現在日本は、高齢者の全人口を占める割合が世界でもトップクラスとなっており、医療費は年々高騰しています。健康保険料が高くなることで、負担を感じている事業所も多いでしょう。
そのため、社会保険の対象外である非正規雇用で労働力を賄っている企業も増加してきてました。そこで今回は、社会保険の加入を選択できる任意適用事業所とはどのようなものなのか、手続き方法などを詳しく解説します。
関連記事:社会保険とは?代表的な4つの保険と今さら聞けない基礎知識
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の手続きに関していつでも確認できるガイドブックが欲しい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 社会保険の任意適用事業所とは?強制適用事業所との違いを紹介
社会保険の適用事業所は、強制適用事業所と任意適用事業所の2つに分けられます。ここでは、2つの違いについて確認しておきましょう。
1-1. 強制適用事業所
強制適用事業所とは、社会保険への加入が強制される事業所のことです。株式会社などの法人化している事業所は、従業員の人数に関係なく強制適用事業所となります。また、農林水産業など一部の事業を除き、常に5人以上の従業員を雇用している個人事業主も強制適用事業所となり、社会保険に加入しなければなりません。
強制適用事業所において以下のような従業員を雇用する場合は、社会保険に加入させる必要があります。
- フルタイムで働く従業員
- 週所定労働時間・月所定労働日数がフルタイムで働く人の4分の3以上の従業員
また、パートやアルバイトなどの短時間勤務の従業員については、以下の条件を満たす場合に社会保険に加入させなければなりません。
- 従業員数101人以上の企業で働いている
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生でない
さらに2024年10月には社会保険の適用範囲が拡大され、従業員数51人以上の企業で働くパートやアルバイトも加入対象となります。
1-2. 任意適用事業所
任意適用事業所とは、社会保険に加入するかどうかを自由に選択できる事業所のことです。美容院や会計事務所など、一部の業種の個人事業主は、任意適用事業所に該当します。
任意適用事業所の場合は社会保険に加入する義務はありませんが、従業員の半数以上の同意があるときは、手続きをおこなうことで社会保険に加入することも可能です。加入する場合、強制適用事業所と同様の条件を満たす従業員を社会保険に加入させる必要があります。
2. 任意適用事業所でも社会保険に加入すべき?
前述の通り、任意適用事業所であれば、無理に社会保険に加入する必要はありません。社会保険に加入しなければ事業主は保険料を折半する必要がないので、出費を抑えられるなどのメリットがあります。
しかしその場合、従業員は国民健康保険や国民年金に原則として加入しなければなりません。従業員の負担が多くなり、福利厚生が充実していないということで、人材を確保しにくいというデメリットが生じます。
今後もさらなる事業展開をしていこうとする企業なら、社員の補充が必要となってくるでしょう。求職者は保険料を安く抑えられるような職場、すなわち福利厚生が充実しているところを探すのではないでしょうか。社会保険を適用している事業所へ、求職者が流れてしまうことも増えるかもしれません。
一方、社会保険に加入する場合は、従業員の健康保険料の半額を支払う必要があります。負担する保険料を抑えたい場合は、業種別で結成されている健康保険組合に加入するとよいでしょう。協会けんぽに加入するケースが多いものの、業種別の組合の場合だと協会けんぽよりも保険料を3割ほど少なくすることができるので、事業主の負担を減らすことができます。
したがって将来性を考える場合には、社会保険に加入する方が望ましいでしょう。
関連記事:社会保険の加入条件とは|保険の種類別に条件を詳しくご紹介
3. 任意適用事業所が社会保険に加入するための手続き
任意適用事業所が社会保険に加入するためには、まず従業員の意見を聞かなければなりません。従業員全体の半数以上の同意を得られたら年金事務所に申請の手続きをおこなうことができ、そのうえで厚生労働大臣の認可を得られれば加入できます。
