KPIを適切に設定することで、目標達成のための行動を明確にすることができます。まずはKPIとは何か、その意味を適切に理解することが大切です。
この記事では、KPIとKGI、KSF、OKRの違いや、KPIを設定するメリット・デメリット、KPIの具体的な設定方法とそのポイントについてわかりやすく解説します。KPIの基礎知識を深めたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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目次
1. KPIとは?
KPIは「Key Performance Indicator」を略した言葉で、日本語に訳すと「重要業績評価指標」です。つまり、KPIとは、事業目標を達成すべきためのプロセスがきちんと実施されているかを評価するため数値化された指標を指します。たとえば、営業職であれば、最終的な売上目標ではなく、そこに至るまでの訪問件数や受注件数がKPIとして設定されることになります。
ここでは、KPIとはどのような意味か理解を深めるため、KPIとKGI、KSF、OKRの違いについて詳しく紹介します。
1-1. KGIとの違い
KGIとは「Key Goal Indicator」を略した言葉で、日本語に訳すと「重要目標達成指標」です。KPIが目標達成のための中間指標であるのに対して、KGIはその最終的な指標を指します。KPIを達成していくことで、そのプロセスのゴールであるKGIを達成することが可能です。たとえば、営業職の場合、KGIは「売上」「利益率」などを設定します。
関連記事:KGIとKPIの違いとは?各指標の特徴や重要性を詳しく紹介
1-2. KSFとの違い
KSFとは「Key Factor for Success」を略した言葉で、日本語では「重要成功要因」と訳されます。KSFと似た用語に「CSF(Critical Success Factor)」があります。KSFとCSFはよく同義で用いられます。KPIが「指標」を表すのに対し、KSF(CSF)は「要因」を意味します。つまり、KSF(CSF)は、KPI到達のための必要条件ともいえます。
1-3. OKRとの違い
OKRとは「Objective and Key Result」の略称で、日本語にすると「目標と主要な結果」になります。OKRでは、Objectives(目的)とKey Result(主要な結果)を設定して、目標達成を目指します。
OKRとKPIの共通点は、どちらも目標管理手法ということです。しかし、目的や達成率に違いがあります。OKRは目標を設定するためのフレームワークであるのに対し、KPIは目標達成の進捗状況を可視化するための指標です。また、OKRでは目標を高く設定するため、達成率の理想は60~70%程度とされています。一方、KPIでは達成率100%が理想的な状態です。
このように、KPIとOKRは似た部分もありますが、違いがあります。KPIとOKRはどちらか一方を選ばなければならないわけではないので、併用することも可能です。
関連記事:OKRとは?意味や目標・評価の設定、導入企業の具体例を紹介
2. KPIを設定するメリット
KPIを設定することでさまざまなメリットが得られます。ここでは、KPIを設定するメリットについて詳しく紹介します。
2-1. 行動が明確になる
漠然と「売上高を前年比から〇%アップさせる」という目標を掲げられても、従業員は何をすることが売上アップにつながるのかよくわからず、行動に移せないケースもよくあります。KPIを設定すれば、社員は目標達成のために具体的に何をすれば良いのかがわかりやすくなり、それぞれの業務をスムーズに進めることが可能です。また、KPIでは数値化された指標を基に進捗状況も把握できるため、業務スピードが適切かどうか、何が不足しているのかなどを可視化することができます。
2-2. 生産性の向上につながる
KPIによって社内で具体的な達成目標が共有されると、何をすべきかが明確になり、従業員のモチベーションが上がります。また、会社全体で目指す方向が統一されるので、まとまりのある組織を作り出すことが可能です。結果として、労働生産性が向上し、業績アップが期待できます。
2-3. 評価基準が統一される
KPIを設定することで、目標達成のためのプロセスを細分化し、進捗状況を客観的な数値で評価することができます。数値化により評価基準が統一されることで、公平な評価ができるようになり、従業員の人事評価に対する納得感も高まります。また、評価する側にとっても、評価基準が明確なため、人事評価に関する業務の負担を軽減することが可能です。
2-4. PDCAサイクルをスムーズに回せる
