有給消化が義務化された理由や背景とは?注意点についても解説 |HR NOTE

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有給消化が義務化された理由や背景とは?注意点についても解説

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労働者に付与される有給休暇の消化が、企業に義務付けられました。年間10日以上の有給休暇が与えられる労働者に対し、企業側は最低でも5日間の有給休暇を消化させなければなりません。有給を消化しにくい風土を変えることなどが目的となっているので、労使間で相談しながら有給休暇の消化方法を考えていく必要があります。

1. 有給休暇の義務化とは?

有給休暇の取得義務化とは、有給休暇を取得させることを企業に義務付けたものです。労働者に義務付けられたものではないため、企業が有給休暇を取得させることに積極的に取り組みましょう。

企業に対して罰則もある労働基準法の改正となっているので、企業や労働者は有給休暇の義務化についてしっかり理解しておくことが重要でしょう。

では、有給休暇の取得義務化について解説していきます。

1-1. 最低でも5日の有給休暇の消化が義務

有給休暇の義務化は、年間10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、有給休暇が付与された日(基準日)から1年以内に最低でも5日間分を取得させなければならない決まりです。

たとえば、継続勤務期間が6ヶ月になった時に、10日以上の有給休暇を付与する企業の場合、付与された日から1年以内に最低でも5日間の有給休暇を取得させる必要があります。

ここでの1年間の考え方は、有給休暇が付与されて1年間ということであり、年度ではありません。
また、企業は対象の従業員一人ひとりが有給休暇を取得できているか確認しなければなりません。
続いて対象となる従業員について解説します。

1-2. 有給休暇の5日取得義務化の対象者

有給休暇の5日取得義務化の対象者は有給休暇を年に10日以上付与された全ての従業員です。パート・アルバイト・契約社員・正社員などの雇用形態に関わらず、義務化の対象者となります。

入社後6ヶ月が経過している正社員やフルタイムの契約社員は、10日以上の有給休暇が付与されるため、対象者です。同様に、入社後6ヶ月が経過していて週30時間以上勤務しているパートタイマーも義務化の対象となります。

週所定労働日数が4日以下のパート・アルバイトの従業員には週所定労働日数と継続勤務年数に応じて有給休暇が比例付与されるため、従業員に10日以上有給休暇が付与されるのかどうかを一人ひとり確認する必要があります。

続いて有給休暇を年に10日以上付与される人の条件をわかりやすく解説します。

1-3. 有給休暇を年に10日以上付与される人の条件

有給休暇を年に10日以上付与される人の条件を考えるうえで、まず有給休暇が発生する条件を知っておく必要があります。
そもそも有給休暇が発生する条件は以下の通りです。

  • 雇い入れから6か月以上経過している
  • 全労働日の8割以上出勤している

この条件を満たし、なおかつ年に10日以上有給休暇が付与される従業員は以下の通りです。

色付きの部分が有給休暇が10日以上付与される場合、すなわち有給休暇の5日取得義務の対象となる場合です。
従業員が対象となっているかを確認して適切な有給休暇日数の付与と取得義務を順守しましょう。

2. 有給消化が義務化された理由や背景

有給休暇の消化が義務化されたのにはいくつかの理由があります。企業は努力して有給休暇を取得しやすい雰囲気を作ることが重要です。

では、有給休暇の取得が義務化された背景を見ていきましょう。

2-1. 有給休暇の取得状況が正確に把握されていない

有給休暇の義務化の背景にあるのは、取得状況が正確に把握されてない点です。

本来は企業も労働者も、各自が何日の有給休暇を付与されていて、いつまでに消化しなければならないか把握しておく必要があります。とくに企業側は、労働者の不利益にならないよう有給休暇が消滅する前に有給を取得させなければなりません。

しかし、実際には、多くの労働者は自分がどのくらいの有給休暇を持っているのか把握するのが困難です。

企業の中にも、各労働者がどの程度有給を消化しているのか把握していないところがあります。そのため、罰則付きで有給休暇の消化を義務化することで、有給休暇の取得を促進する目的があるのです。

2-2. 人材不足の深刻化によって有給休暇が取得されていない

国内の人材不足の深刻化により、有給休暇の取得が難しくなっている労働者は少なくありません。有給休暇を取得せず働き続けることになれば、従業員が心身ともに疲弊してしまう恐れもあり、健康を害することにつながりかねません。

有給休暇の消化を義務化することで労働者の働きすぎをある程度防止することができるようになりました。

2-3. 有給休暇を取得しにくい風土である

日本では、有給休暇を取得することに対してネガティブなイメージを持つ人がいます。他の人に迷惑をかけるのではないか、有給休暇を取得したらやる気のない社員と思われるのではないか、などと心配してしまう人がいるようです。

