目標設定とは、組織や個人の目的を達成するため、その道筋を具体化することです。目標設定のやり方を正しく理解することで、従業員のモチベーションを高め、生産性を向上させることが可能です。本記事では、目標設定のメリットや注意点、設定手順を解説します。また、目標の立て方のコツや具体例、目標管理に役立つフレームワークも紹介します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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1. 目標設定とは?
目標設定とは、組織や個人の目的を達成するために、必要な行動を具体化することです。ここでは、そもそも目標とは何かを紹介します。また、目標と目的の違いも解説します。
1-1. 目標とは?
目標とは、辞書によると「目印」「ねらい」「行動を進めるにあたって、実現や達成を目指す水準」などを意味します。ビジネスで用いる目標とは、組織の理想的な姿を目指すために、設定する具体的な手段や行動のことです。たとえば、自社の提供するサービスの市場シェアにおいてトップを獲得することをゴールと設定するならば、「顧客満足度を高める」「サービスの制作を効率化してコストを削減する」などが目標として設定されます。
1-2. 目的と目標の違い
目標とよく似た用語に目的があります。目的とは、辞書によると「行動のねらい」「めあて」などを意味します。ビジネスで用いる目的とは、組織や個人の最終ゴールのことを指します。つまり、最終的な終着点である「目的」を実現するため、行動が具体化されるよう「目標」は定められます。また、目的は長期的な到達点、目標は短期的な到達点が設定されます。このように、目的と目標の関係を正しく理解することで、適切に目標設定ができるようになります。
関連記事:目標とは?目的との違いや立て方・設定するときの注意点を解説
2. 目標設定が重要な理由
ここでは、目標設定の重要性や必要性について詳しく紹介します。
2-1. 目的を達成する道筋が明確になる
目標設定をおこなうことで、目的を達成するまでの道筋が明確になります。目的だけでは、どのように到達すべきかがわからず、具体的な行動を起こしにくいです。目的に対して具体的な目標を設定することで、今すべきタスクが明確になり、効率よく目的に向かっていくことができます。
2-2. 社員のモチベーションアップにつながる
目標設定は組織だけでなく、従業員にも重要な役割があります。目標を設定せず、与えられた仕事をこなしているだけでは、従業員はやりがいを感じられず、モチベーションが下がってしまいます。目標を設定することで、その目標を達成するために何をすべきかを考え、行動に移すことで、従業員の主体性が高まり、責任感も生まれるようになります。また、目標に対して適切な評価をおこなうことで、昇給・昇格などの目に見える形となって表れるようになり、従業員のモチベーションアップが期待できます。
2-3. 生産性の向上につながる
目標を設定せずにいきなり業務に取り組むと、本来不要なタスクに取り組んでしまっている可能性もあり、無駄なコストがかかる恐れがあります。目標設定により、目的に対して具体的な行動が定まれば、優先順位をつけながら、目標達成のために必要なタスクに取り組むことが可能です。このように、目標設定は生産性の向上のためにも必要とされます。
3. 目標設定のメリット
目標設定により、企業と従業員ともにさまざまなメリットが得られます。ここでは、目標設定のメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 社員のスキルアップが期待できる
目標設定しなければ、漠然と業務をこなすだけになり、大きな成長が期待できません。従業員が目標設定をおこない、それを達成するために努力することで、経験や能力が磨かれていきます。目標設定と評価・改善を繰り返すことで、効率よくスキルアップにつなげることが可能です。従業員のスキル向上は、組織全体の成長にもつながります。
3-2. 仕事の進捗を確認できる
目標を設定しなければ、仕事においてどの程度成果が出ているのかが把握しにくくなります。目標を設定することで、目標に対してどの程度仕事が進んでいるかを客観的に把握することができます。目標に対して思うように進捗が出ていない場合、フィードバックをおこない、改善につなげることが可能です。一方、目標に対する達成度が高い場合、次の目標を立てることで、組織と個人ともに効率よく成長することができます。
3-3. 社員の評価がしやすくなる
目標を設定していない場合、上司や管理職の主観的な評価がおこなわれ、不公平を生み、従業員の不満につながる恐れがあります。目標設定により、達成度を基に評価を実施すれば、従業員の評価への納得感が高まり、客観的に人事評価をおこなうことが可能です。また、評価に基づき、次の目標を設定することで、従業員のモチベーションを維持しながら、効率よく組織の目的へと向かっていくことができます。