KPIを設定せず、これまでの知識や経験に頼って、プロジェクトを進めると、途中で課題があった場合に「何に問題があったのか」「どのように軌道修正すればよいか」がわからず、業務が滞ってしまう恐れがあります。KPIを設定し、定期的に評価すれば、数値化された指標を基に、何が不足しているのかを素早く判断して、改善につなげることが可能です。このように、KPI設定により、PDCAサイクルが回しやすくなり、目標に向かってスムーズにタスクをこなしていくことができます。
KPI導入によるメリットは理解できたものの、そもそも人事評価制度が整っておらず、KPIで設定した指標を活かしきれるかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。当サイトではそのような方に向けて、人事評価制度の種類や導入方法をまとめた資料を無料でお配りしています。組織の成長と成功に欠かせないのは、優れた人材の育成と活用です。そのためには、従業員のパフォーマンスを評価し、向上させる方法が必要です。自社にとって適切な人事評価制度を検討するため、まずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
3. KPIを設定するデメリット
KPIにはメリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、KPIを設定するデメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 目標を意識しすぎる
KPIを設定することで、行動が明確になるというメリットがあります。しかし、KPIを意識しすぎるあまり、数値以外のことに目がいかなくなる可能性があります。数値を取るために、どのようなことをしてもよいというわけではありません。法令を遵守したり、周囲との協調性を重んじたりするなど、KPIを運用する際は最低限のルールを周知しておくことが大切です。
3-2. 従業員の負荷が大きくなる
KPIにより目標達成に対する進捗状況が明確になることで、従業員に大きなストレスがかかる可能性があります。KPIを達成できていないことで、他の従業員よりも劣っていると感じる社員もいるかもしれません。KPIにより評価が明確になることは良いことですが、KPIを達成できていない従業員へのフォローも欠かさないようにしましょう。
3-3. KPIに依存し思考力が低下する
KPIを達成すれば、最終目標であるKGIを達成することができます。そのため、KPIに依存しすぎてしまい、決められたプロセス以外のことはしない指示待ち人間になってしまう可能性があります。テクノロジーの発展により、ビジネス市場が目まぐるしく変化する現代社会では、想定していないこともよく起こります。そのため、「自分で考え、課題を解決する力」を養うことも大切です。
関連記事:1on1ミーティングとは?運用時のポイントや企業事例をご紹介
4. KPIの設定方法
KPIは正しい方法で設定しなければ効果がありません。ここでは、KPIの設定方法について詳しく紹介します。
4-1. KGIを設定する
まずは、最終目標であるKGI(重要目標達成指標)を設定しましょう。KGIは数値で測れること、さらに現実的に達成可能な目標にすることが大切です。「売り上げをアップさせたい」という目標がある場合は、具体的にその金額をKGIとして設定します。
また、KGIを設定したら、すべての従業員に共有し、不満な点はないか確認することが大切です。社員からの意見をすべて取り入れることは難しくても、情報を共有しながら最終目標を決めることで、ゴールに向かって社内一丸となって取り組むことができます。
4-2. KGIを細分化する
KGIの設定ができたら、次はKGIを細分化します。KGIを細分化する際には、現状と目標のギャップを把握することが不可欠です。そのため、目標に対する現状の課題を明確にしましょう。また、その課題を解決するために重要なカギを握るKSF(重要成功要因)の洗い出しも必要です。たとえば、「年間の売り上げを〇億円アップさせる」というKGIを設定する場合、「顧客単価を上げる」「顧客数を増加させる」などのKSFが挙げられます。
4-3. KSFからKPIを設定する
KSFがピックアップできたら、それを基にKPIを設定します。KPIは行動の指針となるので、できる限り具体的な数値で設定することが大切です。たとえば、「顧客単価を上げる」というKSFに対しては「具体的な目標とする顧客単価の金額」がKPIになります。また、「顧客数を増加させる」というKSFに対しては「どれだけの人数の顧客を増加させるか」がKPIとなります。
関連記事:KPIを数値化できない?問題点や対処方法をわかりやすく解説
4-4. KPIツリーを作成する
KPIを細分化し、達成するための行動を明確化するには、KPIツリーを作成するのが有効的です。KPIツリーのイメージとしては、KGIから各KPIが枝分かれしており、抜け漏れなくKPIが洗い出されている状態が理想です。KPIツリーを作成することで、目標を達成するための行動が可視化され、一目でわかるようになります。
