夜勤の連続勤務日数は労働基準法で制限されている?違法になるケースも紹介 |HR NOTE

夜勤の連続勤務日数は労働基準法で制限されている?違法になるケースも紹介 |HR NOTE

夜勤の連続勤務日数は労働基準法で制限されている?違法になるケースも紹介

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通常、深夜時間帯に勤務することを夜勤といいますが、夜勤の連続勤務日数は労働基準法で定められているのでしょうか。
この記事では、夜勤の連続勤務日数についての労働基準法上の規定について紹介します。

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1. 労働基準法上の夜勤の連続勤務日数

夜勤の連続勤務日数については、労働基準法上での明確な定めはありません。

労働基準法では、1週間のうち少なくとも1回の休日を与えることを原則としています。これを「法定休日」といいます。[注1]

つまり、従業員に対して連続で夜勤を命じられる法律上の上限日数は、原則的な1週1日の休日であれば最大で12日間となるでしょう。ただし、夜勤と日勤を含む連続勤務については、労働基準法上で留意しておかなければならない点もあります。

ここからは「夜勤から日勤への連続勤務の場合」「日勤から夜勤への連続勤務の場合」の2つのパターンを取り上げ、それぞれのポイントについて解説します。

[注1]労働時間・休日|厚生労働省

1-1. 夜勤とは?

夜勤とは、深夜時間に勤務することです。労働基準法のなかでは、22時から翌日の5時までが深夜時間と決められています。

深夜時間に労働を命じる場合、企業側は25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。また、無理のないシフトを組んだり、一定の条件を満たす場合は健康診断を受けさせたりするなど、従業員の健康に配慮することが求められます。

1-2. 夜勤から日勤への連続勤務の場合

夜勤から連続してそのまま日勤をおこなう場合、労働基準法上では違法とはなりません。

たとえば、月曜日の22時から火曜日の5時まで夜勤をおこない、5時間後、火曜日の10時から18時まで日勤をした日を考えてみましょう。

労働基準法上においては、深夜0時以降の夜勤をした場合、「始業時刻が属する日の労働」としての扱いとなるため、あくまでも夜勤については月曜日の労働として扱われます。

火曜日の日勤については、火曜日の労働とみなされます。労働基準法上の法定労働時間(1日8時間)を超えていないため、火曜日の日勤に対して時間外労働の割増賃金を支払う義務はありません。

1-3. 日勤から夜勤への連続勤務の場合

日勤での勤務をおこなったあと数時間の休憩を取って、夜勤への連続勤務をおこなった場合は、途中に休憩を取っていたとしても同じ暦日での勤務となるため、法定労働時間(1日8時間)を超えた労働時間については割増賃金(25%)を支払わなければなりません。

たとえば、月曜日の9時から17時で日勤をした従業員に、5時間後の月曜日22時から火曜日の5時まで夜勤をさせた場合は、夜勤の始業時間が月曜日のため、この夜勤は月曜日の勤務として扱う必要があります。

逆にいうと、日勤から夜勤への連続勤務については、割増賃金が正しく支払われてさえいれば、法律上はとくに問題はありません。

2. 夜勤の連続勤務が違法になるケース

夜勤の連続勤務が違法となるケースには、次の4つが考えられます。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

2-1. 割増賃金が正しく支払われていない

労働基準法第32条では、1日8時間もしくは週40時間を法定労働時間と定めており、同法37条に従って、これを超えた勤務をさせる場合には適切な割増賃金を支払わなければなりません。[注2]

連続勤務をおこなった際に労働した時間が8時間を超えると、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。また、法定労働時間を超えた労働が深夜時間に及ぶ場合は、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
万が一、割増賃金が正しく支払われていない場合には、法令違反となりますので注意しましょう。

