有給の取得と影響してくる残業時間の計算について徹底解説 |HR NOTE

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有給の取得と影響してくる残業時間の計算について徹底解説

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有給の取得と影響してくる残業時間の計算について徹底解説

残業による割増賃金を計算する場合、有給休暇との関係には注意しなければなりません。有給休暇は労働時間としてカウントされないことや、残業と相殺されるケースもあるからです。

本記事では、有給取得と残業時間の計算について解説します。従業員に対して正確な賃金を支給するためにも、理解を深めておきましょう。

関連記事:残業とは|残業の割増賃金の計算方法や残業規制による対策法も

自社の有休管理に不安はありませんか?

有給休暇で残業代の相殺をすることはできません。この他にも、「半休取得時の残業代の扱いは?」など、有給休暇と残業の扱いに疑問はありませんか?

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1. 有給取得した週は残業しても割増賃金の支払いが不要なケースがある

スピーカーでアナウンスをする様子

残業で割増賃金の支払対象となるのは、1日8時間・1週40時間という法定労働時間を超えた労働に限られます。
法定労働時間を超えた場合、時間外労働が月60時間以下であれば25%以上、月60時間を超えたときは50%以上の割増賃金を支払う必要があります。

さらに、22時〜翌5時の深夜時間や週1日もしくは4週4日以上の法定休日に勤務させた場合にも、割増賃金を支払わなければなりません。ただし、その週に有給休暇を取得している場合は注意が必要です。

参照:しっかりマスター 労働基準法|厚生労働省

1-1. 有給を取得した週は実際の勤務時間が法定労働時間を超えなければ割増賃金は発生しない

たとえば、時給1,000円で、月曜日から金曜日まで1日実働8時間勤務(所定休日は土曜日・法定休日は日曜日)の従業員が金曜日に有給休暇を取得し、土曜日に休日出勤(5時間)したケースで考えてみましょう。

その週(月曜日〜金曜日)の実際の労働時間は「8時間 × 4日 = 32時間」となり、40時間以内です。土曜日に休日出勤しても週40時間を超えない限り時間外労働(法定外)にはならないため、割増賃金を支払う必要はありません。

その週の賃金は、実労働32時間分の賃金(32,000円)、所定休日出勤5時間分の賃金(5,000円)に有給休暇分の8,000円が加わります。
このケースでは、有給休暇1日分(8時間)を取得しているため、45時間分相当の賃金を支払わなければなりませんが、有給休暇は実労働時間としてはカウントされない(ゼロ時間として扱われる)ため、所定休日の出勤分は割増賃金に該当しません。

つまり、1日もしくは1週間を通しての「実労働時間」によって判断することが大切です。有給と残業の関係性は少々複雑なので、わかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

そのような方に向けて、当サイトでは、「有給休暇の取扱い解説BOOK|残業と有給の関係性や、法改正における割増賃金ルールを解説」という無料ガイドブックをご用意しました。

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1-2. フレックスタイム制における有給と残業の関係

フレックスタイム制においては、有給と残業の関係性が異なります。フレックスタイム制の場合、通常の勤務形態のように有給を取得した日の労働時間をゼロ時間とカウントするのではなく、一定時間働いたものとしてカウントしなければなりません。

ゼロ時間とカウントすると、清算期間内に働くべき総労働時間に達しないと考え、有給取得を避ける従業員が出てくる可能性もあるからです。

フレックスタイム制においては標準となる1日の労働時間を定めておき、有給を取得した際はその時間分、働いたものとしてカウントします。勤怠管理をおこなう際は、就業規則などをよく確認しておきましょう。

関連記事:フレックスタイム制とは?メリットやデメリット、目的と手続きを解説

2. 有給休暇で残業時間が相殺されるケース

注意点

有給を取得しても法定労働時間を超えて労働した場合は、割増賃金を支払う必要があります。法定労働時間を超えた時間分の有給を取得させて、相殺することはできません。

しかし、例外のケースもあります。ここでは、2つの例外を紹介しているのでチェックしておきましょう。

2-1. 半日分の有給休暇を取得した当日に残業するケース

たとえば、午前中に3時間の有給休暇を取った日、終業後に残業したケースで考えてみましょう。3時間の有給休暇を取得したうえで、その日の就業時間が8時間だった場合、1日の法定労働時間(8時間)を超えないため、割増賃金の支給は原則不要です。

つまり、有給3時間分と残業3時間分が相殺できたとも捉えられるでしょう。ただし、有給と残業に対する賃金の計算方法は変わってくるので、自社の就業規則をよく確認し、正しく給与計算することが大切です。また、時間単位や半日単位の有給を取得しても、1日の労働時間が8時間(週の労働時間が40時間)を超えた時点から法定外残業とみなされ、割増賃金の支給が必要になるため注意しましょう。

