人生100年時代に向けて|求められる人物像の明確化とリカレント教育の重要性 |HR NOTE

人生100年時代に向けて|求められる人物像の明確化とリカレント教育の重要性 |HR NOTE

人生100年時代に向けて|求められる人物像の明確化とリカレント教育の重要性

  • 組織
  • 組織・その他

※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

経済産業省が主導となっている「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(以下、人材力研究会)を取材させていただきました。

今回は人材力研究会の第1回目で、以前にHR NOTEで記事にもさせていただいた「必要な人材像とキャリア構築支援に向けた検討ワーキング・グループ(以下、人材像WG)」と、「中小企業・小規模事業者・スタートアップ等における中核人材の確保・活用促進に向けた検討ワーキング・グループ(以下、中核人材確保WG)」の2つのワーキンググループでの議事を踏まえた上で人材力研究会が経済産業省にておこなわれました。

本記事では第1回人材力研究会のレポートとして、経済産業省の世耕弘成大臣のお話や、有識者3名のプレゼンテーションをご紹介します。

 人材力研究会とは

人材力研究会に関しては『「人生100年時代」を生き抜くための働き方と、必要な「社会人基礎力」とは?|経済産業省 人材力研究会より』でも、概要をご紹介しましたが、再度簡単に人材力研究会についてご紹介します。

政府をあげて2016年6月に策定された「1億総活躍プラン」、2017年3月に策定された「働き方改革実行計画」。どちらも日本が抱える社会問題、少子高齢化社会によって生み出される、人材不足の解消や、長時間労働の是正のために人材力研究会が発足しました。

第四次産業革命による急激な産業構造の変化に伴い、これまでの「教育を受ける」「仕事をする」「引退して余生を過ごす」といった『Work for Life』から、『Work as Life』というように、「学ぶ」、「働く」、「生きる」を全て一体化して考えていかないと、生産性や人材不足を解消することができません。

そこで、人材力研究会では、人生100年時代を踏まえ「リカレント教育の充実」「転職・再就職の円滑化」「必要とされる人物像の明確化」「産業界として果たすべき役割」の4つをパッケージで検討し、安倍内閣総理大臣が議長を務める「人生100年時代構想会議」にインプットをしていき、私たちの未来の働き方、生き方を検討しています。

【人材力研究会に関する前の記事を読む】
「人生100年時代」を生き抜くための働き方と、必要な「社会人基礎力」とは?|経済産業省 人材力研究会より

世耕 弘成 経済産業大臣の言葉

第1回人材力研究会は11月6日に開催がされ、米国トランプ大統領の訪日で多忙な経済産業省・世耕弘成大臣も出席されていました。

世耕大臣は、

「人生100年時代」において、「ミドル世代」、とりわけ「就職氷河期世代」などへのリカレント教育が必要。そのためには、「何を学び」、「どのように活用していくのか」を明確にする必要がある。10年前の「社会人基礎力」を見直し、中小企業の人手不足、継承問題などについても検討していく。必要に応じて官邸「人生100年時代構想会議」にも提案していきたい。

また、日本全体での効率的な人的配置を考えないといけない。中小では後継者不足、人手不足などの問題があり、人材のミスマッチがある。兼業・副業、労働移動など多様な働き方を促していかないといけない。

とコメントを残し、この人材力研究会の意義や、中小企業が抱えている課題に対して真摯に向き合う姿勢を見受けることができました。

有識者によるプレゼンテーション

第1回人材力研究会のテーマは、「研究会全体の進め方」、「リカレント教育」及び「転職・兼業・副業・複業、出向等の円滑化」についてでした。

このテーマに合わせて3名のゲストスピーカーが有識者としてプレゼンテーションをおこないました。

株式会社 i-plug 代表取締役 中野 智哉氏

新卒採用向けのダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」を提供している株式会社i-plugの代表取締役 中野氏によるプレゼンテーション。

自社サービス「OfferBox」に登録している学生データと、株式会社イーファルコンが提供している「eF-1G」という適性検査のデータを分析し研究しいた結果や、企業が学生のどのようなデータを見ながら採用活動をしているのかといった研究結果を発表されていました。

