給与計算時の社会保険料の計算方法とは?控除や標準報酬月額についても解説 |HR NOTE

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給与計算時の社会保険料の計算方法とは?控除や標準報酬月額についても解説

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解説をしている人社会保険は、病気や失業など人生のリスクに備えて加入が義務付けられる公的な保険制度です。企業に勤める労働者は、自身がが勤める企業を通じて社会保険に加入します。一方、企業は社会保険の加入手続きだけではなく、保険料の算出や納付といった業務も担わなければなりません。

 

給与計算と社会保険は深く関連しており、従業員に対する適切な給与支給のためには社会保険制度に関する理解が不可欠です。

今回は企業の労務業務に関わる社会保険制度の仕組みや、給与計算における社会保険料の算出方法について解説します。

関連記事:給与計算とは|概要から手取りの計算方法まで基礎知識を総まとめ

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1. 社会保険とは、従業員(会社員や公務員など)の生活を支える社会保障制度

国民を支える制度

社会保険は国が運営する公的な保険制度であり、企業に勤める人などの生活を支える社会保障制度のひとつです。ここでは社会保険の基本的な仕組みを解説します。

関連記事:社会保険料とは?|計算方法や注意点、法改正の内容などを徹底解説

1-1. 社会保険の種類

一般的に「社会保険」とよばれるものは国が運営する公的な保険制度の総称です。正確には社会保険という名目の保険制度はありません。社会保険を構成する保険制度は「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労働者災害補償保険」の5つです。

なお、狭義では健康保険、厚生年金保険、介護保険の3つを「狭義の社会保険」とよび、雇用保険と労働者災害補償保険(労災保険)を「労働保険」とよんで区別する場合もあります。

(広義の)社会保険

(狭義の)社会保険

労働保険

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

 

1-2. 社会保険は企業に勤める人などに加入義務がある強制保険

社会保険は一定の要件に該当する企業に勤める人などに加入義務がある強制保険です。企業は要件を満たす従業員に対して社会保険の加入手続きを実施しなければなりません。新規採用時のほか、雇用条件の変更により新たに社会保険への加入要件を満たす従業員に対しても必ず加入手続きを実施しましょう。

1-3. 社会保険料は「特別徴収」により企業が一括納付する

社会保険料の納付には「特別徴収」の制度が適用されます。特別徴収とは、企業が給与から税金や保険料を控除し、本人に代わって一括納付する仕組みです。特別徴収される所得税や保険料は企業が金額を計算して納付します。

1-4. 社会保険料の負担は従業員と企業の折半

社会保険は従業員と企業の双方に負担責任がある保険制度です。各保険の保険料負担は以下のようになります。

  • 社会保険の種類

保険料の負担率

  • 健康保険
  • 厚生年金保険

従業員が50%、企業が50%負担

  • 雇用保険

従業員と企業で按分※年度により異なる

  • 労災保険

企業が100%負担

社会保険料のうち健康保険、厚生年金保険は従業員と企業の折半です。雇用保険も従業員・企業の双方が負担しますが、負担の割合は年度により変動します。必ず厚生労働省発表の情報を参照するとともに、法改正により負担率の変動にも注意しましょう。

なお、労災保険は個々の賃金ではなく「全従業員に支払われる賃金の総額」に対して保険料が算出されます。また、保険料は企業が100%負担するため、給与計算における控除は発生しません。

2. 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用要件

社会保険の要件とチェック社会保険の代表的な健康保険と厚生年金保険には、企業規模や業種など事業所側の要件と労働者側の要件があります。

2-1. 事業所の適用要件(適用事業所)

社会保険の適用となる事業所を「適用事業所」といいます。適用事業所に該当するのは以下どちらかの要件を満たす事業所です。

  1. 法人などの事業所であって、常時1名以上の従業員を使用する事業所
  2. 法定の17業種のうち、常時5名以上の従業員を使用する事業所

1の要件から分かるように法人などは、原則従業員がいる事業所は適用事業所となります。
個人経営の事業所では、まず、法定17業種に該当するかどうかで判断した後、人数要件で適用事業所になるか確認します。

2-2. 労働者の適用要件

適用事業所に雇用されている人は、一部の者を除いては加入者(被保険者)です。
正社員だけでなく正社員と同じくらいの時間(正社員の労働時間の3/4以上)働くパートやアルバイトの方も基本的に加入者となります。

