労働基準法による平均賃金は、通常の平均とはやや意味が異なります。従業員に休業手当などを支払う際は平均賃金の算出が必要になるので、意味の違いや計算方法を正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、労働基準法の平均賃金についてわかりやすく解説します。具体的な計算方法やミスをしないための注意点も記載しているため、日々の業務にお役立てください。
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人事担当者など従業員を管理する役割に就いている場合、雇用に関する法律への理解は大変重要です。
例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。
今回は、労働基準法の改正から基本的な内容までを解説した「労働基準法総まとめBOOK」をご用意しました。
労働基準法の改正から基本的な内容まで、分かりやすく解説しています。より良い職場環境を目指すためにも、ぜひご一読ください。
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1. 労働基準法の平均賃金とは?(第12条)
労働基準法における平均賃金とは、どのようなものなのでしょうか。
ここでは、労働基準法における平均賃金の意味と、算出が求められる5つのケースについて解説します。
1-1. 平均の意味が通常とは異なる
平均という言葉に対し、一般的には中間値というイメージを持つ人も少なくないでしょう。しかし、労働基準法における平均賃金の平均とは、従業員に対して手当・補償の給付などをおこなう際の基準となる金額を意味し、特別な計算方法によって算出します。
1-2. 平均賃金の算出が必要となる5つのケース
平均賃金の算出が必要となるケースは複数存在します。
ここではよくある5つのケースを紹介していきます。
① 解雇予告手当のケース
労働基準法では、企業が従業員を解雇する場合は少なくとも30日前に解雇の予告をしなければならないと定められています。もし、30日に満たない期間で解雇する場合に支払わなくてはならないのが解雇予告手当です。
この解雇予告手当の算出基準となるのが平均賃金で、即時解雇する場合には30日分以上の支給が必要です。
② 休業手当のケース
企業の都合によって休業となる場合は、従業員に対して休業補償を支払わなくてはいけません。例えば「部品調達が間に合わず、生産量を調整するために工場の製造ラインを停止する」という場合が休業補償の対象となります。
この休業手当も労働基準法の平均賃金をもとに算出します。ちなみに、休業手当の場合は休業1日につき平均賃金の6割以上を支給しなければなりません。
③ 年次有給休暇手当のケース
従業員が有給休暇を取得した際に支払う手当も、労働基準法による平均賃金が適用される場合があります。平均賃金はそれほど使用頻度が高くないものの、人事労務をご担当の方の方にとっては身近なものであることがおわかりいただけるでしょう。
④ 災害補償のケース
従業員が業務中にケガや疾病を負ったり、万が一死亡したりした場合に支払うものを災害補償とよび、以下のような種類があります。
- 休業補償
- 障害補償
- 遺族補償
- 葬祭料
- 打切補償
- 分割補償
これらの補償を支払う場合も、労働基準法による平均賃金をもとに算出します。
⑤ 減給のケース
平均賃金を算出するケースとしてはあまり多くありませんが、従業員の給与を減給する場合の基準も労働基準法による平均賃金が適用されます。減給の例としては従業員の無断欠勤や遅刻などが挙げられます。
ただし、減給1回あたりの上限額は半額までで、それ以上減給してはいけません。もし複数回にわたって減給が必要となる場合は、通常の給与の総支給額の1割までに留めなければならないため注意が必要です。
1-3. 平均賃金の役割は従業員の生活保障
先述したとおり、労働基準法による平均賃金を算出する機会は複数ありますが、いずれも従業員に支払われるものであることに変わりはありません。
平均賃金は従業員の生活を補償するための制度であり、生活に直結する重要な役割を果たします。そのため、平均賃金を算出する場合は迅速かつミスのないように対処する必要があります。経理などを担当する方は、平均賃金の重要性を認識して業務に取り組むことが大切です。
2. 労働基準法の平均賃金の計算方法
ここからは、労働基準法の平均賃金の算出方法を解説します。
計算式を間違えることのないよう、以下の公式をご確認してお役立てください。
