サバティカル休暇とは?メリット・デメリットや注意点、導入事例をわかりやすく解説 |HR NOTE

サバティカル休暇とは?メリット・デメリットや注意点、導入事例をわかりやすく解説 |HR NOTE

サバティカル休暇とは?メリット・デメリットや注意点、導入事例をわかりやすく解説

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従業員満足度を高めるために「サバティカル休暇制度」を設ける企業もあります。サバティカル休暇を導入することで、従業員は長い期間休暇を取ってリフレッシュすることができます。

この記事では、サバティカル休暇とはどのような制度なのか、メリットとデメリットを踏まえてわかりやすく解説します。また、サバティカル休暇を導入する際のポイントや、実際に導入している企業事例も紹介します。

1. サバティカル休暇とは?

働き方改革やワークライフバランスを実現するため、サバティカル休暇を導入している企業もあります。サバティカル休暇とはどのような意味なのでしょうか。ここでは、サバティカルとは何かを説明したうえで、サバティカル休暇の意味・定義や注目される理由・背景について詳しく紹介します。

1-1. サバティカルとは?

サバティカルは英語で「sabbatical」と表記され、6日間の労働を終えた後の7日目を安息日とする旧約聖書のラテン語 「sabbaticus」に由来します。また、サバティカルは、日本語で「安息」「休息」などの意味を持ちます。

1-2. サバティカル休暇の意味や定義

サバティカル休暇とは、長期間勤続者に対して与えられる使途が定められていない長期休暇制度を指します。サバティカル休暇の期間は企業によって異なりますが、短くとも1カ月以上取得できる企業が多いです。また、数年の休暇を取得できる企業もあるようです。

サバティカル休暇は、企業が独自で定める特別休暇(法定外休暇)に該当します。サバティカル休暇は、有給休暇などのように法律で定められていないので、必ずしも設ける必要はありません。

関連記事:特別休暇と有給の違いについて具体例でわかりやすく解説

1-3. 日本における最新の長期休暇取得状況

厚生労働省の令和5年就労条件総合調査によると、特別休暇のある企業は55.0%、1週間以上の長期休暇制度(夏季休暇、病気休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇、教育訓練休暇を除く)のある企業は14.2%です。なお、企業規模が大きくなるほど、特別休暇や1週間以上の長期休暇制度のある企業は多くなる傾向があります。

企業規模

特別休暇制度のある企業

1週間以上の長期休暇制度のある企業

1,000人以上

76.9%

30.6%

300人~999人

70.0%

21.4%

100人~299人

62.7%

17.1%

30人~

50.6%

12.1%

令和5年調査計

55.0%

14.2%

参考:令和5年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

このような結果から、現状、特別休暇を導入している企業は一定数ありますが、サバティカル休暇のような1週間以上の長期休暇制度を設けている企業はまだまだ少ないといえます。

1-4. サバティカル休暇が注目されている背景や理由

サバティカル休暇は、1990年頃からヨーロッパを始めとする欧米各国において普及し始めました。経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」に則したリカレント教育(学び直し)の推進に伴い、サバティカル休暇の導入を企業に呼びかけたことで、日本でも大企業を始めとし、少しずつ普及されつつあります。このように、働き方改革やリカレント教育推進の影響もあり、サバティカル休暇が注目されるようになっています。

関連記事:人生100年時代に向けて|求められる人物像の明確化とリカレント教育の重要性

2. サバティカル休暇のメリット

サバティカル休暇を導入することで、企業と従業員ともにさまざまなメリットが得られます。ここでは、サバティカル休暇を導入するメリットについて詳しく紹介します。

2-1. 新しい経験や知識が得られる

サバティカル休暇を導入することで、従業員は数カ月、数年単位で会社から離れられるため、海外留学やボランティア活動、社会人インターンなど新しい経験を積むことができます。社内で仕事をしているだけでは出会うことのできない知識や経験に触れる機会が得られ、会社に戻った際には新しいアイディアを生む大きな要因となります。

2-2. スキルアップが期待できる

サバティカル休暇を導入すれば、従業員は大学院やビジネススクールの通学、資格の取得などに挑戦する時間を十分に確保することができます。これにより、これまで以上に従業員のスキルアップが期待できます。仕事に復帰した後は、向上した能力・スキルを存分に社内で発揮してもらうことで、組織全体の生産性向上にもつながります。

