年末調整は、1年間の給与総額に基づいて所得税額を再計算し、毎月の源泉徴収税額との過不足分を再計算する手続きです。年末調整の対象は毎月の給料だけではありません。賞与やボーナスも年末調整の対象となるため、正しい手続き方法を知っておく必要があります。この記事では、ボーナスが年末調整の対象になるかどうかや、12月のボーナスが発生した場合の例外的な手続きを解説します。
目次
1. 年末調整の対象にボーナスは含まれる?
年末調整とは、毎年12月ごろにおこなう所得税額の精算手続きです。毎月源泉徴収する所得税や復興特別所得税は、そのときどきの給与金額に基づいて計算しています。
年末になると、給与総額の扶養家族の人数などの変動によって、徴収した所得税額と過不足が生じる場合があります。年末調整の対象には毎月の給料だけでなく、賞与やボーナスも含まれるため、正しい計算方法を知っておくことが大切です。
1-1. そもそもボーナス(賞与)とは?ボーナスに該当する5つの条件
そもそもボーナスとは、毎月の給料とは別に支払われる労働の対価を指す言葉です。国税庁のホームページでは、ボーナス(賞与)が以下のように定義されています。
賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいいます。
一般的には、夏や冬など年2回支給される賞与や、決算に基づいて支給される決算賞与などがボーナスに該当します。
1-2. 年末調整の対象にはボーナスも含まれる
年末調整の対象には毎月の給料だけでなく、賞与やボーナスも含まれます。理由は「賞与やボーナスも給与所得に含まれるから」です。
国税庁のホームページによると、給与所得とは以下のような所得を指します。
給与所得とは、使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有する給与に係る所得をいいます。
また、労働基準法第11条では、賞与は通常の給料や手当と同様に「賃金」として取り扱うように定めています。
第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
実際に国税庁が作成した年末調整の冊子によると、年末調整の対象には「毎月(毎日)の給料や賞与など」が含まれるとしています。
「年末調整」は、ご承知のとおり、給与の支払を受ける人の一人一人について、毎月(毎日)の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない税額(年税額)とを比べて、その過不足額を精算する手続で、給与の源泉徴収の総決算ともいうべきものです。
このように、年末調整の手続きをおこなう場合は、賞与やボーナスも含めた1年間の給与総額を計算し、所得税額の過不足額を精算する必要があります。
1-3. 年末調整書類の「給与所得」にはボーナスも含めた金額を記載する
実際の手続きとしては、年末調整書類の「給与所得者の基礎控除申告書」を作成する際にボーナスの金額を計算する必要があります。
給与所得者の基礎控除申告書には、所得税の基礎控除額を計算するため、「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」を記載する箇所があります。
国税庁の作成した見本の通り、給与所得の欄には「俸給、給料、賞与や賃金」の総額を記入し、所得金額の欄には給与所得から各種控除を差し引いた金額を記入しましょう。(※1)
(※1)令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書|国税庁
2. 年末調整でボーナスから引かれる税金
年末調整は1年間の給与総額を再計算し、源泉徴収した所得税額との過不足分を精算する手続きです。
年末調整の結果、源泉徴収した金額が1年間の給与総額に基づく税額(年税額)よりも少ない場合、不足分を追加徴税する必要があります。年末調整でボーナスから引かれる税金は、所得税および復興特別所得税の2種類です。
ボーナスの場合、所得税および復興特別所得税は以下の手順で源泉徴収をおこなっています。
- 毎月のボーナスの金額から、社会保険料の金額を控除する
- 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を参照し、賞与の金額に対応した税率を求める
- 賞与に対する源泉徴収税額を計算する
復興特別所得税は、所得税額から各種控除を差し引いた「基準所得税額」に2.1%を乗じた税金です。実務上は、年末調整の手続きで計算した年調所得税額に102.1%を乗じ、復興特別所得税を含む税額(年税額)を計算します。
3. 12月のボーナス(賞与)が発生した場合の年末調整
年末調整の手続きにイレギュラーが生じるのが、12月分のボーナス(賞与)を支給するケースです。
年末調整には、「本年最後に支払う給与(賞与も含む)についての税額計算を省略し、その給与に対する徴収税額はないものとして精算する方法」と、「本年最後に支払う給与についても、通常の月分の給与としての税額計算をおこなった上で精算する方法」の2種類の方法があります。(※2)
それぞれの場合の手続きについて解説します。
3-1. 本年最後の給与の源泉徴収を省略する場合
年末調整の手続きをおこなうときは、本年最後(12月)の源泉徴収を省略し、徴収税額がなかったものとして処理することができます。
年末調整を行う場合には、その年最後に支払う給与等に対する法第185条《賞与以外の給与等に係る徴収税額》又は第186条《賞与に係る徴収税額》の規定による税額の計算を省略し、当該給与等から徴収する税額はないものとして、法第190条本文に規定する超過額又は不足額を計算することができるものとする。
つまり、12月分の給与(賞与も含む)に対する源泉徴収税額を計算せず、年末調整のタイミングで一度に処理することが可能です。この場合、毎月の源泉徴収税額と年末調整の税額(年調額)が異なるため、過不足分を精算する必要があります。
ただし、賞与の支給日が12月分の支払いよりも後の場合、12月分の給与金額に基づいて計算します。
3-2. 本年最後の給与も源泉徴収をおこなう場合
12月分の給与支払いの時点で、賞与も含めた源泉徴収をおこなうことも可能です。年末調整書類の「給与所得者の基礎控除申告書」にも、12月分の賞与やボーナスも含めた金額を記入し、通常通り年末調整手続きをおこないます。
4. ボーナスによって還付金が増える場合と減る場合
ボーナスの金額によって、所得税の還付金が増える場合と減る場合があります。
説明 | |
還付金が増える場合 | ボーナスの支給月の前月の給与がいつもよりも多かった場合 |
還付金が減る場合 | 給与総額に占めるボーナスの割合が大きい場合 |
ボーナスの税率は、支給月の前月の給与を参照し、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で決定します。残業や各種手当など、前月の給与がいつもよりも多かった場合、ボーナスの税率が本来よりも高くなるため、年末調整のタイミングで超過分を還付します。
逆に毎月の給料よりもボーナスの金額のほうが大きい場合、ボーナスの税率が本来よりも少なくなるため、還付金が減ったり追加徴税がおこなわれたりする可能性があります。
5. ボーナスも年末調整の対象なので、正しい給与総額に基づいて手続きしよう
毎月の給料だけでなく、賞与やボーナスも年末調整の対象となります。年末調整における給与総額を求めるときは、ボーナスも含めて計算しましょう。
年末調整の手続きで注意が必要なのが、12月のボーナスが発生したケースです。手続きの簡略化のため、12月分の給与の源泉徴収をおこなわず、年末調整のタイミングでまとめて処理することもできます。ボーナスから差し引かれる税金の種類や、還付金が増えるケース、減るケースも確認しておきましょう。