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4. 目標設定の注意点
目標設定は正しくおこなわなければ、効果やメリットが得られません。ここでは、目標設定の注意点について詳しく紹介します。
4-1. 企業のビジョンやミッションとの関連性はあるか
ビジョンやミッションは、企業としての方向性や存在意義を表すための重要な要素の一つです。せっかく目標設定をしても、企業の目標や価値観と合致していなければ、組織と従業員の目指す方向が一致せず、スムーズに目標達成できない可能性があります。目標設定をおこなう際には、企業のビジョンやミッションとの関連性がある内容になっているかどうかチェックすることが大切です。
4-2. プロセスを確認できるか
目標は一つに絞らなくても問題ありません。目標は成果だけでなく、プロセスも把握できるように設定することで、後から結果の理由・原因を追究し、改善につなげることができます。上司や管理職からフィードバックをもらいながら、プロセスを見直し、再度目標を設定することで、効率よく成長へとつなげることが可能です。
4-3. 数値化され明確になっているか
目標設定は「いつまでに誰が何をどれくらいおこなうか」が明確にわかるものでなければなりません。数値化された目標を設定することで、客観的に評価を実施することができます。定量的に目標設定できない場合でも、抽象的にならないよう、具体的に目標を設定することが大切です。
関連記事:KPIを数値化できない?問題点や対処方法をわかりやすく解説
5. 目標設定の立て方とその手順
目標の立て方の手順を理解しておくことで、スムーズに目標を設定し、行動につなげることができます。ここでは、目標設定の立て方とその手順について詳しく紹介します。
5-1. 目標の種類を理解する
まずは目標の種類を理解しましょう。目標は大きく「発生型目標」と「設定型目標」に区分されます。
発生型目標 |
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設定型目標 |
|
発生型目標は、課題が明確に把握できるため、目標設定がしやすいです。迅速に問題解決できるよう、目標設定をおこなうことが大切です。一方、設定型目標は、明確な基準が定まっておらず、組織や個人のニーズにあわせて設定する必要があります。そのため、上司や同僚などにも立てた目標を確認してもらうなど、あらかじめ目標が最適化されているかチェックしましょう。
5-2. 目標の具体的な内容を定める
発生型目標と設定型目標の違いを理解したら、自分の立てる目標の具体的な内容を定めましょう。具体化されていなかったり、達成が不可能に近かったりすると、目標として機能しない可能性があります。目標設定の内容を決める際は、フレームワークを活用してみるのも一つの手です。
5-3. 目標達成に向けた行動を明確にする
目標を設定しても、行動に移さなければ、目標設定の意味がありません。目標を立てたら、実際にどのような行動が必要かを事前に洗い出しましょう。たとえば、「半年後に〇〇という資格を取得する」という目標を立てたのであれば、「3カ月後に知識習得完了」「4か月後に問題実習に取り組む」「5カ月後に過去問に取り組む」などと、タスクを整理するのがおすすめです。
5-4. 目標の管理方法を決める
目標は組織で管理する場合もあれば、個人で管理する場合もあります。しかし、適切に管理できていなければ、目標が形骸化してしまう恐れがあります。効率よく目標を管理するため、目標管理ツールの導入を検討してみるのも一つの手です。目標管理システムを導入すれば、すべての従業員の目標をシステム上で一元管理することができます。目標の状況をデータ化して、達成度合いを客観的に評価することも可能です。これにより、適切な人事評価や人員配置に役立てることができます。
5-5. 定期的に見直しを実施する
目標を設定したら、定期的に見直しを実施することが大切です。期間が短すぎると、目標管理の負担が大きくなります。一方、期間が長すぎると、成長を遅らせてしまう原因になります。このように、組織や個人にあった評価期間を設定し、定期的に目標を評価・改善をおこなうことで、モチベーションを維持しながら、効果的な目標管理を実施することができます。
6. 目標設定のコツとポイント
目標設定にはコツやポイントもあります。ここでは、目標設定のコツとポイントについて詳しく紹介します。
6-1. 上司やリーダーに相談できる機会を設ける
