人事制度設計とは、企業が従業員の給与や昇給、評価の仕組みを定めることです。人事制度を適切に設計できれば、効率よく人材育成や人材配置を実施し、組織の成長につなげることができます。本記事では、人事制度設計の目的や進め方、注意点、ポイントについて解説します。また、人事制度の設計を見直すべきタイミングについても紹介します。
目次
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当サイトは、そんな人事担当者に向けて「課題別!システムを使用した人事評価の課題解決BOOK」を無料配布しています。
資料では、人事評価の仕組みや手法の種類など基礎的な解説から、実際に企業が抱えている、よくある人事評価の課題別に解決方法をわかりやすく解説しています。
「人事評価の制度を見直したい」「人事評価の課題を解決したい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 人事制度設計とは?
人事制度設計とは、給与や昇給、評価などの会社における仕組みを定めることです。人事制度設計は複雑で難易度が高いと感じるかもしれません。しかし、基本的なポイントを押さえれば、自社に合った人事制度を構築することができます。ここでは、まず人事制度とは何かを説明したうえで、人事制度設計の目的について詳しく紹介します。
1-1. 人事制度とは?
人事制度とは、組織で働く従業員を効率よく管理するための仕組みを指します。人事制度には、給与規程だけでなく、従業員が快適に働ける環境を整えるための福利厚生なども含まれます。人事制度がなければ、内部統制がとれず、組織として機能しなくなり、ミスやトラブルが増加して生産性の低下を招きます。そのため、自社の組織目標を達成するため、適切な人事制度を設計することが不可欠です。
1-2. 人事制度設計の目的
人事制度設計の目的は、企業の「ヒト」に関するルールや仕組みを整備することです。人事制度は、単に従業員の管理や報酬の差別化にとどまらず、企業のビジョンや戦略を実行するための推進力として機能します。効果的な人事制度は、企業の方向性に合わせた組織の在り方や、望ましい行動を促すための基盤です。つまり、企業の目標達成をサポートし、組織全体のパフォーマンスを引き上げることが、人事制度設計の目的といえます。
2. 人事制度設計で基本となる制度の種類
人事制度設計で基本となる制度には、以下の3つの種類があります。
- 等級制度
- 評価制度
- 報酬制度
ここでは、それぞれの制度の内容について詳しく紹介します。
2-1. 等級制度
等級制度は、社員の役割や職務に応じてランクを決定する仕組みで、人事制度の基盤を形成します。主に次の3つの形式があり、それぞれ業務内容や責任に基づいて評価するのが特徴です。
形式 |
内容 |
職能資格制度 |
社員の能力に基づいて等級を決定し、給与や昇進を能力次第で決める制度 |
職務等級制度 |
社員の業務内容や責任度に基づき等級を決定し、同一労働・同一賃金を実現しやすい制度 |
役割等級制度 |
社員の能力ではなく自社が求める役割の達成度で等級を決める制度 |
等級制度を設計することで、ランクごとに求められるスキルや成果を明確にすることができます。また、従業員にとっても、自分に期待される役割が明らかになり、目の前の仕事に取り組みやすくなります。
2-2. 評価制度
評価制度は、社員の能力や業務遂行度、企業への貢献度などに基づいて評価する仕組みです。評価制度を設計することで、従業員の成果を可視化し、効率よく人材育成や人材配置ができるようになります。これにより、組織の成長が促進されます。また、評価制度が整備されることで、従業員に支給する報酬・手当も設計しやすくなります。
2-3. 報酬制度
報酬制度は、社員の業績や企業への貢献度に応じて報酬を設定する仕組みです。報酬は、給与や賞与、手当、福利厚生などの金銭的報酬と、役職や権限、裁量権などの非金銭的報酬に分けられます。等級や評価に基づき報酬制度を適切に設計することで、従業員のモチベーションアップにつなげることが可能です。ただし、経営理念と、評価・報酬制度に乖離があると、従業員の不信感が高まる可能性もあるので、自社の目的やビジョンにあわせて制度を設計するようにしましょう。
3. 人事制度設計に取り入れたい注目の制度
人事制度は時代や社会の変化に応じてトレンドが変わっていきます。ここでは、人事制度設計に取り入れたい今注目されている制度について詳しく紹介します。
