月の労働時間上限とは?月平均所定労働時間や残代計算について解説!

月の労働時間上限とは?月平均所定労働時間や残代計算について解説!

労働時間の月あたりの上限とは?月平均労働時間や200時間労働の可否を解説

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  • 勤怠管理

長時間労働が問題視されている日本において、月の労働時間の上限を理解することは法律を守った勤怠管理をするうえで不可欠です。

本記事では、月の労働時間の上限や、上限を超えてしまう場合に必要な36協定について解説します。

関連記事:労働時間とは?労働基準法に基づいた上限時間や、休憩時間のルールを解説!

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私たちが普段働くときにイメージする「労働時間」と労働基準法での「労働時間」は厳密にみるとズレがあることがよくあります。勤怠管理をおこなう上では、労働時間の定義や、労働させられる時間の上限、休憩を付与するルールなどを労働基準法に基づいて正確に知っておかなければなりません。

とはいえ、労働時間や休憩などに関するルールを毎回調べるのは大変ですよね。
当サイトでは、労働基準法に基づいた労働時間・残業の定義や計算方法、休憩の付与ルールについての基本をまとめた資料を無料で配布しております。

【資料にまとめられている質問】

・労働時間と勤務時間の違いは?
・年間の労働時間の計算方法は?
・労働時間に休憩時間は含むのか、含まないのか?
・労働時間を守らなかったら、どのような罰則があるのか?

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1. 月の平均所定労働時間とは

時間概念

 

ここでは、月の平均所定労働時間について確認しておきましょう。

1-1. 所定労働時間・法定労働時間とは

そもそも所定労働時間とは、会社が定めた労働時間のことです。たとえば、1日の所定労働時間が8時間、年間休日110日の会社の場合、年間の所定労働時間は2,040時間となります。

一方、法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間のことで、1日8時間、週40時間です。

原則、企業はこの法定労働時間を超えて従業員に労働させてはならず、所定労働時間を設定する際には、この法定労働時間内におさめる必要があります。また、実労働時間も法定労働時間の範囲内におさめなくてはなりません。

どうしても法定労働時間を超えての労働が必要な場合、あらかじめ36協定を締結しておかなければなりません。36協定についてはのちほど解説します。

関連記事:労働時間の上限とは?2024年建設業、運送業への法改正についても解説!

1-2. 月の平均所定労働時間とは

月平均所定労働時間とは、1カ月あたりの平均の所定労働時間のことで、年間所定労働時間を12カ月で割ることで求めることができます。先ほどの例で考えた場合の月平均所定労働時間は、「2,040時間 ÷ 12カ月」で170時間となります。

1-3. 月平均所定労働時間が必要な理由

月平均所定労働時間が必要な理由は2つあります。

1つは、残業代や割増賃金を求めるためには1時間当たりの基礎賃金を知る必要があるためです。基礎賃金は、月平均所定労働時間から計算します。
もう1つは、月ごとの基礎賃金を統一するためです。月ごとに1カ月の日数は異なります。そのため、実労働日数で1時間当たりの基礎賃金を計算すると月によってばらつきが出てしまうため、月平均所定労働時間が必要となります。

1-4. 月平均所定労働時間と残業時間の関係

残業代を求める際の計算式は以下の通りです。
「1時間当たりの基礎賃金 × 残業時間 × 割増率」

より具体的な残業時間の計算式は以下のようになります。

  • 時間外割増賃金 = 基準内賃金 ÷ 月平均所定労働時間 × 1.25 × 時間外労働時間
  • 深夜割増賃金 = 基準内賃金 ÷ 月平均所定労働時間 × 0.25 × 深夜労働時間
  • 休日割増賃金 = 基準内賃金 ÷ 月平均所定労働時間 × 1.35 × 休日労働時間

先述の通り、月による残業代のばらつきを防ぐため、「月平均」という考え方をします。
割増率、時間外労働時間などの条件が同じ場合、残業単価は月平均所定労働時間が多いほど少なくなり、月平均所定労働時間が少ないほど多くなる仕組みです。

なお、残業代の計算方法はのちほど解説しますので参考にしてみてください。

2. 月の平均所定労働時間の上限とは?