2-3. 従業員エンゲージメントが向上する

サバティカル休暇の導入により、従業員は在籍しながら、社外でやりたいことに挑戦できる機会をもつことができます。従業員は自社のことを「社員を大切にしている会社」だと感じ、帰属意識が高まり、従業員エンゲージメントが向上します。結果として、定着率や生産性の向上が期待できます。

関連記事:従業員エンゲージメントとは?高める施策や高い企業の事例を紹介

2-4. 退職を防止できる

自社にサバティカル休暇のような長期休暇制度がない場合、海外留学や大学・大学院進学などにチャレンジするためには、一度会社を離れなければならない可能性があります。スキルアップやキャリアップなどの上昇志向をもつ従業員が退職・離職してしまうのは、企業にとって大きな損失といえます。

サバティカル休暇を導入することで、自社に在籍しながら、従業員は社外でやりたいことにチャレンジすることが可能です。これにより、優秀な従業員の退職を防止し、離職率を下げることができます。

2-5. 企業のイメージアップにつながる

サバティカル休暇を導入している企業は、まだまだ少ないのが現状です。福利厚生制度の一つとしてサバティカル休暇を導入すれば、従業員や働き方の多様性を大切にしている会社だと世間に認知され、企業のイメージアップが期待できます。これにより、求人応募者が増加し、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。また、取引先やステークホルダーなどの印象が良くなることで、事業もスムーズに進めやすくなります。

関連記事:福利厚生とは何か?種類や導入形態を簡単にわかりやすく解説!

3. サバティカル休暇のデメリット

サバティカル休暇を導入する場合、メリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、サバティカル休暇を導入する際のデメリットについて詳しく紹介します。

3-1. 離職の恐れがある

サバティカル休暇を導入することで、従業員は自社に在籍しながら長期休暇を取得できるので、一見すると、離職を防止することができると考えられます。しかし、サバティカル休暇中に新しいことを学んだ結果、業務とは別の分野や物事に興味が湧き、離職してしまう可能性もあります。そのため、サバティカル休暇を導入する際は、待遇・評価を見直したり、定期的に連絡を取ったりするなど、離職を防ぐための対策をおこなうことが大切です。

3-2. 復職後の職場環境への適応が難しい

従業員がサバティカル休暇を取得して、ある程度長い期間、職場環境から離れると、人間関係や仕事内容などに変化が生じるため、その環境に適応するのが難しく、モチベーション低下や離職につながる恐れがあります。サバティカル休暇を取得した従業員が復職後スムーズに業務に戻れるよう、フォローアップの体制もきちんと整備することが大切です。

3-3. 現場が混乱する可能性がある

従業員がサバティカル休暇を取得すると、他の社員へ業務のしわ寄せが行き、現場が混乱する可能性もあります。サバティカル休暇を導入する際は、申請から取得までの期間を十分に取り、スムーズに業務の引継ぎができるようにしましょう。また、サバティカル休暇の取得後、復帰後の人員調整がしやすいような運用体制を構築することも大切です。

4. サバティカル休暇を導入する際のポイント

サバティカル休暇のデメリットを防ぐためにも、あらかじめ導入の注意点を理解しておくことが大切です。ここでは、サバティカル休暇を導入する際のポイントについて詳しく紹介します。

4-1. サバティカル休暇の導入目的を明確にする

サバティカル休暇をただ導入しても、目的が曖昧なままだと、制度が形骸化してしまう可能性があります。まずはサバティカル休暇を導入する目的を明確にしましょう。目的が明確化されることで、どのようなサバティカル休暇制度を設計すべきか、具体的な内容が決めやすくなります。

4-2. サバティカル休暇中の給与制度を定める

サバティカル休暇は、労働基準法などの法律で定められた制度ではないため、給与は有給・無給のどちらでも問題ありません。ただし、サバティカル休暇取得中の収入が減少し、従業員の生活が苦しくなる可能性も考えられます。そのため、原則として無給としながらも、休暇手当を支給するなど、サポートをおこなうことが推奨されます。

4-3. サバティカル休暇制度の内容を就業規則に記載する

目的にあわせてサバティカル休暇の給与や期間、対象者などの細かい条件を定めたら、就業規則にきちんと明記しましょう。労働基準法第89条により、常時従業員数10人以上の企業は休暇制度について就業規則に記載し、届け出をする義務があります。就業規則に記載するだけでは、サバティカル休暇制度について理解されず、従業員に活用されない可能性があります。そのため、サバティカル休暇を導入したら、研修・セミナーなどを開催し、制度の仕組みや利用方法、注意点などを周知する機会を設けることが大切です。

(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

引用:労働基準法第89条|e-Gov

関連記事:就業規則とは?労働基準法の定義や記載事項、作成・変更時の注意点を解説!

