福利厚生費の定義とは?|福利厚生費として認められる条件や計上方法、具体例などを詳しく解説 |HR NOTE

福利厚生費の定義とは?|福利厚生費として認められる条件や計上方法、具体例などを詳しく解説 |HR NOTE

福利厚生費の定義とは?|福利厚生費として認められる条件や計上方法、具体例などを詳しく解説

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「福利厚生費という言葉は聞いたことがあるが、具体的にどのようなものが福利厚生費として認められるのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、そもそも福利厚生費とはいったいどういったものなのか、福利厚生費とほかの費用との違いは何か、福利厚生費の相場や計上方法、具体例など、福利厚生費に関わることについて詳しく解説していきます。

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1.福利厚生費とは

福利厚生費とは、企業が給与以外のサービスを従業員のために提供する際にかかった費用のうち、財務会計上の経費に含まれるもののことを指します。

つまり、福利厚生費とは「従業員のために使用する、実際の業務に直接的な関係を持たない費用」のことです。

1-1.二種類の福利厚生費

福利厚生費は、「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類に分けることができます。それぞれについて、詳しく解説します。

①法定福利費 法律で規定されている福利厚生に関する費用
②法定外福利費 会社が独自におこなう福利厚生のための費用

1-1-1.法定福利費

法定福利費とは、法律で支払いを義務付けられている、福利厚生に関する費用のことを指します。

具体的には、

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料
  • 雇用保険料
  • 労災保険料

などが挙げられます。

1-1-2.法定外福利費

法定外福利費とは、上記の法定福利費とは異なり、会社が独自におこなう、法律における支払い義務のない、福利厚生のための費用を指します。

今回解説する「福利厚生費」は主にこの法定外福利費を指します。

法定外福利費は、支払いが義務付けられているものではなく、事業主が独自に定めるものです。そのため、明確な基準がなく、内容次第では福利厚生費として認められない可能性があり、注意が必要です。

1-2.福利厚生費・消耗品費・交際費の違い

それでは、福利厚生費は企業内で使用されるその他の費用とどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは、消耗品費や交際費との違いについて、それぞれ記載していきます。

1-2-1.消耗品費との違い

企業経営における消耗品は、普段の業務にかかわる物品であり、消耗品費とは、企業で使われて次第に無くなっていく物品などにかかる費用のことを指します。

そのため、福利厚生費が実際の業務に直接的な関係を持たないのに対して、消耗品費は業務に直接かかわっている点が異なります。

また、消耗品費として経費処理をおこなう場合には、

  • 取得に要した金額が10万円未満
  • 使用できる期限が1年未満

という要件があります。

1-2-2.交際費との違い

交際費は得意先や仕入れ先など、事業に関係のある他社に対する行為にかかる費用のことを指します。

福利厚生費は自社内の従業員に対する制度や設備が対象になるため、他社に対する行為にかかる交際費とは異なります。経費処理をおこなう際にはきちんと仕訳をするようにしましょう。

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2.福利厚生費の相場

では、各企業は各個人における福利厚生費の一般的な相場や金額の上限は一体どうなっているのでしょうか。

2-1.福利厚生費の一般的な相場

一般社団法人「日本経済団体連合会」によると、福利厚生費の一般的な相場は、1人1か月あたりで法定福利費がおよそ85,000円、法定外福利費がおよそ25,000円の計11万円程となっています。

(2019年度福利厚生費調査結果の概要:https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/116.pdf

この資料によると、法定外福利費の中で最も大きな部分を占めているのは住宅関連の費用であり、ライフサポート(旧y側や育児関連など)、医療・健康、文化・体育・レクリエーション費用と続いています。

企業が独自に従業員に対して支給する福利厚生費(法定外福利費)は「1人1か月あたり2万円程度」を目安にすると良いでしょう。

2-2.福利厚生費の金額の上限

では、福利厚生費の支給金額の上限はあるのでしょうか?