関連記事:KPIツリーとは?作成方法や作成上の注意点を詳しく解説
5. KPIを設定するときのポイント
KPIはやみくもに設定するのでなく、いくつかのポイントを意識しながら設定することが大切です。ここでは、KPIを設定するときのポイントについて詳しく紹介します。
5-1. SMARTを意識する
KPIを設定する際は「SMART」を意識しましょう。これは、以下のそれぞれの頭文字から成るものです。
S |
Specific |
明確性がある |
抽象的ではなく、誰が見ても目標がわかるような具体的な表現をする |
M |
Measurable |
測定可能である |
感覚的ではなく、定量的な目標を設定することで、達成度合いをわかりやすくする |
A |
Achievable |
達成可能である |
現実的で達成可能な目標にする |
R |
Related |
関連性がある |
企業全体の目標と個人目標に関連性がある |
T |
Time-bound |
期限が明確である |
いつまでに目標を達成すべきなのか期限を決める |
SMARTを意識すると、自然とKPIも明確になり、従業員は主体的に取り組むことができるようになります。目標が達成できた場合、あるいは達成できなかった場合は、放置することなく、なぜ達成できたのか、できなかったのかを振り返り、また新たなKPI設定へと活かしましょう。
5-2. KPIとKGI、KSFの整合性を確認する
最終目標である「KGI」、最終目標を達成するための必要条件である「KSF(CSF)」、最終目標を達成するための中間目標である「KPI」は結び付いていなければいけません。KPIを達成したら、本当にKGIが達成されるか確かめてみましょう。そうすることで、抜けや漏れがないかチェックすることができます。また、KSF(CSF)を変更すると、KPIも変化するはずです。変わりがない場合、どこかに間違いがある可能性が考えられます。このように、整合性を調査することで、正しくKPIが設定されているか確認することが可能です。
関連記事:KPIの設定方法のポイントを具体例を踏まえて解説!
6. KPI管理を成功させるためのポイント
KPI管理を成功させるにはポイントがいくつかあります。ここでは、KPI管理を成功させるコツについて詳しく紹介します。
6-1. 定期的に評価と改善を実施する
KPIを運用し始めたら、定期的に評価をおこなうことが大切です。「進捗率〇〇%以下の場合は改善が必要」などと、評価基準を定めておくと、スムーズに評価を実施することができます。また、数値の原因を探ることも重要です。なぜKPIが達成できなかったのか、達成できたのかを明確にすることで、次に活かすことが可能です。KPI設定に問題があった場合、改善をおこなうことで、これまで以上に精度の高いKPI管理ができるようになります。
関連記事:KPIマネジメントとは?必要性やマネジメントのコツを解説
6-2. KPI設定のルールを決める
KPIを設定する際は一定のルールを定めると、スムーズに運用することができます。たとえば、KPIは数値化できるものでなければ、評価が難しくなります。また、KPIに期限も設けなければ、危機感がなく、業務が滞ってしまう原因になりえます。このように、KPIを設定する際に注意すべきポイントをルールとしてまとめ、適切にKPIを設定することで、きちんと成果を出すことができるようになります。
6-3. システムを活用する
KPI管理を効率化するためには、営業支援ツールや顧客管理システム、人事評価システムなどのITツールを活用するのがおすすめです。ITツールを用いれば、KPI達成のために必要なデータを一元管理することができます。また、集計・分析を自動化し、業務を効率化することが可能です。さらに、数値の推移を可視化し、KPIの評価・改善もおこなうことができます。
ただし、ITツールには、さまざまな種類があります。料金や機能、使いやすさ、サポートなどの観点から複数のツールを比較して、自社のニーズにあったITシステムを導入することが大切です。
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7. 適切なKPI設定で組織の課題を解決しよう
KPI設定を適切におこなうことは、着実に事業目標の達成へと近づけるだけでなく、従業員の日々の業務のしやすさやモチベーションの向上にも役立ちます。ただし、KPIは正しい方法で運用しなければ、効果が発揮されません。KPIは、客観的なデータをもとに、かつ社員からの意見も取り入れながら、適切な方法で設定するようにしましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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