KGIは最終目標、KPIは中間目標を定量化した指標のことです。KPIはKGIを達成できる内容にするなど、設定時にはいくつかのポイントがあります。また、KGIとKPIは設定部署・達成地点・達成期間などにも違いがあるため、正しく意味を理解することが大切です。この記事では、KGIとKPIの違いや、設定方法、具体例、メリット、注意点をわかりやすく解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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目次
1. KGIとKPIの違いとは?
KGIとKPIには明確な意味の違いがあります。ここでは、KGIとKPIの定義を説明したうえで、KGIとKPIの違いについて詳しく紹介します。
1-1. KGIとは?
KGIは「Key Goal Indicator 」の略称で、日本語に訳すと「重要目標達成指標」や「経営目標達成指標」になります。つまり、KGIとは、企業やプロジェクトが目指す最終目標を定量的に定めた指標のことです。KGIの例として「前年と比べ売上高を2倍にする」「売上高経常利益率15%を目指す」が挙げられます。期限は1年~5年など、年単位が一般的です。
KGIを設定する主な理由は、最終目標を全社で共有するためです。最終目標があっても具体性がなければ、社員と進むべき方向を一致させることは難しいです。KGIは数値化して具体的に設定されるので、いつまでに何をすればよいか、全員の認識を一致させることができます。
また、KGIは、ステークホルダーの理解を得るためにも重要な機能を果たします。KGIは株主や取引先などに最終目標を数値で客観的に示すことができるので、投資や取引の判断材料にもなります。
関連記事:KGIとは?設定するメリットや設定上の注意点を徹底解説
1-2. KPIとは?
KPIは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語にすると「重要業績評価指標」や「経営業績評価指標」になります。つまり、KPIとはKGIを達成するための中間目標を定量的に定めた指標のことです。KPIの例として、営業部門であれば「成約率」「リピート率」など、マーケティング部門であれば「新規顧客獲得数」「PV数」などが挙げられます。なお、各部門のKPIはKGIを分解して設定する必要があります。期間は1カ月~3カ月などの月単位が一般的です。
KPIを設定する理由は、KGIだけでは目標達成までの道のりが遠すぎて、進捗管理が困難なためです。また、進捗が残らなければ経営に生かすこともできません。KPIを設定すれば、KGIの達成に向け、部門や社員それぞれが何をすべきを明確にすることができます。現状ではKGIの達成が難しいと判断できれば、KPIの内容変更により柔軟な対応も可能です。また、KPIにより進捗状況が残れば振り返りができ、次期の経営に活かすこともできます。
関連記事:KPIとは?設定するメリットや設定のポイントを徹底解説
1-3. KGIとKPIの違い
KGIとKPIの違いを図で表すと以下のとおりです。
項目 |
KGI |
KPI |
名称 |
重要目標達成指標 経営目標達成指標 |
重要業績評価指標 経営業績評価指標 |
達成地点 |
最終目標 |
中間目標 |
達成期間 |
1~5年 |
1~3カ月 |
特長 |
最終目標を定量的に表した指標。 |
KGI達成プロセスの進捗評価のために設定する定量指標。 |
具体例 |
前年比売上高20%アップ |
月成約件数20件 |
このように、KGIとKPIは達成地点や達成期間などに違いがあります。なお、KGIとKPIは結びついていなければならないので、設定する際は整合性があるか、きちんと確認をおこなうことが大切です。
関連記事:目標が達成されないのはKPI設定のせい?マネジメントに求められるKPI設定・KPIマネジメントのコツを解説
2. KGIとKPIの設定方法
KPIはKGIを分解した内容のため、KGIの設定後KPIを設定するという順序になります。ここでは、KGIとKPIそれぞれの設定方法を解説します。
2-1. KGIを設定する
KGIは最終目標のため上層部での決定が多いかもしれません。KGIに用いる指標は、売上高、売上総利益、営業利益、市場シェア率などが挙げられます。なお、最終目標には「クライアントの夢を叶える」などの定性目標と、「売上高10億円達成」などの定量目標があるものの、KGIで管理するのは後者です。そのため、あくまでも数字で設定するのが基本になります。
関連記事:KPIを数値化できない?問題点や対処方法をわかりやすく解説
2-2. KPIの指標を決める
KGIが決まったら、達成するためのKPIの項目を決定します。KPIは中間目標のため、部門単位での設定が多いかもしれません。なお、各部門によりKPIの指標は異なるので、適したものを採用するようにしましょう。KGIを達成するKPIは1つだけでなく、複数設定しても問題ありません。