3-1. MBO(目標管理制度)
MBO(Management by Objectives)は、日本語で訳すと「目標管理制度」になります。つまり、MBOとは、組織と従業員の理想的な姿を擦り合わせたうえで、目標を設定し、その進捗を管理する制度のことです。MBOのポイントは、従業員自身で目標設定をおこなうことです。会社から一方的に押し付けられた目標でなく、自分で決めた目標であれば、主体性を持って仕事に取り組めるようになり、生産性やモチベーションの向上が期待できます。
関連記事:MBO(目標管理制度)とは?実施手順や注意点を詳しく解説
3-2. 1on1ミーティング
1on1ミーティングとは、定期的に上司と部下が1対1で話し合う会議のことです。普段チームで実施する会議だと発言できない従業員もいるかもしれません。しかし、1on1ミーティングを導入し、信頼できる上司とのマンツーマンの会議であれば、部下は自分の考えていることや、感じていることをオープンに発言しやすくなります。1on1ミーティングでは、上司が簡単に課題に対する答えを教えてしまうと、部下の自主性の育成につながりません。そのため、部下の成長を促進できるよう、部下の意見を尊重し、傾聴するスキルが求められます。
関連記事:1on1ミーティングとは?メリット・デメリットや効果的な実施方法をわかりやすく解説!
3-3. コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、仕事で高い成果を出している人材に共通する行動特性(コンピテンシー)を基準に評価を実施する制度のことです。年功序列制度が崩壊しつつある現代において、担当者の主観で判断されにくい成果や能力で判断する評価制度が求められています。
コンピテンシー評価を導入すれば、ハイパフォーマーと比較して評価ができるため、何が不足しているのかを客観的に把握することが可能です。評価結果を今後の行動につなげることで、従業員のモチベーションを高めて、効率よく人材育成をおこなうことができます。
関連記事:コンピテンシー評価とは?導入するメリット・デメリットを解説
3-4. 360度評価
360度評価とは、多面評価ともよばれ、直属の上司や人事担当者だけでなく、同期や部下など複数人の評価者で多角的に評価を実施する制度のことです。近年では多様な働き方が推進されており、従業員の価値観も多様化しています。このような時代において、公平で客観的な評価を実現するためには、あらゆる立場の人間が評価する仕組みを採用するのが効果的です。360度評価であれば、さまざまな人からフィードバックをもらえるので、自分や上司だけでは気づけなかった課題や解決策を見つけ、今後の成長に活かすことができます。
関連記事:360度評価とは?メリット・デメリットや評価方法を紹介
3-5. ノーレイティング
ノーレイティングとは、従業員のランク付けを廃止して、上司などと頻繁にミーティングを実施し、目標管理を通じて評価する仕組みのことです。近年のビジネス市場の変化は目まぐるしく、半期や1年ごとに設定する評価体系では通用しなくなってきています。ノーレイティングを導入し、面談などにより、リアルタイムで評価と改善を繰り返すことで、環境変化に柔軟に対応しながら従業員の成長につなげることが可能です。また、相対評価によるモチベーション低下を防ぎ、主体性を高めることで、創造性の向上にもつながります。
関連記事:ノーレイティングとは?注目される背景や導入・評価方法、日本企業の事例紹介
4. 人事制度設計の手順
人事制度設計の大まかな手順を理解しておくことで、スムーズに人事制度を設計することができるようになります。ここでは、人事制度設計のステップについて詳しく紹介します。
4-1. 現状分析
人事制度設計は、現状分析から始めます。現在の人事制度の課題を明確にするため、自社の企業理念や経営戦略と照らし合わせて、どの部分に問題があるかを探りましょう。人件費や組織・従業員情報などの人事データを分析することで、主観を排除し、客観的に現状を分析することが可能です。また、従業員にアンケートやヒアリングを実施すると、現場の意見を取り入れ、実効性のある改善策を策定することができるようになります。現状分析を効率化するため、タレントマネジメントシステムなどのITツールを導入してみるのも効果的です。
関連記事:タレントマネジメントシステムとは?機能一覧やメリット・デメリット、比較ポイントを解説!
