
「1on1ミーティング」が注目されています。1on1ミーティングに力を入れている企業としてはヤフー社が有名で、最近も話題になっていました。
また、アメリカのシリコンバレーにも「1on1 meeting」という文化が根付いてきているそうです。このように、世界的にも注目を集めている人材育成施策となっています。
そこで今回は、人事なら知っておきたい人材育成施策「1on1ミーティング」について解説します。
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1. 1on1ミーティングとは

1on1ミーティングとは、その名の通り、上司・部下による定期的な1対1のミーティングのことです。
部下が仕事を通して経験した「うまくいったこと」「失敗したこと」や「仕事の悩み」などを内省し、上司がその内容をフィードバックすることで、そこから教訓を得て、さらなる成長に活かしていきます。
日々の仕事をなんとなくで終わらせずに定期的に振り返ることができ、経験学習のサイクルがまわります。その結果、社員個々人の成長や活性化につながっていきます。
1-1. 1on1ミーティングに期待される効果
1on1ミーティングには、主に以下のような効果が期待されています。
- 社員個人の学びを深め、成長を促進する
意識的に経験を内省するきっかけを設けることで、次の仕事へ活かす仕組みをつくり、個人の成長を促進させます。また、他者に言葉にして話すことによって、部下が自らのビジョンや強みや弱みに気づき、秘めた情熱を解き放つ効果もあります。 - 信頼関係を深め、コミュニケーションを円滑にする
普段の業務とは離れた場所で個別の対話の時間を定期的に設けることにより、関係性の向上につながります。また、コミュニケーションの弊害は、意思決定の誤解にもつながるといわれているために、トラブルの削減などさまざまな業務改善の効果が期待できます。副次的な効果として社員の離職率低下にも貢献できます。 - 上司(マネージャー)の情報収集や理解度の向上
定期的に部下と話すことにより、部下の成長やキャリアビジョンの時間変化にも適時対応することができます。また、会社への意見やビジョンの浸透度合い、ロイヤルティなどを伺うことで、会社の仕組みを見直すきっかけにもつながります。
マネージャー・リーダーの立場にいる方は、1on1ミーティングのフィードバックの効果を通じて部下を「訓練」し、キャリアビジョンの相談を通じて部下のキャリアを支援し「仕事へのモチベーション」を高める環境をつくることができる、という効果があります。
2. 1on1ミーティングの実施手順
1on1ミーティングを実施する際には目的や手法を十分に把握しておきましょう。上司が部下を呼び出して主体的に話をする場ではなく、部下の話を十分に聞く場であるという理解が必要となります。
まずは部下に対して1on1ミーティングの目的を共有します。ミーティングの中では部下の悩みや業務上の問題点を聞き出し、改善や解決につなげていきましょう。1on1ミーティングの内容を記録することも大切なポイントです。
ここからは、1on1ミーティングの具体的な手順についてチェックしていきます。
2-1. 1on1の目標設定、共有
1on1ミーティングの際にはまず、部下に対して目的や目標、効果などを共有します。
1対1のミーティングというと、人事評価に関することではないか、失敗を責められるのではないかというイメージを抱え、不安がる従業員もいるものです。面談の場で上司が一方的に話をすることで、部下が萎縮してしまうケースもあります。
1on1ミーティングが悩みの相談や解決の場であること、コミュニケーションの場であることをあらかじめ共有しておきましょう。目的が共有されていれば効率的に意見交換ができ、有意義な時間を過ごせます。
2-2. 1on1 の実施、内容の記録
1on1ミーティングの実施方法に決まったルールはありません。しかし、なんとなく1on1ミーティングを行うと効果的な意見交換ができないため、あらかじめ話す内容を決めておくことが大切です。
1on1ミーティングでは、業務上の悩みや問題がないか、現在取り組んでいる業務に関する課題にはどんなものがあるのかなどを聞き出すのが効果的です。
