退職者に「離職票」の発行を求められたらどうする?企業側の対応をまとめて解説

従業員が退職する場合、会社は雇用保険、健康保険、厚生年金、住民税に関係する書類の提出をする必要があります。

また、退職者から離職票や退職証明書の発行を求められることもあり、対応しなければなりません。

本記事では、離職票に焦点を当て、その発行条件や発行の流れや書き方、発行時の注意点について説明します。

1. 離職票とは

離職票は、退職した従業員が基本手当(いわゆる失業手当)の受給申請のため、ハローワークに提出する書類です。

退職者本人に離職票を求められた場合、ハローワークから離職票を受け取り、退職者本人に交付しなければなりません。

失業手当は、退職者の再就職先が決まるまでの生活と求職活動を支援する手当ですので、転職先が決まっていて失業手当を受給しない場合は、離職票は必要ありません。

1-1. 離職票の種類

離職票は、「雇用保険被保険者離職票-1」および「雇用保険被保険者離職票-2」の2種類あり、それぞれ「離職票-1」「離職票-2」と略して呼ばれます。

離職票-1は、失業手当の振込先金融機関、口座番号を申請するためのもので、離職票-2は、離職理由や離職前の賃金状況が記載されたものとなっています。

1-2. 「離職証明書」「退職証明書」との違い

離職票とよく似たものに、「離職証明書」と「退職証明書」があります。

離職証明書

離職証明書は従業員が退職した場合に、会社がハローワークに提出する書類です。

正式には「雇用保険被保険者離職証明書」と言い、会社は従業員が退職した際、雇用保険被保険者資格喪失届(以下、資格喪失届と呼びます)と離職証明書をハローワークに提出しなければなりません。

離職証明書は3枚1組の複写式帳票です。

1枚目:離職証明書の事業主控

2枚目:離職証明書としてハローワークに保管

3枚目:離職票-2として会社をとおして離職者に交付

退職証明書

退職証明書は、会社が従業員の退職を証明する書類です。

公的機関に提出するものではなく、退職者から申請があった場合に発行する書類であり、公文書ではありません。また特に決まった形式もありません。

労働基準法第22条は、労働者が退職の証明書を請求した場合、会社は遅滞なく交付しなければならないと会社の義務を定めています。

退職証明書が必要なケース
退職者が退職証明書を必要とするケースは2つあります。1つ目は、国民健康保険、国民年金の加入手続きをおこなう場合です。通常、離職票で加入手続きをおこないますが、すぐに発行してもらえない場合は、代わりに退職証明書によって手続きできます。2つ目は、退職理由などを確認するため、転職先の会社が従業員に提出を求めるケースです。

会社が証明すべき事項は、次の通りです。

(1)使用期間

(2)業務の種類

(3)その事業における地位

(4)賃金

(5)退職の事由(解雇の場合は、その理由を含む)

ただし、労働者が請求していない事項の記入は禁止されています。

退職証明書は請求があれば何度でも発行しなければなりませんが、退職日から2年以上が経過している場合、会社は退職証明書発行の義務はありません。

1-3. 離職票や離職証明書の発行時期・発行期限

離職票発行のもとになる離職証明書は、雇用保険法施行規則第7条にしたがい、「被保険者でなくなった日の翌日から起算して 10 日以内」に発行し、ハローワークに提出しなければなりません。

たとえば、退職日を3月31日とすると、被保険者でなくなった日(4月1日)の翌日の4月2日から起算して10日目の4月11日までに提出する必要があります。

提出後、ハローワークから離職票が発行されたあと、郵送などで退職者の手元に届くまでにはさらに日数がかかります。

会社からの提出が遅れた場合は、そのまま退職者への離職票の交付が遅れることになり、退職者の失業手当受給に不利益が生じることとなるため、離職証明書はできるだけ早期に準備を整えて、すみやかにハローワークに提出してください。

「資格喪失届」はハローワークに提出の必要あり!