任意適用を受ける際は、事業所を管轄している年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書」を提出しなければなりません。事業所の名称や所在地などを正しく記入し、提出しましょう。
3-1. 添付書類
任意適用申請書と一緒に、以下の書類を提出する必要があります。
- 任意適用同意書
- 事業主世帯全員の住民票原本
- 公租公課の領収書
任意適用同意書とは、従業員の半数以上の同意を得たことを証明する書類です。住民票原本は、個人番号の記載がないものを準備しましょう。公租公課の領収書は、コピーでも問題ありません。
関連記事:社会保険の手続方法|社員雇用の際に必要な書類や手順などをご紹介
3-2. 申請方法
申請方法としては、窓口への持参、郵送、電子申請があります。電子申請であれば、わざわざ窓口へ出向く必要がなくなるため、手間や交通費を削減できます。24時間365日いつでも申請できるため、スムーズに手続きを進められるでしょう。
4. 任意適用事業所が社会保険に加入するメリット
任意適用事業所が社会保険に加入することには、以下のようなメリットがあります。
4-1. 健康保険に加入するメリット
国民健康保険を適用している事業所で働くと、従業員が家庭を築きにくくなるケースもあります。なぜなら経済的負担が大きくなるからです。国民健康保険には扶養という概念がないため、家族単位で加入することができません。個人単位でカウントされます。
一方で社会保険の場合、一定の条件を満たす家族は扶養に入ることが可能です。アルバイトなどで一定以上の所得がある場合を除いて、家族単位で加入することができ、さらに保険料を事業主と折半することになるので、従業員の負担が少なくなります。
従業員にとってのメリットが大きくなれば、企業の魅力向上につながるため、人材確保もしやすくなるでしょう。
4-2. 厚生年金に加入するメリット
厚生年金に加入すると、国民年金よりも支給される金額が多くなります。さらに配偶者は保険料を納付しなくても国民年金の恩恵を受けることができます。
また万が一、被保険者が亡くなってしまった場合、配偶者や子以外に親や祖父母まで遺族年金が支給されるなど、国民年金よりも保障の範囲が広くなります。
4-3. 労災保険に加入するメリット
社会保険に加入していない場合、従業員が不幸にも勤務時間や通勤しているときに重大な事故に巻き込まれた際には、使用者責任として事業主が治療費や賃金などを支払わなければなりません。しかし労災保険に加入していると費用の全額を国が肩代わりしてくれるので事業主の負担が減ります。
このように、各種社会保険に加入するメリットは多く、採用においてもプラスに働く可能性があります。
ただし、従業員を社会保険に入れる際の手続き(資格取得届の提出)は従業員分の書類を集める必要があるため工数が多く、さらに提出期限が決められているため注意が必要です。
当サイトでは、上述した社会保険手続きの内容や、手続きの際に気を付けるポイントなどを解説した資料を無料で配布しております。
社会保険手続きに関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「社会保険手続きの教科書」をダウンロードしてご確認ください。
5. 任意適用事業所も社会保険への加入を検討しよう!
今回は、任意適用事業所の概要や、社会保険に加入するメリットを紹介しました。今後従業員を増やすことを考えているなら、任意適用事業所も社会保険への加入を考えてみるとよいでしょう。従業員の半数以上の同意があれば社会保険への加入申請ができます。優秀な人材を確保するためにも、手続きの準備を進めましょう。
>>編集部オススメの記事はこちら<<
▶【社会保険】手続きで迷わない手順マニュアル!
「社会保険」を手続きする流れについて、分かりやすくご紹介します。
▶『社会保険』に含まれる「健康保険・厚生年金」を徹底解説!
社会保険の中の「健康保険」と「厚生年金保険」についてご紹介します
▶『社会保険』に含まれる「労働保険」を徹底解説!
社会保険に含まれる「労働保険」についてご紹介します
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の手続きに関していつでも確認できるガイドブックが欲しい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。