たとえば、KGIが「売上高を2倍にする」なら、KPI1は「契約件数を増やす」、KPI2は「契約単価を上げる」などが考えられます。さらに、KPI1からさらに、KPI1-1、KPI1-2などと分解して設定しても問題ありません。各部門でどのような指標をKPIとするかは、KPIツリーを作って表すと一目でわかりやすくなります。
関連記事:KPIツリーとは?作成方法や作成上の注意点を詳しく解説
2-3. KPIの数値を決める
KPIの項目が決まったら具体的に数値を当てはめていきます。KPIも定量目標のため、漠然とした内容ではなく、一目で把握できるよう数値化することが大切です。また、KGIをもとに組み立てられたKPIの達成度は客観的な人事評価の判断材料にもなります。経営目標に紐づいて考えられた目標に対する達成度を数値で示すことで、従業員も納得感のある人事評価を作り出すことが可能です。
しかし、明確な目標を立てたとしても、人事評価制度そのものが整っていないと公平な人事評価は実現できません。現在、人事評価制度が整っておらず従業員のモチベーション管理に課題を感じている方向けへ「人事評価の手引き」を無料で配布しています。自社にとって適切な人事評価制度を検討するために、まずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
3. KGIとKPIの具体例|営業・セールスを例にわかりやすく解説
ここでは、営業・セールスを例に、KGIとKPIの設定方法をわかりやすく解説します。
3-1. まずはKGIを設定する
まずはKGIを設定しましょう。「中期経営計画」があれば、その内容を基にKGIを設定すると、スムーズに目標設定ができます。営業・セールスの場合、売上を5年後に2倍にしたいとします。現状の売上高が1,000万円であれば、KGIは「売上200万円アップ」と設定することが可能です。
3-2. KPIを洗い出す
売上を上げるために、必要な取り組みをKPIとして洗い出します。営業・セールスの場合、下記のような項目がKPIとして設定されます。
- 訪問件数
- 成約件数
- 顧客単価
- 受注期間
- 顧客満足度
- 解約件数 など
KPIが多すぎると、管理負担が増え、効率が下がる恐れがあります。そのため、優先順位付けをおこない、KPIを設定することが大切です。たとえば、訪問件数を伸ばすのが現実的に難しいのであれば、成約率を高めて成約件数を増やすことで、売上を伸ばすことができます。
3-3. KPIの目標数値を定める
KPIの項目として「成約率」を選んだとします。売上の計算式をお「売上 = 訪問件数 × 成約率 × 顧客単価」と設定します。これまでは訪問件数1万件、成約率10%、顧客単価1万円で、売上1000万円を実現していたとします。売上200万円アップさせるには、成約率を12%にする必要があります。以上から、「売上200万円アップ」をKGIとする場合、「成約率12%」がKPIになります。
4. KGIやKPIを設定するメリット
KGIやKPIを設定することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、KGIやKPIを設定するメリットについて詳しく紹介します。
4-1. 行動を明確にできる
目標が数値化されず曖昧だと、重要なタスクであっても「優先順位を下げる」「後回しにする」などの業務の滞りが発生する原因になります。KGIやKPIは数値で具体的に設定されるので、次すべき行動が明確になります。そのため、従業員は悩むことなく、スムーズに業務に取り掛かることが可能です。
4-2. 評価基準を統一できる
KGIやKPIは数値化して具体的に設定されます。定量的に目標が設定されることで、評価基準を統一することができます。目標に対する進捗状況に応じて従業員を評価することで、公平な人事評価を実現することが可能です。公平な評価は従業員のエンゲージメントを高め、仕事に対するモチベーションの向上にもつながります。
4-3. 組織の強化につながる
定性的な目標を設定すると、従業員によって解釈が変わってしまう恐れがあります。KGI・KPIにより、定量的な目標を設定すれば、すべての従業員が同じ方向を向いて目標に対して取り組めるので、チームワークが向上します。このように、KGIやKPIの設定は、強固な組織づくりにも役立ちます。
4-4. 見直しや改善が素早くできる
目標を定性的に設定する場合、評価がしにくいケースもあります。見直しや改善するタイミングが遅くなり、想定しているよりも目標達成までに時間がかかる可能性もあります。KGIやKPIにより数値化して目標を設定すれば、進捗状況に基づき、適切なタイミングで見直しや改善をおこなうことが可能です。適宜、軌道修正をしながら、スピーディに目標達成を目指すことができます。
5. KGIとKPIの設定時の注意点
KGIやKPIの設定には、注意点がいくつかあります。ここでは、KGIとKPIの設定時の注意点について詳しく紹介します。
