退職手続きに必要な書類と会社側が注意すべきポイントを解説 |HR NOTE

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退職手続きに必要な書類と会社側が注意すべきポイントを解説

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退職手続きの際には、会社側から従業員に渡す必要がある書類が複数存在します。渡す書類に漏れや不備があると、退職者が失業給付金などの手続きをおこなう際に支障がでるため、抜け漏れなく作成する必要があります。本記事では、退職手続きの際に必要となる書類を解説するほか、会社側が注意すべき点について解説します。

会社側の退職手続きとは?

従業員が退職を願い出た場合、会社側としては雇用保険や社会保険の資格喪失届の提出や、所得税や住民税の手続きをおこなう必要があります。

それぞれ法律により定められた規定や期日が存在するため、抜け漏れのないよう正確におこなうことが求められます。

退職手続きの際に従業員に渡す書類のチェックリスト

退職者が出た場合、さまざまな書類作成や手続きなどに追われ、書類の渡し漏れなどが発生することがあります。転職先でも必要となる書類も含まれているため、退職手続きに必要な書類について、今一度確認しましょう。

離職票(希望された場合)

離職票とは、従業員が退職した事実を証明するための書類です。退職者が再就職するまでの期間に失業保険を受け取るには、ハローワークへ離職票を提出しなくてはいけません。

そのため、退職者が失業給付の受給を希望する場合は、手続きがおこなえるように、会社は離職票の発行手続きをおこなう必要があります。

なお、発行手続きが可能なのは、雇用保険に加入していた退職者のみになります。離職票発行の手続きの流れは次の通りです。

【離職票発行手続きの流れ】

①「雇用保険被保険者資格喪失届」とあわせて「雇用保険被保険者離職証明書」を作成して、ハローワークへ提出します。賃金支払状況や被保険者であった期間、離職理由などを記載します。記載内容に基づき給付日数や日額が決定しますので、記載に誤りが無いよう注意が必要です。

手続きの期限は、従業員が退職した日の翌日から10日以内と決まっていますので、退職後速やかに手続きをおこないましょう。

② 離職証明書を提出後、ハローワークから「離職票1」と「離職票2」が送付されてきます。ハローワークから離職票が届いたら、2通とも退職者へ速やかに送付しましょう。

なお、離職票1と2の役割は次のとおりです。

離職票1・・・失業給付金を振り込む銀行口座の申請用

離職票2・・・離職理由や離職前の賃金状況を把握するための書類

なお、退職後すぐに再就職の見込みなどがあり離職票の発行を希望しない退職者がいた場合は、発行手続きをおこなう必要はありません。ただし、離職時に59歳以上である退職者については、本人が交付を希望しない場合であっても手続きをおこなわなくてはいけません。

雇用保険被保険者証

雇用保険被保険者証は、雇用保険の加入者であることを証明する書類です。なお、雇用保険は以下の条件に該当する場合は、必ず加入手続きをおこなわなくてはいけません。

  • 週の所定労働時間が20時間以上である
  • 同一の事業主に31日以上続けて雇用されることが見込まれる

雇用保険被保険者証は、失業保険を受け取るために離職票とあわせて提出が必要となる書類です。また、再就職先で新たに雇用保険の加入手続きをおこなう際にも必要となりますので、会社で保管している場合は、忘れずに退職者へ返却しましょう。雇用保険の加入資格を喪失するための手続きに関しては、先述でも解説した「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を作成し、ハローワークへ所定の期日までに手続きをおこなう必要があります。

基礎年金番号通知書(年金手帳)

基礎年金番号も退職の際に必要です。基礎年金番号は基礎年金番号通知書もしくは年金手帳で確認可能です。

いずれも会社が預かるものではなく、基礎年金番号が確認でき次第、すみやかに社員へ返却すべきです。しかし、提出したまま会社で保管されている場合もあります。

その場合、退職時に退職者へ返却しなくてはいけません。年金手帳は、退職者が国民年金に切り替える際や、再就職先で新たに社会保険に加入する際に必要となります。会社側がおこなう手続きとしては、社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失の手続きがあります。

手続きの流れは次の通りです。

【社会保険の資格喪失手続きの流れ】

①「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を作成します。作成に必要な書類は、日本年金機構のサイトよりダウンロードすることができます。

参照:被保険者資格喪失届|日本年金機構

② 協会のけんぽに加入している事業者の場合は、退職者から回収した健康保険証が必要となります。また、高齢受給者証や健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証が発行されている場合は、それらも回収する必要があります。