2-2. 平日に有給休暇を取得して所定休日に出勤するケース

平日に1日有給休暇を取得した週の所定休日に出勤した場合、1週間の実労働時間が40時間を超えていなければ、休日出勤分は相殺され、割増賃金は発生しません。

ただし、法定休日に労働した場合は有給休暇を取得していても、35%以上の割増賃金の支払い義務が生じるので注意が必要です。

関連記事:所定休日の割増賃金とは?法定休日や割増賃金の計算方法も詳しく紹介

3. 有給を取得したときの残業時間の計算方法

計算

ここでは、有給を取得したときの残業時間の計算方法について具体的に解説します。以下のような企業を例に考えてみましょう。

  • 所定労働時間:8時間(休憩時間を除く)
  • 所定休日:土曜日
  • 法定休日:日曜日

3-1. 月曜日に有給取得・火〜金曜日の残業が合計8時間のケース

有給を取得した月曜日の実労働時間は0時間です。よって以下の計算により、1週間の実労働時間は40時間となります。

1週間の実労働時間 =  8時間 × 4日(火〜金曜日の所定労働時間) + 8時間(残業時間の合計) = 40時間

仮に所定休日である土曜日に5時間働いたとすると、週40時間という法定労働時間を超えるため、割増賃金が発生します。

3-2. 月曜日に有給取得・火〜金曜日の残業が合計3時間のケース

先ほどと同様、月曜日の実労働時間は0時間であり、1週間の実労働時間は以下のように計算できます。

1週間の実労働時間 = 8時間 × 4日(火〜金曜日の所定労働時間) + 3時間(残業時間の合計) = 35時間

この場合、所定休日である土曜日に5時間働いたとしても、週40時間という法定労働時間を超えないため、割増賃金は発生しません。仮に土曜日に6時間働くとすると、法定労働時間を1時間超えてしまうので、1時間分の割増賃金が発生します。

4. 遅刻・早退と残業を相殺できるケースと注意点

説明しようとする男性

本来は遅刻・早退した分で残業を相殺することはできません。残業したという事実がある以上、割増賃金を支払う必要があるからです。

しかし、有給休暇と同じように、遅刻と残業を相殺できるケースもあります。

4-1. 遅刻した同日内の残業であれば相殺可能

遅刻したその日の終業後に残業した場合、法定労働時間内であれば遅刻と残業を相殺し、割増賃金を支払う必要はありません。

割増賃金が発生するのは、1日8時間、週40時間を超えて勤務した場合に限ります。

4-2. 日が異なる場合は遅刻・早退と残業の相殺はできない

前の日に遅刻・早退し、同じ週の他の日に残業した場合の相殺は違法です。

たとえば、前日1時間の遅刻をした従業員が翌日に1時間残業(法定外)した場合、前日の遅刻分と翌日の残業分を相殺することはできません。
この場合は法定外残業分に対して割増賃金を支払う必要があります。

4-3. 変形労働時間制を採用している場合は例外

遅刻・早退分で残業を相殺するのは同日内のみが原則ですが、例外として変形労働時間制を採用している場合は他の日の残業を相殺できるケースもあります。

変形労働時間制は、一定期間を平均して1週間あたりの所定労働時間が法定労働時間を超えなければ、1週または1日の法定労働時間を超えた労働をさせられる制度です。

時期によって業務の量に変動がある企業に多く取り入れられています。この変形労働時間制を正しく運用している企業であれば、変形労働時間制の枠内で他の日の残業との相殺ができます。

関連記事:変形労働時間制とは?残業の考え方や導入方法、注意点をわかりやすく解説

5. 代休・ボーナスと残業の相殺はできない

手でバツを表して顔をしかめている

有給休暇や同日内の遅刻であれば残業との相殺がケースもありますが、代休では残業と相殺はできません。

ある企業のケースでは、月曜日から金曜日に1日8時間勤務が定められている状態で、ほぼ毎日2時間の残業があった場合に1日代休を取ることで残業と相殺していました。

1週間の労働時間は40時間であり、法定労働時間を超えていないように思えますが、1日8時間を超えた時点で1日の法定労働時間を超えているため、残業に対する割増賃金の支払い義務が発生します。

これは代休を取らせても変わりません。代休を取らせて残業分の割増賃金を支払わないのは違法です。休日出勤分の割増賃金も同じ理由で相殺できません。

また、ボーナスとの相殺や、残業代をまとめてボーナスに上乗せして支払うことも違法です。何らかの事情でボーナスとまとめて支払う場合は利息の支払いも必要になります。

なお、残業(法定外)には基本25%、ケースによっては50〜75%、休日労働には35%の割増率を適用した割増賃金の支払い義務が発生します。1日8時間と1週40時間、どちらかが超えていれば、残業の割増賃金が発生するので注意しましょう。

関連記事:残業の相殺は違法?代休やボーナスとの相殺は可能か解説

6. 有給休暇と残業時間の計算のポイントは法定労働時間

キーポイントと書かれたノート

今回は、有給と残業の関係性や、残業時間を考えるときの注意点などについて解説しました。賃金計算における残業代(割増賃金)が発生するのは、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えた場合です。

そのため、有給休暇を取得してその週の実労働時間が残業分も含めて40時間を超えなければ、残業した分に対して割増賃金を支払う必要はありませんし、有給休暇は実労働時間にカウントされません。なお、フレックスタイム制の場合、有給と残業の考え方が一般の場合と変わるので注意が必要です。

また、遅刻・早退した場合は、同日内の残業に限り相殺が認められています。ただし、残業や休日出勤分の割増賃金を代休取得やボーナス上乗せなどを理由にして支払わないのは違法となるため気を付けましょう。

関連記事:法定外残業とは?法定内残業との違いや計算方法を具体例を交えて詳しく解説

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