福利厚生の最低ラインは?最低限必要な制度や整備のポイントを解説 |HR NOTE

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福利厚生の最低ラインは?最低限必要な制度や整備のポイントを解説

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「福利厚生の最低ラインは?」

「福利厚生を充実させたいけど、なにを導入すればいいのかわからない」

上記のような悩みをお持ちではありませんか?

福利厚生の最低ラインは法定福利厚生です。しかし、福利厚生を充実させるためには、法定外福利厚生もバランスよく取り入れなければなりません

本記事では、福利厚生で最低ラインとされる法定福利厚生や最低限必要な制度、整備のポイントを解説します。福利厚生の導入でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

福利厚生の導入・拡充をお考えの方へ

福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、従業員のニーズをしっかりととらえる必要があります。

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1. 福利厚生の最低ラインは法定福利厚生

福利厚生の最低ラインは、法定福利厚生です。

福利厚生には、法定福利厚生のほかに法定外福利厚生があります。それぞれの違いは以下の通りです。

法定福利厚生

労働基準法などの法律で導入が義務付けられている福利厚生

法定外福利厚生

法律上の定めがなく、企業が任意で導入できる福利厚生

法定福利厚生は、事業規模や従業員数に関係なく、常時従業員を雇用しているすべての法人企業で提供しなければなりません。自社に従業員がいるにもかかわらず、法定福利厚生を導入しないと違法になり、罰則を受ける可能性があります。

法定福利厚生は、従業員を雇用するうえで不可欠な制度であるため、必ず導入するようにしましょう。

2. 最低限導入すべき法定福利厚生6種類

従業員を雇用している企業で最低限導入すべき法定福利厚生は、以下に挙げる6種類です。

  1. 健康保険
  2. 厚生年金保険
  3. 介護保険
  4. 雇用保険
  5. 労災保険
  6. 子ども・子育て拠出金

法定福利厚生では、かかる費用を企業が一部負担することで、従業員に経済的利益をもたらします。

2-1. 健康保険

健康保険は、従業員がケガや病気で医療機関を受診した際に、かかった医療費を一部負担する保険制度です。従業員に扶養家族がいる場合は、扶養家族も加入できます。

保険料の負担は、事業者・従業員ともに1/2ずつです。

2-2. 厚生年金保険

厚生年金保険は、すべての国民が加入している国民年金保険に上乗せして支給される公的年金です。企業に勤めている70歳以下の会社員が加入します。

保険料の負担は、健康保険と同じく労使折半です。

2-3. 介護保険

介護保険は、要介護・要支援の認定を受けた場合に、介護サービスの利用にかかる費用を一部負担してもらえる制度です。40歳以上の従業員に加入が義務付けられ、保険料を事業者・従業員で半額ずつ負担します。

介護の経済的負担、福祉サービスの普及促進を社会全体で支える仕組みとして2000年に施行されました。

2-4. 雇用保険

雇用保険は、失業時や休業時に給付金を受け取れる保険制度です。失業や休業による収入の減少を補い、生活の安定を図ることを目的としています。

雇用保険の給付金は、求職者給付、就職促進給付、雇用継続給付、教育訓練給付の4種類です。保険料の負担割合は、事業の種類ごとに異なります。

2-5. 労災保険

労災保険は、通勤中・勤務中に起きた事故やケガ、疾病、死亡に対して給付金を支給する制度です。労働災害による被害を受けた従業員や遺族を支援し、福祉の充実を図ります。

給付金の支給は、業務との因果関係が認められる場合に限られ、私情を挟むものやプライベートにおける傷病は対象となりません。保険料は、全額が事業者負担です。

2-6. 子ども・子育て拠出金

子ども・子育て拠出金は、児童手当や子育て支援事業などの費用を社会全体で負担するための制度です。従業員の子どもの有無にかかわらず、拠出金の全額を企業が負担します。

従業員に直接経済的な利益をもたらすわけではありませんが、企業が守るべき法定福利厚生の一つとして押さえておきましょう。

3. 最低限取り入れたい法定外福利厚生5種類

最低限取り入れたい法定外福利厚生は、以下の5種類です。

  1. 健診費用の補助
  2. 住宅に関する補助や手当
  3. 特別休暇
  4. 慶弔見舞金
  5. 仕事と育児・介護の両立支援

法定外福利厚生は、法律上なくても問題はありませんが、導入することで従業員エンゲージメントや定着率の向上が期待できます。

3-1. 健診費用の補助

従業員が心身ともに健康で長く働き続けるためにも、健診費用の補助は最低限取り入れるべきでしょう。

厚生労働省の研究機関の調査によると、従業員が特に必要と感じている制度として、人間ドック費用の補助が挙げられるようです。全回答者の21.8%と、数ある制度の中でも最も多く票が集まっており、従業員の健康への関心が高まっていることを示しています。