結果の内容には

  • 30日以上のインターンを経験した学生、長期留学を経験した学生は社会人基礎力が向上している
  • 体育会系の部活に所属している学生の規律性は高いが、サークルに属している学生の規律性は低い
  • 長期留学を経験した学生は社会人基礎力がかなり高い傾向にあるが、規律性は低い

などの調査結果が出ていました。

人の社会人基礎力に変化をもたらす要因が、大学生時代の経験にあるのか、それともそれ以前の経験にあるのか、それとも会社で働きながら経験していくものなのか、さらに研究を進め、リカレント教育を展開していく方法や、人生100年時代に有効な結果を出していきたいと中野氏は仰っていました。

AeroEdge株式会社 執行役員 永井 希依彦氏

航空機のエンジンの製造をおこなっている、2016年に誕生したAeroEdge株式会社。従来は、海外大手の航空会社では国内の重工会社が案件を受けて、下請け会社がパーツを製造していくという流れだったものを、一気通貫で製造できるようにした会社です。

このAeroEdgeという中小企業、そして製造業という環境において、どのようにして中核人材を確保して来たのかをプレゼンしていただきました。

中核人材を採用しても、もともと大企業で活躍していた人材が、中小企業やスタートアップといった環境に来てしまうと、なかなか活躍ができないケースもあります。

AeroEdgeはこの1年半の期間で、大企業人材が中小企業で働いて活躍するためにには3つの重要な定義があるといいます。

  • 過去の経験を取り払ってでもゼロベースで取り組む姿勢
  • 未経験あるいは低付加価値な業務にも積極的に取り組む姿勢
  • 明確に身につけたい経験値や、将来のキャリア像を持っていること

しかし、この3つの定義は、誰しもが最初から持っているわけではなく、執行役員を中心とした自社のリーダーが、ビジョンやミッションについて、何度もミッションやビジョンについて討議を重ねることによって、候補者の信頼を獲得していかなければいけないとのこと。

なかには、給与が半分ほどになってしまう候補者もいるようです。しかし、社内制度を変えたり、勤務環境を柔軟に整備したりすれば、さらにキャリアを伸ばすきっかけにも繋がるので、入社を決めることにも繋がるようです。

このような取り組みもあり、起業から2年弱の会社でも売上を伸ばすことができ、中核人材の採用にも成功しているという成果にもつながっているようです。

筑波大学 学長補佐 落合 陽一氏

筑波大学の教員を務めながら、学長補佐を務めている落合氏。その他にも、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社の代表取締役や、メディアアーティストなど多岐に渡って活躍をされています。

落合氏が今回お話されたテーマは、これからの社会の中で必要になってくる人材の要件と、そのために必要になる教育の拡充についてでした。

近年は、インターネット技術革新によって、5年前までは修士論文レベルだった実験や開発を、今では中学生でもできるような時代になってきているといいます。

しかし、大企業などにおいては優秀な新入社員も雑用などをしているケースが多く、時代・文化の飛躍を活かしきれていないとのこと。

従来の高等教育では「制約、義務、協調、統一感」を大事にして人材を育ててきたが、この教育では新しいものがうまれない。「自由、責任、チームワーク、コミュニケーション」を育むことが出来れば、一人ひとりが違ったセンスや才能を活かしたまま、新しいものができるといいます。

社会・企業が時代に沿った成長ができるように、求められる人材像やスキルを明確にして、それに対応したリカレント教育をおこなえる仕組みづくりが重要だと落合氏は仰っていました。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

このようなプレゼンテーションを踏まえた上で、「人生100年時代」に向けた「働く」「学ぶ」に対しての意見交換がおこなわれました。

【意見交換(抜粋)】

  • 大企業では、40歳までに次の経営者層の社内選抜が終了しているが、その事実を知る当事者はおらず、社外に出ることも選択肢として気づかせれるような機会をつくるべきかもしれない。
  • 社会人で大学院や学びの場に通っている半数程度は、その事実を会社にいえないでいる。このような風潮を変える必要がある。
  • 日本の企業はまだまだ保守的。10年後には、今持っているスキルが使えなくなってしまうような時代の中で、人事評価の軸をもっと柔軟にして、中途採用の強化をおこない、流動化を高めなければいけない。