このとき、上司が一方的に話をするのではなく、部下の話に耳を傾けるよう意識しましょう。話を途中で遮ったり発言を批判したりするのもできるだけ避けてください。なぜ問題が生じているのか、どうすれば解決に至るのかといった効果的な質問を行い、部下自身に考えるきっかけを与えることが重要です。
会話の中で、業務に対する新たな目標を設定したり、今後のキャリアについて話したりするのも良い方法です。
また、1on1ミーティングでは話した内容や設定した目標を記録しておきましょう。専用の面談シートを作成すれば、継続的な運用に役立ちます。
3. 1on1ミーティングを運用する際のポイント

マネージャー・リーダーの立場にいる方は、1on1ミーティングをおこなう際に5つのポイントを抑えましょう。
3-1. 1on1ミーティングを実践する前に準備する
ただ単に1on1ミーティングを実施しても、期待するような効果は出ません。実践する前に以下を確認してみましょう。
- 実践する上司・マネージャー・部下間に最低限の信頼関係があるか
人は信頼していない相手に自己開示はできません。上司の方から積極的にコミュニケーションをとり、最低限の信頼関係を築いておきましょう。 - なぜ1on1ミーティングをやるのか、目的の共有ができているか
目的意識の共有がなければ十分な効果は期待できません。1on1ミーティングは、部下の成長にコミットするものだという認識を持ってもらい、積極的に取り組むように促しましょう。 - 適切な頻度・時間を設定する
1-2週間に1度、30-90分程度の時間を設けて行うのが一般的ですが、部下の状況にあわせて適切な頻度を設定しましょう。
3-2. マネージャー、上司が持つべき心構えを意識する
部下が深く内省できるような働きかけが重要で、以下のようなことを心構えとして持っておくと良いでしょう。
- アクティブリスニングを心がける
部下自らが十分に話せる流れをつくることが大切です。理想は8割以上、部下に話してもらうことだそうです。話を途中で遮らないように注意しましょう。 - メモをとる
1on1ミーティングのまとめや、時間経過における部下の変化などを記録するためにもメモを取りましょう。しかし、あくまで対話が中心なので、こだわりすぎないよう注意。 - 進捗確認や業務の確認だけにならないようにする
業務から離れたところで対話をすることが目的なので、進捗状況や業務内容の確認は最小限に留めましょう。
3-3. 1on1ミーティングで話す内容を予め決めておく
部下の話したいことを話してもらうようにすることが基本的な方針ですが、以下のように基本となるようなフォーマットを決めておき、事前に共有することも効果的だといわれています。
部下の性格や、初回1on1ミーティングの様子などから判断して活用すると良いでしょう。
基本フォーマット(例)
- 最近仕事でうまくいったこと
- 最近仕事で困っていること
- サポートしてほしいと思っていること
- 会社全体について気になっていること
- 現在の仕事に対しての関心度合い
- 自己実現のために次に挑戦したい仕事
- 個人的な悩み・相談
部下が話した内容について「どうしてそうなったのか」「どうしてそう思うのか」などの質問をして内容を深く掘り下げるようにしましょう。
3-4. 話した内容をまとめる
最後の5分を使って、1on1ミーティングで話した内容をまとめることが重要です。
- 今回の1on1ミーティングから得た学びや意見をまとめる
- 次の1on1ミーティングまでの課題を共有する
- 次の1on1ミーティングの日時を決める
毎回最後に内容をまとめることで、1回の1on1ミーティングで話した内容とその後の変化を意識させましょう。次回日時を決めておくことも、1on1ミーティングを継続的におこなっていくためのポイントです。
3-5. 1on1ミーティングをおこなう際の注意点まとめ
- 先に自分の考えを言わない
上司の意見を聞いた後では、部下は異なった意見を言いにくくなるもの。先に部下の意見を聞き、思いや考えを深めるための時間にしましょう。 - 次回課題を考えて終える
対話によって問題の本質が見えてきたら、達成するための課題と行動を明確にしましょう。 - 雑談だけにならないようにする