時計と人間

企業は従業員に対して、月に何時間まで労働させることができるのでしょうか。月の労働時間を考える際には、法定労働時間を考慮しなくてはなりません。

ここからは、月の所定労働時間の設定方法について解説します。

2-1. 法定上限を超えない月の所定労働時間の設定方法

先程も解説した通り、月の所定労働時間を設定する場合、法定労働時間の上限を超えないように設定しなければなりません。法定労働時間は、労働基準法により「1日8時間、週40時間まで」と定められているため、1日あたりと週あたりの労働時間の上限は明確になっています。

しかし、月ごとの法定労働時間が明確に定められているわけではありません。そのため、月の所定労働時間を設定する際には、1日あたりと週あたりの労働時間の上限を考慮したうえで設定する必要があります。

月の法定労働時間は「月の日数 ÷ 7日 × 40時間」で計算することができます。

月の日数が最も少ない2月は28日なので、「28日 ÷ 7日 × 40時間 = 160時間」となり、2月の所定労働時間は160時間以内におさめなければなりません。なお、その他の月の法定労働時間は、以下の表の通りです。

1ヶ月の日数

月の法定労働時間

29日

165.7時間(29日 ÷ 7日 × 40時)

30日

171.4時間(30日 ÷ 7日 × 40時)

31日

177.1時間(31日 ÷ 7日 × 40時)

月の労働時間を設定する際は、月の法定労働時間の上限を超えないように注意しましょう。

2-2. 時間外労働が月80時間を超えると過労死ラインに

月の所定労働時間を超える長時間労働には注意が必要です。

長時間労働は従業員の心身を疲弊させ、なかには過労死につながってしまうケースもあります。時間外労働が月80時間を超えると、過労死のリスクが高まるといわれています。このような時間労働を防ぐためには、従業員の労働時間を把握すること、正しい労働時間の目安を知ることが大切です。

2-3. 月の平均所定労働時間は就業記載にも明記する

月の所定労働時間が決まったら、就業記載に記載して従業員に周知します。就業規則は、労働基準法89条により、常時10人以上の労働者を雇用する事業者への作成が義務付けられています。

週休二日制、シフト制、変形労働制における就業規則への記載例は以下を参考にしてください。

就業形態 記載例
週休二日制

<始業・終業時刻の記載例>
労働時間は、1週間で40時間、1日で8時間とし、始業・終業時間は次のとおりとする。

始業:午前9時、終業:午後6時

<休憩時間の記載例>
休憩時間は、原則として12時から13時とする。

シフト制 <始業・終業時刻の記載例>
始業・終業時刻及び休憩時間は、次の時刻を基準にして、シフト表によって個人ごとに定める。
変形労働制

<就業時間及び休憩時間の記載例>
所定労働時間は、毎月1日を起算日とする1カ月単位の変形労働時間制とし、1カ月を平均して週40時間以内とする。

1日の所定労働時間は、毎月1日から20日までは7時間、21日から月末までは8時間30分とし、それぞれの始業・終業時刻は次の通りとする。

  • 1日~20日:始業時刻:午前9時、終業時刻:午後5時(休憩時間:12時~13時)
  • 21日~月末:始業時刻:午前8時、終業時刻:午後5時30分(休憩時間:12時~13時)

3. 法定労働時間を超える場合は36協定の締結が必要

36協定を確認する人事社員

労働時間について理解するうえで、36協定の理解は必要不可欠です。ここでは法定労働時間や36協定といった労働時間に関する基礎的な知識を解説します。

関連記事:「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いとは?定義や残業代計算について詳しく解説!

3-1. 36協定とは?

36協定とは時間外労働に関する協定です。本来、法定労働時間を超える労働は認められていませんが、36協定を締結することで企業は法定労働時間を超えて、従業員に労働させることが可能になります。ただし、法定労働時間を超えた労働すなわち時間外労働は原則として「月45時間・年360時間まで」と定められています。

企業が時間外労働をさせてよいのは、36協定で定めた範囲内のみです。36協定で定めた上限を超えると36協定違反となり、罰則を科される可能性もあります。また、36協定を結んでいたとしても、時間外労働に対して25%以上の割増賃金を支給する必要があります。

このように、労働時間には法律による規定があり、規定に違反してしまうと処罰の対象となることもあります。当サイトでは、労働時間に関してよくある質問を一問一答形式で解説した資料を無料で配布しておりますので、法律に則った労働時間の知識を身に付けたい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

3-2. 特別条項付き36協定の上限

36協定を締結すると従業員に「月45時間・年360時間まで」の時間外労働をさせることができますが、企業や業種によっては、どうしてもこの上限を上回ってしまう月がある場合もあるのではないでしょうか。そのような場合には、特別条項付き36協定を締結することで、以下の範囲内まで時間外労働の上限を広げることができます。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 休日労働を含めた時間外労働の上限は月100時間未満
  • 2~6カ月の時間外労働の平均(休日労働を含む)がすべて月80時間以内であること
  • 月45時間以上の残業は、年に6回を超えてはいけない

