雇用保険とはどのようなものか知っていますか。会社で働いていると耳にしたことはあるのではないでしょうか。加入する意思に関わらず、会社で働いている以上は雇用保険に加入しなくてはいけません。なぜ、このような保険が運用されているのでしょうか。
本記事では、雇用保険について詳しく解説します。雇用保険料がどのような負担割合になっているかについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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1. 雇用保険とは?
雇用保険とは労働者を守るための保険のことであり、雇用保険料は雇用保険を適用するために支払わなければならないお金のことです。
労働者を守るとは、具体的にどのような内容になっているのでしょうか。雇用保険で支払われる手当や加入条件について解説します。
関連記事:雇用保険とは?加入条件や手続き方法・注意点をわかりやすく解説!
1-1. 失業給付
会社を退職すると収入がなくなってしまいます。スムーズに別の会社に就職できれば問題ありませんが、うまくいかないケースもあります。その際の生活を安定させるために失業給付をおこなっているのです。
失業給付は失業すればもらえるものではなく、ハローワークに登録して再就職の意思を見せなくてはいけません。再就職するつもりがないのに失業保険を受け取ることはできないので注意してください。
1-2. 育児休業・介護休業
育児や介護をしていると、満足に働くことが難しいケースもあります。その際に収入がなくなってしまうと、育児や介護にも影響がでてしまいます。それを防ぐために育児休業や介護休業を取得した際に、賃金が支払われるようになっているのです。
会社に勤めていると当たり前のように感じるかもしれませんが、この制度が成立しているのは雇用保険があるからこそなのです。
関連記事:育児休業を徹底解説!|人事が知っておくべき制度や仕組み、手続き等
関連記事:介護休暇・介護休業とは|仕事と介護の両立を支援する休暇制度を詳しく解説
1-3. 教育訓練
就職するために教育訓練を受けなくてはいけない人もいるでしょう。その際に受講料が発生するのですが、雇用保険に加入していればその一部が補助されるという制度があります。
このように雇用保険は、労働者に万が一のことがあったときに助けてくれる保険となっています。
1-4. 雇用保険の加入条件
雇用保険における労働者とは、会社の従業員として働いている人を対象にしています。そのため、会社の取締役や役員、個人事業主は雇用保険に入ることはできません。
加入条件には以下の2つがあります。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
これらを満たしていれば必ず雇用保険に加入し、保険料を納めなければなりません。
1-4-1. 会社役員は特定の条件を満たせば加入できる場合もある
会社役員に関しては原則加入できません。しかし、役員であると同時に部長や支店長などの役職を有しており、雇用関係が認められれば加入することが可能です。諸手続きや対象者となるかの相談などは、公共職業安定所(ハローワーク)で確認してみましょう。
1-5. 雇用保険以外の社会保険
社会保険には、以下の5つが含まれます。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
病気や怪我で働けなくなったり、労働災害にあったりしたときにも必要なサポートを受けられるよう、複数の保険制度が運用されています。
一定の条件を満たす場合は上記の社会保険に加入する必要があり、給与額などに応じて社会保険料を支払わなければなりません。
2. 雇用保険料の負担割合は事業ごとに異なるので注意!
一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業の3つで雇用保険料は分けられています。それぞれ、従業員と企業の負担額も異なるため、注意しましょう。
2-1. 2024年度の雇用保険料の負担割合
2024年度の保険料負担割合は以下の通りです。
上の表のように、雇用保険料は一般の事業者が最も低く、建設事業者が高くなるように設定されています。これは、事業者ごとの失業率に合わせているためです。
次の項目で詳しく解説します。
2-2. 事業者ごとに雇用保険料が異なる理由
事業の種類によって雇用保険料率が異なることには、以下のような理由があります。
建設の事業は失業率が高いから
建設の事業では現場ごとに雇用契約を結ぶケースがあります。現場ごとに雇用契約を結ぶということは、工事をおこなっていない間は失業するということになります。つまり、他の業種と比べて失業率が高く、失業手当を受け取る可能性が高いので、その財源を確保するために雇用保険料が高く設定されているのです。
農林水産・清酒製造の事業は季節によって収入が増減するから
農林水産・清酒製造の事業に関しては、季節によって収入が大きく変化します。季節によっては収入が全くないという事態にもなりかねません。そのため、建設業と比べると安いですが、一般の事業と比べて雇用保険料が高くなっています。
建築業に関する助成金の種類が多いから
他にも雇用保険料が異なる理由があります。それが助成金です。建築業は支給される助成金の種類が非常に多いですが、その助成金の財源は雇用保険料となっています。より多くの助成金を受け取ることができる建築業の雇用保険料が高いのは、ある意味で必然といえるでしょう。