1on1ミーティングは人材育成のために行うものです。組織の業績向上が一番の目的であることを忘れずに、雑談中心になることを避けましょう。とはいえ雑談のようなフラットな雰囲気を作ることも重要。そのために、会社から離れてカフェや公園などで行う人もいるそうです。
4. 1on1ミーティングに力を入れている企業7社
では、実際に1on1ミーティングを実施しており、運用に成功している7社をご紹介します。
4-1. ヤフー株式会社|1on1で、才能と情熱を解き放つ
1on1を実践している企業として有名なのが、ヤフー株式会社。
今年の3月にヤフーのピープルディベロップメント統括本部長を務める本間浩輔氏が書籍を出したことをきっかけに1on1が改めて注目されるようになるなど、日本における1on1導入企業の代表的な存在といってもいいのではないでしょうか。
ヤフーは、今後の会社の成長のために個々の社員の能力を最大化する必要があると感じ、「部下の才能と情熱を解き放つ」という人材育成のコンセプトを掲げ、1on1を実施しはじめたそうです。
はじめの頃は、「時間がない」などの理由で1on1に対して積極的ではなかったようですが、「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」の話を聞くための3つのスキルを体系的にまとめ、コーチングについては管理職に研修まで実施したそうです。
そのおかげか、現在ではヤフー社員7,000名のうちの約9割が隔週1回以上、約30分の1on1をおこなっているそうです。それほど1on1の効果と重要性が認識されているということですね。
また、2015年には、リクルートマネジメントソリューションズとパートナーになり、「部下面談の基本」や「コーチング」「フィードバック」など、1on1をより有意義にするためのスキル研修「1on1サポートプログラム」を開発したそうです。
4-2. 株式会社スペースマーケット|高速PDCAをまわすための仕組み
レンタルスペースの予約ができるスペースマーケットでもPDCAを高速回転させるために1on1ミーティングを取り入れています。
スペースマーケットでは、週1回、30分間、直属の上司と面談をしている他に、月1回の他部署リーダー、社長との面談まであるそうです。
1on1では、仕事の悩み相談から雑談までさまざまな話をします。たとえば、同社のカスタマーサクセスチームでは、さらに以下の項目についても話をするとのこと。
- 取り組んだ課題
- 成功した点
- 反省点
- 翌週の課題設定
- 相談事項
1on1によって、目標の再確認とその軌道修正ができるようになるため、目の前のことしか見えていないという状態に陥らずに仕事に取り組むことができます。
また、毎回マネージャーから「強み」と「弱み」をフィードバックしてもらえるので、組織が社員に求めていることは何か、個々の取り組みにズレが生じていないかを確認できる機会となっています。
4-3. クックパッド株式会社 新規広告開発部エンジニア|週に1回15分の1on1で強いチームを作る
情報レシピサイトのクックパッドも、「定期個人面談」として1on1をおこなっています。
もともとクックパッドのチームは少数単位で、加えてエンジニアなのでいわゆる個人プレーが多かったそうです。そのため「お互いをもっと知ろう」と思ったことが実施のきっかけとのことです。
クックパッドの1on1ミーティングは、「高頻度短時間」「話す内容の自由度が高い」ところが特徴的です。
1週間のスケジュールの中に固定枠として15分間のミーティング時間を抑えているそうです。常に高い集中力が求められるエンジニアに対して、1週間のスケジュールが立てやすくするために1週間のルーチンとして時間を固定しているのですね。
進捗確認の場にならないよう、仕事以外のプライベートの話や気になる話など、話す内容も自由です。仕事以外の場面でもチームメンバーが互いの抱えている課題を発見し、早い段階で解決のきっかけをつくる、ということを目的としているため、ミーティング後もあえて具体的な目標を設定しません。