そもそも従業員に健康診断を受けさせることは、企業の義務です。労働安全衛生法第66条では、従業員の一般健康診断について以下のように定めています。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない

引用:労働安全衛生法第66条 | e-Gov法令検索

上記の通り、社会全体で従業員の適切な健康管理が求められていることからも、健康や医療に関する福利厚生の導入が欠かせません。人間ドックなど任意で受ける健診の費用も一部負担すれば、受診のハードルが下がり、従業員の健康の維持・増進につながるでしょう。

参考:企業における福利厚生施策の実態に関する調査|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

3-2. 住宅に関する補助や手当

住宅に関する補助や手当は、定番の福利厚生として、すでに多くの企業で導入されています。以下は代表的な例です。

  • 社宅や寮の提供
  • 家賃や住宅ローンの補助
  • 入社・転勤にともなう引っ越し費用の補助

2021年以降、日本では、エネルギー価格の高騰や円安の影響により、急激な物価の上昇が続いています。物価高が家計を圧迫する中、家賃補助や住宅手当のように衣食住に関連する福利厚生は、従業員のニーズが高いといえるでしょう。

3-3. 特別休暇

特別休暇も、ぜひ取り入れておきたい法定外福利厚生です。例えば、病気休暇や慶弔休暇、年末年始休暇、リフレッシュ休暇などが挙げられるでしょう。

休暇制度は、有給休暇や産前・産後休業などの法律で定められているものを除き、任意で設定が可能です。特別休暇としてさまざまな休暇を設けることで、従業員が多様な働き方や休み方を選択できるようになります

3-4. 慶弔見舞金

従業員のための福利厚生として、慶弔見舞金も導入すべきです。

慶弔見舞金とは、従業員に慶事や弔事、災害が起きた場合に支給するお金のことをいいます。結婚・出産の祝い金、葬儀や死亡時の弔慰金、災害時の見舞金などが代表的です。

慶弔見舞金も福利厚生に取り入れることで、従業員を大切にしている姿勢を示せるでしょう。

3-5. 仕事と育児・介護の両立支援

働き方改革やダイバーシティなどの観点から、仕事と育児・介護の両立支援も最低限取り入れたいところです。

仕事と育児・介護の両立支援には、保育料やベビーシッター利用料の補助のような経済的支援があります。フレックスタイム制や時短勤務、リモートワークなど、勤務時間や勤務場所に関する制度も人気です。

自社の労働力を確保するためにも、従業員一人ひとりが働きやすく、多様な働き方を選択できる支援をおこないましょう

4. 福利厚生の近年の傾向

近年、福利厚生は健康経営に注力されている傾向にあります。前述した健診費用の補助がよい例でしょう。

健康経営が推進されたことで、従業員の健康は「自ら管理するもの」とする従来の考え方から「企業が管理するもの」に変わりました。従業員の健康は、企業の生産性に大きな影響を与えるため、経営課題として戦略的に取り組んでいかなければなりません。

従業員の健康管理は企業の成長に不可欠であり、今後健康・医療に関する福利厚生の必要性はさらに高まるといえるでしょう。

加えて、ワークライフバランスを確保するための福利厚生が重視されていることも直近数年間の傾向です。背景には、働き方の多様化や仕事とプライベートの両立を優先する人が増えたことが挙げられます。

働き方改革が推進される現代で、多様な働き方を受け入れる福利厚生を導入することは企業の責務です。特別休暇や育児・介護の両立支援など、従業員自身が働く時間や場所を自由に選べる制度の導入が求められるでしょう。

5. 福利厚生を充実させない3つのデメリット

福利厚生を充実させないデメリットは、以下の3つです。

  1. 従業員のモチベーションが低下する
  2. 新たな人材の獲得が難しい
  3. 離職率が上昇する

5-1. 従業員のモチベーションが低下する

福利厚生を充実させないと、従業員が働き続けるために十分な環境や報酬を得られず、モチベーションが低下することが懸念されます。人事評価が適正でも、福利厚生が必要最低限しかなければ、従業員が働きにくく、ストレスや不満の原因となるでしょう。

ストレスや不満の蓄積は従業員のモチベーションだけでなく、勤労意欲をも削ぎかねません。結果、本来のパフォーマンスを発揮できず、業務の生産性や効率が落ちる可能性もあります。

5-2. 新たな人材の獲得が難しい

福利厚生を充実させない場合、新たな人材の獲得も難しくなります

労働人口の減少で人材不足が進み、人材から企業が選ばれる時代となった今、福利厚生は多くの求職者が関心を寄せるポイントです。福利厚生がほとんどない企業は、他社よりも労働条件や待遇の面で不利になるでしょう。

