OKRとKPIは、会社の目標を設定するときに使用される指標です。
それぞれの違いやメリット・デメリットなどを把握しないまま目標を決めると、会社の状況に合わない目標を作ってしまい、社内が混乱する可能性があります。導入する前に、OKRとKPIの違いをきちんと理解しておくことが大切です。
本記事では、OKRとKPIの意味やそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
1. OKRとKPIの違い
OKRとKPIの意味の違いは、定義や達成率を把握すると理解しやすいです。以下、それぞれの違いを解説します。
1-1. OKRの定義
OKRの正式名称は「Objectives and Key Results」です。
- 達成したい目標「Objectives」
- 目標の達成度を測定する主要な成果「Key Results」
上記のように分類されます。
Objectives(О)は、会社として目指すべき理想を目標として定めます。
例えば、以下のような内容です。
- 便利さと快適さを感じて頂ける家電製品を開発し提供する
- 日本人の英語コンプレックスを解消する
- お客様を笑顔にする料理を届ける
数値で示す定量的なものではなく、方向性を示した定性的な内容を設定します。
現実的な目標ではなく理想的な目標を設定し、1人1人の社員のモチベーションを高めるのがポイントです。
一方、Key Results(KR)とは、会社としての理想であるObjectives(O)の達成レベルを測るための成果指標です。
例えば、以下のような内容です。
- お客様の満足度95%以上の家電製品を開発する
- 英会話の受講者を30%アップさせる
- お店の売り上げを20%アップさせ、リピート率を50%に高める
Oと異なり、定量的な指標となる数値を用います。
一般的には、1つのOに対して3つ程度のKRを設定します。
Oの実現につながるのかどうかをふまえ、達成したかどうかを把握できる内容にするのがポイントです。
OKRの達成率
OKRは、理想を実現するための挑戦といった野心的な側面があります。
高い目標を設定するため、達成度は60%〜70%が理想です。達成度が100%近くになる場合は、目標が低いと見なされます。
1-2. KPIの定義
KPIの正式名称は「Key Performance Indicator」です。
日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれ、会社としての目標を達成するために細分化された具体的な目標数値を指します。
会社の1年間の売上目標が6000万円だった場合、6000万円を達成するためのプロセスを目標として設定します。
例えば、以下のような内容です。
- 1カ月の売上:500万円
- 新規問い合わせ件数:1ヶ月で50件
- 新規顧客獲得数:1ヶ月で5件
- 既存顧客の継続率:90%
業種や職種によって、目標内容が異なります。なぜなら、測定すべき項目が異なるからです。
営業職やマーケティング職であれば、アポイント件数や成約数などを目標数値とします。
一方、製造業やシステム開発などであれば、エラー件数や稼働率などをもとに設定します。
KPIの達成率
KPIの場合は目標を必ず達成するといった側面が強いです。
そのため、目標達成率は100%を目指します。
2. OKRのメリット
OKRの主なメリットは3つです。それぞれの内容を解説します。
2-1. 会社として目指すべき方向性が明確になる
OKRは、会社の理想を目標としたものです。理想が定まっていれば、以下のような内容が明確になります。
- ターゲットとなるお客様の属性
- ターゲットとするお客様に来店してもらうために必要な施策
- 効果を測定する方法
ターゲットが決まっていなければ、社員が効果的な施策を判断できません。
方向性を定めたあとは、目標を社員と共有するのがポイントです。共有することで、社内に連帯感が生まれます。
2-2. 優先順位を立てやすくなる
OKRの目標をもとにやるべきことが明確になれば、優先順位が立てやすくなります。
例えば、飲食業界に勤めていることを想定してみてください。食を通して学生をはじめとした若者達を元気にすることが目標の場合は、以下の施策が考えられます。
- 大盛りのメニューを充実させる
- 若者の目を惹くメニューを開発する
- 学生や若者が集まる場所に出店する
施策を考えることで、実現に向けてやるべきことが定まり時間やリソースを有効に使えます。
2-3. 社員がやりがいを感じやすくなる
社員のやりがいにつながる点も、OKRのメリットのひとつです。
会社が方向性を定めれば、一人ひとりの社員が「何のために仕事をしているのか」を意識しやすくなり、モチベーションアップにつながります。
3. OKRのデメリット
OKRの主なデメリットは2つです。それぞれの内容を解説します。
3-1. 目標達成のイメージがつかみづらい
OKRは抽象的な内容であるため、目標達成のイメージがつかみづらいです。
例えば「日本一を目指す」が目標だった場合、日本一の定義が明確でなければ、「いつまでたっても目標を達成できない」と感じてしまいます。
3-2. 目標を社内で共有するのに時間がかかる
OKRは壮大な目標になりやすいため、社内で浸透させるのは大変です。共有しようとすると「経営陣は理想的なことばかり言っている」と感じる社員が出るかもしれません。時間がかかるとしても、粘り強く伝え続けることが大切です。
4. KPIのメリット
KPIの主なメリットは、3つです。それぞれの内容を順番に解説します。
4-1. 目標達成のための指標が明確になる
KPIは具体的な数値をもとに目標を立てるため、目標達成の基準がはっきりします。そのため、部署や社員を客観的に評価することが可能です。
もちろん、目標が高すぎると不満につながるため、適切な目標設定が必要です。
4-2. 具体的な行動に移しやすくなる
目標達成の基準が明確になることで、具体的な行動が決まります。例えば、新規契約を1カ月で8件獲得するケースを考えてみてください。
- 1週間で2件の新規契約を結ぶ
- そのために、アポイントを10件取得する
- 10件のアポイント獲得のために、問い合わせを30件行う
上記のように目標に合わせてやるべきことが決まれば、社員が実際の行動に移りやすくなります。
4-3. 社員のモチベーションの維持につながる
社員のモチベーションを保ちやすくなる点も、メリットのひとつです。
毎日、高いモチベーションで仕事に取り組むのはなかなか難しいです。同時に目標がなければ、徒労感は強くなります。
会社が設定した目標に合わせてやるべきことが具体的に決まれば、小さな目標をクリアすることにつながり達成感を抱けます。
5. KPIのデメリット
KPIの主なデメリットは以下の2つです。
5-1. 社員がプレッシャーを感じる
目標を明確に決めることは、決して悪いことではありません。
とはいえ、社員がプレッシャーを感じる可能性があるため、注意が必要です。なかなか目標を達成できないことで悩む社員もいるでしょう。
また、目標を達成できたかどうかによって評価や賞与に大きな差がつく場合、社員にとって大きなストレスとなる可能性もあるのです。なかなか目標を達成できない社員がいる場合、丁寧にサポートする必要があります。
5-2. 社員が数値ばかり意識してしまう
数値ばかり意識してしまう点も、デメリットのひとつです。
本来、目標というのは、お客様の満足度を高めて会社の理想を実現するためのものです。数値ばかり意識することで仕事のプロセスが軽視されれば、満足度が下がります。
一時的に目標を達成したとしても、長期的な信頼を失いかねないため注意しなければなりません。
数値を意識するのは大切ですが、一人ひとりの社員がお客様ときちんと向き合う体制を整えることも重要です。
6. OKRやKPIを活用して会社にとっての理想を実現しよう
OKRやKPIはいくつかの有名企業が導入し、成果が出たことで注目を集めるようになりました。
導入の際は、会社の状況に合わせることがポイントです。
OKRとKPIを両方とも取り入れる方法もあれば、どちらか1つを導入する方法もあります。会社の理想の実現に向けた適切な目標を設定するために、OKRやKPIを活用してください。
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