5-1. KGIと関係のないKPIは設定しない
KGIの達成はKPIの達成にかかっているといっても過言ではありません。KPIの設定自体が間違っていると、KGIも達成できなくなります。特に、KPIは各部門により設定する項目が異なるので、注意深く確認しないとKGIと関係のない内容となっている恐れもあります。定期的にKGIとKPIの整合性に問題が発生していないかを確認することが大切です。
5-2. KPIに対して誤った策を講じない
設定したKPIに対する施策にも注意が必要です。たとえば、「売上高を上げる(KGI)」ため、「毎月の訪問件数を10件増やす」をKPIとして設定し、達成したとします。しかし、既存顧客のサポートがおざなりになり、解約件数が以前より2割増したのであれば、KGIの達成は遠のいてしまいます。KPIの達成がKGIの達成と矛盾しないように、都度、内容や影響、進捗を管理することが大切です。
5-3. KPIは細分化しすぎない
KPIは達成のために細分化するものの、日別の目標にまで落とし込むと、かえって柔軟性を欠く可能性があります。また、管理が煩雑になり、正しく進捗状況を把握できなくなる恐れがあります。部門のKPIは1~3カ月目標に留め、日々の業務の詳細は各担当者に任せるようにしましょう。
関連記事:KPIマネジメントとは?必要性やマネジメントのコツを解説
6. KGIとKPI達成のポイント
KPIの設定では「SMARTの法則」を意識しましょう。また、KPIはPDCAサイクルを回し、KGIを達成できるか確認を繰り返し進めることが大切です。ここでは、KGIとKPI達成のポイントについて詳しく紹介します。
6-1. KPIは「SMARTの法則」を意識して設定する
SMARTの法則とは、目標達成に必要な以下の5つの要因の頭文字です。
- Specific:具体的に
- Measurable:測定可能な
- Achievable:達成可能な
- Relevant:関連性がある
- Time-bound:期限を設けて
SMARTの法則を活用すれば、誰にでもわかりやすい具体的なKPIを設定することができます。また、目標達成の可能性を高めるうえでも役立ちます。
6-2. PDCAサイクルを回し確認する
KPIは計画するだけでなく、実行・評価・改善を繰り返すことで、KGIの達成可能性を高めることができます。一度KPIを設定したら終わりではなく、日々KGIを達成できるか、数値を基に管理しましょう。KGIやKPIの管理では、進捗状況や達成率を可視化して共有できる仕組みを導入するのも効果的です。
7. KGIとKPIに関連する押さえておきたい用語
ここでは、KGIとKPIに関連する押さえておきたい用語について紹介します。
7-1. KSF
KSFは「Key Success Factor」の略で、日本語にすると「重要成功要因」です。つまり、KSFとは、最終目標であるKGIを達成するために欠かさない要素のことです。KGIからいきなりKPIを設定するのは難しいケースもあります。KGIを実現するために必要な要因であるKSFを洗い出すことで、スムーズにKPIが設定できるようになります。
7-2. CSF
CSFは「Critical Success Factor」の略で、日本語で訳すと「重要成功要因」です。CSFはKSFと同義で用いられることが多いです。この機会にCSFとKSFは同じ意味合いを持つことを押さえておきましょう。
7-3. KDI
KDIは「Key Do Indicator」の略で、日本語にすると「重要行動指標」です。つまり、KDIとは、KPIを実現するため必要な行動を指標にしたものです。KPI達成のために重要な行動をKDIとして設定することで、より戦略的に目標達成に向けて取り組みをおこなうことができます。
7-4. OKR
OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、日本語で訳すと「目標と主要な結果」です。つまり、OKRとは、目標の設定と管理を目的とするフレームワークを指します。OKRとKPIは似た意味を持ちますが、目標達成度に違いがあります。OKRの場合、目標達成率は60%~70%程度を理想とします。一方、KPIの場合、目標達成率の理想は100%です。このように、OKRとKPIは違う意味を持つので、正しく定義を理解しておくことが大切です。
関連記事:OKRとKPIの違いは?意味やメリット・デメリットを比較
8. KGIを達成できるKPIを設定して実行・改善しよう!
KGIとKPIは、それぞれ最終目標と中間目標にあたります。どちらも定量指標で管理するものの、KPIはKGIを達成できる内容で定めなければいけません。KPIを設定するときは「SMARTの法則」に則るなどのポイントがあります。また、KGIとKPIを設定したら終わりではなく、PDCAサイクルを回し、KGIを達成できるよう、日々管理することが大切です。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。