今の働き方や、日本の企業や社会が持つ問題を解決して、新しい働き方ができるように社会を変えていく必要性に対しての意見が飛び交っていました。

人生100年時代に必要な人材像がきちんと落とし込まれることで、企業の取り組みだけでなく、教育の部分から変えていくことが可能になり、今のミドル層の方々も時代に合わせた経営、事業方針を策定していけるのではないでしょうか。

人事が担当する、採用、人材育成などの観点においても、この人材力研究会から出てきたアウトプットを取り組んでいくことで、大きな企業成長に繋がるかもしれません。

【出席者一覧】

  • 委員
    今野 浩一郎  学習院大学 名誉教授 「中核人材確保WG 座長」
    宇佐川 邦子  株式会社リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター長
    小城 武彦   株式会社日本人材機構 代表取締役社長
    垣見 俊之   法政大学 名誉教授 「人材像WG 座長」
    水谷 智之   一般社団法人地域・教育魅力化プラットフォーム 代表理事
    宮島 忠文   株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長
    西村 創一郎  株式会社HARES 代表取締役
    米田 瑛紀   エッセンス株式会社 代表取締役
  • ゲストスピーカー
    中野 智哉   株式会社i-plug 代表取締役
    永井希依彦   AeroEdge株式会社 執行役員
    落合陽一    筑波大学 助教/学長補佐

【研究会概要】

人事業務に役立つ最新情報をお届け!メールマガジン登録(無料)

HR NOTEメールマガジンでは、人事/HRの担当者として知っておきたい各社の取組事例やリリース情報、最新Newsから今すぐ使える実践ノウハウまで毎日配信しています。

メルマガのイメージ

関連記事

DE&Iの問題を可視化するための4つの視点

DE&Iの問題を可視化するための4つの視点

多様性(ダイバーシティ)を包摂(インクルージョン)すること、さらにインクルージョンの実行性を高めるために、多様な違いによる不均衡を取り除いた先にある公平性(エクイティ)の考えを取り入れた「DE&I」を基本戦略にす […]

  • 組織
  • ダイバーシティ&インクルージョン
2024.11.13
HR NOTE 編集部
事例紹介④:株式会社テレコムスクエア|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯10

事例紹介④:株式会社テレコムスクエア|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント♯10

第6回までは、効果的な仕事と介護の両立支援の取り組み方として、経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」のステップに沿って、それらの具体的な取り組み方法について解説してきました。 今回の第7回~第1 […]

  • 組織
  • ダイバーシティ&インクルージョン
2024.11.12
松野天音
今取り組むべき、ウェルビーイング経営:【第一回】そもそも「ウェルビーイング」とは何か?

今取り組むべき、ウェルビーイング経営:【第一回】そもそも「ウェルビーイング」とは何か?

昨今、HR界隈で大きな注目を集めているテーマが「ウェルビーイング(Well-being)」です。実際にウェルビーイング経営を掲げる企業も増えてきています。 しかし、どのような施策が効果的なのか分からず、悩んでいるケースが […]

  • 組織
  • 企業文化・組織風土
2024.10.30
松野天音
日本企業の「育て方改革」とその最前線|旭化成による人材育成「新卒学部」に関する事例発表会

日本企業の「育て方改革」とその最前線|旭化成による人材育成「新卒学部」に関する事例発表会

社会人向けオンライン学習サービスを提供する株式会社Schooは、2022年12月より旭化成株式会社若手社員の人財育成施策の一環として、新卒社員約250名を対象とした学習コミュニティ「新卒学部」の運用を支援してまいりました […]

  • 組織
  • 人材育成・研修
2024.10.29
松野天音
事例紹介③:大成建設株式会社|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント#9

事例紹介③:大成建設株式会社|人事ができる“仕事と介護の両立”支援の実践ポイント#9

第6回までは、効果的な仕事と介護の両立支援の取り組み方として、経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」のステップに沿って、それらの具体的な取り組み方法について解説してきました。 今回の第7回~第1 […]

  • 組織
  • ダイバーシティ&インクルージョン
2024.10.28
松野天音

人事注目のタグ