変形労働時間制における残業の扱いについて計算方法や注意点を解説 |HR NOTE

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変形労働時間制における残業の扱いについて計算方法や注意点を解説

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  • 勤怠管理

変形労働時間制の期間中は、法定労働時間を超えても残業代が発生しない場合があります。しかし、何時間働かせても残業とカウントしなくてよいわけではなく、明確なルールが定められています。
通常の労働契約よりも複雑になりがちですが、正しく理解すれば問題ありません。
本記事では、変形労働時間制における残業の取り扱いや計算方法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

関連記事:1ヶ月単位の変形労働時間制を採用事例で具体的に詳しく紹介

変形労働時間制の運用でお悩みの方へ

変形労働時間制は通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?

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1. 変形労働時間制における残業のルール

変形労働時間制における残業のルール

まずは、変形労働時間制の概要や残業の基本ルールについて確認しておきましょう。

1-1. 変形労働時間制とは?

変形労働時間制は、勤務時間を自由に調整できる労働制度です。週や月ごとの所定労働時間を満たしていて、かつ平均勤務時間が法定労働時間内であれば、1日の勤務時間は8時間以上でも未満でも問題ありません。

繁忙期と閑散期で労働時間を設定できる変形労働時間制は、残業代の削減に大きく貢献する制度です。変形労働時間制での残業の取り扱いについて知り、正しく労働時間を計算しましょう。

1-2. 変形労働時間制でも規定の労働時間を超えれば残業は発生する

1日8時間という法定労働時間を超えた所定労働時間を設定できる変形労働時間制ですが、残業が一切発生しなくなるわけではありません。
故意ではなかったとしても、正しく残業を計算していない場合は、労働基準法違反となってしまうため、注意が必要です。
変形労働時間制を採用する場合、会社ごとに1カ月、1年単位で設定することができます。

変形労働時間制における1カ月単位、1年単位それぞれの残業時間の計算方法については、後ほど「変形労働時間制の残業時間・残業代の計算方法」の項目で詳しく解説します。

1-3. 変形労働時間制における残業代の割増率

変形労働時間制での時間外労働賃金(残業代)の計算方法は、通常の労働契約と同じです。休日労働や深夜残業も変わりません。

時間外労働 25%以上の割増率
休日労働 35%以上の割増率
深夜労働 25%以上の割増率
深夜残業 50%以上の割増率
深夜時間帯の休日労働 60%以上の割増率
1ヵ月で60時間を超えた時間外労働 50%以上の割増率
1ヵ月で60時間を超えた時間外労働の深夜労働分 75%以上の割増率

 

時間外労働には1.25倍以上、休日労働には1.35倍以上、深夜残業には1.5倍以上の割増賃金が必要です。

時間外労働賃金の取り扱いは、労使間のトラブルに発展しやすいです。次の章で解説する残業時間・残業代の計算方法を参考に、正しく時間外労働賃金を算出しましょう。

2. 変形労働時間制における残業時間・残業代の計算方法

残業時間の計算方法

変形労働時間制では、通常の労働契約よりも残業の取り扱いが複雑です。残業とみなされる範囲を理解したうえで、残業代の削減を図りましょう。

2-1. 所定労働時間と法定労働時間の関係

変形労働時間制での残業には、所定労働時間と法定労働時間が関係しています。まずは所定労働時間と法定労働時間について、おさらいしておきましょう。

所定労働時間

所定労働時間とは、企業ごとに定めている労働時間です。
通常の労働契約では法定労働時間内で定められていますが、変形労働時間制の場合は法定労働時間を超えた労働時間も設定できます。

法定労働時間

法定労働時間とは、労働基準法で1日8時間以内、週40時間以内と定められている労働時間です。

変形労働時間制における残業時間は、基本的に所定労働時間と法定労働時間のうち、長いほうを超えた数値です。
たとえば、繁忙期の所定労働時間を9時間にしていた場合、実際の労働時間が10時間になったら1時間の残業が発生します。
反対に閑散期の所定労働時間を7時間に定めていて、実際の労働時間が8時間になったとしても、法定労働時間内であるため残業は発生しません。