しかし、有給休暇は従業員が取得するために設けられたものであり、取得した従業員に不利益があってはいけません。企業は従業員が抱く有給休暇取得に関しての悩みや不安をできるだけ取り除くような環境整備を行いましょう。

また実際には、従業員の有給休暇取得はさまざまな利益につながると考えられます。適度にリフレッシュすることで、従業員のやる気向上や業務の効率化、利益率の向上が見込めるのです。

したがって、有給休暇には企業と社員双方にメリットがあるため、企業は取得推進の環境づくりを行いましょう。

3. 企業側が取るべき対応とは

有給休暇の消化の義務化に対し、企業側は真摯に対応し、従業員の有給休暇の取得状況を把握したうえで適切に取得を促すべきです。

企業側が取るべき対応は大きく分けて2つあります。
企業側が有給休暇消化の義務化に対応する方法を見ていきましょう。

3-1. 時季指定をおこなう

企業が行う対策の1つ目は、「時季指定」です。

時季指定とは、企業側が日付を指定して従業員に有給休暇を取得させる方法です。時季指定をする際には、あらかじめ就業規則に「時季指定の対象となる労働者の範囲」と「時季指定の方法等」を記載しておく必要があります。

時季指定をすることで制度上、確実に有給休暇を5日取得させることができます。
ただし、従業員には自由に休暇を取る権利が与えられているので、時季指定は期限までに5日間の休暇取得が完了しないと判断される場合に限られます。

従業員の自由度が高いこと、労使間の合意が必要ないことなどのメリットがある一方、場合によっては期限ぎりぎりになって無理やり5日間の有給休暇を取得させなければならないケースもあるため、注意が必要です。

3-2. 計画年休制度の導入

時季指定方式に対して、労使協定の締結によって運用されるのが計画年休制度です。いくつかのケースがありますが、わかりやすいのは会社ごと、あるいは事業所ごとに一斉に有給休暇を取得させるケースです。

大型連休に合わせて有給休暇を取得させることで、より長い休暇にすることも可能となります。業務の引継ぎなども不要で、他の社員に気を遣って休めないなどといったこともありません。

計画年休は企業全体、グループ・班ごと・個人いずれの方法でも取り入れることができます。

3-3. 有給休暇管理簿の作成と保管

企業は、労働者一人ひとりがどの程度有給休暇を取得しているかを把握するため、年10日以上の有給休暇が付与されている労働者ごとに、年次有給休暇管理簿を作成しなければなりません。管理簿の作成にあたって、基準日や取得状況、取得した時季の3つを記載しなければなりません。

さらに、この管理簿は3年間保存することが義務付けられています。管理簿を作成する上で、担当者の業務が増えてしまうことも起きるでしょう。

紙やエクセルで管理している場合、従業員一人ひとりに作成が必要なので、管理や保管業務が煩雑になってしまいます。そういった場合は、勤怠管理システムを導入するなどして業務を効率化できないかどうか見直してみると良いでしょう。

4. 有給休暇消化の義務化には罰則がある

有給休暇の消化の義務化の対象者に対し、取得を認めない場合、労働基準法違反となり雇用主に対して罰則が適用されます。対象者一人に対し30万円の罰金が科されるので、罰則の対象者が増えれば増えるほど大きな負担となるでしょう。

ちなみに、有給休暇の消化をさせないための対策も違法行為とみなされる恐れがあります。たとえばゴールデンウイークやお盆休みを減らして労働日とし、そこで有給休暇を消化させて実質休暇でなくすといった方法は、罰則の対象となる恐れがあるので注意しましょう。

5. 有給消化の取得義務化に取り組み、企業のイメージアップにつなげよう

有給休暇の消化が義務化となり、企業が行うべきことは増えました。

管理簿の作成・保管をして従業員の有給休暇付与日数と取得日数を定期的に把握しておかなければなりません。管理方法にお悩みがある場合は、有給休暇を含む勤怠管理の方法を見直してみましょう。

また、企業には一定の条件を満たした従業員に有給休暇を取得させる義務があります。しっかりと有給休暇を取得させることにより、企業イメージのアップや従業員のモチベーションアップにもつながります。

ぜひ有給休暇の取得義務化に取り組み、従業員の働きやすい労働環境整備に努めましょう。

 

【監修者】涌井好文(社会保険労務士)

涌井社会保険労務士事務所代表。就職氷河期に大学を卒業し、非正規を経験したことで、労働者を取り巻く雇用環境に興味を持ち、社会保険労務士の資格を取得。 その後、平成26年に社会保険労務士として開業登録し、現在は従来の社会保険労務士の業務だけでなく、インターネット上でも活発に活動を行っている。

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