 

なお、近年パートやアルバイトの方にも社会保険に加入してもらおうという国の方針に従って現在、段階的にに加入対象者を拡大しています。

直近では、従業員数が「51~100人」の企業等で働くパート・アルバイトの方で①から④のすべての要件に該当する場合、2024年10月から新たに社会保険の適用となりました。

①週の所定労働時間が20時間以上
②報酬88,000円以上
③2か月を超えて働く見込み
④学生でない

 

これまでは、従業員が101人以上の企業等で働くパート・アルバイトの方が対象でした。
今回新たに対象となる企業においては注意が必要です。

 

とくに社会保険料は給与から控除して支払うため、この法改正によって適用範囲が変更されることによって対象従業員の給与にも大きく関係します。確認ミスや漏れによるトラブルがないように対応しなければなりません。 そんな人事労務担当者の方の役に立つ「最新の法改正に対応した社会保険の加入条件ガイドブック」を無料配布しております。 加入条件をわかりやすく図解していますので、参考にしたい方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。

3. 給与計算における標準報酬月額・標準賞与額

社会保険料の金額給与計算における社会保険料の計算式は以下の通りです。

毎月の保険料=標準報酬月額×保険料率

賞与の保険料=標準賞与額×保険料率

「標準報酬月額」とは賃金の等級によって予め指定された金額です。社会保険料は実際の賃金ではなく賃金の等級に応じた標準報酬月額をベースに算出されます。

ここでは保険料計算の基準となる標準報酬月額と標準賞与額を解説します。

関連記事:標準報酬月額とは?計算に含むもの・調べ方をわかりやすく解説!

3-1. 社会保険料算出の基準になる 標準報酬月額

給与計算で標準報酬月額を求める際は「保険料額表」を確認しましょう。なお、標準報酬月額の金額は健康保険組合や地域の協会けんぽによって異なります。必ず自社が加入する健康保険組合や協会けんぽの保険料額表を用い、事業所の所在地に対応した地域の標準報酬月額を参照してください。

また、標準報酬月額が決まるタイミングは3パターンあります。

①入社時

入社時はまだ給与が支払われていない段階のため、標準報酬月額を算定することができません。そのため、残業代などの変則的な給与を概算し、固定給と合算して報酬の見込み額を算出し、それを保険料額表と照らし合わせて保険料を計算します。

②定時改定

定時改定とは、毎年1回おこなう標準報酬月額の見直しのことです。原則4月~6月の3ヵ月間の報酬を平均して標準報酬月額とし、7月10日までに日本年金機構に被保険者報酬月額算定基礎届を提出する必要があります。

この届出をもとに厚生労働大臣による定時決定が行われ、9月から翌8月までの標準報酬月額の見直し及び改定がおこなわれます。

企業もこの改定内容に則して従業員一人ひとりの社会保険料率を見直します。

③随時改定

昇給や降格等で大幅に給与が変更になった場合には、定時改定を待たずに随時改定をおこなうこともあります。

随時改定がおこなわれる場合の条件は下記のように定められています。

 

(1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。

(2)変動月からの3カ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。

(3)3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。

上記(1)~(3)すべての要件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目(例:4月に支払われる給与に変動があった場合、7月)の標準報酬月額から改定されます。

引用:随時改定|日本年金機構

3-2. 賞与の保険料は標準賞与額を基準に算出する

賞与として支給される賃金に関しては、税引き前の金額から1,000円未満の端数を切り捨てた「標準賞与額」をベースに保険料が算出されます。賞与の対象は、その名称にかかわらず労働の対価として年3回以下の回数で支給される賃金です。

なお、標準賞与月額には上限が定められています。健康保険は年度の累計で573万円、厚生年金保険に関しては賞与1回あたり150万円(ひと月に2回の支給があった場合は合算して1回とする)が上限です。

