勤怠管理システムには打刻の丸め機能が搭載されていることが一般的であり、15分や30分などの丸め処理を行っている企業は少なくありません。
一方で、丸め処理は正しく運用しなければ、法律違反となってしまう恐れがあります。働き方が多様化し、丸め処理も複雑化している昨今、正しい知識を備えておくことは非常に大切です。
今回は打刻丸めをテーマに、違法となる処理や認められている処理、打刻丸めのメリット・デメリット、設定時に注意すべきポイントなどについて詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
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1. 勤怠管理の丸め処理とは
勤怠管理における「丸め処理」とは、打刻時刻を決められた単位で切り上げ、または切り捨てることをいいます。
たとえば、8時13分に始業打刻をしたとします。切り上げ処理の場合、15分丸めでは8時15分、30分丸めでは8時30分となります。切り捨ての場合は8時00分です。
また、終業の際は17時19分に打刻した場合、15分丸めでは17時15分、30分丸めでは17時00分と切り捨てることが一般的です。
さらに、所定の始業時刻より早い打刻時間を始業時刻として切り上げることも、丸め処理の一例です。このケースでは、たとえば所定の始業時刻が9時00分であれば、8時20分に打刻したとしても9時00分に丸めます。
このようなルールや丸める分数の設定は、企業によって異なります。たとえば始業時刻と終業時刻のいずれも15分で統一している企業もあれば、始業時刻では15分、終業時刻では30分など、始業と終業で丸める分数の設定を変えているケースもあります。
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2. 打刻丸めは違法になる?
運用の仕方によっては従業員にとって不利益となる可能性がある打刻丸めは、違法にはならないのでしょうか。
2-1 原則は1分単位での労働時間管理
15分や30分単位での丸め処理を行っている企業は多いものの、勤怠管理の原則は「1分単位」とされています。
仮に丸め処理によって日々の労働時間がカットされる状況が続いた場合、1ヶ月あたりの実労働時間と管理上の労働時間には大きな差が発生することになります。その場合、受け取ることのできる賃金が減ってしまい、従業員にとっては不利になります。このような理由から、1分単位の勤怠管理が原則となっているのです。
2-2 労働基準法では違法となり得る
労働基準法において、丸め処理は違法となり得ます。
第24条では、以下のように定められています。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
この条文により、従業員が働いた対価として、企業には賃金の全額を支払う義務があるということがわかります。つまり、労働時間を切り捨てる丸め処理は、違法な勤怠管理といえるのです。
また、労働基準法第37条では、以下のように定められています。
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
丸め処理による勤怠管理は、この第37条にも違反していると考えられます。
勤怠管理の丸め処理においては、始業時刻を切り上げ、終業時刻を切り捨てることが一般的です。切り捨ての場合、正しい労働時間に見合った賃金が支払われない原因となり得るといえるでしょう。
関連記事:勤怠管理の法律上のルールとは?違反した場合や管理方法について
2-3 認められている丸め処理とは
ご紹介したとおり、勤怠管理は1分単位のカウントが原則となります。ただし、事務処理の簡素化を図る目的で、「1ヶ月での時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げること」という丸め処理については例外として認められています。
ここで注意すべきポイントは、「1ヶ月単位」での時間外労働等の時間数に対する特例として認められている丸め処理であるという点です。「1日単位」での労働時間数はこの特例の対象にはならないため、毎日の時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数に対して丸め処理をすることは、違法ということになります。
なお、「1日単位」で丸め処理をする際に、端数を切り捨てるのではなく一律で切り上げる場合は、労働者にとって有利な取り扱いとなるため問題ありません。
ここまで解説してきました通り、労働時間の集計は1分単位でおこなう場合とまるめ処理が許される場合があり、非常に複雑です。
また、まるめ処理を誤ってしまうと法律違反や従業員とのトラブルにつながってしまうなど、労働時間の集計に不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
