社会保険に加入している社員が退職するときには、正しい方法で手続きを進めましょう。
社員の退職にあたって必要となる社会保険手続きの種類は、健康保険および介護保険、厚生年金保険、雇用保険の3点です。本記事では、社員が退職するときにおこなうべき社会保険手続きの内容を紹介します。
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目次
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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1. 退職時に会社側がおこなうべき作業の流れ
社員が退職するときは、さまざまな作業をおこなう必要があります。ここでは、一般的な作業の流れを紹介しますのでチェックしておきましょう。
1-1. 退職届を受け取る
退職を希望する社員には、退職届を提出してもらいましょう。法的な義務ではありませんが、書面がないと記録を残せず、後でトラブルが発生する可能性もあるからです。
就業規則にて定められた期限、または民法上の規定である14日前までに提出してもらう必要があります。期限までに退職の意思が伝えられた場合、会社側は退職を拒否することはできません。以下の手続きを進めるようにしましょう。
1-2. 新しい担当者を決める
退職する社員に代わり、業務の新しい担当者を決める必要があります。退職する社員には、新しい担当者へ業務を引き継いでもらいましょう。
口頭での説明も重要ですが、マニュアルを作成しておくと抜け漏れを防げるだけではなく、今後の引き継ぎの際にも役立ちます。取引先への挨拶なども必要です。
1-3. 健康保険証を回収する
退職する社員は健康保険の資格がなくなるため、健康保険証を返却してもらいましょう。会社側は、健康保険証を回収したのち、社員の退職日の翌日から5日以内に年金事務所へ返却する必要があります。扶養家族がいる場合は、家族分の健康保険証も回収しなければなりません。
健康保険証と一緒に、社員証や名刺などの貸与品も回収しましょう。
1-4. 社会保険の資格喪失手続きをおこなう
健康保険や厚生年金に関する資格の喪失手続きを進める必要があります。年金事務所へ「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」を提出し、回収した健康保険証を返却しましょう。詳しい手続き方法は、後述します。
1-5. 雇用保険の資格喪失手続きをおこなう
雇用保険についても資格喪失手続きをおこなわなければなりません。手続きは、事業所を管轄するハローワークにておこないます。退職日の翌々日から10以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出しましょう。手続きの詳細は、後ほど詳しく解説します。
1-6. 所得税・住民税に関する手続きをおこなう
所得税を記載した源泉徴収票の発行が必要です。また、住民税を給与から天引きしている場合は、社員が居住する市町村へ「給与支払報告に係る給与所得異動届書」を提出します。詳しい手続き方法は後述します。
2. 社員が退職したときの健康保険の手続き
ここでは、健康保険に関する手続き方法や必要書類について解説します。
2-1. 手続き期限・手続き先
社員が退職したときには、事業主は退職日翌日から5日以内に、管轄の年金事務所にて健康保険の手続きをおこないます。
事業所が健康保険組合に加入しているときには、健康保険と介護保険については健康保険組合へ、厚生年金保険については管轄の年金事務所に提出することになります。協会けんぽの場合であれば、まとめて管轄の年金事務所に提出するのみで手続きを済ませることが可能です。
被保険者資格喪失届の資格喪失日とは、退職日の翌日を指します。退職当日までは資格を保有していると考え、翌日の日付を記載しましょう。
2-2. 必要書類
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を作成して提出する必要があります。また、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届には、本人と扶養家族の健康保険証を添付しなければならないので注意が必要です。
退職者から健康保険証を回収しなかった場合、退職者が医療機関でこれを使用してしまい、あとから医療費を請求されるなどのトラブルが起こることがあります。
2-3. 健康保険等喪失連絡票の発行
退職者が希望したときには、健康保険等喪失連絡票を発行しましょう。
この書類は、協会けんぽ被保険者の資格喪失を証明するためのものです。退職者が今後、国民健康保険に加入するにあたっては、保険の二重加入を防ぐために健康保険等喪失連絡票の提示を求められることがあります。
なお、社員の退職日までに2カ月以上継続して保険に入っていた場合には、その後2年間まで健康保険を任意継続することもできます。
ただし、任意継続の際の保険料は社員の全額負担となります。また、任意継続の手続きは社員本人が進めなければなりません。企業側がこれらの手続きについてサポートする義務はありませんが、任意継続ができるという説明を退職者にしておくとよいでしょう。
任意継続の場合も、もとの健康保険証は退職時に回収します。退職者が任意継続の手続きを済ませると、新たな健康保険証が退職者宛てに発行されます。
関連記事:社会保険喪失証明書とは?発行方法や記載事項について詳しく解説
3. 社員が退職したときの雇用保険の手続き
社員が退職したときには、健康保険だけではなく雇用保険に関する手続きも必要となります。手続き期限や手続き先は以下の通りです。
3-1. 手続き期限・手続き先
雇用保険の手続きは、社員の退職後10日以内に管轄のハローワークでおこないます。
3-2. 必要書類
雇用保険被保険者資格喪失届と、雇用保険被保険者離職証明書を提出しましょう。
雇用保険被保険者離職証明書
雇用保険被保険者離職証明書は、社員が失業給付を受ける際に必要となる書類です。記載されている金額や労働期間によって受け取れる金額や手当を受けられる期間が変わってくるため、正確に記載しましょう。書類はハローワークで入手でき、3枚つづりの複写式となっています。
