残業時間上限について最新ルールを正しく解説 |HR NOTE

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残業時間上限について最新ルールを正しく解説

残業時間上限について最新ルール近年、働き方改革によって残業時間の上限が厳しく規制されるようになってきました。
そのため、企業は残業時間上限が何時間なのかを確認し、従業員が上限を超えて残業していないか把握することが求められます。

当記事では、残業時間の上限の最新ルールについて解説します。

関連記事:残業とは|残業の割増賃金の計算方法や残業規制による対策法も

残業時間の上限規制をいつでも確認したい方へ

この記事を読まれている方は、「法改正によって定められた残業時間の上限規制を確認しておきたい」という方が多いでしょう。

そのような方のため、いつでも残業時間の上限規制を確認でき、上限規制を超えないための残業管理方法も紹介した資料を無料で配布しております。

法律は一度読んだだけではなかなか頭に入りにくいものですが、この資料を手元に置いておけば、「残業の上限時間ってどうなっていたっけ?」という時にすぐ確認することができます。

働き方改革による法改正に則った勤怠管理をしたい方は、ぜひ「【2021年法改正】残業管理の法律と効率的な管理方法徹底解説ガイド」をダウンロードしてご覧ください。

1. 働き方改革で設けられた残業(時間外労働)の上限規制とは

残業時間 賃金

労働基準法の改正により、2019年4月から大企業、2020年4月から中小企業を対象に下記の上限規制が設けられました。

[36協定を締結した場合の時間外労働の上限規制]

45時間、年間360時間以内

[36協定において臨時の特別条項を締結した場合の上限規制]

年間720時間以内※ただし下記の条件がある

  • 1ヵ月の時間外労働の上限は100時間未満(休日労働含む)
  • 2~6ヵ月のどの期間をとっても時間外労働時間の平均が月80時間以内(休日労働含む)
  • 月45時間を超えられるのは年6回まで

これまでは、特別条項に関して上限時間は規定されておらず、また、36協定の上限時間の超過に対しても大臣告示がなされるのみで罰則規定はありませんでしたが、この改正に伴って、違反企業には刑事罰が科されることになりました。

そのため、より厳密で詳細な勤怠管理が求められます。今まではそこまで厳密に管理していなかったけれどより詳細な管理を行って法律に違反しないようにしたいとお考えの方は、当サイトお配りしている無料のガイドブック「【残業ルールBOOK】残業時間の管理ルールと効果的な管理方法を解説!」をご覧ください。このガイドブックでは残業に関する法律の規定と、残業の上限規制を守るための効果的な勤務時間の管理方法をわかりやすく解説しています。 こちらから残業ルールBOOKをダウンロードして、自社に最適な管理方法の策定にお役立てください。

1-1. 残業の上限規制が設けられた目的

労働基準法の改正により、月45時間、年間360時間を超える時間外労働をおこなわせることに罰則規定が設けられました。また、今までは上限が設けられていなかった臨時の際に締結する特別条項についても、年間720時間までという上限が設けられ、超過すると罰則の対象となります。。これらの規定は2019年4月から大企業に、1年の猶予を経て2020年4月には中小企業にも適用されています。[注1]

この労働基準法改正の背景には、政府が主導で推進している働き方改革があります。

少子高齢化による労働力不足や長時間労働による労災の増加などの問題を解消するため、労働生産性の向上が求められています。

残業時間に上限を設けることで、ワークライフバランスが改善され、健康被害を防止することに繋がります。

[注1]時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 p2|厚生労働省

1-2.上限を超えた場合の罰則

企業がこの上限を超えて時間外労働をさせた場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。[注2]

罰則規定を設けることで、過度な時間外労働を防ぎ、過労死などを予防する効果が期待されています。

なお、法律の上限に達していなくとも、各事業所で締結した36協定の上限時間を超過すると法律違反となるため、注意しましょう。

[注2]時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 p4|厚生労働省

2. 36協定とは

36協定を締結する労使者

36協定とは、「時間外・休日労働に関する協定届」のことを指します。労働基準法36条で定められた法定労働時間を超える労働や休日労働を従業員におこなわせる場合には、事前に労使間で紙面による協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられているため、36協定とよばれています。

36協定を締結していない場合は、そもそも時間外労働や休日出勤をおこなわせることができないため、勤務時間の上限は、1日8時間、週40時間となります。

3. 適用される企業とされない企業

比較する人労働基準法改正によって、残業時間の上限規制などさまざまなルールが変更になりました。
しかし、残業時間の上限規制は適用される企業と適用されない企業が存在します。

自分の会社が残業時間の上限規制の適用を受けるのかどうかどう判断できるのでしょうか。

関連記事:残業規制について罰則や新たな規制内容を詳しく紹介

3-1. 労働基準法改正の適用を猶予される企業とは?

基本的に労働基準法はすべての労働者に適用されるため、どの企業も改正されたポイントを実践しなければ罰則を受けることになります。
しかし、とくに時間外労働の上限規制に関しては、実態にそぐわないと考えられる業種では適用が2024年4月まで猶予されたり、適用外となったりするものがあります。

たとえば、自動車運転の業務、建設事業、医師、新技術・新商品等の研究開発業務などが例として挙げられるでしょう。[注3]

さらに、年収1,075万円以上の一部の専門職の労働者は「高度プロフェッショナル制度」の対象となり、労働時間規制の適用外となります。[注4]
しかし、そうなると専門職の労働者は際限なく労働しなければならない恐れがあるため、健康確保措置が義務化されます。

年104日の休日の取得が義務化され、労働時間の上限設定や勤務間インターバルなど4つの選択肢から1つを選択できる制度です。

これらに加えて、特別なケースですが国家公務員は労働基準法改正の影響を受けません。
国家公務員は労働基準法の適用を受けず、他の法律に従って労働時間を決められることになります。