ただし、締結した特別条項付き36協定の上限がこれらよりも低い場合、締結した内容が適用されます。

2019年より前は、特別条項付き36協定を結んでいれば、実質時間外労働を無制限にさせることができていましたが、長時間労働や過労死が社会問題になったことを機に36協定が見直され、上限が設けられました。

次章では、残業代の計算方法について、詳しく紹介します。

4. 残業代の計算方法

電卓で計算する人

法定労働時間を超えて労働させた場合、企業はその超過分の時間外労働に対して割増賃金を加算した残業代を支給しなければなりません。

先程も少し紹介しましたが、残業代の計算方法をもう一度確認しておきましょう。

「1時間当たりの基礎賃金 × 残業時間 × 割増率」

以下、計算方法を詳しく解説します。

4-1. 月平均所定労働時間の目的と計算方法

月給制の場合、割増賃金を算出する際に利用する1時間あたりの賃金は「月給 ÷ 月の労働時間」で算出します。しかし、月によって営業日数は異なり、単月で計算してしまうと、毎月1時間あたりの賃金が変動してしまいます。そのため、単純にその月の労働時間で割るのではなく、「月平均所定労働時間」を用いて1時間あたりの賃金を算出します。

月平均所定労働時間とは、その名の通り、1カ月あたりの平均所定労働時間のことです。

たとえば、所定労働時間が8時間の企業だと、営業日数が20日の月は「160時間(8時間×20日)」、18日の月は「144時間(8時間×18日)」が月所定労働時間になります。

このままだと同じだけ残業したとしても月によって給与が変動してしまいます。このような事態を防ぐために所定労働時間から月平均所定労働時間を算出して平均を出しましょう。実際に月平均所定労働時間は、下記の計算式で算出することができます。

月平均所定労働時間 =(365日 – 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12カ月

たとえば、年間休日が125日、1日の所定労働時間が8時間の従業員の場合、下記の計算ができます。

月平均所定労働時間 =(365日 – 125日)× 8時間 ÷ 12カ月 = 160時間

従業員の月給が40万円だとすると、

40万円(月給)÷ 160(月平均所定労働時間)= 2,500円

となり、この従業員の1時間あたりの基礎賃金は2,500円です。

つまり、この2,500円を基礎賃金として残業代を計算することになります。

関連記事:月の労働時間上限とは?月平均所定労働時間や残代計算について解説!!

4-2. 残業代未払いの実態

企業は、月平均所定労働時間を超えた従業員に対し、超過分の労働時間に割増率を乗じた賃金を支払わなくてはなりません。しかし、残業代を支払わない企業も存在しており、社会問題になっています。

そこで厚生労働省では、「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)」を公表して残業代未払いの是正に取り組んでいます。令和5年に全国の労働基準監督署で扱った賃金不払事案の件数などは以下通りでした。

  • 賃金不払事案の件数:21,349件(前年比 818件増)
  • 対象労働者数:181,903人(前年比 2,260人増)
  • 金額:101億9,353万円(前年比 19億2,963万円減)

また、労働基準監督署が扱った賃金不払事案のうち、令和5年中に解決した事案は以下の通りです。

  • 解決した件数:20,845件(97.6%)
  • 対象労働者数:174,809人(96.1%)
  • 金額:92億7,506万円(91.0%)

参考:賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)|厚生労働省

5. 月の労働時間はどれくらいが目安?月200時間は適正でも月230時間はNG?

企業の担当者は、常に従業員の月間労働時間が法令の上限を超えていないか確認しておかなくてはなりません。そのため、1カ月あたりの労働時間の適正値を知っておくことが大切です。

5-1. 1カ月あたりの労働時間の適正値とは?