書類には社員が記名する欄があるため、退職手続きの際に必ず記入してもらいましょう。社員が出社しないまま退職するなどの事情があり自署してもらえなかったときには、理由を記載したうえで事業主が記名をおこないます。
雇用保険被保険者離職証明書の賃金支払状況の欄には、原則として12カ月分の給与について記入します。この項目は、離職前の2年間の賃金支払基礎日数が11日以上となる月が対象です。
社員が退職した日によっては、最終の支払い給与額が確定していないこともあるものです。この場合には最終給与を未計算としたうえで提出しましょう。
社員がすぐに別の就職先に就業するなどの事情で離職票が必要ないときには、雇用保険被保険者離職証明書も不要となります。社員が退職する際には、離職票が必要かどうかをあらかじめ社員に対して確認しておくとよいでしょう。
ただし、退職する社員が59歳以上の場合には、必ず離職票を交付するよう義務づけられています。
雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者資格喪失届は、被保険者資格要件がなくなったときに提出します。退職時のほか、労働条件の変更によって保険加入要件を欠くことになったときや死亡などによって被保険者でなくなったときにも提出が必要です。
この書類の資格喪失日の欄には健康保険の書類と同じように、退職日の翌日の日付を記入します。
このように、社員が退職する際は、準備しなければならない書類がいくつかあります。しかし、それぞれの書類をどこで入手して、どこに提出すべきなのかがわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。当サイトでは、社員が退職するなどして社会保険の資格喪失をする場合に企業がすべき対応を一冊にまとめた資料を無料でお配りしています。
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4. 社員が退職したときの所得税・住民税の手続き
社員が退職するときは所得税や住民税に関する手続きも必要です。
4-1. 所得税に関する手続き
所得税に関する手続きとしては、源泉徴収票の発行が挙げられます。源泉徴収票には退職する年に納税した所得税を記載して、社員へ交付しなければなりません。退職後1カ月以内に交付する義務があるため、忘れないように注意しましょう。
源泉徴収票には、所得税だけではなく、退職日までに支払った給与や賞与の金額、控除した社会保険料などを記載する必要があります。
4-2. 住民税に関する手続き
住民税を給与から天引きしている場合は、別途手続きが必要です。社員が居住する市町村へ「給与支払報告に係る給与所得異動届書」を提出します。退職の翌日から10日以内に提出しなければなりません。
提出が遅れると、会社へ督促状が送られてくるケースもあるため早めに対応しましょう。
5. 退職時に渡すべき社会保険関係の書類
社員が退職する際には離職票を必ず渡しましょう。また、必要に応じて健康保険被保険者資格喪失確認通知書を発行することもあります。
以下、退職時に発行するそれぞれの書類について詳しく確認していきましょう。
5-1. 離職票
離職票には、雇用保険被保険者離職票と、雇用保険被保険者離職証明書の2種類があります。
雇用保険被保険者離職票は、社員に雇用保険資格がなくなったことを通知するための書類です。雇用保険被保険者離職証明書は、退職手続きのなかで本人が確認し自署した書類の複写となります。
社員は退職後に、この2枚の書類を使ってハローワークで雇用保険給付の手続きをするため忘れずに交付しましょう。退職者がより早く給付を受けられるよう、速やかに処理をすることが肝心です。
5-2. 健康保険被保険者資格喪失確認通知書
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を処理すると、健康保険被保険者資格喪失確認通知書を受け取れます。
退職者がその後、国民健康保険に加入する場合の手続きには、健康保険被保険者資格喪失確認通知書を求められることがあります。社員から請求があったときには、書類のコピーを渡しましょう。
5-3. 年金手帳
保険関係の書類とともに渡す書類として、預かっていた年金手帳が挙げられます。
年金手帳は、国民年金の種別変更の際に必要です。退職者は転職先で年金手帳の提出を求められることになるので、忘れずに返却しておきましょう。
5-4. 雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は本人に交付することがほとんどですが、企業が保管しているケースもあります。雇用保険被保険者証を企業側で保管していたときには、退職時に社員に返却しましょう。
5-5. 源泉徴収票
社員が退職するときには必ず源泉徴収票を作成して交付します。
源泉徴収票には、これまでに支払った給与や賞与、控除された社会保険料の金額が記載されています。この書類がなければ退職者は年末調整を受けることができないので気をつけましょう。
5-6. 退職証明書
社員が退職証明書の発行を希望したときには、必ず発行しておきましょう。
退職証明書には雇用期間や業務内容、地位や賃金額、退職の理由などを記載します。社員が一部項目の記載を希望しないときにはその要望に従う必要があります。
6. 退職時の社会保険手続きは丁寧に進めよう!
社員が退職する際に必要となる手続きはいくつもあります。書類によっては、退職後すぐに提出が必要というものもあるため、期限をチェックして早めに手続きをしておきましょう。また、保険関係の書類を揃えて社員に渡しておくことも重要です。
これらの手続きは、社員が退職後に新たなステップを踏み出すために必要な手続きです。退職者とのトラブルを避けるためにも、迅速かつ丁寧に手続きを進めていきましょう。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
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