場合、いつまでも古い雇用契約のままでは通用しなくなるケースもあります。
一方で、雇用契約の変更は労働者のライフスタイルや収入に大きな影響を与えます。企業側が無暗に雇用契約を変更すると、さまざまなトラブルが発生する可能性もあるでしょう。
トラブルを防ぎつつ雇用契約を変更するため、どのような点に注意しなければならないのかを解説します。
関連記事:雇用契約をトラブルなく結ぶ方法は?違法にならないための対応をわかりやすく解説
雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。
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目次
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1. 雇用契約の途中変更をする具体的な方法
雇用契約を途中変更する具体的な方法を紹介します。
まずは労働者からの同意を得る必要があり、その後就業規則に則って変更手続きをおこないます。
1-1. 労働者からの同意が必要
雇用契約を変更したい場合は変更内容と変更する理由を明確にした上で労働者から同意を得なければなりません。
変更内容を伝える際は労働者一人ひとりと個別に面談をするなどの形で全員から同意を得る必要があります。
新しい雇用契約書を作成する方法もありますが、覚書でも代用できます。
覚書は双方が雇用契約の変更に同意したことを書面に残したものです。覚書にも法的な拘束力があるため、雇用契約書を作り直す手間を省くことが可能です。
覚書に正式な書式はありませんが、最低限表題、前文、本文、後文、覚書の作成日、企業と労働者の署名、住所、捺印が必要です。これらの項目が抜けている場合法的拘束力を発揮できない可能性があるので注意してください。
関連記事:雇用契約書が持つ法的効力とは?労働条件通知書との違いを詳しく紹介
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1-2. 就業規則に則り契約を変更する
労働者から雇用契約変更の同意を得られたら雇用契約書だけでなく就業規則に則って契約を変更します。
就業規則を変更する場合、就業規則変更届を作成し、変更についての意見書も作成しなければなりません。
新しい就業規則と就業規則変更届、意見書の3つの書類を労働基準監督署に提出し、受諾されてやっと変更手続きが完了します。
その後は契約内容が変更されたことを該当の労働者に伝え、社内で周知させましょう。
新しい就業規則に問題がある、意見書に記載された変更理由に合理性がないなどの場合変更が認められない可能性もあるので注意してください。
2. 雇用契約を途中で変更する際の注意点
雇用契約を途中で変更する際に注意したいポイントを紹介します。
労働基準法、働き方改革などによって、労働者の権利を守る制度が整っています。場合によっては雇用契約の変更は認められないケースも多くなっています。
トラブルに発展すると大切な従業員を失うことになるだけでなく、企業の信頼を落とすことにもつながるので注意しましょう。
2-1. 契約の変更には合理的な理由が必要
企業の業績が悪化したなどの理由で労働者が不利益を被る変更を希望する場合もあります。
その場合は変更理由にきちんとした合理性があるかどうかが重視されます。
上記で解説した通り合理性を判断する基準はあるものの、どう解釈するかは人によって違うため、場合によっては変更が認められないケースもあります。
変更のための理由は慎重に考えるようにしてください。
変更の理由に必然性があれば、労働者が不利になっても認められる可能性は高くなります。
現在の雇用契約を変更しなければ事業が成り立たない、経営が難しくなるような内容かどうかを考えます。
その上で代償措置や緩和措置、別の労働条件を変更するなどして従業員の負担を最低限にしなければなりません。
過去には雇用契約の変更が認められたケースも認められなかったケースもたくさんあります。変更によってどのような影響が及ぶのか、どのような理由なら認められるのかなどを過去の事例から判断することもおすすめです。
2-2. 合理性がなければ変更できない
雇用契約の変更理由に合理性がなくても労働者からの同意を得られることもあります。
しかし、就業規則変更届や意見書を提出した労働基準監督署が理由に合理性がないと判断した場合は変更が認められません。
理由が合理性を欠いている他、就業規則の範疇を越えてしまっている場合も認められません。
今一度合理性のある理由を考えるか、雇用契約の変更内容を見直しましょう。
2-3. 契約内容が違法の場合変更不可
変更後の雇用契約が労働基準法に反している場合、変更は認められません。
労働時間や労働日数、最低賃金、休日など、労働基準法では労働者を守るためのさまざまな法律があります。
もちろん、法律はもっとも拘束力が高く、それに反した就業規則は法的拘束力はありません。
労働基準法は都度見直され、改定されているため、気付かないまま違法な変更を提案してしまったということのないようにしましょう。
雇用契約の途中変更を含む手続きをする際には法律に則っているかを確認する必要があります。法律に違反している契約はすべて無効となるため、あらかじめ法律と自社の雇用契約を確認して、問題がないか確認しておくと良いでしょう。当サイトでは、法律に則った雇用契約の締結方法を詳しく解説した資料を無料でお配りしています。自社の雇用契約が適切かどうか確認したい方は、こちらからダウンロードしてご活用ください。
3. 雇用契約の途中変更は「許されるケース」と「許されないケース」がある
雇用契約の途中変更には許されるケースと許されないケースがあります。正しい手順を踏んでいても下記で紹介する許されないケースに該当する場合は変更は認められません。
変更できるかできないかは、変更の理由や合理性が重視されます。
3-1. 労働者が不利になる一方的な変更は不可
雇用契約を途中変更することで労働者が一方的に不利になる場合の変更は許されません。労働者の立場を守るため、労働基準法で定められています。
企業の都合で雇用契約を変更する場合は必ず労働者の合意を得た上で手続きを進めましょう。同意を得ないまま一方的に変更を押し進めることはできないので注意してください。
3-2. 労働者が不利になる場合合理性が重要
雇用契約の変更によって労働者が不利益を被る場合、重視されるのは契約を変更する理由の合理性です。
合理性があるかどうかは、労働基準法が定める、以下8つの要素から判断されます。
- 就業規則を変更する必要性が本当にあるのか
- 労働者の不利益はどれくらいのものなのか
- 変更後の内容は相当なものか
- 変更する代わりに代償措置などが用意されているか
- 労働組合ときちんとした交渉の経緯があるか
- 他の労働組合や他の従業員への対応は適切か
- 同じような事項について、日本社会では一般的にどのように扱われているか
- とくに大きな不利益を被る労働者への緩和措置はあるか
総合的に考えて正当性があると判断されれば、労働者に不利な内容であっても変更は可能です。
4. 雇用契約のルールを守って正しく契約しよう
雇用契約を途中で変更する場合のルールや注意点を解説しました。
最初に結んだ雇用契約の内容をあとから変更することは可能ですが、正しい手順を踏む必要があります。労働者個人からの同意を得た上で就業規則に則って変更し、労働基準監督署に必要書類を提出しましょう。
労働者から変更について同意を得られたとしても、変更の理由に合理性がなかったりそもそも違法であったりする場合、変更は認められません。企業の都合で簡単に変えられるものではないため、変更したい場合は慎重に手続きを進めましょう。
不明な点がある場合は弁護士など、専門家に相談することがおすすめです。トラブルを防ぎつつスムーズに契約内容を変更するためのアドバイスを受けられます。
雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。
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