働き方改革が叫ばれる中、経済産業省が2018年に導入を呼びかけ、日本国内でも注目を集める人事制度となった「サバティカル休暇」。
社員に長期休暇を付与する制度としてヨーロッパではすでに広く浸透しており、日本国内でも大企業を始め、導入する企業が少しずつ増加してきています。
今回は、今話題の「サバティカル休暇」の定義に加え、メリットとデメリット、制度を導入する際のポイントや注意点を、国内での導入事例と共にご紹介します。
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2023年は一部企業を対象に人的資本開示が義務化されたほか、HR関連での法改正に動きが見られました。
2024年では新たな制度の適用や既存のルールの変更・拡大がおこなわれます。
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1.サバティカル休暇とは
サバティカル休暇とは、一定の長期間勤続者に対して与えられる長期休暇の制度を指します。長期休暇の期間は企業によって異なりますが、短くとも1ヶ月以上取得できる企業が一般的です。
通常の有給休暇や年次休暇とは異なり、サバティカル休暇の取得理由には制限がなく、休暇取得者の能力の向上や開発を目的とした休暇であることが大きな特徴です。
既にヨーロッパを始めとする欧米各国では浸透している制度ではありますが、日本でも徐々に注目度が高まってきました。
また、経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」に則したリカレント教育(学び直し)の推進に伴い、サバティカル休暇制度の導入を企業に呼びかけたことで国内でも大企業を始めとし、少しずつ普及されつつあります。
2.サバティカル休暇のメリット・デメリット
続いてサバティカル休暇のメリットとデメリットをご紹介していきます。
サバティカル休暇のメリット
サバティカル休暇の一番のメリットは、社会人にとって貴重な時間を長期間に渡って確保できるという点です。
今までやろうと思っていたけど、時間がなくてできなかったことができるようになる、という点で優れた制度になります。
新しい経験や知識を得ることができる
通常は1ヶ月以上会社から離れることができるため、海外留学やボランティア活動、社会人インターンなど新しい経験を積んでもらうことが可能です。
普通に社内で仕事をしているだけでは出会うことのできない人や知識に触れる機会を得ることができ、会社に戻った際には新しいアイディアを生む大きな要因となります。
現在持っている能力をさらに向上させることができる
大学院やビジネススクールの通学、資格の取得をすることで、現在持っている専門的な能力の開発をすることができます。
いつもは業務に追われている社員も、サバティカル休暇の時間を利用することで効率的に学習をすることが可能です。
仕事に復帰した後は、向上した能力を存分に社内で発揮してもらうことで、会社にも大きなメリットを生むことができます。
退職を防ぐことができる
企業側からすると、退職のリスクを軽減できるのが大きなメリットの一つと言えます。
退職することでしか得ることができなかった経験を、サバティカル休暇を利用することで得ることができるほか、介護や育児などの要因による退職も防ぐことができます。
企業に対するイメージアップに繋がる
サバティカル休暇を導入していること自体が、社員や働き方の多様性を大事にしている企業だと認識されることも多く、企業イメージの向上に繋がることも期待できます。
サバティカル休暇のデメリット
続いて、デメリットを見ていきましょう。
離職の可能性がある
企業視点からして一番のデメリットとなりうるのが、サバティカル休暇中に新しいことを学んだ結果、業務とは別の分野や物事に興味が湧き、結果的に離職してしまうことです。
企業側はこれを防ぐために、サバティカル休暇に必要な条件をしっかりと整える必要があるでしょう。
復職後の職場環境への適用が困難となる可能性がある
ある程度長い期間、職場環境から離れると、業務内容や人間関係など様々な状況に変化があるため、その環境に適用する必要があります。
このような障害を少しでも小さくするために、制度を利用する社員が復職後にスムーズに業務に戻れるよう、フォローアップが必要になります。
社員が休暇を利用することで現場が混乱する可能性がある
一定の長期間勤続者が長い期間業務から離れると、他の社員へ業務のしわ寄せが行き、現場が混乱にする可能性もあります。
サバティカル休暇の取得前には業務の管理や引き継ぎなどを制度化する必要があります。
3.サバティカル休暇を導入する際のポイント