健康保険組合の場合は、健康保険組合の方へ健康保険証を提出するため、年金事務所への提出は不要です。

③ 書類の準備ができたら、退職日から5日以内に事業所を所轄する年金事務所へ提出します。提出方法は、持参または郵送、電子申請によっておこなうことができます。

資格喪失日は退職日の翌日となります。資格喪失日の前日まで保険料が発生するため、月末に退職した場合は、給与の締め日によっては2ヵ月分の保険料を最後の給与から徴収しなくてはいけませんので、注意が必要です。

源泉徴収票

源泉徴収票とは、その年に会社から支払われた給与と支払った所得税の税額が記載された書類です。

年の途中で退職した場合は、転職先で年末調整をおこなうため源泉徴収票の発行が必要となります。その年の1月1日から退職日までの給与に基づき「給与所得の源泉徴収票」を作成し、退職後1ヵ月以内に退職者に送付します。

退職金を支給する場合は、「退職所得の源泉徴収票」を別途作成して一緒に送付します。

退職証明書(希望された場合)

退職証明書は、従業員が退職したことを証明する書類です。退職者の転職先の企業にて、提出が求められる場合があります。

その際には、退職者に請求された内容のみを記載する必要があります。

退職手続きの際に会社が届け出る書類のチェックリスト

ここからは、退職手続きの際に会社側が届出をおこなう必要がある書類について解説します。公的機関への提出書類に抜け漏れや遅延することがないよう、チェックリストとしてご活用ください。

雇用保険被保険者資格喪失届

「雇用保険被保険者資格喪失届」とは、従業員が退職する際に雇用保険の資格を喪失させるための届出です。退職日の翌日から10日以内に提出する必要があるため、すみやかに手続きをおこないましょう。届出の提出方法には、「郵送」、「ハローワークの窓口」、「電子申請」の3つの手段が存在します。

従業員が基本手当(いわゆる失業保険の給付金)を希望する場合は、離職票が必要となるため、「雇用保険被保険者離職証明書」も同時に提出する必要があります。

また社会保険から国民健康保険へ切り替える場合には、従業員が役所へ手続きをする必要があるため、退職者には漏れなく伝えるようにしましょう。

健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届

「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」とは、健康保険と厚生年金保険の資格を喪失した際に年金事務所へ提出する必要がある書類です。

提出期日は、資格喪失の事実が発生した日から5日以内と定められています。提出が遅れてしまうと、退職者が他の健康保険へ加入のタイミングが遅れてしまうなどの弊害が生じるため、すみやかに対応しましょう。

退職する従業員から返却してもらうべき書類・物品のチェックリスト

従業員が退職する際には、返却してもらう必要がある書類、物品が複数存在します。

スムーズに退職手続きを進めるためにも、以下の返却してもらうものをあらかじめ把握しておきましょう。

  • 健康保険被保険者証
  • 貸与物(PC、社用携帯、社員証、カードキー、社章等)
  • 社費で購入した共有物(書籍、文具等)
  • 通勤定期券
  • 顧客情報が含まれている書類・データ等

退職手続きの書類に関する注意点

ここからは、退職手続きの書類に関して注意すべきポイントについて解説します。

退職手続きで必要な書類は、法律に沿って期日内に正しい内容を記載することが求められます。退職手続きを始める前に、今一度重要なポイントをおさらいしましょう。

書類の内容や受け渡しに抜け漏れがないように入念に確認する

退職手続きでは、上述したように退職者との間での受け渡しが頻繁に発生することが想定されます。返却漏れが発生すると、郵送の工数や再度出社してもらうなど、二度手間が生じてしまうため、注意しましょう。

退職手続きの際に従業員に渡す書類のチェックリスト、退職手続きの際に会社が届け出る書類のチェックリスト、退職する従業員から返却してもらうべき書類・物品のチェックリストを確認するほか、マニュアルを作成するなどして抜け漏れが起きないよう仕組化していきましょう。

遅延がないようスケジュールに余裕をもって手続きをおこなう

退職手続きの必要書類の提出が期日内におこなえなかった場合、以下の弊害が生じる危険性があります。

  • 退職者の失業保険の受給額が減少してしまう
  • 健康保険への加入が遅れ、保険証がもらえない期間が発生する

このようなトラブルが生じないためにも、余裕のあるスケジュールに沿って手続きを進めていきましょう。

退職手続きに必要な書類について事前にしっかりと把握しておきましょう

退職手続きに必要な書類は、退職者が失業保険の手続きをしたり、転職先での社会保険の加入手続きをしたり、年末調整などをおこなったりする際に必要となる書類のため、退職後速やかに作成し送付をしなくてはいけません。

書類の中には、所定の手続きをおこなわないと発行できないものもありますので、事前に手続きの流れを掴んでおき、スムーズに作業できるようにしておくことも大切です。退職者とのトラブルを回避するためにも、しっかりとこの4点の書類については、手続きの流れや要点を押さえておきましょう。

【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。

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