結論から言うと、福利厚生費の金額に上限はありません。しかし、基本的に「社会通念上、常識と考えられる範囲の金額」を満たしている必要があります。

上限はありませんが、税務調査などで指摘をされた場合には福利厚生費(法定外福利費)として認められないことがありますので注意しましょう。

3.福利厚生費に認められる条件

ここからは、

  • 福利厚生費に認められるにはどのような条件がそろっている必要があるのか
  • 具体的にどのようなものに対する費用が福利厚生費として認められているのか

について解説していきます。

まずは福利厚生費に認められるために必要な条件です。大きく3つに分けることができます。

3-1.現金支給ではない

福利厚生費は従業員のモチベーションの向上や、コミュニケーションの円滑化を目的としています。

たとえ、それらを目的としていても、現金のみを支給した場合では福利厚生費として認められません。

3-2.全ての従業員が対象である

福利厚生費は一部の従業員を対象にするのではなく、全ての従業員を対象として支給することが必要です。

したがって、社員旅行などに行く場合は全従業員を対象として計画する必要があり、注意しなければなりません。

3-3.社会通念上、支給金が合理的金額の範囲内である

上限金額が定められていないからといって、行事や旅行など、あまりにお金がかかる場合には、福利厚生費として認められません。

4.福利厚生費に認められるものの具体例

上の条件を踏まえたうえで、具体的にどのようなものに対する費用が福利厚生費として認められるのでしょうか。ここではその一部をご紹介します。

4-1.交通費

従業員が会社に通勤する際にかかる交通費の通勤手当は福利厚生費として計上できます。

ただし通勤費が以下の限度額を超えた場合は課税の対象となります。

  • 電車やバスの交通機関利用:月額15万円
  • 自動車片道55㎞以上:月額31,600円
  • 自動車片道45~55㎞:月額28,000円
  • 自動車片道35~45㎞:月額24,400円
  • 自動車片道25~35㎞:月額18,700円
  • 自動車片道15~25㎞:月額12,900円
  • 自動車片道10~15k:月額7,100円
  • 自動車片道2~10㎞:月額4,200円
  • 自動車片道2㎞未満は全額課税

4-2.社宅費

社宅とは、会社が賃貸物件を借りたうえで、それを役員や社員に対して貸し出す住宅を指します。

・役員が社宅を借りる場合

役員が社宅を借りる場合、会社負担額が福利厚生費となります。

役員が支払う金額が賃貸料総額よりも安い場合、賃貸料総額と役員負担分の差額が、給与として課税されます。

・社員が社宅を借りる場合

社員が社宅を借りた場合、賃貸料相当額の50%以上を従業員から受け取っている際は、会社が負担した費用が福利厚生費となります。

50%未満の場合は、受け取った家賃と賃貸料相当額との差額は給与とみなされます。

4-3.慶弔見舞金

従業員や役員に対して慶事・弔事の際に一定の基準に従って支払う見舞金などは、福利厚生費として計上することが可能です。

具体的には以下の通りです。

  • 結婚祝い
  • 出産祝い
  • 見舞金、好転などの慶弔金
  • お祝いの品、花輪の費用

金額については上限金額はなく、常識の範囲内であれば問題はありません。

また慶弔見舞金は役員や従業員本人のみならず、その家族の結婚やケガといった場合も対象に含まれます。

4-4.社員旅行・研修旅行

社員旅行費についても、以下の条件を満たせば福利厚生費として計上可能です。

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること
  • 旅行に参加する人数が全体の50%以上であること(支店ごとに旅行をおこなう場合には、それぞれの支店ごとに50%以上の参加が必要)

ただし自己都合により参加できなかった人に対して現金の支給をおこなうことはできません。

4-5.レクリエーション費

忘年会、新年会、親睦会などについてのレクリエーション費についても、条件を満たすことで福利厚生費として計上できます。

条件は以下の通りです。

  • 役員、従業員全てが対象である
  • 会社の費用負担が一律である
  • 支給額が常識的な範囲内である

また、新年会・忘年会においては

  • 相当数と認められる人数が参加していること
  • 利用した店の領収書と社内案内を行ったチラシなどを保存していること

が必要になります。

4-6.健康診断費

従業員を対象とした健康診断や人間ドックの費用は福利厚生費として処理することが可能です。

ただし、健康診断は従業員全員を対象としておこなう必要があります。一部の従業員だけが受診する場合には福利厚生費として計上することができませんので注意しましょう。

4-7.残業時の食事代

残業時の食事代の補助は以下の条件の両方に当てはまる場合に福利厚生費として計上できます。

  • 食事代の50%以上を、役員や従業員が負担している
  • 役員や従業員が負担している費用が3,500円(税抜き)以下

この2つの条件を満たしていない場合には、食事にかかった金額から従業員の負担額を差し引いた分が給与として課税されます。

5.福利厚生費の計上に関する注意点

実際に福利厚生費を経費として計上するにはどうすればよいのでしょうか。

福利厚生費を計上する際は、誰が見ても理解できるように、可能な限り一般的な勘定項目を使用しましょう。

途中で担当者が変更になった場合、分かりづらい勘定項目が使用されているとミスが起こりやすくなってしまうため、事前に防げるミスは防ぐようにしましょう。

また、同じ勘定項目は連続して使わなければいけません。これは「企業会計原則」にある継続性の原則(「企業会計は、その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」というもの)によるものです。

そのため、一度採用した会計方針を変更することは合理的な理由がない限り変更することが認められないのです。

合理的な理由とは、会計処理の前提となるような事実に変更があった場合(業務形態の変更など)や、会社の財政状態・経営成績を正確に表示するために変更する必要がある場合などになります。

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6.まとめ

いかがでしたでしょうか。

どういった項目が福利厚生費として計上できるのか、反対に計上できない項目は何なのかをしっかりと理解したうえで企業が無駄に支払う税金を減らしましょう。

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