2-2. 1カ月単位の変形労働時間制の残業時間・残業代

1カ月単位の変形労働時間制の残業時間や残業代について理解するためには、1カ月単位の変形時間(月の労働時間の上限)を把握しておく必要があります。

1カ月の変形時間は、月の日数によって変化し、以下のような手順で算出可能です。

1カ月の変形時間=1週間の法定労働時間×変形期間の暦日数/7
1カ月の変形労働時間制の場合、以下の方法で残業時間を算出することができます。

  1. 1日、週、1カ月それぞれので時間外労働時間を算出する
  2. 変形時間を超過した時間数を算出する
  3. 2で算出した時間と①で算出した時間に被っている部分があった場合、その時間を差し引く

算出した残業時間に1.25以上をかけることで残業代を算出することができます。

1カ月の変形労働時間制の場合、所定労働時間を繁忙期か閑散期によって一定の範囲内で変更でき、所定労働時間を法定労働時間よりも長く設定した場合、所定労働時間を超えるまでは時間外労働とみなされません。そのため、1カ月の中で繁忙期と閑散期がある企業の場合、1カ月の変形労働時間制を適用することで、労働時間を変形させて残業代を削減することができます。

ただし、これは時間外労働に対する残業代を指し、労働させたのが法定休日だった場合の休日労働に対する手当や、22時から翌朝5時までの深夜だった場合の深夜労働に対する手当は別途支給しなければなりません。

なお、1カ月の変形労働時間制とはいえ、対象期間は企業ごとに2週間やほかの期間に設定できるため、必ずしも1カ月である必要はありません。

2-3. 1年単位の変形労働時間制の残業時間・残業代

1年単位の変形労働時間制の残業時間ついて理解するためには、1年単位の変形時間(年の労働時間の上限)を把握しておく必要があります。
1年の変形時間の求め方は、40時間×365(1年の歴日数)/7です。
この結果2085.7時間が変形時間となります。
1年単位の変形労働時間制の残業時間の算出方法は1カ月単位の変形労働時間制と同様に、1日、週、1カ月、変形時間の残業時間を算出し、それぞれで被っている部分を除きます。
ただし、1年単位の変形労働時間制の場合、労働時間の上限は1日10時間と週52時間が限度です。
上記の方法で算出した残業時間数に割増分を含む1.25以上をかけることで、残業代を算出することができます。
ただし、これは時間外労働に対する残業代を指し、労働させたのが法定休日だった場合の休日労働に対する手当や22時から翌朝5時までの深夜だった場合の深夜労働に対する手当は別途支給しなければなりません。
1年単位の変形労働時間制は必ずしも対象期間を1年間に設定しなければならないわけではなく、1カ月を超える場合に限り、企業によって自由に期間を設定することができます。

3. 変形労働時間制における残業時間の上限

変形労働時間制の場合でも、36協定を締結していれば、残業は可能ですが、残業時間には上限があります。また、変形労働時間制の対象期間によって残業の上限が異なるため、注意が必要です。

3-1. 1カ月の変形労働時間制における残業の上限

1カ月の変形労働時間制の場合、36協定を結んでいれば、月45時間、年360時間が残業時間の上限となります。特別条項付き36協定を結んでいた場合は休日労働も含めた残業時間が月100時間未満、年720時間以内が残業の上限になります。

また、残業時間が月45時間を超えられるのは年に6回まで、2~6カ月の平均を月80時間以内におさめなければならない条件も通常の残業時間の上限と同じです。

3-2. 1年の変形労働時間制における残業の上限

1年の変形労働時間制のように、対象期間が3カ月以上の変形労働時間制の場合、36協定を結んでいれば、月42時間かつ年320時間が残業時間の上限となります。

また、特別条項付き36協定を結んでいた場合は休日労働も含めた残業時間が月100時間未満、年720時間以内が残業の上限になります。また、残業時間が月42時間を超えられるのは年に6回まで、2~6カ月の平均を月80時間以内におさめなければならない条件も通常の残業時間の上限と同じです。

対象期間が1カ月か3カ月以上かによって残業時間の上限が変わるため、注意が必要です。

4. 変形時間労働制における残業時間の注意点

変形労働時間制の残業の注意点

残業代の削減が可能な変形時間労働制ですが、使用者側にとってよい面ばかりではありません。注意点を知っておきましょう。

4-1. 変形労働時間制について就業規則に明記する必要がある

変形労働時間制を導入する際は、労使協定を締結したうえで、就業規則に内容を記載することが法的に必要です。労働基準法第32条では、雇用者は就業規則を定めなければならず、そのなかに労働時間の決定方法を含めることが求められています。

また、労働基準法第37条によると、変形労働時間制を適用する際には、就業規則で労働時間の変形範囲や条件、法定労働時間を超える場合の手続きなどを定めなければなりません。

