企業の経営者にとって福利厚生を充実させることは、従業員の信頼を勝ち取るために重要です。
従業員が安心して働けるため積極的に福利厚生の向上を進めている企業は多いですが、概念がよく分からなかったり、どんなカテゴリーがあるのか知らなかったりすることがあります。
改めて福利厚生を基本からおさらいし、企業にプラスになるサービスを選ぶ参考にしてみてください。
目次
1|福利厚生は、人事戦略のひとつである
福利厚生とは、従業員の生活の質を向上させるために生まれた制度です。
もともとは、戦後に「労働力を確保するために用意する宿舎や食堂などの施設」という意味で生まれた言葉でした。
しかし、時代のニーズに合わせてその意味が大きく違ってきています。
近年では「人材確保のために従業員の生活の質を向上すること」という意味で捉えられていたことが多かったかと思います。
そこから、単純に従業員数を確保するためのものだった福利厚生が、現在では「いかに優秀な人材に企業に定着してもらうか」「いかに優秀な人材を集められる企業になるか」といった目的のために、存在する仕組みに変わっています。
また、求職者も企業に就職する際に、福利厚生の充実度を重要視するようになっています。
2|「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」とは
福利厚生は「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」から構成されています。具体的にどんな項目があるのか知っておきましょう。
法定福利厚生 |
雇用保険、健康保険、介護保険、労災保険、厚生年金保険など |
法定外福利厚生 |
住宅手当、家賃補助、交通費支給、ライフサポートなど自社提供のもの、育児・介護支援、自己啓発、旅行などの外部サービス |
○法定福利厚生とは
法定福利厚生とは、ほとんどは社会保険のことを指します。
企業に入ると共に自動的加入する保障制度であり、40歳以上は介護保険にも加入できます。
社会保険とは別に児童手当拠出金・子供手当といったものもあります。
児童手当拠出金は給与の0.15%が児童手当の資源として事業主から差し引かれ、国や地方公共団体から子育て世代へ支給されます。
0~3歳未満 |
15,000円/月 |
3~小学校修了まで |
第1子・第2子 10,000円/月 第3子 15,000円/月 |
中学生 |
一律10,000円/月 |
○法定外福利厚生とは
法定外福利厚生は企業が提供するサービスや手当と、外部に委託されるサービスや手当があります。自社で提供する手当の多くを占めるのは「住宅手当・家賃」などです。
企業が一人当たりの従業員にかける法定外福利厚生の平均拠出は月約25,000円と言われており、その半分以上が家賃などの一部を負担する手当であるといわれています。
他には交通費の一部、または全額補助、扶養家族がいる人に対して支給される家族手当、健康診断や人間ドッグなどの費用を負担する医療・健康手当などの手当があります。
そして、これらとは別に外部に委託するのが「福利厚生サービス」です。
外部委託は「アウトソーシング」といわれており、バブル崩壊後からはじまりました。
福利厚生サービスには、宿泊・旅行、疫病予防・健康増進、自己啓発、生活支援、エンタメ、スポーツ、財産形成、スポーツ、育児・介護支援などのカテゴリーがあります。
これらの福利厚生サービスには、主に「パッケージサービス」と「カフェテリアプラン」があります。
3|「パッケージサービス」と「カフェテリアプラン」とは
法定外福利厚生の「パッケージサービス」と「カフェテリアプラン」は、どちらも福利厚生サービスの提供事業者と連携しておこないます。
「パッケージサービス」は定額制で利用するのが特徴で、従業員が自分たちで提供されているサービスの中から選びます。
一方で「カフェテリアプラン」は従業員に補助金を支給し、補助金内でサービスを利用します。
「パッケージサービス」の特徴は以下の通りです。
【「パッケージサービス」の特徴】
- 外部に委託することで社内の福利厚生担当者の負担を減らせる
- 福利厚生を大規模化することで格安になる
- 専門家による質の高いサポートを受けられる
- 福利厚生の充実度をすぐに高められる
- 他社と同じ福利厚生になるので差別化が図れない
「カフェテリアプラン」の特徴は以下の通りです。
【「カフェテリアプラン」の特徴】
- 従業員ひとりひとりのニーズに合わせてメニューを設計できる
- 従業員に利用されないメニューがあるとその分のコストが無駄になる
「カフェテリアプラン」に比べて「パッケージサービス」は外部に委託する部分が多く、福利厚生で利用できる施設が人気の施設になることも多いです。
どちらにするか迷った場合は、「パッケージサービス」にすると大きなデメリットが発生しにくいです。
4|福利厚生のメリットとデメリット
福利厚生を導入する際は、企業にとても従業員にとってもメリットが多い仕組みにする必要があります。
福利厚生の基本的なメリットとデメリットを知り、できるだけデメリットが生じないように準備しましょう。
○福利厚生のメリット
福利厚生を取り入れるメリットは企業のイメージが向上し、「ここで働きたい」という人が増えることです。
表面的なイメージが良くなるだけではなく、従業員のサポートが充実することで、従業員が心身共に健康になり、意欲が高まることで、企業利益が増える効果が期待できます。
また福利厚生が充実している企業は従業員が定着しやすいので、離職率を抑える結果にもつながります。
○福利厚生のデメリット
福利厚生を取り入れるデメリットはコストがかかることです。
しかしこれは一定の基準を満たしていれば、従業員の福利厚生を目的として、給与・交際費以外の間接的給付をおこなうための費用となるので、経費扱いにできます。
福利厚生は導入するための準備をした時間や、導入後も順調に従業員が利用できているか確認をする作業などの管理工数がかかることもデメリットです。
しかしこれもアウトソーシングを活用すれば解決します。また従業員全員が満足できる福利厚生を実行するのも難しいですが、こちらもアウトソーシングとの連携で実現できます。
○福利厚生をはじめる際は慎重に
福利厚生の最大のデメリットは、「一度はじめると、やめる時が大変」という事情です。
福利厚生は従業員の家賃負担や育児・介護負担、交通費負担など生活に直結するものが多いので、廃止しようとすると従業員から不満が出てきます。
福利厚生を実施してみてすぐに続けるのが困難にならないよう、入念に準備をおこないましょう。
5|企業が導入している福利厚生
現在さまざまな企業が福利厚生を導入していますが、具体的にどのような内容なのか、実際に企業に導入されている福利厚生の種類を解説していきます。
国内最大のエージェントサービス・dodaが実施したアンケートでは、以下のような結果でした。
【企業が導入している福利厚生】
通勤手当支給 約97%
育児・介護休暇制度 約86%
慶弔・災害見舞金 約75%
特別休暇制度 約67%
出産お見舞金 約62%
自己啓発支援 約50%
住宅手当・家賃補助 約50%
【参考】doda開催セミナー 参加企業経営者・人事・採用担当者216名対象アンケート
このように、多くの企業が福利厚生を導入しています。
まとめ
いい企業にとって福利厚生を取り入れているのは当たり前になっており、より充実させて他の企業と差別化を図ることが重要になっています。
他の企業に比べてさらに良い福利厚生を導入する企業もありますが、変わった福利厚生を導入する企業もあります。
たとえば、図書購入補助制度や、社内カフェでアルコール提供、宿泊型ワークショップでの海外研修、有給休暇を15分単位でおこなうなどです。
福利厚生は、企業が従業員をどのように待遇するかという重要な目安になります。慎重に制度を導入しましょう。