目標が思いつかない従業員もいるかもしれません。上司やリーダーに相談できる機会を設けることで、第三者の目線からアドバイスをもらい、自分にあった目標を設定できる可能性が高まります。また、部門やチームの中で目標がある場合、あらかじめ従業員に周知しておくことで、組織の目標にあわせた個人の目標を設定することが可能です。これにより、組織と従業員が同じ方向を向いて、仕事を進めることができるようになります。
6-2. キャリアプランを立てさせる
キャリアプランから逆算して目標を設定するのも一つの手です。まずは自分が将来どのようになりたいのかを具体化しましょう。現状と理想の姿を比較することで、課題が明確になります。その課題を解決するための目標を立てることで、自分にあった目標を適切に設定することが可能です。
6-3. 小さな目標から立てさせる
大きな目標を掲げると、達成できるイメージが湧かず、仕事へのモチベーションが下がる可能性があります。小さな目標から立て、それを達成することで、自信が高まっていきます。目標設定、評価、改善を繰り返すことで、効果的な目標管理を実現することが可能です。ただし、簡単過ぎる目標を立てても、あまり意味がありません。小さな目標に加えて、少し難しい「ストレッチ目標」を設定することで、従業員の成長を促進することができます。
6-4. 定量目標と定性目標を使い分ける
目標には数字で表す「定量目標」と数字で表せない「定性目標」があります。定量目標を設定すれば、数値化して管理できるので、客観的に評価をおこなうことが可能です。しかし、定量目標を設定するのが難しい業務や部署もあります。そのような場合、定性目標を活用しましょう。定性目標を導入する場合、公平な評価を実現できるよう、多面評価を取り入れることが推奨されます。このように、定量目標と定性目標それぞれのメリット・デメリットを理解して、適切に使い分けることが大切です。
関連記事:定量目標と定性目標の違いとは?設定のポイントや職種別の目標例を紹介!
6-5. 目標管理システムの導入を検討する
目標の設定から評価までには、時間や手間がかかります。目標管理が適切にできなければ、目標が形骸化し、意味ないものとなってしまいます。目標を効率よく管理するためにも、目標管理システムの導入を検討してみましょう。目標管理システムには、あらゆる種類があります。料金や機能、使いやすさ、サポート体制などの観点から、複数のツールを比較して、自社のニーズにあったシステムを導入することが大切です。
7. 目標設定に役立つフレームワーク
効率よく目標を設定するには、フレームワークの活用が推奨されます。ここでは、目標設定に役立つフレームワークを紹介します。
7-1. ベーシック法
ベーシック法は、目標設定の手法のなかでも最も基礎的なフレームワークです。ベーシック法は次の4項目で構成されています。
- 目標項目:なにを達成するのか
- 達成基準:どこまでやればゴールなのか
- 期限設定:いつまでに達成するのか
- 達成計画:どのように作業を進めて目標を達成するのか
目標設定をおこなうときは「売上を上げたい」「経費削減を目指す」などの抽象的な内容になりがちです。ベーシック法で達成したい内容や期限、計画を考えれば、ゴールまでのプロセスが具体的かつ明確になります。
7-2. SMARTの法則
SMARTの法則とは、次の5つの項目の頭文字を取った、目標を具体化するためのフレームワークです。
Specific(具体性) |
具体的な目標を設定する |
Measurable(計量性) |
進捗状況を把握するために、目標を数値や指標で設定する |
Achievable(達成可能性) |
設定した目標が本当に達成可能か見定める |
Relevant(関連性) |
目標を達成することで得られる利益を考える |
Time-related(期限) |
いつまでに目標を達成するかを考える |
SMARTの法則を活用することで、目的達成のために今何をすべきかが明確になります。達成可能かどうか見定める項目もあるため、無理な目標を設定することもなくなります。
7-3. ベンチマーキング法
ベンチマーキング法とは、自分の目標をすでに達成している人物を指標(ベンチマーク)にして目標設定をおこなうフレームワークです。ベンチマーキング法は、次のような流れで実施します。
- 対象人物の情報収集・分析
- 目標の設定
- 実行・検証
まずはベンチマークとなる人物の情報を集めて、分析します。その人にあって、自分に足りない点を見つけましょう。対象人物は、身近な存在であればあるほど参考にしやすいです。情報収集・分析によって課題を把握できたら、その課題をクリアにできるような目標を設定しましょう。課題を克服することで、ベンチマークとなる人物に近づけるような目標設定が望ましいです。また、設定した目標に向かって動き出した後も、振り返りや検証を忘れないようにしましょう。
7-4. ランクアップ法
ランクアップ法とは、自身の成長にフォーカスして目標設定をするフレームワークです。ランクアップ法では、次の6つの項目に分けて目標設定をおこないます。