1on1ミーティングを実践したことにより、メンバーと強い信頼関係が築かれ、チームに活気が生まれ、結果としてチームの一人一人がより良い仕事ができるようになったそうです。個人プレーの多いエンジニアにとって、効果的な施策のようですね。
4-4. ソフトバンク・テクノロジー株式会社|「風通しの良い社風」の実現に向けて
ソフトバンク・テクノロジーも、会社が重視している取り組みの一つとして「1on1ミーティング」を実施しています。
「1on1ミーティング」は、企業のビジョンや経営メッセージの浸透と同時に、社員からの意見を吸い上げ、「風通しの良い社風」を実現していく目的があります。
その内容は、上場とメンバーで、以下のようなルールで実施します。
- 1ヶ月に1度
- 30分以上
- 1対1
- 対面
上長は、仕事に限らずプライベート含め、メンバーの課題や悩みなどを把握することが期待されているとのことです。
4-5. グリー株式会社|自身の目指す姿に向かってチャレンジできる環境を整える
ソーシャルネットワーキングサービスを運営するグリー株式会社も成長支援制度として1on1を取り入れています。
グリー株式会社では、各社員が半期ごとに自信の目標を設定しており、1on1を「目標と現状とのギャップに関して上長と共に認識する場」として利用しています。
上長には、1on1の効果を上げるために独自の研修がされているようです。1on1の情報などをもとに、上長やプロジェクトマネージャーからのアドバイス、同僚や部下からの評価をまとめたマルチフィードバックを実施するなど、定期的に自身の働き方や考え方を見直す仕組みになっています。
4-6. ロゴスウェア株式会社|いつでも・誰とでも・何についてでも1on1
学習や教育のソフトウェアなどを提供しているラーニングソリューション企業のロゴスウェアでは人事評価の公平感、社員の納得感を目的に1on1を導入しています。
「いつでも、誰とでも、何についてでも、1対1で話し合える」という仕組みになっています。通常は、直属の上司とミーティングをおこないますが、他部署のマネジャーや、場合によっては社長といったように、あらゆる社内の人物と1on1を設定することもできます。
自ら議題を決め、1on1のための資料を準備し、そこから1on1を申し込む形式となっています。
目標設定、進捗報告、評価のフィードバックなどにも1on1が使用されているとのことで、「自ら考え状況を判断し率先して行動する」という行動哲学を反映した取り組みとなっています。
4-7. 株式会社テモナ(CSチーム)|「CSチームの離職率が20%→0%に」
今年4月に東証マザーズに上場した株式会社テモナは、1on1によって課題を把握したことでCS(カスタマーサポート)チームの離職率を大幅に改善したそうです。
現状課題の把握のために1on1を実施すると、コミュニケーション強化の課題が多く挙げられたそうです。この解決策として朝夕のコミュニケーション時間の拡大、各メンバーの考えていることを話す「ぶっちゃけ会」を定期的に開催しました。
その結果、1年で離職率が20%から0%に低下。一人ひとりの課題解決力の向上により、業務効率化や個人の生産性の向上など、副次的な効果も見られたそうです。
一般的にCSは、業務量の多さや精神的ストレスの負荷などから離職率の高い業務の1つと言われています。全て1on1の効果ではありませんが、1on1をきっかけに離職率を低下させたため、離職率改善にも効果が期待できるといえますね。
定期的に上司と部下間で面談をするのが一般的な1on1ですが、このように課題を把握することを目的として実施をしても効果があるということがわかりました。
5. まとめ
個人面談によって部下の訓練や仕事へのモチベーションを高め、部下の成長を促進する効果が期待できる1on1ミーティング。
個人面談というと非常にシンプルに思いますが、前提や注意事項があるなど、意外と奥が深いですね。そのため、ただなんの目的もなく1on1ミーティングを始めてしまっては、効果があるどころか時間の浪費になってしまうように思います。
十分な効果を得られるようにするには、双方が1on1ミーティングの効果を信じて真剣に取り組むことが重要なのではないでしょうか。
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