これにより、労働者と雇用主の権利や義務が明確になり、労働時間の適切な管理や労働条件の公正な取り扱いが確保されます。

4-2. 変形労働時間制の残業を相殺することはできない 

変形労働時間制を設定することで対象期間内の労働時間を一定の範囲内で自由に変形させることは可能です。ただし、変形労働時間制で発生した残業をほかの日の労働時間を短縮するなどして相殺することはできません。

なぜなら、残業代は時間外労働分の割増賃金を含んだ金額であるため、ほかの労働時間と支払う金額が異なるからです。残業をほかの日の労働時間で相殺してしまうと、割増賃金分がなかったこととなり、労働者が不利になるため、相殺することはできません。

4-3. 年単位の変形労働時間制は労働者の変化に注意 

年単位で変形労働時間制を設定する場合は、退職や中途採用などによる労働者の出入りに注意が必要です。

変形労働時間制の対象期間に退職、または入社した場合、タイミングによっては所定労働時間が長い期間のみ働くことになります。その場合、該当する労働者の労働時間を平均すると、法定労働時間を超えることがあります。

変形労働時間制で残業代が発生しないのは、平均化すると労働時間が法定労働時間内におさまるからです。

その前提から外れてしまうため、変形労働時間の期間中に退職や入社した労働者に対しては、労働した期間の労働時間を平均し、週40時間を超えた場合はその分の残業代を支払う必要があります。

「繁忙期だけ残業代なしで法定時間以上に労働をさせる」という雇用方法はできません。

関連記事:1年単位の変形労働時間制についてメリット・デメリットを徹底解説

4-4. 勤怠管理を徹底しないと正しく計算できない

変形労働時間制の難しい部分として挙げられるのが、勤怠管理の徹底です。人事担当者が正しい知識を持っていても、現場の勤怠管理ができていなければ、労働者一人ひとりの残業代の計算を正確におこなうのは難しくなります。

変形労働時間制では、残業の取り扱いに注意するとともに、現場の勤怠管理が適切にされているか、十分に確認しましょう。

しかし、「変形労働時間制を導入してみたものの、残業時間の計算方法が複雑すぎてよくわからない」と不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

当サイトでは、変形労働時間制での残業時間の計算方法を図解をもちいて分かりやすく解説した資料を無料で配布しております。 変形労働時間制の残業時間の計算方法をしっかりと理解し、労働基準法に沿った勤怠管理をおこないたい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

5. 変形労働時間制を導入する手順

変形労働時間制の導入にあたっては、労使協定の締結や就業規則への明記が法的に義務付けられています。また、勤怠管理ツールを有効活用し、適切かつ正確に管理することも大切です。

5-1. 労使協定を結ぶ

まず変形労働時間制を導入するにあたって、労働者と雇用主の間で労使協定を結ぶことが必要です。

労使協定は、所定労働時間や変形労働時間制の各種条件について合意するものであり、労働組合や労使協議などを通じておこなわれます。

この協定には、変形労働時間制の適用範囲や勤務時間の変形方法、残業手当の支払い条件などが含まれます。

5-2. 就業規則に明記する

労使協定が結ばれた後は、変形労働時間制の内容を就業規則に記載しましょう。就業規則では、労働時間の変形範囲や条件、残業手当の支払い基準、労働者の権利と義務、適用除外の条件などが明確に規定されます。

労働者は就業規則を遵守することが求められると同時に、雇用主も規則を適切に管理しなければなりません。

5-3. 勤怠管理システムやエクセルで残業時間を管理する

変形労働時間制の実施にあたっては、勤怠管理システムやエクセルなどのツールを活用して残業時間を管理することが重要です。ツールの活用により、労働時間の記録や残業時間の計算が正確かつ容易におこなえます。

労働者の勤務時間を把握し、法定労働時間を超える残業に関しては適切な手続きをおこなうために、効果的な勤怠管理システムを導入しましょう。

5. 変形労働時間制の残業管理は複雑になりやすい

変形労働時間制の残業時間の計算は複雑

変形労働時間制は残業代の削減ができる一方で、勤怠や時間外手当の管理が複雑になりやすいです。管理職や人事担当者の負担が増え、残業が増えてしまうケースも存在します。

そのような場合は、管理システムを導入するのがおすすめです。勤怠管理や残業代の計算もスムーズにできるため、業務の負担を大幅に減らせます。変形労働時間制の管理に悩んでいる場合は、ぜひ検討してみてください。

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