4-4. サバティカル休暇を取得しやすい環境を整備する

「サバティカル休暇を取得したら待遇が悪くなる」「サバティカル休暇から復帰するのが不安」などと考える従業員もいるかもしれません。このような課題・不安があると、従業員は積極的にサバティカル休暇を取得できない可能性があります。サバティカル休暇から復帰後のキャリアなどを整備し、従業員が安心して制度を利用できる環境を構築することが大切です。

4-5. 既存の従業員へのフォローも忘れない

サバティカル休暇制度は、勤続〇年以上の従業員が取得できるなどと、対象者の条件を定めるのが一般的です。サバティカル休暇を取得できる対象者に偏りが出ると、従業員の不満につながる恐れがあります。また、サバティカル休暇を取得する従業員が生じると、既存社員の仕事量が増加し、業務負担が大きくなる可能性もあります。そのため、サバティカル休暇を導入する際は、既存の従業員へのフォローも忘れないようにしましょう。

5. サバティカル休暇を導入している企業事例

サバティカル休暇を導入している企業の事例を参考にすることで、導入イメージが湧き、自社のニーズにあわせて休暇をスムーズに導入することができるようになります。ここでは、サバティカル休暇を導入している企業事例を4つ紹介します。

5-1. ヤフー:レポート提出義務化と給与1ヶ月分の特別支援金

現在、Zホールディングス傘下のヤフー(Yahoo! JAPAN)は、2013年という比較的早い時期からサバティカル休暇を取り入れた企業の一つです。社員自身が自分のキャリアや働き方を見つめ直し、さらなる成長に繋げることを目的としており、勤続10年以上のスタッフが、最短で2カ月、最長で3カ月、制度の利用が可能となっています。サバティカル休暇利用中は、特別支援金と称した給与1カ月分が支給されます。特徴的なのが、休暇取得後にレポートの提出を必須としており、休暇の取得目的を明確にできるようにしています。

5-2. ソニー:最長5年、自由度が高い制度の運用

ソニーでは「フレキシブルキャリア休職制度」という名の下、サバティカル休暇を導入しており、その名の通り非常に自由度の高い休暇制度となっています。その期間も最長で5年となっており、留学や配偶者の海外赴任同行など、取得目的も多様です。配偶者の海外赴任同行の場合、復職まで非常に長い時間がかかることが多いため、「休職キャリアプラス制度」の名の下に週2日程度のテレワークを採用するなど、職場復帰がしやすい制度も導入しています。

5-3. リクルートテクノロジーズ:取得目的自由、約1ヶ月の休暇

リクルートテクノロジーズでは、「STEP休暇」という名称でサバティカル休暇が導入されています。勤続3年以上の社員に対し、3年ごとに最長連続28日間の休暇取得が可能です。休暇の取得目的は自由となっており、一律30万円の休暇支援金が支給されます。

5-4. ぐるなび:3日間の休暇!プチ・サバティカル休暇

ぐるなびは「プチ・サバティカル休暇」という制度を導入しています。勤続5年の社員に対し、3日間の連続休暇を付与しています。新たな経験や知識の学び、キャリアの振り返りなど、自由度の高い制度で、活動支援金と称した2万円の手当も支給されます。

6. サバティカル休暇を導入して働きやすい会社を作り出そう

サバティカル休暇は自由度の高い休暇制度で、企業側の導入目的によって柔軟に制度内容を決めることができます。注目度こそ高くなってきましたが、まだまだ日本ではあまり浸透していないため、導入が難しく感じるかもしれません。しかし、サバティカル休暇を導入すれば、企業と従業員ともに多くのメリットが得られます。まずはサバティカル休暇の仕組みをきちんと理解したうえで、導入を検討しましょう。

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