[注3]時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 p6|厚生労働省
[注4] 高度プロフェッショナル制度わかりやすい解説|厚生労働省

4. 残業(時間外労働)の上限を超えないための対策

仕事の追われる人

先述の通り、残業時間の上限を超えてしまうと罰則を受けることになります。違法な労働環境の企業であると社会的信用を失うリスクもあるので上限時間を超えないように対策をとりましょう。

4-1. 労働状況の把握

まず、従業員の現在の労働状況を正確に把握しましょう。どの程度残業が発生しているのかだけでなく、残業が発生している要因を解明することが重要です。従業員が残業をおこなっている理由がスキル不足、業務の難易度の不一致である場合はマネジメントを見直す必要があります。

また、残業をしないと上司からの評価を得られなかったり、上司が残業しているために帰りにくいという理由で残業をしているのであれば、社内環境や評価制度を改善する必要があります。

本来残業をする必要がないにもかかわらず、生活費を稼ぐために生活残業をおこなっているという場合には、従業員に対して指導をおこなう必要があるでしょう。

関連記事:残業時間の適切な管理方法を企業が抱える課題と併せて解説

4-2. 残業の削減

残業の理由が判明したら、残業を削減するための対策をおこないましょう。

スキル不足による残業が発生しているのであれば従業員に研修を受けさせることも有効です。

社内環境や評価制度で残業が発生しているのであれば、マネジメント層に対する指導をおこなったり人事評価に関する項目の変更に対応したりする必要があります。

また、残業を申請制にすることも残業の削減に効果的です。申請の手間があることで、残業をしないようにする意識が高まることや、不要な残業を抑止できるため、人件費の削減も期待できます。

関連記事:残業問題とは|残業時間削減に向けた対策・取り組みの注意点まとめ

5.残業の上限規制以外で 改正があった4つのポイント

ポイントを示す女性

最後に、働き方改革関連法の施行前後で時間外労働の上限規制以外に変わったポイントを確認しましょう。

5-1. 年次有給休暇の取得義務化

残業時間の上限規制に加え、労働基準法の改正では年次有給休暇の取得義務化が盛り込まれました。

これは、年間10日以上の有休休暇を付与される従業員に対し、企業は5日以上の有休休暇を取得させなければならないというルールです。[注5]

従業員が自主的に5日以上の有休休暇を取得する場合には問題ありませんが、従業員が取得している有休休暇が5日に満たない場合には企業側が取得させなければなりません。

そのため、企業は年休管理簿を作成・管理し、どの従業員がどの程度の有給休暇を取得しているか把握する必要があります。

企業は従業員に有給休暇を取得させるため、時季指定をしなければなりません。

ただし、時季指定をおこなう場合には従業員の意見をできるだけ取り入れることができるよう努める必要があります。

[注5]年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省

5-2. 労働時間の客観的管理

労働安全衛生法改正によって、労働時間の客観的把握が企業に義務付けられました。

これまでは、裁量労働制やみなし労働時間制が適用される労働者、管理監督者に対しては労働時間の把握が必要ではありませんでした。

とくに管理監督者に対しては、企業側に時間外労働などの割増賃金の支払い義務がないため労働時間の客観的把握の対象外だったのです。

しかし、労働安全衛生法法改正により、高度プロフェッショナル制の労働者を除くすべての労働者の労働時間を客観的に把握することが企業に義務付けられました。[注6]

裁量労働制やみなし労働時間制が適用される労働者、管理監督者を含めたすべての労働者の労働時間を適切に管理しなければなりません。

タイムカードやICカードなどを用いた勤怠管理が必須となったのです。

[注6]時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 p7|厚生労働省

5-3. 同一労働同一賃金の義務化

労働基準法改正により、同一労働同一賃金が義務化されることになりました。[注7]

これまでは正社員と、パート・アルバイトや派遣社員が同じ業務をおこなっていても、待遇に差があることが珍しくありませんでした。

しかし、労働基準法改正後は、労働者に対する待遇についての説明義務が強化されます。

さらに派遣会社に対しては、派遣先労働者との均等・均衡待遇方式か労使協定による待遇決定方式のどちらかによって、待遇の確保を図ることが義務化されました。

[注7]雇用形態に関わらない公正な待遇の確保|厚生労働省

5-4. 月60時間を超える残業の割増賃金率引き上げ

労働基準法改正によって、2023年4月から、月60時間を超える残業をする場合の割増賃金率が引き上げられます。[注8]

大企業では既に適用されている規定の猶予措置が解かれ、大企業・中小企業ともに同じ水準の運用となります。

[注8]月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省

関連記事:残業の割増率について中小企業が気をつけたいことを詳しく紹介

6. 残業時間の上限を超えない仕組み作りが大切

ポイント 黒板

残業時間の上限規制は、労働基準法改正によって大きく変化しました。
とくに企業側には、労働者の残業時間をきちんと管理し、必要であれば医師の診察を受けるよう促すなどの対策が求められます。
これまでは上限がなかっただった36協定の特別条項も、罰則付きで上限が定められています。
労働者の健康を守り、企業活動を滞りなく続けていくためにも、ぜひ残業時間の上限規制の最新ルールを理解し適用するようにしましょう。

残業時間の上限規制をいつでも確認したい方へ

この記事を読まれている方は、「法改正によって定められた残業時間の上限規制を確認しておきたい」という方が多いでしょう。

そのような方のため、いつでも残業時間の上限規制を確認でき、上限規制を超えないための残業管理方法も紹介した資料を無料で配布しております。

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