1カ月を4週とした場合、月の労働時間の目安は160時間程度です。これは、1週あたりの労働時間の上限である40時間を元にしています。

より詳細な目安を知りたい場合は、先ほども紹介した「月別の法定労働時間」の表を参考にしてください。

1カ月の日数

月の法定労働時間

29日

165.7時間(29日 ÷ 7日 × 40時)

30日

171.4時間(30日 ÷ 7日 × 40時)

31日

177.1時間(31日 ÷ 7日 × 40時)

従業員の労働時間が上記の値に収まっていれば、法定内であるため心配する必要はありません。しかし、法定労働時間を超える労働を一切しないという企業はほとんどないでしょう。

そのため、残業時間も含めて労働時間が適正であることを確認する必要があります。

5-2. 残業を含む1カ月の労働時間は200時間程度が目安

1カ月あたりの法定労働時間の上限を160時間とした場合、残業を含めた1カ月あたりの合計労働時間の目安は200時間程度です。これは、36協定を締結しても、残業が認められるのは月45時間・年間360時間までであることが根拠になっています。

月の日数別で考えると、以下の表のようになります。

1カ月の日数

月の法定労働時間

残業を含む1カ月あたりの総労働時間

(45時間の残業を加算した時間)

29日

165.7時間

210.7時間

30日

171.4時間

216.4時間

31日

177.1時間

222.1時間

このことから、労働時間が月200時間程度であれば問題ありません。しかし、月230時間の場合は、1カ月が31日の月の222.1時間を超えているため、法令に違反している可能性が高いでしょう。

たとえ、1カ月の労働時間が200時間以内に収まっていても、毎日2時間程度の残業をしていることになります。労働時間の上限を超えていないものの、従業員にとっては大きな負担となっているかもしれません。そのため、36協定を締結していても、残業は極力減らし、法定内労働時間で収まるように努めることが企業の役割の1つといえるでしょう。

5-3. 労働時間は月あたりだけでなく、1年あたりでも考える

36協定を締結していれば、1カ月45時間までの残業が可能です。しかし、年間360時間までとの定めもあるため、1年間、毎月45時間の残業をさせることはできません。

また、1カ月45時間の残業は、従業員にとっても過酷な労働となります。そのため、年間360時間程度の残業が必要になる場合は、1カ月あたりの残業時間を30時間程度に留めるなど、計画的な運用をおこないましょう。

月の労働時間にはさまざまなルールがありますが、法令に違反すると30万円以下の罰金、または6カ月以内の懲役が科せられる可能性もあります。上限を超える過度な労働は、罰則を受けるだけでなく、従業員の離職につながるリスクもあるため、これを機に自社の勤怠状況をしっかりと確認しましょう。

5-4. 「特別の事情」があっても年間残業時間は720時間以内

これまでは、残業時間は月45時間・年360時間以内という制限があっても、「残業に関する特別条項を盛り込んだ36協定」を結べば事実上無制限で残業することができました。
しかし、働き方改革関連法が制定され、「特別の事情がある場合でも残業時間は年720時間まで」というルールが追加されています。
これにより、ブラック企業の減少や労働者の健康被害・過労死の減少など、徐々にその効果が表れつつあります。企業は従業員に対してできるだけ負担の少ない労働環境を提供し、従業員の心身の健康を守る責務を負っていることを自覚しましょう。

5-5. 2~6カ月の残業時間平均が80時間以内なら増減があっても認められる

働き方改革関連法では、「月平均の残業時間が80時間以内」というルールも追加されました。これは、どんなに忙しい月でも、従業員が帰宅できないほどの無茶な残業時間を課さないための制限です。
具体的には、ある月の残業時間が100時間に達した場合は、翌月の残業時間を60時間以内に抑えるという考え方をします。

5-6. 【要確認】残業時間での法令違反を避けるために

残業時間において守らなければならないルールは以下の通りです。

  • 月45時間・年間360時間
  • 特別の事情がある場合も年間720時間
  • 月45時間以上の残業は最大で年6回(半年まで)
  • 2~6カ月の残業時間平均を80時間にする

もし、これらのルールのいずれか1つにでも違反した場合は、労働基準法の罰則規定により、30万円以下の罰金、または6カ月以内の懲役となるので注意が必要です。

6. 月の労働時間が長すぎることによるリスク

リスク管理

 

月の労働時間が長すぎることには、以下のようなリスクがあります。

6-1. モチベーションが低下する

従業員のモチベーションが低下することは、長時間労働の大きなリスクです。いくら熱意のある従業員であっても、休まずに働き続けることはできません。長時間労働によって疲労が蓄積すると、ミスが増えたり生産性が低下したりするケースも多いでしょう。

また、長時間労働や休日出勤が常態化すると、従業員が会社に不満を感じるようになり、転職を考えてしまうかもしれません。優秀な従業員が離職することは企業にとって大きな損失であるため、業務効率化を図ったり業務の再配分を検討したりして、働く環境を改善することが重要です。