[注2]労働基準法|e-Gov法令検索

2-2. 安全配慮義務に違反している

企業側が労働者の安全を確保しながら労働ができるよう必要な配慮をおこなうことを「安全配慮義務」といいます。労働契約法では、安全配慮義務を下記のように定めています。

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用:労働契約法|e-Gov法令検索

安全配慮義務を怠ると労働契約法5条の違反になるだけでなく、損害賠償が発生する恐れもあります。

とくに夜勤での連続勤務が続いているような場合には、従業員の安全の確保が難しくなっている可能性もありますので、早い段階で適切な対応をとらなければなりません。

2-3. 法定休日を与えていない

企業は従業員に対して週に1日、あるいは4週に4日の法定休日を与えなければならないと労働基準法35条に規定されています。

夜勤で勤務をさせるのであれば、暦日単位(午前0時から午後12時まで)で休日を与える必要がありますので、夜勤明けの日を休日として取り扱うことはできません。

従業員には、夜勤明けの日とは別の日を法定の休日として与える必要があります。休日の与え方が誤っている場合には、法令違反として罰則の対象となるため注意しましょう。

2-4. 36協定の違反をしている場合

企業側が従業員に時間外労働をさせる場合には、企業側と労働組合または、従業員代表との間で「36協定」を締結している必要があります。

36協定で規定した時間外労働以上に従業員に時間外労働をさせた場合には、36協定違反となり、罰則の対象となります。

3. 夜勤の連続勤務には健康リスクがある

夜勤の連続勤務は、適切な割増賃金を支払っていれば法律上問題はありませんが、最も心配されるのが健康上のリスクです。

ここでは、夜勤が続くことによって考えられる健康リスクについて解説します。

3-1. 夜勤が続くと体がだるくなりやすくなる

夜勤が続くことにより、疲労が蓄積し、休みを取得しても思うように疲れがとれないというケースも考えられます。結果として、体にだるさを感じ、メンタル面に大きな影響を及ぼすこともありえます。

勤務中の集中力が低下し、業務の生産性が下がってしまうこともあるでしょう。

3-2. 昼夜逆転により自律神経が乱れやすくなる

夜勤によって昼夜逆転の生活が続くことにより、生活リズムの乱れが発生しやすくなります。そのため、自律神経の乱れやホルモンバランスへの影響が心配されます。

3-3. 睡眠時間や食生活の乱れによる病気のリスク

十分な睡眠時間が確保できないことや食生活が乱れることにより、病気へのリスクが一段と高まります。がんや心疾患、脳疾患などの可能性も大きくなるため注意が必要です。

4. 健康リスクを避けるため夜勤労働者に対し企業が取るべき対策

先ほど紹介したとおり、夜勤の連続勤務にはさまざまなリスクがあります。夜勤が多く発生する業種の場合は、健康リスクを避けるため、以下のような対策を取りましょう。

4-1. 健康診断の結果を活用する

健康上の問題を早期に発見するためにも、企業内でおこなっている定期的な健康診断の結果を十分に活用することが重要です。高血圧や糖尿病などが見つかった場合には、産業医との面談を勧めるようにしましょう。

また、条件を満たす場合は、年2回の健康診断を受けさせる必要があります。夜勤が多い従業員の健康を維持するため、正しい基準を把握しておくことが大切です。

4-2. 無理のないシフト管理をおこなう

従業員の健康を維持するためにも、夜勤が連続しないように配慮し、無理のないシフト管理をおこなうようにしましょう。

夜勤の連続勤務は、法定の割増賃金を支払っていれば法的な問題はありません。しかし、夜勤が連続すると、いずれは従業員の健康に影響を及ぼします。企業側は労働環境や労働時間の管理を適切におこなうよう、対策を取っておく必要があります。

4-3. 適切な休憩を付与する

夜勤の場合も日勤と同様、労働基準法に従って適切な休憩を付与しなければなりません。労働時間が6時間を超えて8時間以下の場合は45分、8時間を超える場合は60分の休憩を与える必要があります。

この数値は最低基準のため、1.5時間など長めの休憩を付与することは問題ありません。ただし、勤務の開始直後や終了直前ではなく、勤務の途中に付与することが義務付けられているため注意しましょう。

4-4. 勤務間インターバル制度を導入する

勤務間インターバル制度は、従業員の健康を維持するための重要な仕組みです。勤務間インターバル制度においては、勤務の終了から次の勤務までの間に一定の休息時間を設けます。

一定の休息時間を設けることで、睡眠時間やプライベートの時間を確保でき、健康リスクを抑えて継続的に働いてもらうことが可能です。2019年以降、勤務間インターバル制度の導入は事業主の努力義務となっています。

5. 変形休日制であれば夜勤の連続勤務を延長することも可能

変形休日制とは、4週間の間に4日以上の休日を与える制度のことです。

労働基準法では1週間に1日の休日を原則としていますが、4週間に4 日の休日を与えても問題ないため、変形休日制であれば、4週間の初日に休日を4日与えたあと、残りの3週間は無休という連続労働も可能となります。就業規則に変形休日制の起算日などを明記し、この制度を採用すれば13日以上の連続勤務をさせても問題ありません。

ただし、この働き方は従業員の健康リスクを高める可能性があります。安全配慮義務を考慮した範囲で休日を設定しましょう。

また、週の労働時間が法定の40時間を超える可能性があり、多くの割増賃金の発生も考えられるため注意が必要です。

6. 夜勤連続勤務日数は労働基準法での定めはないがリスクへの配慮が必要

夜勤の連続勤務日数についての労働基準法上での規定はありませんが、従業員を連続して夜勤勤務させることで、健康リスクや法令違反へのリスクが高まります。

また正確な割増賃金の支払いがされていなかったり、36協定に違反していたりする場合、違法となるケースがあり罰則の対象になります。

これらの点について十分に配慮したうえで、夜勤のシフト管理をおこなうことが重要です。

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