先述したように、サバティカル休暇にはいくつかのメリットに加えて、制度の利用そのものがデメリットとなる可能性もあります。
デメリットを防ぐためにはどうしたらいいのか、素朴な疑問点とともに、サバティカル休暇を導入する際のポイントをご紹介します。
サバティカル休暇中の給与はどうなるのか
サバティカル休暇は、労働基準法などで定められた制度ではないため、制度利用中の社員に対して、有給での休暇とするか、もしくは無給での休暇とするかは、企業の裁量に任されています。
日本国内での多くの企業は、無給としながらも、一定の金額を休暇手当として支給しています。
サバティカル休暇導入の目的と合わせて検討するのが良いでしょう。
サバティカル休暇の期間はどれくらいか
サバティカル休暇の期間は、欧米では1ヶ月以上、1年未満が一般的とされていますが、欧米諸国に比べるとまだまだ制度が浸透していない日本では、1ヶ月程度の休暇期間が一般的となっています。
企業によっては1週間程の短期間を制度として設定しているところもあり、こちらもサバティカル休暇導入の目的と合わせて検討するのが良いでしょう。
サバティカル休暇の取得目的を管理する
一般的には取得理由には制限がないサバティカル休暇ですが、日本国内では経済産業省によるリカレント教育(学び直し)が推奨がされた結果として注目度が高まってきたため、休暇の取得目的を管理し、場合によってはレポートの提出を義務付ける企業もあります。
サバティカル休暇導入の目的にもよりますが、学び直しのための休暇と定義する場合は、休暇取得目的の管理を検討する必要があります。
サバティカル休暇の周知、および復職後のバックアップ体制を整える
社員にサバティカル休暇の利用を促すために、全社員にしっかりと周知する必要があります。
また、ある一定の条件が合えば、全員が取得できる制度だと周知させることにより、サバティカル休暇を利用する社員が復職した際に、職場環境の適用がより容易となるメリットもあります。
4.サバティカル休暇を導入している企業事例
では、日本企業はどのようにサバティカル休暇を導入しているのでしょうか。
今回は、以下4社の事例をご紹介します。
ヤフー:レポート提出義務化と給与1ヶ月分の特別支援金
現在、Zホールディングス傘下のヤフー(Yahoo! JAPAN)は、2013年という比較的早い時期からサバティカル休暇を取り入れた企業の一つです。
社員自身が自分のキャリアや働き方を見つめ直し、さらなる成長に繋げることを目的としており、勤続10年以上のスタッフが、最短で2ヶ月、最長で3ヶ月、制度の利用が可能となっています。
休暇利用中は、特別支援金と称して給与1ヶ月分が支給されます。
特徴的なのが、休暇取得後にレポートの提出を必須としており、休暇の取得目的を明確にできるようにしています。
ソニー:最長5年、自由度が高い制度の運用
ソニーでは「フレキシブルキャリア休職制度」という名の下、サバティカル休暇を導入しており、その名の通り非常に自由度の高い休暇制度となっています。
その期間も最長で5年となっており、留学や配偶者の海外赴任同行など、取得目的も多様です。
配偶者の海外赴任同行の場合は、復職まで非常に長い時間がかかることが多いため、「休職キャリアプラス制度」の名の下に週2日程度のテレワークを採用するなど、職場復帰がしやすい制度も導入しています。
リクルートテクノロジーズ:取得目的自由、約1ヶ月の休暇
リクルートテクノロジーズでは、「STEP休暇」という名称でサバティカル休暇が導入されています。
勤続3年以上の社員に対し、3年ごとに最長連続28日間の休暇取得が可能です。
休暇の取得目的は自由となっており、一律30万円の休暇支援金が支給されます。
ぐるなび:3日間の休暇!プチ・サバティカル休暇
他の企業とは異なり、ぐるなびは「プチ・サバティカル休暇」という制度を導入しています。
勤続5年の社員に対し、3日間の連続休暇を付与しています。
新たな経験や知識の学びや、キャリアの振り返りなど、自由度の高い制度であり、活動支援金と称して2万円の手当が支給されています。
5.まとめ
サバティカル休暇は非常に自由度の高い休暇制度であり、企業側の導入目的によってアレンジが可能な優れた制度になります。
注目度こそ高くなってきましたが、まだまだ日本ではあまり浸透していない制度のため、導入が難しく感じることも多いかもしれません。
しかし、制度の導入にはメリットも非常に多く、また経済産業省お墨付けの制度のため、運用する価値は大いにあります。
世代によっては、働き方や生き方に対する価値観も大きく異なるため、注意点や企業事例を参考に、サバティカル制度の導入をぜひ検討してみてください。
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