2-1. 平均賃金の計算式
平均賃金の計算方法は以下の計算式によって求めることができます。
「従業員の3ヵ月間における賃金総額÷3ヵ月間の暦日」
2-2. 平均賃金の計算の仕方
上記の計算式から、労働基準法の平均賃金を求める際には2つの数値が必要です。
- 従業員の3ヵ月間における賃金総額
- 3ヵ月間の暦日
それぞれ求め方をご紹介します。
① 従業員の3カ月間における賃金総額の求め方
例えば月給20万円の従業員に休業手当を支払うとします。仮に給与の締日が毎月末日で、休業の開始が7月10日だった場合、対象となるのは以下の3ヵ月です。
- 4月1日~4月30日
- 5月1日~5月31日
- 6月1日~6月30日
つまり、3ヵ月間における賃金総額は月給20万円×3ヵ月=60万円となります。
なお、賃金総額は基本給だけでなく、家族手当や通勤手当、残業代も含みます。
② 含まれない賃金を確認
一方で、賃金総額に以下のものは含まれないので確認の上差し引きましょう。
- 退職金や慶弔金など、臨時に支払われる賃金
- ボーナスや特別手当など、3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 通貨以外のもので支払われる賃金
③ 3カ月間の暦日の求め方
暦日なので、実働日数ではなくカレンダーどおりの日数で算出します。欠勤や有給取得日も含むため注意しましょう。
ちなみに、先ほど例を挙げた従業員の3ヵ月の暦日はそれぞれ以下のとおりで、合計91日となります。
- 4月1日~4月30日:30日
- 5月1日~5月31日:31日
- 6月1日~6月30日:30日
つまり、この従業員の場合の平均賃金は以下のように求めます。
(従業員の3ヵ月間における賃金総額)60万円÷(3ヵ月間の暦日)91日=6,593.40659円 |
3. 労働基準法の平均賃金を計算するときの注意点
ここからは、労働基準法の平均賃金を計算するときの注意点をご紹介します。
端数処理方法や、入社して3カ月に満たない従業員の場合、月給制以外の従業員の場合における対応方法を解説します。
3-1. 端数の処理
「③ 3カ月間の暦日の求め方」で挙げた例のように、平均賃金を算出すると割り切れないケースがほとんどです。この場合は1銭未満を切り捨てるため、正しい平均賃金は「6,593.40円」となります。
また、休業手当などで実際に支払う際は1円未満を四捨五入します。つまり、2日分の平均賃金を支給する場合は「13,186.8円」となり、実際には「13,186円」を支払うことになります。
3-2. 入社して3カ月に満たない従業員の場合は雇用開始からの期間で計算
働き始めて3ヵ月に満たない従業員の場合は、雇用開始からの期間で計算して問題ありません。また、給与の締め日がある場合にはその直前の締め日から数えます。
例えば、4月入社の従業員の場合で考えましょう。平均賃金を算出しなくてはならない事案が5月15日に起きた場合は、4月1日~4月30日の1ヵ月の給与をもとに平均賃金を算出することになります。
3-3. 月給制以外の従業員の場合は最低保証額を適用
従業員の給与は月給制だけとは限りません。日給制・時給制のように変動する場合は、最低保障額を適用します。
最低保障額は「実際に支払った賃金総額×実労働日数」で算出します。最低保障額の注意点は以下の2つです。
- 月給制とは違い、実働ベースで算出する
- 最低保障額と通常の平均賃金で求めた数値と比較し、いずれか高いほうで支払う
4. 労働基準法の平均賃金を理解しておこう
労働基準法の平均賃金はそれほど頻繁に計算が必要なものではありません。しかし、従業員の生活に直結するお金の問題なので、正しく計算して支払う必要があります。
いざというときにすぐに対応できるよう、労働基準法の平均賃金についてしっかりと理解を深めておきましょう。細かい注意点やミスしやすいポイントを押さえ、迅速かつ正確に対応しましょう。
労働基準法総まとめBOOK
労働基準法の内容を詳細に把握していますか?
人事担当者など従業員を管理する役割に就いている場合、雇用に関する法律への理解は大変重要です。
例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。
今回は、労働基準法の改正から基本的な内容までを解説した「労働基準法総まとめBOOK」をご用意しました。
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