最も助成金を多く受け取っている建築業の雇用保険料が他と同じだと、公平性が保たれなくなってしまいます。業種による差を生まないためには、雇用保険料を調整することが欠かせないのです。
2-3. 雇用保険料率の推移
一般の事業の雇用保険料率は、下表のように推移しています。
年度 | 雇用保険料率 |
2024 | 1.55% |
2023 | 1.55% |
2022 | 1.35% |
2021 | 0.9% |
2020 | 0.9% |
2019 | 0.9% |
2018 | 0.9% |
2017 | 0.9% |
2016 | 1.1% |
2015 | 1.35% |
雇用保険料率は、社会状況などに応じて随時変更されます。雇用保険料を計算する前に、最新の料率を確認するようにしましょう。
3. 雇用保険料の計算方法
ここでは、雇用保険料の計算方法について解説します。雇用保険料は労働者が支払うものと思いがちですが、実は労働者だけではなく会社も雇用保険料を支払っています。どのような負担割合になっているのかについても理解しておきましょう。
3-1. 雇用保険料は「賃金×保険料率」で計算する
まず雇用保険料は賃金が基準となって決定されます。たとえば、賃金が20万円だとしましょう。その場合の労働者が負担する雇用保険料は、20万円に労働者負担割合を掛け合わせて算出されます。計算式は以下の通りです。
労働者負担雇用保険料 = 賃金 × 労働者負担割合
また、会社側が負担する保険料は次の式で算出されます。
事業主負担雇用保険料 = 賃金 × 事業主負担割合
この2つの雇用保険料を合計したものが、国に支払っている雇用保険料ということになります。
前述の通り、労働者と事業主の負担割合は業種によって異なります。たとえば一般の事業の場合、労働者の負担割合は0.6%、事業主の負担割合は0.95%です。計算する前に、厚生労働省のホームページで確認するようにしましょう。
3-2. 賃金のなかには保険料計算の対象外となるものがある
先ほど、賃金に保険料率を掛け合わせて保険料を計算すると解説しましたが、賃金のなかには計算時に控除しなければならないものもあるため注意しましょう。
対象となる賃金と対象外となる賃金の例は、以下の通りです。
- 基本給
- 通勤手当
- 残業手当
- 家族手当
- 住宅手当
など
【雇用保険料の対象とならない賃金の例】
- 役員報酬
- 結婚祝金、死亡弔慰金
- 退職金
- 出張旅費、宿泊費
など
4. 雇用保険料を計算するときの注意点
雇用保険料を計算するときは、以下のような点に注意しましょう。
4-1. 賞与からも雇用保険料を天引きする
毎月の給与だけではなく、賞与からも雇用保険料を天引きしなければなりません。ボーナスや年末手当などと呼ばれるケースもありますが、名称に関係なく、労働の対価として支払われる場合は雇用保険料の対象となります。
賞与に対する雇用保険料は、給与と同様、「賞与 × 雇用保険料率」で算出可能です。賞与を支払うごとに雇用保険料を天引きする必要があるため、忘れないようにしましょう。
4-2. 端数処理に注意する
雇用保険料を算出するときは、端数処理に注意しましょう。計算時に端数が出たときは、50銭以下を切り捨て、50銭1厘以上を切り上げる必要があります。間違えて四捨五入しないように気をつけましょう。
4-3. 日割り計算をする必要がある
健康保険料などとは異なり、雇用保険料には日割り計算が適用されます。
たとえば、中途採用の従業員が5月20日に雇用保険に加入した場合、5月20日〜31日までの給与を対象として雇用保険料を算出します。単純に月給で計算しないように注意しましょう。
4-4. 65歳以上の従業員も対象となる
65歳以上の従業員も雇用保険の対象となります。65歳未満の従業員と同様、以下の加入条件を満たしている場合は、雇用保険料を支払わなければなりません。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
計算方法や雇用保険料率なども、65歳未満の従業員と同じです。
4-5. 雇用保険料率は見直されることがある
先述した負担保険料率ですが、見直しが定期的におこなわれています。
雇用保険はあくまでも労働者を守るために存在しています。農林水産・清酒製造の事業や建設の事業の他にも、時期によって収入が大きく少なくなったり、失業する可能性が高い業種が存在するのであれば、そういった業種で働いている人たちを守るために雇用保険料が見直されることはあるでしょう。
このように会社負担の保険料をはじめとする社会保険料は、改定される場合があるため、人事労務担当の方は随時確認し計算業務に反映することが求められます。 とはいえ、「社会保険料率を都度確認する手間が煩わしい」「保険料率の見直しのたびに給与計算ソフトへの反映がおこなわれているか不安」などと感じられる方も多いでしょう。
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5. システムを導入して雇用保険料の計算を効率化しよう!
従業員は条件を満たしている限り、雇用保険に加入する必要があります。しかし、従業員が多くなればなるほど、それぞれの従業員の雇用保険料を計算するのに時間がかかってしまいます。賃金が変化するたびに雇用保険料を算出し直すというのは非常に手間がかかるでしょう。
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