6-2. 病気になる可能性が高まる

長時間労働が常態化すると、従業員が病気になる可能性が高まります。可能性のある病気は以下の通りです。

  • 脳血管疾患
  • 心疾患
  • うつ病

また、疲れによって事故が発生したり、大きな怪我をしたりする可能性もあります。最悪の場合、過労自殺につながるケースもあるため、働きすぎには十分に注意しましょう。

7. 月の労働時間を減らす取り組み

月の労働時間の削減

ここまで残業代の割増賃金の計算方法を解説しましたが、割増賃金が発生するとはいえ、残業は従業員の健康を損ないかねません。ここでは、月の労働時間を減らす取り組みについて解説します。

関連記事:労働時間を短縮するための取り組みとは?メリットデメリットや制度をご紹介!

7-1. 人事評価制度の見直し

企業によっては、「残業をしている=仕事熱心な人」であるという印象や、「残業してでも成果を残せば評価される」という風潮が残っている場合があります。こういった風潮ある企業は、残業が長時間になりがちです。

この場合、重要なのは人事評価基準に「短い時間で成果を上げること」や「生産性」といった項目を加えることです。これにより、従業員は限られた時間で最大限の成果を残そうと考え、試行錯誤します。その結果、企業全体として残業時間の短縮につながるでしょう。

7-2. ノー残業デーの導入

「ノー残業デー」とは残業をせず、定時で帰る日を設定する取り組みです。ノー残業デーを設定することにより、定時に帰るために仕事を終わらせなくてはいけないという意識が生まれ、結果として社員の生産性が上がり、残業時間の短縮につながります。

7-3. 業務効率化を図る

月の労働時間を減らすためには、業務効率化を図ることが大切です。無駄な会議を減らしたり、便利なツールの導入によりペーパーレス化を図ったりして、業務が効率よく進むようにしましょう。

まずは、社内の業務内容やプロセスを洗い出してみることが重要です。そのうえで、削減できる部分はないか、改善できるフローはないか、チェックしていきましょう。

7-4. 人員配置を見直す

人員配置を見直すことで、労働時間の短縮を図ることも可能です。長時間労働が常態化している部署に人員を補充したり、新しい人材を採用したりして、労働時間の短縮を図りましょう。

従業員の補充や採用が難しい場合は、業務の一部をアウトソーシングするなど、業務負担を軽減する対策が必要です。

7-5. 上司が率先して休む

労働時間を短縮するためには、上司が率先して休んだり、残業をせずに帰宅したりすることが大切です。上司が有給休暇を取得しないために、部下も取得しにくいケースもあります。

また、上司が残業をしていることを気にして、付き合い残業が発生することも多いでしょう。上司が率先して休むことで、部下が休みやすくなると考えられます。

7-6. 勤怠管理システムの導入

勤怠管理システムの導入も業務時間の短縮につながります。

勤怠管理や給与計算を紙やExcelでおこなっていると、打刻ミスがあった際の対応や集計作業、法改正があった際に、長時間労働が発生しがちです。勤怠管理システムを導入していると、勤怠情報を自動で記録し、法改正にも自動で対応できるため、大幅な労働時間短縮を実現することができます。

また、勤怠管理システムによって、「どれだけ時間を使っているのか」を可視化することが可能です。従業員全員の勤怠をリアルタイムで確認できるため、月の労働時間の上限を超えそうな従業員をチェックし、労働時間を減らすような働きかけもできます。

これにより、法令違反のリスクを削減でき、企業全体で労働時間削減に対する意識が芽生え、従業員の健康維持やコストの削減、生産性の向上などにつながることが期待できます。

8. 月の労働時間を正しく管理し、働きやすい職場づくりを

働きやすい職場

本記事では、月の労働時間の上限や36協定、残業の計算方法や月の労働時間を減らす取り組みについて解説しました。

企業は、従業員の心身の健康を守るため、月平均労働時間を正しく設定し、できるだけその範囲内で労働させることが大切です。しかし、その範囲を超えて労働させる場合は、割増賃金の支払いや36協定の締結などに対応しなくてはなりません。

また、残業時間にも上限があるため、ルールに従って残業させる必要があります。もし、ルールに違反した場合は罰則の対象となるので注意が必要です。

法令や従業員を守るため、企業は月の労働時間を正しく把握する必要があります。労働時間の把握は、企業全体として業務効率化を進めることや、法律に則った勤怠管理にもつながります。

ノー残業デーや勤怠管理システムの導入など、企業にあった取り組みを通じて、働きやすい職場づくりや効率的な勤怠管理に努めましょう。

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