福利厚生が十分になければ、求職者が集まりにくいうえに、自社に有益な人材を他社にとられることにもなりかねません。

5-3. 離職率が上昇する

不十分な福利厚生制度では、離職率の上昇も心配されます。

従業員にとって福利厚生は、同じ企業で働き続けるかどうかを見極める要素の一つです。自社以外に福利厚生が充実している競合他社があれば、転職を考える人もいるでしょう。

苦労して人材を獲得しても定着しなければ、採用コストや育成コストが無駄になりかねません。新たな人材を雇うにも費用がかかるため、福利厚生を充実させないことは大きなリスクになり得ます。

6. 福利厚生を充実させる3つのメリット

福利厚生を充実させるメリットは、以下の3つです。

  1. 従業員エンゲージメントが高まる
  2. 企業のブランディングにつながる
  3. 定着率がアップする

6-1. 従業員エンゲージメントが高まる

福利厚生が充実していると、従業員エンゲージメントの向上が期待できます。

従業員がいきいきと働くためには、十分な休息をとり、安定した生活を送れるような福利厚生が必要です。福利厚生を充実させて、従業員エンゲージメントを高められれば、業務の生産性も上がり、企業の持続的成長につながるでしょう。

6-2. 企業のブランディングにつながる

福利厚生を充実させることは、企業のブランディングにもつながります。他社よりも福利厚生の待遇が優れている点をアピールできれば、より多くの求職者が集まるでしょう。

福利厚生には、企業がどれくらい従業員を大切にしているかを伝える、メッセージとしての役割もあります。他社との人材獲得競争に勝つためにも、福利厚生を通じて、求職者に企業のメッセージを発信することが大切です。

6-3. 定着率がアップする

従業員の定着率がアップすることも、福利厚生を充実させるメリットです。従業員の働き方や生活に合った福利厚生を提供すれば、従業員が「長く働き続けよう」と考え、退職を防げる可能性が高まります。

早期離職を防止し、従業員の定着を促す意味でも、福利厚生の充実は優先して取り組むべきといえるでしょう。

7. 自社の福利厚生を整備する際の3つのポイント

自社の福利厚生を整備する際は、以下の3つをポイントに検討しましょう。

  1. 従業員のニーズを知る
  2. 平等性・公平性を確保する
  3. コストと効果のバランスを考慮する

7-1. 従業員のニーズを知る

自社の福利厚生を整備する際は、まず従業員のニーズを知ることが大切です。従業員のニーズを把握すれば、解決すべき課題が明確になり、自社に合った福利厚生を導入できます。

自社に合った福利厚生とは、従業員側と企業側の双方にメリットのあるものでなければなりません。勤務形態や年齢層、家族構成などの情報を収集・分析したうえで、効果的かつ従業員の満足感を得られる福利厚生を検討しましょう。

従業員のニーズを調査する方法としては、アンケートや面談が有効です。

7-2. 平等性・公平性を確保する

自社の福利厚生を整備するうえで、平等性・公平性を確保することも忘れてはなりません。

福利厚生の平等性・公平性については、2020年4月に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」を遵守する必要があります。

パートタイム・有期雇用労働法とは、正社員とパート・有期雇用労働者の不合理な待遇の格差を禁止する法律です。これにより福利厚生も、正社員と同等の職務、責任を担う非正規労働者も適切に利用できるよう、配慮しなければなりません。

加えて、従業員同士で不公平感が出ないようにすることもポイントです。例えば、住宅手当や家族手当だけでは、個人の住居や扶養家族のない従業員が利用できず、不満に思う可能性があるでしょう。

福利厚生は、勤務形態や役職、年齢、性別を問わず、すべての従業員が利用できるようにすることが望まれます。

参考:パートタイム・有期雇用労働法の概要|厚生労働省

7-3. コストと効果のバランスを考慮する

福利厚生を導入するにはコストがかかるため、コストと導入によって得られる効果のバランスを考慮することが重要です。

従業員のニーズが高く、費用以上の効果が得られる制度であれば、積極的に取り入れましょう。

導入後、運用や管理にかかるコストを計算しておくことも大切です。とくに中小企業は、コストが高い制度を無理に導入すると経営を圧迫し、運用を継続できなくなる可能性があります。

法人化したばかりで、まだ福利厚生が整っていない場合は、低コストで始められるものから導入し、次第に拡充させるとよいでしょう。すでに福利厚生を複数導入しているなら、現在の利用状況を確認し、従業員の満足度が低いものを廃止するなどの対策が必要です。

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