4. 給与計算の社会保険料控除額の計算方法

給与計算をしているここからは給与計算において各種保険料の控除額を計算する方法を解説していきます。なお、雇用保険料のみ実際の給与額を基準とする点に注意しましょう。

関連記事:給与計算の流れを5ステップで解説!マスターするためのポイントをチェック

4-1. 健康保険の計算式と控除額

健康保険料の控除額は以下の式で算出されます。

健康保険の控除額=標準報酬月額×保険料率÷2

保険料は企業が半分するため、給与からの控除額は保険料全体の2分の1です。

なお、健康保険は日本最大の保険者である「全国健康保険協会(協会けんぽ)」をはじめ、業界ごとに様々な運営主体があります。各運営主体で標準報酬月額や保険料率が異なるため、必ず自社で加入する保険組合の保険料額表を参照しましょう。

4-2. 厚生年金保険の計算式と控除額

厚生年金の保険料率は全国一律で18.300%です。そのため、保険料控除額の計算式は以下のようになります。

厚生年金保険の控除額=標準報酬月額×18.3000%÷2

4-3. 介護保険の計算式と保険料控除額

介護保険は40歳以上の従業員に加入義務がある保険制度です。保険料は原則として健康保険料に上乗せする形で納めます。ただし、介護保険は被保険者の年齢によって納付方法が異なるため注意が必要です。第2号被保険者である40~64歳までは、先述の通り健康保険料や厚生年金保険料と合算し、給料から天引きする形で納めます。しかし、65歳以上は第1号被保険者となるため、会社に勤めている場合であっても、被保険者が各自で居住地の市区町村に納付します。
65歳以上の従業員の給与計算時に介護保険料分を誤って天引きしてしまうと二重徴収になってしまうので注意しましょう。
控除額の計算式は他の社会保険と同様です。
介護保険の控除額=標準報酬月額×保険料率÷2
なお、協会けんぽに加盟する企業の場合、介護保険の保険料率は全国一律で1.60%です。他の保険組合に加入する場合はそれぞれの規約に従って保険料を求めましょう。

4-4. 雇用保険の計算式と控除額

雇用保険の保険料は標準報酬月額ではなく給与の総支給額を基準に算出します。なお、現在の一般の事業の保険料率は従業員が6/1,000(0.6%)、企業が9.5/1,000(0.95%)です。そのため計算式は以下のようになります。

雇用保険料(従業員負担分)=給与の総支給額×0.6%

雇用保険料(企業負担分)=給与の総支給額×0.95%

なお、農林水産業、清酒製造事業、建設業に関しては個別の雇用保険料率が適用されます。

参考:令和6年度雇用保険料率

関連記事:65歳以上の方向けに改正された雇用保険を給与計算の観点から解説

5. 給与計算では標準報酬月額や社会保険料率の改定に注意

給与計算をする際の注意点標準報酬月額は、原則としてその年の4月~6月までを算定期間とし、3ヵ月間の平均給与から求められる標準報酬月額をその年の9月~翌年8月まで使用します。

ただし、1年間の間に大幅な給与の増減が発生した場合は、その都度標準報酬月額の見直しが必要です。これを随時改定といいます。随時改定が必要なケースとしては昇給による基本給の上昇や、長期休業等で直近の賃金が低下している場合が考えられます。

 

ただし、納めるべき保険料が不足していた場合は従業員が将来受け取る年金が減少する、後から保険料の不足分をまとめて督促されるといった弊害もあるため、給与の変動に合わせて適切に随時改定を実施しましょう。

なお、標準報酬月額の随時改定の算定期間は3ヵ月です。給与変動後、3ヵ月間の平均給与を算出し、標準報酬の見直しが必要な場合は随時改定を実施してください。

 

ここまで社会保険料の計算の流れや計算方法について解説していましたが、社会保険料の計算は控除する項目も複数あり計算も複雑です。「本当にこれで合っているのか心配」という方に向けて、当サイトでは「社会保険料の給与計算マニュアル」を無料でお配りしています。このガイドブックでは表を用いながら標準報酬月額の計算のスケジュールや具体的な計算例も紹介しています。 社会保険料の計算を正確に行いたい方は、こちらから「社会保険料の給与計算マニュアル」をダウンロードしてご活用ください。

6. 社会保険料の仕組みを理解して給与計算を実施しよう

6人がニコニコしている様子給与計算において社会保険料の算出は非常に重要な作業です。社会保険は従業員の生活の安定を目的とした社会保障制度であり、保険料の未納があれば企業と従業員本人に多大な悪影響を及ぼします。従業員の暮らしのためにも、給与計算や社会保険料は正確に算出しましょう。

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