退職者本人が希望する場合、会社は離職証明書と資格喪失届をハローワークに提出し、離職票の発行手続きを取る義務があります。離職票の発行を希望しない場合、会社は離職証明書の提出は必要ありませんが、資格喪失届は必ず提出しなければなりません。また、高年齢雇用継続給付のため、退職者が59才以上の場合は本人希望の有無に関わらず離職証明書を提出し、離職票の交付を受けなければなりません。

2. 離職票の発行までの流れ

ここまで離職票について説明してきましたが、次に離職票の発行までの流れを時系列に沿う形でまとめます。

離職票発行までの流れ
  1. 会社は退職者に離職票が必要か確認する
  2. 会社は「離職証明書」と「資格喪失届」を作成する
  3. 退職者に離職証明書を確認してもらう
  4. ハローワークに離職証明書と資格喪失届を提出する
  5. ハローワークが離職票を発行する
  6. 会社が離職票を退職者に送付する

まず、企業側は退職者本人に離職票の要否を確認しましょう。退職後の就職先が決まっている場合などは離職票が不要になります。

離職票が必要とわかったら、離職証明書と資格喪失届を作成し、退職者本人に記入内容を確認してもらいます。

会社が記入した内容に異議や間違いがなければ、退職者本人に署名、捺印してもらいます。その後、作成した離職証明書と資格喪失届を事業所の所在地を管轄するハローワークに提出します。

その際には、以下のものを持参するようにしてください。

  • 労働者名簿
  • 出勤簿(タイムカード)
  • 賃金台帳
  • 辞令及び他の 社会保険の届出(控)
  • 離職理由の確認できる書類(就業規則、役員会議事録など)

ハローワークは提出された離職証明書を審査し、記載内容に問題がなければ、離職票が発行されます。ハローワークから受け取った後、すみやかに退職者本人に郵送または受取りに来てもらいます。

会社の手続きはここまでですが、失業手当を受給するには、退職者はハローワークで手続きを取る必要があります。

会社が受取り退職者に渡す書類は、離職票-1と離職票-2です。「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)」「雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)」は、会社で保管してください。

3. 離職票を発行するための離職証明書の記入方法

ハローワークから離職票を発行するためには、離職証明書を記入し提出する必要があります。

本章では、離職証明書の記入方法について、16の記入項目の書き方を詳しく説明します。

被保険者番号 ①~⑥は機械的に記入できる項目です。
事業所番号
離職者氏名
離職年月日
事業所の名称・所在地・電話番号
離職者の住所または居所
離職理由

離職理由は6つに大分類され、さらに20のパターンに区分されています。

【離職理由の大分類】

  1. 事業所の倒産等によるもの
  2. 定年によるもの
  3. 労働契約期間満了等によるもの
  4. 事業主からの働きかけによるもの(解雇、希望退職募集、退職勧奨など)
  5. 労働者の判断によるもの(自己都合退職など)
  6. その他 

事業主は20のパターンのどれに該当するか判断し、離職者本人がその判断に異議があるかないかを記入します。(離職者本人の確認後、⑯欄に署名・捺印をします。)

被保険者期間算定対象期間

退職前2年間の中から被保険者期間6カ月分を記入します。一般被保険者と高年齢被保険者(65才以上)はA欄に、短期雇用特例被保険者はB欄に記入します。
※短期雇用特例被保険者:「4カ月以上の期間を定めて雇用され」かつ「週の所定労働時間が30時間以上」の者。スキー場や海の家などで働く季節的な雇用者。

賃金支払基礎日数

正社員など月給制の場合は、休んだ日を含めた1カ月の歴日数を記入します。パートやアルバイトなど日給制、時給制の場合は、出勤日数に有給休暇日数を加えて記入します。対象期間内に、傷病、出産、会社休業、海外勤務などで30日以上賃金を支払っていない場合は、その該当月は期間と不支給事由を備考欄に記入します。

賃金支払対象期間

賃金締切日翌日から締切日までを1段ずつに分けて、上から若い順に記入します。離職日以前2年間を記入しますが、完全月(例4月1日から4月30日)が6カ月以上あれば、それ以前の記入は省略できます。

⑩の基礎日数

月給制は全日数、日給制や時給制は出勤日数を記入します。

賃金額

月給制はA欄に記入します。超過勤務手当の支払いが翌月の場合は、当月に入れます。通勤手当を複数月分払う場合は、月数で割りそれぞれの月に加算します。日給制、時給制、出来高給制の場合は、B欄に記入します。月決め手当と日給と両方ある場合は、AB欄に区別して記入し、AB欄の合計額を計欄に記入します。賃金は税金や社会保険料を引く前の金額です。また、臨時に支払われる賞与や退職金は、賃金に含まれません。