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3. 打刻丸めのメリット
労働時間管理においては1分単位が原則となるとはいえ、丸め処理を行っている企業は少なくないでしょう。その理由としては、次のような打刻丸めのメリットがあるためと考えられます。
3-1 給与計算の効率アップを期待できる
打刻丸めの最大のメリットとしては、給与計算にかかる事務効率の向上を期待できることが挙げられます。
たとえば15分単位で丸め処理をしている場合は、出勤が8時53分であれば9時00分、退勤が18時23分であれば18時15分となるため、計算工程が減り、給与計算がスムーズになります。抱える従業員が多くなればなるほど、丸め処理を取り入れることによって給与計算の効率化を図ることができるでしょう。
なお、勤怠管理システムを活用すれば、設定した時間単位で自動で丸め処理がなされるほか、労働時間についても自動で集計されるため、業務のさらなる効率化を目指すことができます。
関連記事:勤怠の締め作業にかかる負担を軽減するには?|効率化の方法と工数削減の事例をご紹介
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3-2 従業員のプレッシャーを軽減できる
丸め処理を行っていない場合、従業員には「ぴったりの時刻に打刻しなければならない」という負担がかかりがちです。こうしたプレッシャーを感じることなく打刻できる点については、従業員にとっての打刻丸めのメリットのひとつといえるでしょう。
4. 打刻丸めのデメリット
打刻丸めにはメリットだけでなく、次のようなデメリットも存在します。企業が打刻丸めを取り入れる際は、こうしたデメリットについても把握しておく必要があるでしょう。
4-1 正しく給与が支払われない可能性がある
打刻丸めの単位を勤務実態に合わせて設定していない場合、給与を正しく支払えない恐れがあります。
たとえば、30分単位で切り捨ての打刻丸めを運用している場合、実際は18時55分まで働いたとしても、18時30分に丸められることになります。このケースでは、25分働いた分の賃金が削られることになってしまいます。
丸め処理によって労働時間が実態よりも短くなる運用は違法になる可能性もあるため、従業員にとって不利になるような、勤務実態に合わない設定は避けることが大切です。
4-2 働き方の多様化によって運用の難易度が高まっている
運用の難易度が高まっている点も、デメリットのひとつです。
働き方改革が唱えられる近年、労働者の働き方は多様化しています。始業・終業時刻を一律で定めるような従来の働き方だけでなく、フレックスタイム制やテレワークなど、新しい働き方のスタイルも登場しています。
それぞれの働き方に合わせた設定が必要になることから、打刻丸めの管理は複雑化しているといえるでしょう。必要に応じて勤怠管理システムを導入するなど、多様化する働き方に合わせた運用が求められます。
5. 打刻丸めを設定する際の注意点
打刻丸めを正しく運用していくためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。ここでは、打刻丸めを設定するにあたって注意しておくべきポイントについて解説します。
5-1 月の残業時間は30分で丸める
労働基準法では、時間外労働や休日労働が発生した場合、割増賃金の全額を支払うことが定められています。残業時間に端数が生じたからといって、安易に丸めて切り捨ててしまうと、労働基準法に違反する恐れがあるため注意が必要です。
ただし月間の総残業時間においては、30分未満を0分に切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる事務処理が行政通達の例外規定によって認められています。そのため、月間の残業時間の丸め処理を行う際は5分単位や15分単位でなく、「30分単位での切り捨て・四捨五入」が必要となります。
5-2 遅刻時間の切り上げは避ける
従業員の遅刻時間の切り上げ処理を行い、実際よりも遅刻時間が多いものとして処理することも、労働基準法違反となる可能性があるため注意が必要です。
たとえば、5分の遅刻を丸めて30分の遅刻として扱う場合、従業員が出勤しているにも関わらず25分の勤務時間をカットしてしまうことになるため、法律違反とみなされるリスクがあります。
6. 正しい打刻丸めの運用に努めよう
打刻丸めには給与計算が簡単になるなどのメリットがあるため、導入している企業も少なくありません。しかし、労働時間管理の原則は「1分単位」でのカウントとなります。また、働き方の実態に合わない、従業員にとって不利になるような打刻丸めは違法とみなされる可能性があるため、注意しなければなりません。
そのため、打刻丸めを設定する際は正しい知識を身に付け、切り捨て処理や遅刻時間の切り上げ処理等などにも注意しながら、慎重に運用していくことが大切です。
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