4-2. 方針策定
課題を整理した後はそれを解決するため、人事制度の方針を策定します。どのような人材を育てる必要があるのか、どのような組織を目指すべきかといった、人事制度の方針を明確にすることで、その目標に向かって組織が一丸となって取り組むことができるようになります。
4-3. 制度設計
人事制度の方針に基づいて、具体的な等級制度、評価制度、報酬制度を設計しましょう。設計にあたっては、従業員が納得感や公平性を感じられるよう配慮することが重要です。設計が完了したら、実際の運用を見越してシミュレーションし、制度の効果や問題点を事前に確認して改善をおこないましょう。
4-4. 社内への周知
新たな人事制度を運用するシミュレーションができたら、社内に周知をおこないましょう。どのような点が変更になったのか、どのようなことに注意すべきかを、従業員に周知し、理解してもらうことで、スムーズに人事制度を導入し、運用することができます。従業員に正しく新しい人事制度の内容を理解してもらうため、研修やセミナーを設けるのも一つの手です。
4-5. 制度の導入と定着
従業員に周知したら、新たな人事制度を実際に導入・運用してみましょう。新しい人事制度が社内にきちんと定着するよう、定期的に社内研修を実施するなど、制度の理解と活用を促進しましょう。また、アンケートやヒアリングを通じて効果を測定し、必要に応じて改善策を講じることが大切です。これにより、制度が効果的に機能し、従業員の満足度も高まります。
5. 人事制度の設計を見直すタイミング
時代や社会の移り変わりとともに、人事制度も変更することが求められます。ここでは、人事制度の設計を見直すタイミングについて詳しく紹介します。
5-1. 内部環境の変化
組織に大きな変革が生じたり、従業員数が大きく増加したりするなど、自社の内部環境に変化が生じた場合に、人事制度設計の見直しが求められます。たとえば、業務や職種が変わった場合、評価制度を見直さなければ、適切に従業員を評価することができません。また、従業員数が増えた場合、会社に求められる役割も増え、等級を見直す必要があります。このように、自社の内部環境に変化が生じた場合、人事制度設計を見直してみましょう。
5-2. 外部環境の変化
取引先や消費者のニーズが変化したり、法改正が発生したりするなど、外部環境に変化が生じた場合も、人事制度設計の見直しが必要になります。たとえば、近年の投資家は、人的資本の開示を求めるようになっています。人材育成の制度を見直し、効果的な施策を実施して外部に開示することで、ステークホルダーからの印象を良くし、経営を円滑に進めることが可能になります。このように、内部環境だけでなく、外部環境の変化にも注目して、適切なタイミングで人事制度設計を見直しましょう。
6. 人事制度設計の注意点やポイント
人事制度設計の際は、気を付けるべき点がいくつかあります。ここでは、人事制度設計の注意点やポイントについて詳しく紹介します。
6-1. 従業員の意見を反映させる
従業員に配慮せず、組織の成長だけを考えた人事制度は、社内に定着せず上手く機能しません。アンケートやヒアリングを通じて、現場の意見も汲み取り、何が求められているのかを人事制度に反映させることで、従業員が納得いく人事制度を設計することが可能です。これにより、従業員は主体的に行動するようになり、パフォーマンスや生産性の向上が期待できます。
6-2. できる限りシンプルな設計を心掛ける
独自性や公平性などを重視し過ぎるあまり、人事制度が複雑になってしまうケースもよくあります。人事制度は従業員が理解できなければ、上手く機能しません。また、運用も難しくなり、適切に管理できない可能性もあります。そのため、できる限りシンプルな設計を心掛けることが大切です。また、新たな人事制度の運用後は、理解度を従業員にアンケートなどを通してチェックし、改善につなげることも推奨されます。
6-3. 法律上の問題はないかチェックする
人事制度設計を見直す際は、労働基準法や労働契約法などの法律に違反していないかチェックすることも大切です。たとえば、多様な働き方を推進するため、裁量労働制やフレックスタイム制などを導入しようと人事制度を設計したとしても、法律に違反している内容だと、懲役や罰金といた罰則が課され、社会的信用を損なう恐れもあります。人事制度設計が完了したら、社会保険労務士や弁護士などの第三者の専門家にも相談して、法的な問題がないか確認することが重要です。
関連記事:労働基準法とは?法律のルールや違反した際の罰則などの要点をわかりやすく解説!
