従業員におこなわせる「残業」には、法定内残業と法定外残業の2種類が存在します。それぞれの残業で賃金の計算方法が異なるためしっかりと区別しましょう。当記事では、法定内残業とは何か、割増賃金が必要ないケースや時間外労働に欠かせない36協定について解説します。
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残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、自社の労働時間のどの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 法定内残業と法定外残業の違い
労働基準法では、法定労働時間として、1日8時間・週40時間の上限時間を設けています。この時間を超えて労働させるには、労使間で36協定を締結する必要があります。
関連記事:法定外残業とは?法定内残業との違いや計算方法を具体例を交えて詳しく解説
1-1. 法定内残業の定義と賃金の計算方法
法定内残業とは、所定労働時間は超えるが、法定労働時間を超えない範囲での残業のことを指します。
例えば、企業が定める所定労働時間が6時間の従業員が、1時間の残業をおこなった場合、合計労働時間は7時間となり、法定労働時間を超過しません。この場合の1時間分の残業が法定内残業です。
労働基準法では残業(時間外労働)に対して割増賃金を支払う義務を企業に定めていますが、この時間外労働とは、法定労働時間を超えた分の労働を指すため、法定内残業に対しては割増賃金の支払いの必要はありません。
上記の例においては、残業時間の1時間に対してこの従業員の1時間あたりの基礎賃金を支払うことになり、下記の計算式で計算できます。
「1時間あたりの基礎賃金=月給 ÷ 月平均所定労働時間」
※月平均所定労働時間=(年間暦日数ー年間休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12
1-2. 法定外残業の定義と賃金の計算方法
法定外残業の割増率は25%が基準です。
例えば、ある企業の所定労働時間が7時間と決められており、3時間の残業をしたとしましょう。
1時間あたりの賃金が2,000円であれば、法定労働時間の8時間までの1時間は賃金が2,000円です。
しかし、法定労働時間を超えた2時間に関しては、25%の割増賃金が適用され、2,000円×1.25×2時間=5,000円の残業代が支払われます。
これに深夜労働の割増賃金や休日労働の割増賃金が加算される場合には、割増率は最大60%まで増加します。
残業代を正確に計算し支給しないと罰則を受けるだけでなく、企業の社会的なイメージも損なう可能性もあるため、きちんと理解しておく必要があります。
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2. 法定内残業は割増賃金を支払う必要がない?
残業というと、必ず残業代が発生するように思いますが、
割増賃金は、あくまで法定労働時間を超えた分について支払われるものです。
そのため先述の通り、法定内残業の場合は時間外労働の割増賃金を支払う必要はありません。
ただし、例えば所定労働時間が15時~22時(うち休憩1時間)で23時まで1時間残業をした従業員の場合、労働時間は合計で7時間のため法定労働時間内の残業ですが、22時~翌5時までは労働基準法で深夜時間と定められ該当時間の労働は深夜労働の割増賃金が発生します。
したがって、この場合、時間外労働に対する割増賃金は発生しませんが、深夜労働の割増賃金25%は上乗せして賃金計算をする必要があるので注意が必要です。
3. 残業をさせるには36協定を結ぶ必要がある
残業をする際によく耳にする言葉が「36(サブロク)協定」です。
労働基準法第36条に基づいた協定であるためこのようによばれています。
では、36協定とはいったいどのような協定なのでしょうか。
3-1. 36協定は時間外労働に必須の協定
36協定は、雇用主や企業が労働者に対し時間外労働と休日労働をさせるために必要な協定です。
正式には「時間外・休日労働協定に関する協定届」といい、労使間で締結された後、労働基準監督署長に届け出て有効となります。
この36協定は、労働基準法に定められている、1日8時間または週40時間の法定労働時間を超えて労働させることができるものです。
あるいは、36協定によって、週1回の法定休日に労働させることも可能になります。もし、36協定なしに法定労働時間を超える時間外労働や休日労働をさせた場合、労働基準法違反となり罰則が適用されることもあるので注意しましょう。
3-2. 36協定には上限がある
36協定が労使間で締結されるもので、法定労働時間を超える時間外労働も許されるからといって、際限なく残業をさせられるというわけではありません。2020年4月の労働基準法改正によって、時間外労働の上限規制と罰則が設けられるようになりました。
たとえ36協定があったとしても、時間外労働の上限は、基本的に月45時間、年間360時間と定められており、特別な事情がない限りはこれを超えて時間外労働をさせることはできません。
もちろん、他のルール、たとえば休日を1週間に少なくとも1回取らせなければならないなどの点は、これまで通り適用されます。
ただし、臨時の場合には特別条項を締結することで、上記の上限を年間720時間まで延長することができます。
しかし、特別条項に労使が合意した場合であっても、いくつかのルールの範囲内で残業時間を決める必要があります。
まず時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満に抑える義務があります。
加えて2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月のスパンで時間外労働と休日労働の平均時間を算出し、それらがすべて80時間以内におさまっていること、月45時間の時間外労働の上限を超えられるのは、原則として年間6ヶ月までといった3つの条件を守らなければなりません。こうしたルールが設けられ、36協定があったとしても労働者が際限なく働かされることがないよう配慮がなされています。
3-3. 法定内残業では原則36協定が必要ない
雇用主や企業が労働者に時間外労働をさせるためには36協定が必要となりますが、法定内残業をさせるのに、36協定の締結は必要ありません。
36協定は、労働基準法に定められた法定労働時間を超える時間外労働を可能にするための協定です。
法定内残業は、所定労働時間を超えてはいるものの、法定労働時間を超えてはいないので、36協定は基本的に必要ありません。
しかし、就業規則で所定労働時間を8時間と定めている企業の場合、36協定がないと従業員はまったく残業できないことになります。
さらに、繁忙期に従業員に残業をお願いすることがある企業であれば、法定労働時間を超えることも想定して36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出をしておいた方が賢明でしょう。
4. 法定内残業と法定外残業の違いを押さえておこう
法定内残業と法定外残業には、労働基準法の法定労働時間を超えているかどうかという違いがあります。
法定内残業の場合、残業に対して割増賃金を支払う義務はありません。法定労働時間を超える残業には労使間の36協定が必要ですが、法定内残業の場合にはそれも不要です。法定内残業について理解を深め、残業代の計算などに役立てましょう。
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、自社の労働時間のどの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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