備考

未払い賃金があれば記入します。

賃金に関する特記事項

毎月決まって支払われる賃金のほかに、3か月以内の期間ごとに支払われるものがある場合に、支給日、名称および支給額を記入します。 なお、記入しない場合は斜線を引いてください。

離職者本人の内容確認署名、捺印(⑦を除く)

離職証明書の記載内容に間違いがないか、退職者本人が確認し、署名、捺印します。ただし離職理由(⑦)については、⑯の欄に署名、捺印します。

離職理由の署名・捺印

⑦の記入内容を退職者者本人が確認し、署名・捺印します。

離職証明書の中で、最も重要な項目は「⑦離職理由」です。

ハローワークは、離職理由をもとに「特定受給資格者(倒産や解雇など再就職の準備期間がないまま退職した場合に適用)」や「特定理由離職者(期間の定めのある雇用契約が更新されなかった場合などに適用)」に該当するか判断し、失業手当の給付日数を決定するため、これらに該当するにもかかわらず自己都合退職とすると、失業手当で特別な扱いを受けることができません。

離職理由判定の詳細について知りたい方は、厚生労働省発行のパンフレット「雇用保険被保険者離職証明書の注意」を参照してください。

また、特例的なケースや詳細を知りたい方は、厚生労働省ホームページ「雇用保険事務手続きの手引き」の「第5章被保険者についての諸手続き」および「第6章賃金について」を参照してください。

▶雇用保険被保険者離職証明書についての注意|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/jigyounushi01_0001.pdf
▶雇用保険事務手続きの手引き|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000131698.html

4. 離職票を発行する場合の注意点

最後に、離職票を発行する場合の注意点についてまとめます。

離職証明書の内容に関する労使間トラブル

離職票に関するトラブルで最も多いのは、離職理由に関係するものです。

トラブルを避けるため、次のことを徹底してください。

  • 離職証明書の具体的事情記載欄(事業主用)に、できるだけ詳しく離職理由を記載し、退職者本人に確認してもらう
  • 自己都合退職の場合は、退職者本人から必ず退職届を提出してもらう
  • 離職理由が、特定受給資格者あるいは特定理由離職者に該当するかには、特に注意する

また、離職証明書に記入した賃金支払の数値は、算定の根拠を本人にていねいに説明し、誤解が生じないようにしてください。

離職票の発行時期に関して

次に多いトラブルは、離職票の発行が遅れることです。

離職票の要否の本人への確認、離職証明書の作成準備、内容の本人確認と署名、捺印は、退職前におこない、退職後はすみやかにハローワークに提出してください。

離職票の発行後は、本人に郵送するのか、受取りに来てもらうのか、事前に決めておきましょう。

離職票の再発行に関して

離職票を紛失した場合は、再発行が可能です。

退職者本人がハローワークに再交付請求するか、または退職した会社をとおして請求することができます。

 本人から会社に相談があった場合は、どちらにするかまず確認しましょう。

(1)本人が請求する場合

書類は離職票再交付請求書と身元確認書類(運転免許証など)が必要です。

提出先ハローワークは、退職者の住居管轄安定所、会社の所在地管轄安定所のどちらでも可能です。

(2)会社が請求する場合

離職票再交付請求書を会社の所在地管轄ハローワークに提出します。

離職票再交付請求書には、紛失した離職票の交付年月日と交付番号を記入する必要があります。本人が記録を控えていないことが考えられますので、本人によく確認してください。

助成金の受給に関して

ハローワークは、企業の常用雇用や正社員化を促進するため、助成金を支給する制度があります。

ところが「キャリアアップ助成金」「トライアル雇用助成金」は、解雇や会社都合を理由とした離職者がいると、助成金が受給できなくなります。

助成金を受ける前後6カ月に事業主都合による解雇、退職勧奨があると、助成金の受給要件から外れるためです。

また、特定受給資格者(倒産や解雇など再就職の準備期間がないままの退職)に該当する退職者が、ある一定数以上いる場合も助成金の受給はできません。

事業主が助成金の不支給を回避するため、退職理由を意図的に自己都合退職に誘導する行為は決しておこなってはなりません。

5. まとめ

離職票や離職証明書の記入方法についてまとめてきました。

離職票の発行を退職者に求められた場合、企業は「離職証明書」を作成することから始めることになります。

特例的なケースや詳細を調べる必要が生じた場合は、関連する法規、通則、厚生労働省発行のパンフレットや解説なども確認し、個別のケースで判断に迷う場合は、ハローワークに相談してください。

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