7. 人事制度設計が困難な場合の対応の仕方
自社にノウハウが不足しているために、人事制度を設計するのが困難な場合もあるかもしれません。ここでは、人事制度設計が困難な場合の対応の仕方について詳しく紹介します。
7-1. 目的を曖昧なままにしない
まずは人事制度設計の目的を明確にすることが重要です。目的が曖昧なままだと、どのような制度にすべきか方針が定まりません。場合によっては、経営理念や経営目標と乖離した人事制度を設計してしまい、従業員からの不満につながる可能性もあります。人事制度設計の目的を明確化することで、新たに必要となる制度や見直しが必要になる制度も具体化され、スムーズに人事制度を設計することが可能です。
7-2. 外部コンサルや専門家に相談する
自社で人事制度設計が困難な場合、外部の人事コンサルタントや、社会保険労務士・弁護士などの専門家に依頼や相談するのも一つの手です。外部に人事制度設計を委託することで、専門的な観点から自社のニーズにあった人事制度を設計してもらうことができます。また、人事担当者の業務負担も削減することが可能です。ただし、想定以上にコストがかかったり、ノウハウが蓄積できなったりする可能性もあるので、外部に依頼する場合は慎重に検討しましょう。
7-3. 研修やセミナーを受講する
効果的に人事制度を設計するため、外部に依頼するだけでなく、自社の人材を育成する方法もあります。まずは人事制度設計の担当者を定めます。その担当者が不足している知識・スキルに応じた研修やセミナーを探し、受講してもらうことで育成を実施しましょう。従業員を育成することで、人事制度設計のノウハウも自社に蓄積することができるようになります。ただし、従業員の負担が大きくなる恐れもあるため、手当を支給したり、研修手段を複数用意したりするなど、配慮やサポート体制を強化することが大切です。
8. 人事制度設計の進め方を理解して効率よく組織の成長を目指そう!
効果的な人事制度設計を実施するためには、内部環境や外部環境を分析し、現状の課題を洗い出すことが大切です。また、経営理念や経営目標を確認し、それにあわせた人事制度を設計することで、一貫性のある人事制度設計が可能になります。人事制度が上手く機能するためには、従業員の理解が不可欠です。人事制度設計が完了したら、従業員に周知し、定期的に見直しもおこないましょう。
人事評価は、従業員のモチベーションや生産性に直結するため、正しく制度化され運用されていることが欠かせません。労働人口の減少が問題視される昨今では、優秀な人材を採用し定着させること、従業員エンゲージメントを高めることが、企業の成長に繋がるためです。
しかしながら「工数がかかる割には、人事評価をうまく制度化できていない」「制度自体はあるけれど、評価結果を活かせていない」」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当サイトは、そんな人事担当者に向けて「課題別!システムを使用した人事評価の課題解決BOOK」を無料配布しています。
資料では、人事評価の仕組みや手法の種類など基礎的な解説から、実際に企業が抱えている、よくある人事評価の課題別に解決方法をわかりやすく解説しています。
「人事評価の制度を見直したい」「人事評価の課題を解決したい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。