- 改善:問題や課題などのマイナス要素を解消するための目標設定
- 代行:優れた能力を持つ人物の業務を「代行」できるようになるための目標設定
- 研究:新しいテーマを取り入れることは可能か、取り入れるメリットはあるかなどについて「研究」するための目標設定
- 多能化:まだ身につけていない、新しいスキルや知識を習得するための目標設定
- ノウハウの普及:自分のスキルをノウハウとしてまとめ、伝えていくための目標設定
- プロ化:自分のスキルを専門家レベルまで高めるための目標設定
ランクアップ法は、ベーシック法と組み合わせることで、より効果が発揮されます。
7-5. OKR
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略称で、目標設定と管理を通して成果を上げるために実施される一連の取り組みのことです。OKRの「Objectives」は「達成目標」のことを指し、「Key Results」は「主要な結果」を表しています。これらを次のような階層ごとに設定することで、組織全体で同じ目標設定をおこなうことが可能です。
- 部門
- チーム
- 個人
個人と企業の目標を統一することで、組織全体で協力し合いながらスムーズに目標達成を目指すことが可能です。
関連記事:OKRとは?意味や目標・評価の設定、導入企業の具体例を紹介
7-6. KPIツリー
KPIツリーとは、目的達成のための必要なロジックをツリー化して細分化する目標管理手法のことです。KPIツリーのフレームワークを用いることで、目標やプロセスを最適化し、抜けや漏れがないか確認することができます。また、優先順位を決めて目的達成に向けて取り組めるようになるので、効率よくタスクを進めることが可能です。
関連記事:KPIツリーとは?メリットや作り方のポイント、運用上の注意点を解説!
7-7. SWOT分析
SWOT分析とは、内部環境と外部環境の観点から、プラスとマイナスそれぞれの面を洗い出すフレームワークのことです。
【内部環境】
- Strength:長所
- Weakness:短所
【外部環境】
- Opportunity:機会・チャンス
- Threat:脅威
SWOT分析のフレームワークを活用すれば、現状を分析して、最適な目標を設定することができるようになります。また、将来のリスクも洗い出すことで、それにあわせた対策を目標に取り入れることができるかもしれません。
7-8. GROWモデル
GROWモデルとは、次の4つの要素の順に対話を進めて、自発的に目標を設定して達成を目指せる人材を育成するフレームワークのことです。
- Goal(目標)
- Reality(現状の把握)
- Options(選択肢の検討)
- Will(意志の確認)
上司や管理職の人はあくまでもサポートする立場であり、部下自身で目標設定や行動をおこなうので、モチベーションを高めることができます。
8. 目標設定の具体例を職種別に紹介
目標設定の内容は、職種によって異なります。しかし、どの職種においても「いつまでに何をどれくらいおこなうか」が明確で、達成可否が数値で判断できるようなものが望ましいです。ここでは、目標設定の具体例を職種別に紹介します。具体例を参考に、自分にあった目標を設定してみましょう。
8-1. 事務職
- 今期中に◯◯のマニュアルを作成
- 残業率◯%削減
- 経費◯円削減
- 上半期中に外注業務のリスト作成と見直しを実施
8-2. 営業職
- 今期中の売上金額◯%アップ
- 月間新規顧客◯件獲得
- 年末までの更新率◯%
- アップセル率◯%
8-3. 企画職
- 年内にSNSのフォロワー数◯名獲得
- 年間を通してサイトの離脱率を◯%以内に抑える
- 企画商品の認知度◯%アップ
8-4. 販売職
- 店舗売上の前年比◯%
- セット販売率◯%
- 上半期中に全スタッフへロールプレイングを実施
- 月間◯名の新規アプリ会員獲得
8-5. 人事職
- 今年度中に◯名新規採用
- 離職率を◯%以内に抑える
- 研修プログラムの見直し
9. 目標設定を通して従業員を育成しよう!
効果的な目標設定は、従業員のモチベーションや生産性の向上につながります。ただし、達成が難しい目標を設定したり、抽象的な目標を設定したりすると、目標として機能しなくなる可能性があります。目標設定のフレームワークも活用して、最適な目標設定を実現しましょう。また、目標の評価や改善も大切です。目標管理に悩みを抱えているのであれば、目標管理システムの導入を検討してみるのがおすすめです。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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